介護福祉士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
要介護者一人ひとりに合わせた、質の高い介護サービスを提供するために、非常に重要な役割を担っています。
この記事では、介護福祉士の仕事内容や役割について、わかりやすく紹介していきます。
介護福祉士の仕事とは
介護福祉士とは、日常生活が困難な高齢者や身体・精神に障害のある人などに対して、食事や入浴、排泄などの身体介護を行う職業です。
介護福祉士の国家資格を取得することにより、介護の専門的な知識・スキルがあると認められ、介護サービスの利用者に対して適切なケアができるようになります。
介護以外に、要介護者の近くで介護をする家族などの人に対して、どのように介護をしていけばよいかという相談に乗ったり、アドバイスをしたりすることも行います。
介護福祉士の業務の内容
ここからは、介護福祉士の具体的な業務内容について詳しく紹介していきます。
1.身体介護
食事・排泄・衣服の着脱、入浴をはじめとした身体の衛生管理(清拭、洗顔や歯磨き)などを行います。
そのほかベッドから車いすへの移乗や自動車への乗り降りや歩行補助、車いすでの移動などもあります。
とくに介護保険施設では、厚生労働省令の「施設及び設備に関する基準」に基づいて一週間に2回の入浴が定められ、入浴または清拭をしなければならないため、介護を行う上で重要な仕事です。
日常生活でどんな動作が困難なのかは人により異なるため、利用者がどんなことを望んでいるのかを考えながら、一人ひとりの自立度にあった介護を行うことが大切です。
2.生活援助
食事(調理や配膳、下膳なども含む)・洗濯・掃除など室内の整理整頓、必要な買い物などの日常的な家事全般を援助します。
とくに、在宅介護では家事援助は重要です。
掃除の仕方や調理の方法など、その家によってやり方が異なるため、利用者やその家族に配慮して家事の援助をすることが必要になります。
利用者本人が、その人らしい生活を地域で送るために、どのような援助が必要なのかニーズをくみ取って援助します。
3.相談・助言
介護を受ける対象者だけではなく、その家族など介護者も含め、生活・身体・介護に関しての相談にのったり、助言をしたりします。
そのためには、介護に関しての専門的な知識と技術が必要で、介護食の調理方法や、どんな福祉用具があるのかなど、介護を送る上で日常的に必要な介護の知識が要求されることがあります。
4.社会活動支援
介護を受ける対象者は、社会的に孤立しがちなため、介護福祉士は家族や近隣の人たちとのよい対人関係が築けるように支援する役割があります。
また地域のサークル活動などの社会活動の情報提供などをして、利用者の生きがいづくりをすることもあります。
介護福祉士の役割
ここからは、介護福祉士が社会において、どのような役割を担っているのかを紹介します。
役割1.国家資格を持って働く
介護福祉士は「社会福祉及び介護福祉士法」に基づく国家資格を持って働きます。
この法律では「誠実義務」「信用失落行為の禁止」「連携」「秘密保持義務」といった条項が定められており、介護福祉士はこれらを守って業務に当たらなくてはなりません。
「介護サービス提供者としての誇りを持ち、利用者一人ひとりの人権や自立を尊重し、その人に合う介護をすること」「業務を通じて知りえた秘密を漏らさないこと」などが明言されています。
言い換えると、介護福祉士には、介護者側の勝手な判断で介護をすることなく、利用者やその家族に適した介護サービスを誠実に提供していくことが求められています。
役割2.利用者とのコミュニケーション
介護福祉士と介護サービス利用者の信頼関係はとても重要です。
利用者とより良いコミュニケーションを築き、信頼関係を構築していくことにより、安心してサービスを利用してもらえ、スムーズに介護を行うことが可能になります。
そのために、介護福祉士はコミュニケーションスキルを向上させなくてはなりません。
利用者のなかには、言葉でうまく話せない場合もあります。
そうした人とのコミュニケーションでは、身振りやボディタッチ、コミュニケーションボードやその人の関心のあるものなどの非言語的コミュニケーションを用いるなど、さまざまな工夫を行いながら信頼関係を築く姿勢が求められます。
役割3.情報収集と臨機応変な対応
介護福祉士は、利用者の心身状態を適切に判断して臨機応変な介護をする必要があります。
いつも同じ介護サービスを提供するのではなく、日々の利用者の変化に気付くことが大切です。
そのためには「高齢者だから」「障害者だから」と一括りにせず、利用者一人ひとりに対して病状や経歴などの基本情報を確認し、関わりながら介護される人の知識を増やしていきます。
病状・障害を知ること、自立度を知ること、性格やこだわり・好みを知ることなど普段から利用者に関心を持ち、何か気がついたことがあったときには、介護の知識や医療、栄養面、心理面など、介護福祉士として培った知識や経験などから問題を分析し、根拠を見出し対応します。
役割4.利用者を看取ることも
高齢者で寝たきりの方が多く入居している施設や、介護度が重度の疾患者が多い病棟などで勤務する場合、利用者を看取り死亡処置を行うこともあります。
医師が死亡を確認した後、看護師とともに家族に引き渡すための準備を行うまさに「おくりびと」のような役割をすることもあります。
介護福祉士の勤務先の種類・活躍の場
介護福祉士の活躍の場は、大きく分けて「高齢者分野」と「障害者分野」に分けられます。
高齢者分野の場合、老人保健施設をはじめとした介護施設が主な就職先となります。
障害者分野の場合は、身体障害者施設等の社会福祉施設で働きます。
以下で、その他の活躍の場や働き方も含め、詳しく説明します。
高齢者分野で働く介護福祉士
居宅型サービス
居宅型サービスは、現在の居宅に住んだまま介護を受けられるサービスです。
介護福祉士は居宅サービスの事業所で訪問介護員(ホームヘルパー)として働くほか、「サービス提供責任者」といったホームヘルパーのリーダー的存在になって活躍することもできます。
またデイサービスなどの通所サービスでも介護福祉士が働いています。
施設型サービス
施設型サービスとは「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」といった施設で介護サービスを行います。
介護をする介護福祉士だけでなく、看護師や医師が常駐して療養上の管理や看護などのサービス、リハビリなどが行われるケースが多いです。
地域密着型サービス
介護度が重くなっても、住み慣れた地域でいつまでも生活できるような介護サービスです。
主に「グループホーム」があげられ、介護福祉士は主に認知症の利用者を対象に介護を行います。
障害者分野で働く介護福祉士
介護福祉士は、高齢者だけではなく障害を持つ人にも介護を行います。
高齢者を対象とした「介護保険制度」があるように、障害者分野でも「障害者自立支援法」という制度があり、知的障害・身体障害などの障害種別によって、それぞれの人が暮らしやすいように介護サービスを利用しています。
グループホームで社会自立を目指して利用している人・障害があっても仕事をして就労支援を利用している人・施設サービスを利用している人など、個々の障害に応じてサービスを利用できます。
具体的な就職先としては、身体障害を持つ人の介護をする「身体障害者寮護施設」や、知的障害を持つ人の介護をする「知的障害者施設」「精神障害者福祉施設」、障害を持つ子どもたちの介護を行う「重症心身障害児施設」「社会福祉施設」などがあります。
サービス提供責任者として働く介護福祉士
介護福祉士として現場で働くことはもちろんですが、「サービス提供責任者」として働く方法もあります。
ホームヘルパー事業を行う訪問介護事業所(ヘルパーステーション)では、利用者40人に対し、介護福祉士の資格を持つ「サービス提供責任者」を1名以上配置することが義務付けられています。
介護福祉士の有資格者であればサービス提供責任者となることができ、利用者の介護状況や自立に対する要望を話し合ったり、介護サービスに関するスタッフの管理を行ったりするなど、訪問介護事業を取り仕切る業務を行います。
その他(独立、介護教員など)
介護福祉士はキャリアを積んでいくことで、仕事の幅はさらに広がり、自分次第で活躍する場を作り出せます。
たとえば、介護福祉士としての現場経験を生かして介護相談の仕事をしたり、デイサービスやヘルパーの会社の事業を開始したり、またホームヘルパー養成の講師や学校で介護教員をするなど、介護の現場で得られた経験や知識を生かす仕事をすることも可能です。
なお、ヘルパーの養成や介護教員になるためには、介護福祉士の資格を持ち、5年以上の経験が要件となり、また介護教員の場合は、「介護教員講習会修了書」が必要になります。
介護福祉士と関連した職業
介護業界では、さまざまな専門的知識を持った職種の人たちが活躍しています。
ここでは、介護福祉士と関連する職業として「ホームヘルパー」や「看護師」を取り上げて、それぞれと介護福祉士の仕事の違いを紹介します。
介護福祉士とホームヘルパーの違い
介護を担う同様の資格として「ホームヘルパー」がありますが、ホームヘルパーが公的認定資格であるのに対して、介護福祉士は国家資格です。
そのため、介護福祉士の試験の方が難易度は高く、取得するために必要な年数も長くなります。
資格がなくても介護の仕事をすることは可能であり、介護福祉士とホームヘルパーで実際の作業内容は大きく変わりありませんが、介護福祉士の方が就職や給料の面でやや有利となります。
介護の仕事をする人たちを「ケアワーカー」「ホームヘルパー」「寮母」「介護職員」などと呼ぶこともありますが、介護福祉士は名称独占資格なので、その資格取得者しか介護福祉士の名称を使用することはできません。
介護福祉士と看護師の違い
介護福祉士はあくまで介護のための資格で、看護師のような医療行為は認められていないため、介護福祉士は「利用者の生活全般」を多方面から捉えます。
一方、介護福祉士と対比される看護師は、医学的な視点で利用者を捉えています。
つまり、利用者に病気があるのかないのか、血液検査の数値が正常か異常かといった医療従事者のような視点から診るのが看護師、利用者の生活スタイルを全般的に見て、相手の考え方や生き方を尊重し、その自立を支援していくのが介護福祉士といえます。
「介護福祉士の仕事」まとめ
介護福祉士は、高齢や病気などの理由で日常生活に不便を抱えている人に対し、食事・排泄・入浴といった身体介護を中心に提供する職業です。
介護の専門的な知識やスキルをを身につけて国家資格を取得し、介護施設などで活躍しています。
身体介護のほか、利用者一人ひとりに合わせた生活援助や、家族などへの相談・助言、社会活動支援など、介護のプロフェッショナルとして幅広い業務に携わります。