航空管制官になるには
航空管制官になるには
まずは航空管制官採用試験への合格を目指す
国家公務員である航空管制官になるには、いくつかのステップを踏まなければなりません。
最初のステップは、大学・短大・高等専門学校などを卒業後、人事院が実施する「航空管制官採用試験」を受けることです。
試験の最終合格者になると、「採用候補者名簿」に得点順に記載されます。名簿に載った中から採用されることにより、航空管制官が所属する国土交通省の職員になります。
なお、航空管制官採用試験は国家公務員のなかでも人気が高い試験です。
合格倍率は年度によってばらつきはありますが、2021年度は20.0倍となっています。
過去の試験結果を見ても、10倍を超える年度は決して珍しくはありません。
採用後は基礎研修を受け、空港や航空交通管制部に配属
航空管制官として採用されてもすぐに現場で働けるわけではありません。
新人の航空管制官は、関西国際空港の近くにある「航空保安大学校」で8か月の基礎研修を受ける必要があります。
なお、研修期間中も国家公務員として採用されていることに変わりはないため、行政職俸給表に基づき、月額19万円ほど(大学新卒・職歴がない場合)の給料が支払われるほか、諸手当の支給もあります。
航空保安大学校での研修を終えると、国土交通省の割り当てによって全国各地の空港や航空交通管制部に配属され、いよいよ本格的な業務がスタートします。
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航空管制官の資格・難易度
訓練を受けて業務に必要な技能証明を取得する
「航空管制官」という資格はありませんが、航空管制官として採用され、空港などの現場で業務を遂行していくには、さまざまな技能証明が必要になります。
ここでいう技能証明とは、航空管制官が取得しなければならない資格証明のことです。
たとえば「航空無線通信士」の資格は必須となります。
また、空港での業務は大きく分けて「飛行場管制」と「ターミナルレーダー管制」の2種類の業務がありますが、どちらに配属されても、それぞれ必要な資格を取得します。
なお、このような業務上必須となる資格は、航空管制官として採用されたのちに訓練を受けて取得できるため、事前に自分で取得しておく必要はありません。
英語の勉強は採用試験対策としても業務でも役に立つ
このほか、取得必須ではないものの、航空管制官を目指すうえで役立つ資格としては「TOEIC」や「英検」が挙げられます。
航空管制官は日々の業務において、パイロットとの交信などの際の共通語として英語を使います。
また、航空管制官採用試験でも、一次試験も二次試験では英語の試験(文法・リスニング・英語面接)が実施されます。
採用試験合格のために必要な目安レベルとしては「TOEIC700点程度、英検なら準1級」とされます。
こういった事情から、TOECIや英検の勉強を通じて英語力を高めておくことは、採用試験合格のために、いざ航空管制官として働きはじめてからも役立ちます。
航空管制官になるための学校の種類
採用試験は年齢条件を満たせば学歴関係なく受験可能
航空管制官採用試験は、以下いずれかの条件を満たせば誰でも受験することができます。
- 21歳未満で大学・短大・高等専門学校を卒業していること(卒業見込み者含む)
- 21歳以上30歳未満であること
試験そのものの結果で合否が判断されるため、学歴による有利・不利はありません。
たとえば中卒や高校中退の人でも、年齢要件を満たせば試験を受けることは可能です。
しかし、航空管制官採用試験自体が「大学卒業程度レベル」となっていることから、全体としては、4年制大学を卒業して航空管制官になっている人が多い現実があります。
なお、以下の表は、航空管制官を含む「専門行政職」に該当する国家公務員の学歴別の人数をグラフにしたものです。(※2022年のデータをもとに作成)
大学卒が65.68%、短大卒が24.97%で、これだけで全体の90%を超えていることがわかります。
航空管制官になるのに有利な学部や学科は?
航空管制官採用試験の受験にあたって学部・学科などの制限はありません。
航空管制官が身につけるべき知識・技術は、航空気象や無線工学といった理数系科目に関連するものも、法令や英語などの文系科目に関連するものもあります。
したがって、理系・文系のどちらが向いているということも一概にはいえません。
ただし、航空管制官採用試験では、第1次試験と第2次試験を合わせて英語の配点比率が約4割と大きめです。
そのため、将来航空管制官になりたいと考えている人は、英語を積極的に学べる学部に進学するのもよいでしょう。
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航空管制官に向いている人
集中力があり責任感が強い人
航空管制官は、管制業務を通じて大勢のお客さま(乗客)の命を預かるという責任ある役割を担います。
もし、自分が気を抜いて間違った判断をしてしまえば大事故になってしまうおそれもあり、ちょっとのミスも許されない仕事です。
そのため、高い集中力を保ち、任された仕事を責任もって遂行できる人に向いています。
「縁の下の力持ち」になれる人
航空管制官は、客室乗務員(CA)やグランドスタッフなどと異なり、お客さまと直接コミュニケーションをとる機会がほとんどありません。
実際に航空機を動かすパイロットを裏でしっかりと支えながら、空の安全・安心を守る存在です。
決して目立つ立場ではなくても、「縁の下の力持ち」として自分に任されている仕事をしっかりとやり遂げていけるタイプの人に向いています。
チームワークを大事にできる人
航空管制官は、自分だけですべての航空機を管制するわけではありません。
何かトラブルがあった際には、他の管制官と一致団結して解決しなければならないこともあります。
また、普段からお互いに積極的に声かけをすることがトラブルを防ぐことにもつながります。
チームワークを大事に考え、協調性をもって行動できる人に向いている仕事だといえます。
航空管制官のキャリアプラン・キャリアパス
多数の乗客を乗せた航空機を誘導する航空管制官の仕事では、絶対にミスが許されません。
そのため、基礎研修を終えて空港などの現場へ配属された後は、まず「訓練生」として取り扱う機械の扱い方や専門知識を身につけるとともに、的確な判断力と仕事に必要な精神力などを養います。
この実地訓練は数か月から数年にもおよぶこともあり、これを乗り越えてようやく一人前の航空管制官として任命されます。
また、国家公務員である航空管制官は全国各地への転勤があります。
早ければ2~3年程度で転勤になることもあり、勤務地が変わるたびに、その環境で必要な業務資格を新たに取得しなくてはなりません。
したがって、別の勤務地に移れば、どんなに経験を積んだベテラン航空管制官でも一定期間の訓練を受け、内部試験に合格する必要があります。
航空管制官は、この仕事を続ける限り、ずっと勉強してスキルアップを目指すことになります。
航空管制官を目指せる年齢は?
航空管制官採用試験には「21歳以上30歳未満」の年齢制限があります。
したがって、30歳を迎えてしまうと航空管制官になることはできません。
逆に、上記の年齢要件を満たしていれば何歳でも受験が可能です。
合否はあくまでも航空管制官採用試験の結果によって決定されるため、年齢が30歳に近づくほど不利になるといったこともありません。
実際、一度は不合格になった人が、年齢制限いっぱいまで再チャレンジを繰り返して合格になったケースもあると言われています。
なお、航空管制官採用試験では第2次試験後に身体検査が行われ、健康状態の確認が行われます。
採用されるためには、日頃から健康状態にも気を付けておく必要があります。
航空管制官は高卒から目指せる?
航空管制官採用試験は、21歳以上30歳未満の人か、21歳未満で大学・短大・高等専門学校を卒業した人が受験できるものとなっています。
このほか、日本国籍を有していることなどの要件がありますが、それらを満たしていれば基本的に学歴関係なく受けることができます。
ただし、航空管制官採用試験は「大学卒業レベルの難易度」となっており、公務員として基礎的な能力試験(文章理解、数的推理など)や外国語(英語)の試験なども行われます。
誰もが簡単に合格できるような試験とはいえません。
大学で学びながら、公務員志望者向けの資格スクールにダブルスクールで通い、航空管制官採用試験の対策をしている人もいます。
高卒の人が合格を目指す場合にも、試験に向けてのしっかりとした計画と対策が必要になるといえます。
航空管制官は女性でもなれる?
航空管制官になる女性は、年々増加傾向にあると言われています。
最近では、航空管制官採用試験の最終合格者の半数近くが女性という年度もあり、女性の航空管制官の姿を見られる機会は増えています。
もちろん、採用試験において性別による有利・不利はありませんし、業務内容の違いもありません。
航空管制官は専門性の高い仕事ですが、本当に熱意があれば性別は一切関係なく、習得した専門知識・スキルを発揮しながら第一線で活躍することが可能です。
なお、最近では航空管制官をはじめとする国家公務員の女性が長く働き続けられるよう、待遇・福利厚生などに関するさまざまな制度が整えられています。
結婚・出産後に育児休暇などを経て職場復帰をする女性の航空管制官もたくさんいますし、長く働く中でのキャリアアップも目指せます。