作業療法士養成学校はどんな勉強をする? 実習は大変?
作業療法士養成学校はどんな勉強をする?
作業療法士の養成校には大学・短大・専門学校の3種類があり、また学習期間も3年制と4年制の2種類があります。
学校によって個々に特色があり、また学習スケジュールも異なります。
しかし、作業療法士資格を主管する厚生労働省によって必要単元数などの指針が定められているため、カリキュラムはある程度共通しています。
1年目の授業内容
養成校に入学した1年目については、生理学や解剖学、運動学、臨床心理学といった、医療職に必要となる基礎的な医学知識を学びます。
この時点では、看護師や臨床検査技師、理学療法士など、ほかの国家資格取得を目指す学生と合同で授業が行われることも少なくありません。
また、大学や4年制専門学校では、比較的スケジュールにゆとりがあるため、医学科目と併せて、社会人としての広い知識を身につけるための一般教養科目も学びます。
2年目以降の授業内容
2年目以降は、リハビリテーション医学や作業療法評価学、発達障害治療学など、授業内容は徐々に応用的な内容になります。
1年目において基礎がしっかり固まっていないと、授業についていくことは難しいでしょう。
合同授業が減ると同時に、少人数制でのグループ学習が増え、ディスカッションなどを交えながら、専門知識を深めます。
専門学校では、現場で即戦力となれる人材を育成するために、現役の作業療法士による実技指導が行われることもあります。
最終年次の授業内容
最終年次に入ると、授業は現場で働くことを見据えた実践的な内容が大半を占めます。
また、大学では講義と並行して研究室のゼミなどに所属し、個々に専門領域の知識を深めるとともに、卒業論文の制作に取り組みます。
一方、専門学校では国家試験対策を意識した授業が非常に多くなり、過去問演習や模擬試験などを行って、試験突破に必要な学力を養います。
学校によっては、国家試験の受験資格を与えるかどうかを判定する「卒業試験」が行われることもあるようです。
作業療法士養成学校の実習
実習の段階
作業療法士養成学校では、上述した座学に加えて、学んだ知識を現場で発揮するための実習も必ずカリキュラムに組み込まれています。
実習は、学校によって多少の違いはあるものの、学習進捗状況に応じて、複数回に分けて段階的に実施されます。
3年制の学校を例に取ると、1年目は1週間ほどの「見学実習」が、2年目は3週間ほどの「評価実習」がそれぞれ行われ、3年目には集大成として2ヵ月ほどの「臨床実習」が行われるケースが一般的です。
実習は、働くために必要となる実践的な知識を学べるうえ、現場の雰囲気を知ることもできる貴重な機会ですが、実習の後にはレポート提出が求められるなど、学生にとってはハードな期間となります。
臨床実習の内容
最終年次に行われる臨床実習は、質・量ともに非常に厳しいことで知られており、作業療法士になるにあたって、国家試験と双璧をなす難関といえます。
臨床実習においては、それぞれの生徒が実際の患者を担当し、障がいなどを診断したうえで、個々の病状にあった訓練プログラムを組み、リハビリを実施して、それに対する評価を行います。
それらは「スーパーバイザー」と呼ばれる現役作業療法士の指導の下で行われるとはいえ、業務内容自体は実際に働く場合となんら変わりありません。
さらに、そうした実務作業を終えた後には、きちんと患者が抱える問題を発見できたか、プログラム内容は適切だったか、修正点はどこかなど、スーパーバイザーからさまざまな課題が出されます。
実習期間中は、こうしたレポート作成や翌日の準備のために、連日1時間~2時間ほどの睡眠しか取れないというケースも少なくないようです。
臨床実習を乗り切るためのポイント
臨床実習は、日中は実務で体力を消耗するうえ、夜間もレポート作成などに追われ、おまけに患者を担当しなければならないという強いプレッシャーもあり、肉体的にも精神的にも疲弊しがちです。
そんな厳しい臨床実習を乗り切るために、おさえておくべきポイントがいくつかあります。
患者と積極的にコミュニケーションを図る
実際の患者を前にして実習生がリハビリを行うと、不慣れなせいもあって、正しい手順で進めなくてはならない、スムーズに作業を行わなければならないなど、技術的な面に気を取られがちです。
その結果、会話などがおろそかになり、患者の意向を無視したひとりよがりな訓練になってしまうケースも見受けられます。
しかし、患者の気持ちに構わず自分本位で訓練を進めても、リハビリに大きな効果は期待できませんし、またスーパーバイザーからも評価されません。
患者の話に耳を傾け、またときに自分の話などもしながら、リラックスしてリハビリに取り組んでもらえる雰囲気づくりを心掛けることが大切です。
スーパーバイザーとの人間関係に気を配る
次に気を付けたいのが、スーパーバイザーとの人間関係です。
スーパーバイザーは、実習生を指導する立場にありますが、あくまで現役の作業療法士であり、養成校の教師と同じように考えてはいけません。
作業療法士の先輩・後輩として、礼儀正しい態度や言葉遣いに気をつけながら、教えてもらっているという立場を意識して、謙虚な振る舞いを心掛けましょう。
なお、リハビリ職には体育会系の人も多く、かつては非常に厳格な上下関係のもと、実習生に対してパワハラに近い言動を取るスーパーバイザーもいたようです。
しかし、2013年に自殺する実習生が出たことを契機として、こうした指導のあり方が問題視されるようになり、現在では学校側と施設側で実習体制の確認が行われるようになっています。
2020年入学の学生からは、実習の受け入れ先に対して、スーパーバイザーの研修が義務化されることも予定されており、実習環境は徐々に改善されていく見通しです。
問題があれば学校側に相談する
実習制度の見直しが進められているとはいえ、まだまだスーパーバイザーによって指導方法にばらつきがあるのが実情です。
パワハラやモラハラはなくとも、出される課題の量が非常に多かったり、学校で習ってきたこととは異なる治療法を指導されるケースもあるようです。
実習生側に非がある場合もありますが、問題を抱えたままムリをして実習を続けても、自身にも学校側にも施設側にも不利益しかありません。
途中でリタイアしてしまう危険性が高まりますし、また無事に実習を終えられたとしても、作業療法士としてやっていく意欲を失くしてしまうかもしれません。
何かトラブルが生じた場合は、一人で抱えこまず、早めに学校側に相談してみることが大切です。