マンション管理士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「マンション管理士」とは

マンション管理士の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

マンションの維持・管理に関する専門家として、マンション管理組合のサポートを行う。

マンション管理士とは、マンションの管理に関する専門知識を有し、マンション管理に関連する業務を専門的に手掛ける人のことです。

具体的には、マンション管理組合の運営や大規模修繕等といったマンションの維持・管理に関連する内容に関し、助言や指導等のコンサルティング業務を担当します。

マンション管理士は「マンション管理適正化法」による国家資格で、国家試験合格率は10%を切るほど難易度は高めです。

試験を受けるうえで特別な学歴や実務経験は求められませんが、十分な時間をとって勉強しなければ合格は難しいでしょう。

マンション管理士は、マンションがある限り必要とされる仕事です。

不動産に関連するプラスアルファの知識やスキル、ノウハウを身につけておけば、景気や需要に変動があっても長く活躍しやすいでしょう。

「マンション管理士」の仕事紹介

マンション管理士の仕事内容

マンション運営の専門コンサルタントとして活躍

マンション管理士は、2001年施行の「マンション管理適正化法」によって作られた国家資格制度です。

世の中の多くのマンションは、通常、一般住民によって構成される「管理組合」によって、管理やトラブル対応がなされています。

管理組合の担う業務内容は幅広く、管理費や修繕積立金の収支報告、予算の作成、総会や理事会の運営、大規模修繕計画の策定、住民同士のトラブル解決など多岐にわたります。

そこには専門的な法律の知識が求められる業務も含まれ、専門家でなければ対応が難しい問題も出てくるものです。

そこで、マンション管理士がアドバイスやコンサルティングを行い、マンションを適切に運営する手助けを行っています。

マンション管理士の役割

マンション管理士は、法律知識や建物の構造、設備に関する知識を有したプロフェッショナルであり、マンションに常駐するいわゆる「マンションの管理人」とはまったく異なります。

住民同士のトラブルが発生した際にも、マンション管理士は専門家かつ中立的な立場でアドバイスを行っていきます。

法律や権利関係が複雑に絡むマンション管理・運営のさまざまな問題を解決に導くために、マンション管理士が果たす役割は非常に大きなものとなっています。

マンション管理組合にとっては、マンション管理士は心強い存在となっています。

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マンション管理士になるには

国家試験に合格し、資格を得ることが必要

マンション管理士は国家資格です。

そのため、この職業に就くには、国土交通大臣の指定機関が主宰する「マンション管理士試験」に合格したのち、マンション管理士として登録しなければなりません。

なお、資格を有していなくても管理組合などに対してマンション運営に関する助言・コンサルティング業務を手掛けることは可能ですが、「マンション管理士」と名乗ることはできません。

これはマンション管理士が「名称独占資格」と呼ばれる資格だからです。

資格は学歴不問で取得可能だが、就職を見据えて進路決定を

マンション管理士試験では、学歴・年齢・国籍などは一切問われません。

そのため、特別な学校に通わずともマンション管理士を目指すことが可能です。

簡単にいえば中卒の人でもマンション管理士にはなれる可能性がありますが、実際の就職を考えると、ある程度の学歴があるほうが有利になるでしょう。

マンション管理士の多くがマンション管理会社へ就職しており、とくに新卒者の場合、大手企業では大卒でなければ応募できないこともあるからです。

また、マンション管理士はお客さまから依頼を受け、マンション維持・管理に関するコンサルティング業務を手掛けるため、専門家として幅広い知見や基礎学力が必要な場面も出てきます。

学生時代にしっかりと勉強しておくに越したことはないでしょう。

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マンション管理士の学校・学費

誰でも受験できるが、合格には相当の努力を要する

マンション管理士試験に受験資格はなく、誰でも受験することができます。

ただし、試験で問われる内容は、区分所有法をはじめとしたマンションに関する法律をはじめ、民法や建築基準法など広範囲におよびます。

合格のためには、人による差はあるものの平均500時間~600時間の勉強が必要といわれています。

同じ不動産関係の代表的資格である「宅地建物取引士」より難関といわれることもあるため、資格の専門学校・スクールに通って対策をする人も少なくありません。

なかには大学とのダブルスクールで、マンション管理士の他にも不動産関連の資格取得を目指し、より有利に業界への就職を目指していく人もいます。

マンション管理士の資格・試験の難易度

合格率は10%以下の国家資格

マンション管理士は国家資格であり、国家試験の合格率は毎年10%を切る難関です。

不動産やマンションに関連する専門的な法律の知識が要求されるため、素人が試しに受けて合格できるといった類の試験ではありません。

スクールに通う場合、合格レベルに達する平均学習時間は600時間程度とされていますが、独学だとさらに時間が必要と考えておいたほうがよいでしょう。

テキストや過去問題集などの教材選びも慎重に行い、きちんと試験内容を網羅していて、学習しやすいものを選択したいものです。

不動産系のダブルライセンスを目指す人もいる

マンション管理士試験を受ける人の7~8割程度は、別の不動産系国家資格である「宅地建物取引士」や「管理業務主任者」の取得者であるといわれています。

これらの資格の学習経験や実務経験があれば、よりスムーズにマンション管理士の学習内容を理解しやすいでしょう。

また、関連資格とダブルラインセンスを取得することで、不動産に関連するお客さまの多様なニーズに応えられるようになります。

関連記事マンション管理士試験の難易度・合格率

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マンション管理士の給料・年収

他の保有資格や専門知識、スキルによっては高収入も

マンション管理士の平均年収は400万円前後とされ、一般的な会社員と大きな差はありません。

ただしこの数字は、あくまでマンション管理士の資格だけに基づいたものです。

マンション管理に付随した資格、たとえば「電気工事士」や「ボイラー技士」、あるいは「宅地建物取引士」「建築士」「行政書士」の国家資格もあわせもっていると、担当できる仕事の幅が広がり、給料もプラスアルファが期待できます。

実際、マンション管理士はその資格だけで成り立つような仕事ではなく、マンション管理や不動産業界における、ひとつの「専門知識・スキル」を証明できるものと考えられています。

さらなる収入を求めるなら、多様な資格取得、知識の習得を目指していくことが必要になるでしょう。

独立・開業した場合の収入は?

マンション管理士は、十分な経験を積んだ場合には独立・開業することも可能です。

その場合も、マンション管理士としてだけでなく、行政書士事務所や宅地建物取引業、建築設計事務所、ファイナンシャルプランナー事務所などを立ち上げ、事業・サービスのひとつとしてマンション管理に関するコンサルティングも行うケースが多くなっています。

事業が軌道にのれば雇われている人以上の収入も手にできる可能性がありますが、簡単な道のりではありません。

とくにマンション管理士は比較的新しい国家資格であり、自ら市場を開拓していく姿勢も必要といえるでしょう。

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マンション管理士の現状と将来性・今後の見通し

需要はあるが、差別化のためにプラスアルファの知識も

現代の日本では、都市部を中心にマンションの居住者数が増加し続けています。

マンション管理に付随する業務は、老朽化が進むほど加速度的に増え、設備の維持管理や大規模修繕の実施、建替の検討など、管理組合にかかる負担もどんどん大きくなります。

管理組合の運営自体が危ぶまれているマンションも少なくない状況を勘案すれば、今後は、ますますマンション管理のコンサルティングを担うマンション管理士の必要性は高まってくるでしょう。

ただし、マンション管理士には、資格保有者しか行えない「独占業務」がありません。

マンション管理士以外でも同様の業務を手掛けることができる点は、この資格のひとつの弱みとして認識しておく必要があるでしょう。

より差別化を図り、長く生き残っていくための強みを持ちたいのなら、マンション管理士だけで満足せず、関連する知識やスキルの幅を広げていくことが非常に重要になってきます。

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マンション管理士の就職先・活躍の場

マンション管理を取り扱う企業を中心に活躍

マンション管理士の就職先として一般的なのは、マンション管理業務を専門的に手掛ける「マンション管理会社」です。

また、マンションの設計・施工から販売、管理を一括して手掛ける大手の「マンション販売業者」でもマンション管理士が活躍している場合があります。

一方、こじんまりとした不動産屋でも、マンション管理を手掛けることはあります。

マンション管理士は、資格難易度の高さから業界内では評価が高めで、十分な知識・経験をもつ人はとくに歓迎されます。

ただし、マンション管理士しか手掛けられない業務は存在しないため、あわせて「宅地建物取引士」や「管理業務主任者」などの資格も取得し、多方面で活躍している人が目立ちます。

マンション管理士の1日

現場に出ている時間が長め

マンション管理士は、社内や事務所でデスクワークしていることもありますが、どちらかといえばお客さまとなる担当マンションに訪問するなど、外出の多い職業です。

管理組合に所属している人たちを中心に、マンション住民と話し合うなど、コミュニケーションの機会も多めです。

ここでは、マンション管理会社で働くマンション管理士のある1日を紹介します。

9:00 出社・チームで打ち合わせ
10:30 管理組合の総会に出席
12:30 休憩
13:30 管理組合との会議
15:00 いったん会社に戻り、上司に業務報告
16:30 再び外出・お客さま先で住民にヒアリング
18:30 帰社・資料整理
19:00 退社

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マンション管理士のやりがい、楽しさ

マンションの専門家として、人の暮らしをサポートできる

マンション管理士は、マンションに関連する法律などの専門的な知識をもって、マンションの適切な管理・運営方法の助言、マンション内でのトラブル解決、費用の削減の提案など、さまざまな業務を手掛けます。

マンション管理士が力を発揮することで、そこで暮らす人々の生活がより快適に、安心なものになることは、マンション管理士にとっての大きなやりがいです。

業務を通して必然的にマンションの住民との距離も近くなり、感謝の言葉を直接かけられることもあります。

また、ときにはマンション購入を考える住民に対して助言を行うなど、人の人生に寄り添う機会にも恵まれます。

「住まい」という、人間に不可欠な分野に関する専門家として活躍できることに、やりがいを感じている人は多いです。

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マンション管理士のつらいこと、大変なこと

関係者の数が多く、調整作業に難航することも

マンションの区分所有者(住民)は、建物の規模にもよりますが、多い場合は100人を超えることも珍しくなく、それぞれが異なった意見を持っているケースが大半です。

マンションに関する協議事項は自分の資産、居住環境に直結する重要問題ですから、住民同士で互いの意見が衝突し、足並みが揃わない事態もしばしば起こります。

そうしたときに、マンション管理士は第三者かつ専門家の立場から、適切なアドバイスをして事態を収拾しなくてはなりません。

ただ、人の間に立つのは簡単なことではなく、住民同士が引かずに調整作業に苦しむこともあります。

ときに理不尽に思える要求にも解決策を提示しなくてはならないため、忍耐力や人間性も求められます。

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マンション管理士に向いている人・適性

交渉事が得意で、根気強さもある人

マンション管理士の仕事は、基本的には裏方としての内容が中心です。

デスクワークや交渉事など、地味で骨が折れる業務をコツコツと続けられるかどうかが非常に大事になってきます。

トラブルが発生した際の住民同士の仲裁に入る場合にも、解決策を見出すためには、交渉力とコミュニケーション力は不可欠です。

粘り強く双方の意見に耳を傾け、時間をかけて妥協点を話し合う根気が問われることになります。

「コンサルティング業」というと華やかなイメージが抱かれがちですが、関連する法律や規約を細かく確認しながら、地道に答えを見つけ出していく必要があります。

人の間に立って問題解決をするのが得意な人、トラブルにもあまり同様せず冷静沈着に対応できるタイプの人は、マンション管理士の適性があるといえるでしょう。

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マンション管理士志望動機・目指すきっかけ

さまざまな業界からの転職者が多い

マンションに住んでいる人にとって、マンション管理士は比較的身近な存在です。

「住環境が改善された」「ご近所トラブルを解決してくれた」という経験から不動産管理に憧れ、マンション管理士を志望する人もいるようです。

また、この職業は、他職種から転職してくる人も比較的多くいます。

たとえばビル管理会社や設備点検会社、建設会社、あるいは不動産業者に勤めていた人が、より居住者に近い仕事を求めて、マンション管理士を目指すことが少なくありません。

マンション管理士が取り扱う業務範囲は広いため、とくに住宅や不動産関連の経験があれば、前職の経験を生かして活躍することもできるでしょう。

マンション管理士の雇用形態・働き方

マンション管理会社に勤務するか、独立するか

マンション管理士の多くは管理会社や不動産会社に正社員として勤めていますが、その全員が専業というわけではありません。

マンション管理業務以外の仕事、たとえば営業や経理、事務なども、並行して担当するケースもしばしばあります。

なかには独立して自分の事務所を経営する人もいますが、その場合もマンション管理士専業というわけではなく、「宅地建物取引士」「司法書士」「行政書士」などの他の資格をあわせ持ち、兼業で事業を展開しているケースが一般的です。

もしマンション管理士の仕事一本で独立するなら、コンサルティング能力に特化するなど、工夫が必要になるでしょう。

マンション管理士の勤務時間・休日・生活

休日の業務が多くなりがち

マンション管理士のお客さまとなるマンションの住人は、平日に仕事をしているケースが多いです。

そのため、会合や打ち合わせは必然的に土日祝日に開催されることが多くなり、マンション管理士も、土日祝日の出社を求められることはしばしばあります。

また、マンション設備の故障や修理対応、住民間のトラブルなどは、暦に関係なく24時間365日いつでも発生しうる可能性があります。

なかなか規則的に休めない場合もありますが、不動産業界では水曜日など週の真ん中に休日を設けることが通例で、きちんと休みも確保されています。

また、各職場で交代しながら働ける体制を整えているため、働きづめになるわけではありません。

マンション管理士の求人・就職状況・需要

マンション自体の増加に伴い需要は増加傾向

マンション人気は根強く、都市部を中心に、多数のマンションが建てられています。

一方、過去に建てられたマンションは築年数の古いものから順に、修繕や設備更新などのタイミングが到来しています。

新築マンション、中古マンション共に、それらの適切な管理・運営のコンサルティングができるマンション管理士の需要は増加傾向にあり、管理会社は積極的にマンション管理士を求人しています。

現状では就職先を探すのもそこまで困難ではありませんが、地域によって求人量にはやや差が出るでしょう。

不動産に関連するプラスアルファの資格・スキルを備えておけば、さらに有利になります。

関連記事マンション管理士の求人・採用募集状況

マンション管理士の転職状況・未経験採用

転職市場は活況、未経験でも採用チャンスあり

マンション管理士は、2001年に資格制度が開始されてからの時間がそこまで経っていないことと、資格試験の難易度が高めであるなどから、資格登録者数はあまり多くありません。

マンション管理の専門家としてのニーズは高く、転職によって目指すこともまだまだ十分に可能です。

転職者は、もともと不動産会社や建設会社の設備部門の経験者など、マンション管理とも関連性のある仕事をしていた人が多めです。

ただし、マンション管理の仕事自体が未経験であっても、資格を取得すれば転職できるチャンスはあるでしょう。

加えて「行政書士」や「司法書士」の資格まで持っていれば、マンション管理士の活躍の場はかなり広がります。

関連記事マンション管理士への転職

マンション管理士は独立・開業できる?

独立・開業自体はさほど難しくないが、成功するのは大変

マンション管理士は、独立・開業を目指せる資格です。

比較的年齢が上がってからマンション管理士として独立・開業するケースも多く、社会人経験を十分に積んだ人が、この資格取得を目指すこともあるようです。

ただし、マンション管理士として独立後、成功できるとは限りません。

マンション管理士には独占業務や設置義務がないため、自分で積極的に営業活動をし、人脈を築き、多くの仕事を獲得できないと、事業を軌道に乗せるのは難しいでしょう。

資格を取得しさえすれば独立・開業は難しくありませんが、収入が安定せず、苦労している人もいるのが実情です。

より安定した働き方をするために、同じマンション管理系の資格である「管理業務主任者」や、不動産の知識を証明できる「宅地建物取引士」などのダブルライセンスを目指す人もいます。

マンション管理士と管理業務主任者の違い

管理組合側に立つか、管理会社に所属するか

「マンション管理士」と「管理業務主任者」は、どちらも不動産業に関連する国家資格です。

ただし、両者は置かれる立場や役割に違いがあります。

マンション管理士は、「管理組合」の側に立ち、建物の保全・管理・運営に関するアドバイスを行います。

一方、管理業務主任者は「管理会社」に所属し、管理業者の立場から、管理組合に指導や重要事項の説明、管理状況のチェックなどの業務を担います。

なお、管理会社には30の管理組合につき1人以上の管理業務主任者を設置することが義務付けられています。

一方、マンション管理士は設置義務がありません。

このように、マンション管理士と管理業務主任者は立場が異なりますが、資格試験で出題される分野・内容は重なる部分も多いです。

そのため、ダブルライセンスを取得する人もいます。