マンション管理士試験の難易度・合格率
主に不動産管理会社で活躍したいと考える人、不動産関連業での独立・開業を考える人が、マンション管理士資格の取得を目指しています。
この記事では、マンション管理士資格を得るためのマンション管理士試験の難易度・合格率、合格までに必要な勉強時間、勉強方法の種類などについて詳しく解説しています。
・マンション管理士試験の合格率は7~9%、40代・50代の受験者が多い
・7割程度の得点率が必要(合格基準点は試験ごとに異なる)
・合格までに必要な勉強時間目安は500~600時間程度、独学だと約1000時間かかる場合も
マンション管理士資格とは
マンション管理士とはどんな資格?
マンション管理士は、2001年施行の「マンション管理適正化法」によって定められた国家資格です。
この資格を取って活躍するには、年に1回実施される「マンション管理士試験」に合格したのち、マンション管理士として登録することが必要です。
マンション管理士の資格を持つ人は、マンション管理に関する複雑かつ専門的な知識を持ち、マンションを適切に運営するためのアドバイスやコンサルティング業務などに携わることができます。
不動産業に関連する専門的な資格取得を目指している人、不動産管理会社に勤務しさらなるステップアップを目指す人などが、積極的にこの資格を取得しています。
40~50代の受験者層が厚く、「管理業務主任者」「一級建築士」「行政書士」「弁護士」などとのダブルライセンス、トリプルライセンスで活躍したいと考える人も多いことが特徴です。
なお、管理業務主任者とマンション管理士の出題範囲はほぼ同じであり、どちらかの試験に合格していれば、もう一方の試験が5問免除されます。
ダブルライセンスを目指す場合、まず難易度が低めの管理業務主任者から挑戦し、その合格後に、マンション管理士試験を免除を適用して受験するのもよいでしょう。
マンション管理士資格取得のメリットは?
マンション管理士は名称独占資格であり、「マンション管理士」と名乗って仕事ができるのは、この資格を取得した人のみとなっています。
このような優位性が保たれていることは、マンション管理士を取得するメリットの一つです。
また、マンション管理士資格はとくに不動産管理会社での需要があり、すでに資格を持っている人は良い条件で採用されることが多いです。
日本では多数のマンションが存在し、今後は老朽化による修繕や建て替え、リノベーションなどのニーズが増すと考えられています。
マンション管理組合が解決しなくてはならない問題が多様化するなか、今後もマンション管理士には安定したニーズが見込めます。
また、資格を取得して独立・開業を目指すことも可能です。
その際には、マンション管理士の仕事を有利にするようなプラスアルファの知識・ノウハウ・スキル(例:法律関係、建築関係、機械設備(ボイラーなど)、対人交渉など)を身につけることで、厳しい競争の中でも優位に仕事を進めやすくなるでしょう。
マンション管理士試験の出題内容・形式
マンション管理士試験の出題科目は、4つに分かれています。
- マンションの管理に関する法令及び実務に関すること(法令)
- 管理組合の運営の円滑化に関すること(会計・管理実務)
- マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること(設備系)
- マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること(マンション管理適正化法)
試験形式
試験形式は「4肢択一のマークシート方式」で、試験時間は2時間、出題数は50問です。
なお、マンション管理士試験の合格基準は定められていませんが、全50問中、7割程度の得点率が必要といわれています。
なお、この試験は相対評価の試験であり「合格最低点」は毎年異なります。
過去の試験をみると、実際には34~38点が合格最低点になることが多いです。
上記点数を超えるように、できるだけ高得点を目指して勉強を進めることが、確実に合格に近づくための大事なポイントです。
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マンション管理士試験の受験資格は?
マンション管理士の試験には、受験資格が設けられていません。
したがって、年齢・学齢・実務経験などは問わず、どのような人でもチャレンジすることが可能です。
ただ、マンション管理士試験はマンションの管理・運営に関連する専門的な法律的な知識を要求されるものであり、簡単に合格できるわけではありません。
例年の試験の受験者は40代・50代が半数以上を占めており、合格者の平均年齢は46~48歳程度となっています。
20代や30代の受験者もいますが、十分に社会人経験・人生経験を積んだ人が多く受験する試験であることが特徴です。
マンション管理士試験の難易度は高い?
マンション管理士試験の合格率は7~9%
ここ最近のマンション管理士試験の合格率は、7~9%台を推移しています。
令和3年までの過去7年の試験を振り返ると、最も合格率が高かったのは令和3年試験の9.9%、最も合格率が低かったのは平成30年度試験の7.9%でした。
他の資格と合格率を比較してみましょう。
同じ不動産に関連する資格である「管理業務主任者」は20~23%程度、また「宅建(宅地建物取引士)」は15~17%程度です。
これらと比較し、マンション管理士試験は合格率がだいぶ低く、難易度も高めといわれています。
一方、難関国家資格に位置づけられている「司法書士」の合格率は3~4%、また「社会保険労務士」は2~6%となっており、これらに比べればマンション管理士試験の合格率は高い試験です。
マンション管理士試験の合格率が低い理由は?
マンション管理士試験は、なぜ合格率が低く、難しい試験といわれるのでしょうか。
その大きな要因としてあげられるのが、試験に出される「区分所有法(正式名称「建物の区分所有等に関する法律」」が、難解な法律であることです。
「区分所有法)」は、マンションにおける一棟多世帯の利害関係や権利関係を調整することを主な目的としています。
そもそもマンションには、専有部分・共用部分・敷地利用権という複雑な権利関係があります。
さらに管理組合の運営や、災害等でマンションを復旧する場合の取り決め、さらには建て替えや外壁の張替えのような大規模修繕に関する取り決めも必要とされます。
これらを決めている大元が区分所有法です。
区分所有法は「民法」と相まって非常に難しい内容となっており、これがマンション管理士試験を難しくしている最大の要因です。
このほかの出題内容も、建築の構造に関する知識など専門色の強い内容が中心となっていることも、試験の難易度を上げている要因といえます。
他の資格と比べて合格率はかなり「リアル」
マンション管理士はそれほどメジャーな資格ではありませんが、受験生の大半は「この資格がほしい」と思ってストイックに受験しているようです。
この資格がなくてもマンション管理士の仕事に従事することは可能ですが、資格を取ることでさらに業務の幅を広げたり、資格試験の勉強をすることで知識を深めたりしようと考える人が多くいます。
「宅建」などの他のメジャーな資格のように、会社に強制されてしぶしぶ受験する、なんとなく挑戦してみる、といった受験生はあまり多くないようです。
つまり、計算上の合格率(合格者数を受験者数で割ったもの)と実際の合格率(合格者数を本気モードの受験生で割ったもの)の差が少ないと考えられます。
毎年の合格率はかなり「リアル」だと考えて勉強に取り組んでいく必要があるでしょう。
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マンション管理士試験の勉強時間・勉強方法
マンション管理士試験の勉強方法の種類
予備校・スクールに通う
マンション管理士試験合格を目指すスタンダードな勉強方法が、資格の予備校・スクールに通うことです。
通学できる校舎を持つ大手予備校・スクールとして有名なものに「TAC」や「LEC東京リーガルマインド」があります。
各スクールとも「初学者コース」「上級者向けコース」など、レベルに応じた複数の講座が用意されていることが多く、自身の希望に合わせた講座を選択することができます。
学習ペースを維持しながら計画的に学んでいけることは、通学する最大のメリットといえるでしょう。
わからないことが出てきたときに、すぐに講師に質問をしやすいことも通学の魅力です。
費用は10万円前後のものが多く、通信講座に比べるとやや割高です。
なお、マンション管理士講座は「管理業務主任者」講座とセットになっていることも多いため、ダブル合格を目指したいのかどうかをよく考えておき、その点にも留意して選ぶとよいでしょう。
通信講座を受ける
通学するのが難しい場合には、マンション管理士試験に向けた通信講座を受講する方法を考えてもよいでしょう。
「TAC」や「LEC」など通学講座でも有名な大手の通信講座のほか、「ユーキャン」「アガルート」「スタディング「フォーサイト」など、多種多様な会社の講座があります。
通信講座では、通学するよりも費用を抑えて学ぶことができ、受講費は4~6万円程度が相場です。
スキマ時間にスマホを活用して学べる講座、不合格の場合の全額返金制度を設けている講座など、特徴はさまざまです。
講義スタイルやテキストの種類と内容、合格実績、サポート体制などもよく調べて、自分に合う講座を選択しましょう。
独学
上記のほか、市販のテキストを使って独学する方法もあります。
マンション管理士は簡単な試験ではありませんが、すでに不動産関連の知識を持っている人、十分な勉強時間が確保できる人などは、独学でもさほど苦労せず勉強を進められる可能性が高いでしょう。
ただし、独学の場合、予備校・スクールに通ったり通信講座を受けたりする方法とは違い、自分自身で良いと思うテキストを選んだり、試験の情報を集めたり、勉強計画を細かく立てていったりする手間があります。
試験当日までモチベーションを保って継続的に勉強を続ける意思も求められます。
マンション管理士試験の勉強時間は約500~600時間・勉強期間は半年
マンション管理士試験合格までに必要な勉強時間の目安は、スクール・予備校や通信講座を使った場合の平均が500~600時間程度といわれています。
1日に平均3時間勉強するとして、約半年ほどの期間が必要です。
ただし、初めて勉強する内容が多かったり、完全に独学で進めていく場合には800~1000時間程度、1年ほどの勉強期間が必要になると考えておいた方がよいでしょう。
専門的な内容が多く出題されるため、余裕を持って試験勉強を進めていくことをおすすめします。
マンション管理士試験合格は独学で可能?
マンション管理士試験は、独学で合格を目指すことも可能です。
独学の場合、一般の書店で売られている参考書・問題集のなかから、自分が使いやすいと思うものを選んで勉強を進めていくスタイルが一般的です。
すでに「管理業務主任者」や「宅建(宅地建物取引士)」の資格を取っている人なら、試験範囲の内容理解もある程度は進んでいるため、より独学しやすいと考えられます。
しかしながら、完全な初学者の場合には、やや苦労するかもしれません。
というのも、マンション管理士試験で出題される法令や建築などの用語の多くが、日常生活では聞き馴染みのないものだからです。
独学に挑戦してはみたものの、難し過ぎて途中で挫折した人も少なからずいるようです。
あまり自信がない人はスクールや通信講座を活用することを考えてみてもよいでしょう。
なお、独学で進める場合にも、試験本番の雰囲気に慣れ、時間配分がきちんとできるようになるために模擬試験を受けておくことは効果的です。
教材選びが何より大事
それでは、どうすれば独学での合格の道がひらけるのでしょうか。
さまざまな方法が考えられますが、最も大事なのは「教材選び」であるといえます。
先にも挙げた通り、マンション管理士は一般の人にはなじみが薄くて難解な法律が出題率のほとんどを占めています。
私たちの生活と密接に関連する民法と合わせても、全問の30%にもおよびます。
また、建築の構造等の知識も必要になるのですが、これは広くて深い分野ですので、マンション管理士の合格に必要な知識の範囲を見極めるのは非常に困難だといえます。
そのため、テキストや過去問を選ぶ際には、「わかりやすさ」「見やすさ」「範囲の的確さ」をしっかりと確認しておきましょう。
確認の方法については、インターネット上の書評を参考に、本屋で実際に手に取ってじっくり数ページ読んでみることです。
自分がその書籍を実際に使う気になってしっかり読み、よりフィーリングの合うものを選ぶようにしましょう。
スケジュール管理を徹底しないと難しい
独学での試験学習のゆくえを左右するもう一つの大事な要素は、スケジュール管理です。
スクールや通信講座では、講義時間や提出期限といったもので強制されますが、独学では自分で自分を管理しなければなりません。
方法はいろいろありますが、月単位のスケジュール→週単位のスケジュール→日単位のスケジュールといった形で落とし込んでいくと計画しやすいです。
ただ、あまりに詰め込んだスケジュールにしてしまうと修正することが難しくなってくるため、余裕を持ったスケジュールにしておきましょう。
また、学習の進捗に合わせて見直しを行いながら、調整するとよいでしょう。
他の不動産資格の知識があるか
独学でマンション管理士に合格できるかどうかは、すでに別の不動産に関する知識を持っているかによっても変わってくるようです。
たとえばマンション管理士の受験生は、その7~8割程度が「宅地建物取引主任者」や「管理業務主任者」の取得者であるといわれています。
これらの不動産系資格の内容はマンション管理士とも関連する部分があるため、まったくゼロから勉強する人よりはスムーズに勉強が進められるでしょう。
令和6年度 マンション管理士試験の概要
試験日 | 令和6年11月24日(日) |
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申込受付 | 【郵送申込】令和6年8月1日~令和6年8月30日 【Web申込】 令和6年8月1日10:00~令和6年9月30日16:00 |
試験地 | 札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市、那覇市並びにこれらの周辺地域 |
受験資格 | 年齢、学歴等に関係なく、どなたでも受験できます |
試験内容 | ・マンション管理の適正化に関する法律施行規則第2条による。 ①マンションの管理に関する法令及び実務に関すること ②管理組合の運営の円滑化に関すること ③マンションの建物及び附属施設の構造及び設備に関すること ④マンションの管理の適正化の推進に関する法律に関すること |
合格発表 | 令和7年1月7日(火) |
合格率 | 10.1%(令和5年) |
受験料 | 9,400円 |
詳細情報 | 公益財団法人 マンション管理センター |
マンション管理士試験の難易度まとめ
マンション管理士試験は、「司法試験」など一部の超難関国家資格に比べれば難易度は低めですが、それでも毎回の合格率は10%を切ることが多いです。
マンション管理に関連する専門的で難解な問題が多数出題されるため、きちんと計画を立てて勉強時間を確保し、試験範囲全体を網羅して勉強を進めていくことが必要です。
初学者の場合にはできるだけ効率的に勉強を進めるために、予備校・スクールに通うか、通信講座を受講する方法を考えてみるのもよいでしょう。