スクールカウンセラーと養護教諭の違い
スクールカウンセラーと養護教諭の仕事内容の違い
「保健室の先生」としての養護教諭
昔の学校にはスクールカウンセラーは勤務していませんでしたが、じつは今のスクールカウンセラーがしているような仕事を実質的に担っている人がいました。
それが、養護教諭、いわゆる「保健室の先生」と呼ばれる存在です。
保健室は、さまざまな事情を抱える生徒が集まる場所でもあります。
「体育の授業中にケガをしたから傷口の手当てをしてほしい」という生徒もいれば、「教室に近づくと吐き気がするので保健室で一日を過ごしたい」という生徒もいます。
前者の場合はケガの応急処置をおこなえばそれで終わりですが、後者の場合は具体的なケガや病気があるわけではないため、あくまでも心の問題となります。
養護教諭としては生徒の話をよく話を聞いたうえで、どうしても教室に行くのが難しければ、保健室で自習をする「保健室登校」の扱いにすることも考えなければいけません。
スクールカウンセラーと養護教諭の業務分担
このように、これまでは養護教諭が子どもたちの体と心のトラブルの両方をケアする役割を果たしていました。
ですが、スクールカウンセラーという職業が誕生したことで、「身体のトラブルは養護教諭」「心のトラブルはスクールカウンセラー」と担当を分けられるようになりました。
そのことで、それぞれが専門的な知識や経験を最大限発揮しやすくなり、これまで以上に質の高いケアを提供できるようになっています。
現在ではこのふたつの職業をはじめ、さまざまな専門職員が連携しながら、子どもたちの心と身体の健康を守っています。
両者の連携で生徒たちの心と身体を守る
具体的には、どのような形でスクールカウンセラーと養護教諭が連携をしているのでしょうか。
たとえば、頻繁に「お腹が痛い」と言って保健室に駆け込んでくる生徒がいるとしましょう。
養護教諭はこの生徒からお腹の痛む場所や嘔吐・下痢の有無などを確認し、病気の可能性を探ります。
しかし、痛みが治まるまでベッドで休ませる、病院に連れて行く、教師に報告をするなどの対応をしても、改善が見られない場合もあります。
そうした身体的なケアだけでは改善しない場合、養護教諭は「心の問題からくるお腹の痛みなのではないか」と考えます。
この段階で教師やスクールカウンセラーに相談し、生徒の生活の中で家庭問題やいじめなどのトラブルが起きていないかなどを話し合います。
そしてスクールカウンセラーが勤務している日に面談の時間を設け、生徒の話をゆっくり聞ける環境を整え、問題解決のための話し合いを重ねていくのです。
このように、スクールカウンセラーと養護教諭の連携は、今の学校において欠かせないものとなっています。
20代で正社員への就職・転職
スクールカウンセラーと養護教諭のなる方法・資格の違い
スクールカウンセラーになるための近道は、臨床心理士の資格を取得することです。
臨床心理士の資格を取得するためには、指定大学院(1種・2種)または専門職大学院と呼ばれる学校で専門的な勉強や実習をおこない、臨床心理士の資格試験に合格する必要があります。
続いて養護教諭になる方法ですが、養護教育の専門資格にあたる「養護教諭免許」を取得しなければなりません。
大学・短大・専門学校の養護教諭養成課程で勉強し、所定の単位を取得すると養護教諭の免許を取得できます。
しかし、資格を得ただけでは養護教諭として働くことはできず、学校職員になるための「教員採用試験」に合格する必要があります。
教員採用試験は、実施する自治体や国公立・私立など学校区分の違いにより、内容が異なってくるため入念な試験対策が必要不可欠です。
スクールカウンセラーと養護教諭の資格の難易度・必要なスキルの違い
スクールカウンセラーになるには「臨床心理士」、養護教諭になるには「養護教諭免許」の取得が必要であることはご説明しました。
では次に、それぞれの資格を取得する際の難易度をみていきましょう。
臨床心理士
令和元年11月に実施された臨床心理士資格試験の結果は以下のとおりです。
・受験者数:2,133
・合格者数:1,337
・合格率:62.7%
合格率だけをみると6割ほどと高くなっていますが、受験生たちが各大学院で懸命に受験対策をした結果であるため、簡単な試験だとあなどってはいけません。
養護教諭
養護教諭の資格についてですが、資格を得るための試験はありません。
大学・短大・専門学校にて、所定の単位を取得することで養護教諭免許を取得することができます。
そのため、取得難易度としては試験対策をおこなわなくてよい点を考えると、若干低めといえそうです。
しかし、必要な単位の取得には相応の時間がかかりますので、大変であることに変わりはありません。
20代で正社員への就職・転職
スクールカウンセラーと養護教諭の学校・学費の違い
スクールカウンセラーになるには、臨床心理士の資格を取得するために、指定大学院(1種・2種)または専門職大学院に進学する必要があります。
学費は学校によってまちまちですが、初年度の学費は、国公立だと約80万円から、私立だと約100万円からが相場になります。
これは、指定大学院(1種・2種)、専門職大学院ともに大きな差はありません。
養護教諭になるには、大学・短大・専門学校のいずれかに進学必要がありますが、こちらでは大学の学費について解説します。
初年度の学費は、国公立だと約80万円から、私立だと約120万円~180万円かかります。
私立大学の学費に差が出てくる理由としては、資格を取得できる学部の違いによるところが大きいです。
教育学部で資格の勉強をできるところもあれば、看護学部など医療の分野から資格取得ができる学校もあるため、ばらつきが出てしまいます。
進学予定の学校に問い合わせる、オープンキャンパスに参加するなど、事前の確認をおこなっておきましょう。
スクールカウンセラーと養護教諭の給料・待遇の違い
スクールカウンセラーと養護教諭では、待遇面において大きく違いがあります。
スクールカウンセラーは、時給制の非常勤職員として勤務することが多いため、おもに週1~2回の出勤、時間もフルタイムのこともあれば、午前中だけ・午後だけなどの時短勤務の場合もあります。
時給は平均3,000円~5,000円ほどで、複数の学校を掛け持ちしているスクールカウンセラーも多くいます。
比較的残業は少なく定時に帰宅できますが、緊急に発生した会議やカウンセリングなどをおこなう場合は、残業が発生することもあります。
養護教諭は教員採用試験を突破した正規職員ですから、他の教職員と同様に「地方公務員」に該当します。
扶養手当や通勤手当など、充実した福利厚生が魅力のひとつです。
ですが、地方公務員の福利厚生は所属する各自治体によって異なりますので、事前に求人情報などを確認したほうがよいでしょう。
スクールカウンセラーと養護教諭はどっちがおすすめ?
スクールカウンセラーの主な業務内容は、子どもたちの話を聞き心の問題を解決することです。
「人の話を聞くことが好き」、「子どもたちの悩みを解決してあげたい」など、強い熱意がある方にぴったりな職業だといえます。
ですが、相談内容を自分事と捉えすぎるあまり、精神的に折れてしまう人がいるのも事実です。
仕事とプライベートを明確に分けるなど、みずからの心身を健康に保つための精神力が必要な職業ともいえます。
養護教諭は「保健室の先生」と呼ばれるように、子どもたちの体のケアをおもな目的とする職業です。
体調不良やケガなどをした生徒を、いかに迅速に処置し快方に向かわせるかが大事になってくるため、適切な判断と対応能力が求められます。
また「保健室登校」の生徒への対応もあり、体の不調だけでなく、子どもたちの変化に気付く観察力も必要です。
物事を冷静に判断でき、明るくコミュニケーションをとることができる人に向いています。