スクールカウンセラーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
スクールカウンセラーの仕事とは
「スクールカウンセラー」は、学校に通う年齢の子どもたちの心のケアに携わる心理の専門家です。
ひと昔前の日本にはこのような職業はなく、学校で何か問題を抱えた生徒がいれば、教師か地域の大人たちが解決のために力を貸すのが当たり前でした。
しかし近年では、いじめが深刻化して自殺してしまう子どもがいることや、心の問題から学校に通うのをやめてしまう不登校児童が増えていることが問題視されるようになり、平成7年度から文部科学省が全国の学校に心の専門家を配置するよう力を入れはじめました。
この専門家こそが「スクールカウンセラー」と呼ばれる人たちです。
スクールカウンセラーは児童生徒のカウンセリングを実施するほか、教職員・保護者の相談に応じることも、その業務に含まれます。
学校内の問題以外にも家庭や職場環境に対する相談を受け付けることになり、常に中立な立場で、さまざまな問題に向き合っていきます。
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スクールカウンセラーの業務の内容
児童・生徒の心を丁寧にケア
スクールカウンセラーの主な仕事は、子どもたちの悩みをしっかりと聞いて気持ちを受け止め、問題を解決させるためのアドバイスをし、具体的な働きかけをすることです。
子どもの置かれている環境や悩みの深さには個人差があります。
たとえば「受験勉強がうまくいかずストレスがたまっているので、愚痴を聞いてもらいたい」というケースから、「深刻ないじめにあっていて自殺を考えるほど思い悩んでいるので、問題の解決に力を貸してほしい」というケースまでさまざまです。
スクールカウンセラーは、一人ひとりの状況や悩みを把握したうえで話を聞き、アドバイスや、ときには心のケアに向けて本格的な治療を促します。
また、必要に応じて相談内容を担任や保護者へ報告することもスクールカウンセラーの業務のひとつであり、報告内容や方法には慎重にならなければいけません。
心理検査を実施することも
スクールカウンセラーは、子どもたちの悩みの内容によって「心理検査」を実施することがあります。
心理検査には主に以下の2つに分類されます。
1.人格検査
対象者の人柄をとらえるために行われる検査で、主として自己理解のために用います。
- 質問紙法(YG性格検査、エゴグラム など)
- 投影法(ロールシャッハテスト、SCT、TAT など)
- 描画法(バウムテスト、HTP(HTTP)、風景構成法 など)
2.発達検査
発達の遅延や広汎性発達障害の有無などを判定するために行います。
- 新版K式発達検査 など
これらの検査を実施し、子どもの抱える悩みの原因や解決策を模索していきます。
教師や保護者との連携
スクールカウンセラーが関わるのは子どもたちだけではありません。
子どもたちの悩みを解決するため、教師や保護者など、多くの関係者との連携が大切になります。
子どもが一人で思いつめているとき、多くの場合は周りの教師や保護者にも何らかの責任があるものです。
クラスや部活動のなかで深刻ないじめが起きているのに教師が気づいていないこともありますし、家庭内の不和で子どもがストレスを抱えているのを親が理解していないこともあります。
スクールカウンセラーは、必要に応じて教師や保護者にも働きかけ、問題を解決させるための糸口を一緒に探すという重要な役割を果たします。
スクールカウンセラーの役割
健やかな成長を応援
日本は義務教育制度を導入しており、基本的に子どもたちは中学校を卒業するまで学校に通うことになります。
しかし、学校生活というのは必ずしも楽しいことばかりではありません。
クラスメイトや部活仲間とうまくいかなくて思い悩むこともあれば、恋愛のトラブルや教師との衝突をきっかけに学校に行きづらくなることもあるでしょう。
ときには問題がどんどん大きくなってしまって、「いじめ」や「不登校」につながったり、最悪の場合は子どもが自分の命を絶ってしまったりする可能性も否定できません。
こうした悲劇を未然に防ぐことを目的に誕生したのが、スクールカウンセラーという職業です。
子どもたちが学校生活のなかでどのような悩みを抱き、どのような形での助力を求めているのかをしっかりと把握した上で、心のケアをする役割を担うことが求められています。
スクールカウンセラーは、子どもたちが健やかな学校生活を送るための非常に重要な存在なのです。
ときには友達のように接する
なぜ、学校には教師がいるのにもかかわらず、スクールカウンセラーが必要なのでしょうか。
その理由は、彼らにカウンセラーとしての専門知識があることだけではなく、その特殊な立ち位置にあります。
教師というのは常に生徒を指導する立場で、ときには注意したり叱ったりすることもあります。
また、成績表の作成や受験時の推薦書を作成することなどから、どうしても教師と生徒の間には上下関係ができてしまいがちです。
「悩みがあっても先生には相談しにくい」と感じている生徒も少なくないでしょう。
これに対して、スクールカウンセラーは、学校における第三者の立場です。
生徒を注意したり評価したりする立場ではないので、いうなれば、友人のように中立の立場で生徒の話を聞いてあげることもできる存在になれます。
ですから、子どもたちが「教師には話しづらいけど、スクールカウンセラーになら話せる」と感じやすく、その結果、心の問題がスムーズに解決に向かうこともあります。
スクールカウンセラーは、子どもの本音を引き出すための重要な存在といえます。
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スクールカウンセラーの勤務先の種類
スクールカウンセラーの職場となるのは、主として小学校・中学校・高校・大学などの教育現場です。
「非常勤」や「常勤」など雇用形態の違いにより勤務時間や出勤日数が異なってきますが、スクールカウンセラーとしての業務内容は基本的には同じです。
担当する学校の教職員と会議を行って、問題行動のある生徒や気になる生徒の情報を共有します。
該当の生徒に対して、どのようにアプローチしていくかを教職員とともに検討し、具体的な対応方針を決定。
その後、児童・生徒、保護者のカウンセリングを実施し、結果をまとめた資料を作成、相談者のプライバシーに配慮したうえで、教職員などの関係者へカウンセリング内容の報告を行います。
在籍する学校によって相談相手である児童・生徒の年齢層が異なってくるため、それぞれの年齢層にあった話し方、説明の仕方を工夫するなどの臨機応変さが求められます。
スクールカウンセラーの仕事の流れ
スクールカウンセラーの仕事の流れは、勤務先の学校によって異なります。
こちらでは、一般的なスクールカウンセラーの仕事の流れを紹介します。
-
教職員と情報共有
授業がはじまる前に出勤し、教職員と気になる生徒の情報を共有 -
対応方法の検討
管理職教員、生徒指導、学年主任などと該当生徒への対応方法を検討 -
予定済みのカウンセリング
予定の入っているカウンセリングを実施(カウンセリングの予定が入っていない場合は、教職員の許可を取り、授業の見学や校内の見回りなどを行うことも) -
イレギュラーで発生したカウンセリング対応
喧嘩などのトラブルが発生した場合の対応や、不登校の生徒が保護者と訪問してくることもあります。 -
面談記録の作成・情報共有など残務処理
実施したカウンセリングの内容を資料として作成。教職員とも必要に応じて情報共有を実施します。
勤務する学校の種類(小・中学校、高校)や、当日のカウンセリング予約の数、イレギュラーとして発生する対応などにより、残業となる場合もあります。
スクールカウンセラーと関連した職業
スクールカウンセラーと関連(類似)した職業のひとつとして「児童相談所相談員」があります。
スクールカウンセラーは学校に席をおき、児童・生徒の悩みに対して相談業務を担当しますが、児童相談所相談員は少し毛色が違います。
児童相談所相談員は、非行や家庭問題などスクールカウンセラーと同様の相談も受け持つものの、自宅訪問や家庭環境の調査、医師や看護師などの専門家と連携を図ることが特徴です。
また、児童相談所相談員は地方公務員に該当するため公務員試験に合格する必要があり、就職するための条件として「臨床心理士」の資格を掲げる自治体もあります。
スクールカウンセラーが担当する相談業務は強制力をともないませんが、児童相談所は「児童福祉法」や「児童虐待防止法」などにより、子どもの一時保護を行うことも可能とされています。