裁判所事務官と裁判所書記官の違い

裁判所事務官と裁判所書記官の仕事内容の違い

裁判所事務官は、裁判部門では基本的に「裁判所書記官」の指揮のもとで業務をおこなっていきます。

名前が似ている両者ですが、はっきりとした立場の違いがあると考えておきましょう。

裁判所書記官は「法律の専門家」として法廷に立会い調書を作成するほか、法令や判例を調査するなどの役割も担っています。

それ以外にも、訴訟費用の確定や支払督促など、裁判所事務官にはない固有の権限を与えられています。

つまり、裁判所書記官は裁判所事務官に比べてより高度で専門的な仕事に携わる職業であり、それだけ責任も重大な仕事です。

そんな裁判所書記官をサポートすることも、裁判所事務官に求められる大切な役割の一つとなっています。

裁判所事務官と裁判所書記官のなる方法・資格の違い

裁判所事務官になるためには、裁判所が独自に実施する「裁判所職員採用試験」に合格することが必要です。

採用試験は平成24年度より、これまでの「裁判所事務官採用Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ種」という区分がなくなり、現在では「総合職試験」と「一般職試験」の大きく2つの区分となりました。

さらに、総合職試験は「院卒者試験」と「大卒程度試験」、一般職試験は「大卒程度試験」と「高卒者試験」に採用区分が分かれています。

それぞれの区分によって受験に必要になる学歴には違いがありますが、「法学を専攻していること」などの条件や必須の資格などはありません。

一方、裁判所書記官になるためには、裁判所事務官として一定期間の勤務経験を積む必要があります。

裁判所事務官として数年間の勤務経験を積んだ後に「裁判所職員研修所入所試験」に合格し、合格後1~2年間の研修を受けることで裁判所書記官になることができます。

実際には、「最終的には裁判所書記官になりたい」という理由で裁判所事務官を目指す人も多いようです。

裁判所事務官と裁判所書記官の資格・必要なスキルの違い

前述のとおり、裁判所事務官は裁判所職員採用試験に合格することで就ける仕事であり、卒業学部の条件や必要な資格などはありません。

裁判所書記官に関しても、必要になるのは裁判所事務官としての勤務経験であるため、こちらも必須の資格などは設定されていません。

また、それぞれの仕事で求められるスキルについては、裁判所事務官と裁判所書記官の仕事内容の違いを知ることで見えてくる部分です。

裁判所書記官は裁判所事務官と比べ、裁判所内の書記官室と法廷での仕事が中心となります。

裁判官とともに裁判運営そのものに携わる場面も多く、事前に裁判の論点を整理しておくことや進行の細かい予定を立てておくことなど、「先を見据えた計画性」がとくに求められるといえるでしょう。

そして、裁判所書記官が滞りなく仕事が進められるようアシストしていくことが、裁判所事務官の大切な役割の一つとなっています。

このような「サポート力」に加えて、裁判所事務官の仕事は当事者対応も多いことから「コミュニケーション能力」も必要になる職業です。

裁判所事務官と裁判所書記官の学校・学費の違い

裁判所事務官の総合職を目指す場合、一般職に比べて試験の難易度も高くなるため、総合的に力をのばせる4年制大学や大学院に進学してから試験に臨む人が多いようです。

学部学科の専攻に条件はありませんが、採用試験時の法律科目に対応しやすいことから法学部の出身者が多くなっています。

裁判所事務官の一般職であれば、短大や専門学校のほか、高校卒業後に独学で合格を目指す人もいるでしょう。

一方、裁判所書記官になるためには、裁判所事務官として勤務経験を積んだ後に所定の試験に合格し、「裁判所職員総合研修所」で研修を受ける必要があります。

裁判所職員総合研修所は埼玉県の和光市にあり、2004年に裁判所書記官研修所と家庭裁判所調査官研修所が統合された施設です。

なお、この場所のすぐ近くには、司法試験合格者が司法修習を行う「司法研修所」も設置されています。

裁判所事務官と裁判所書記官の給料・待遇の違い

裁判所書記官は裁判所事務官のキャリアアップとしての職業であるため、両者を比較した場合は、裁判所書記官のほうが月給に調整額が加算されるなど高待遇です。

裁判所事務官の給料については、「裁判所ウェブサイト」のなかで裁判所職員の初任給が公開されていますので、そちらが参考になります。

裁判所ウェブサイトでは、総合職(院卒者区分)が253,800円、総合職(大卒程度区分)が222,240円、一般職(大卒程度区分)が216,840円、一般職(高卒者区分)が178,320円と記載されています。

参考:裁判所ウェブサイト

これ以外にも「期末・勤勉手当」なども支給されるため、裁判所事務官の初年度の年収は、おおよそ270万〜390万円程度と予測できるでしょう。

もちろん、この年収は勤務年数とともに徐々に上がっていきます。

裁判所事務官と裁判所書記官はどっちがおすすめ?

すでにご説明のとおり、裁判所書記官になるためには、まずは裁判所事務官として数年間の勤務経験を積まなければいけません。

そのため、裁判所事務官として働くなかで「より裁判の中核部分に携わりたい」「もっと年収を上げていきたい」考える場合には、裁判所書記官へのキャリアアップを目標にするとよいでしょう。

待遇の向上が望める分、仕事の責任もさらに重くなりますが、裁判所事務官では扱えない仕事をおこなえるようになり、やりがいも感じられるでしょう。

実際に裁判所事務官で働く人のなかで裁判所書記官を目指している人は多く、裁判所書記官になることは、裁判所事務官にとって代表的なキャリアアップ一つです。