女性の大工のキャリアパス・結婚後の生活
女性の大工の現状
大工は「身体を酷使する」「危険な作業をともなう」といったイメージが強いこともあり、これまでは、ほぼ男性のみの職業とみなされてきました。
しかし、ありとあらゆる職業において女性の社会進出が積極化している現代では、徐々にではあるものの、女性の大工も増えつつあります。
建築業界自体、昨今では若手人口の減少などを受けて慢性的な人手不足にあるため、女性の大工志願者を歓迎する風潮にあります。
2014年には、国土交通省と建設5団体による「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」が採択され、官民一体となって女性の入職・定着を促す仕組みづくりが推進されています。
しかし、いざ現場に入るとなると、女性の大工が直面する悩みや課題も多いです。
たとえば女性専用の更衣所やトイレがない、工具が重すぎて使えない、男性の親方が女性をどう扱えばいいかわからないなど、女性が働きづらさを感じるケースも数多く残っています。
現状、環境改善はまだまだ道半ばであり、本格的な女性大工の活躍はこれからといえるでしょう。
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女性の大工の強み・弱み
大工は、非常に精度の高い技術が要求される職人仕事ということもあって、女性ならではの手先の器用さや繊細さ、細やかさを生かせます。
また、大工は現場作業だけでなく、設計作業に携わったり、建築士や施主(せしゅ)から設計に関する助言を求められることもあります。
たとえば水回りの使い勝手や造作のデザイン、バリアフリー設計など、女性としての目線が、男性では思いつかない多角的なアイデアを生み出し、真に住みやすい住宅をつくるのに役立つでしょう。
反対に、女性の大工の弱みは、体力面や筋力面で男性よりもハンデが大きいということです。
大工は、重い建築資材を日に何度も運ばなければならないこともありますし、夏は炎天下のなかで、また冬は凍えるような寒さのなかで、長時間にわたって働かなければなりません。
体力的な消耗は避けられないため、どうしてもできない力仕事は男性の協力を仰いで、そのぶん細かい仕事や管理作業を男性よりも頑張るなど、なんらかの工夫が必要になるでしょう。
結婚後の働き方
大工は、一般的な職業と比べると朝が早く、そのぶん仕事の終わりも早くなるという特徴があります。
とくに現場作業は、安全上の観点から基本的に視界を確保できる日中の時間帯に限定されますし、また騒音の問題もあるため、夜遅くまで働くことはほぼありません。
このため、夕方以降はまとまった時間を取りやすく、仕事と家事を両立させて結婚後も独身時代と同じように働き続けることも十分可能です。
しかし、大工仕事の体力的な負担はかなり重く、休息も必要です。
日によって家事を分担するなど、配偶者の理解とサポートは不可欠でしょう。
また、大工は一般的に土曜日も仕事があり、休めるのは日曜日のみとなるため、配偶者の仕事が飲食業やサービス業などの場合は、なかなか休みが合わないかもしれません。
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大工は子育てしながら働ける?
工務店のほとんどは、中小以下の企業または個人経営です。
そのため、産休制度や育休制度が整っていないところが多く、あったとしても人繰りの関係で何ヵ月間も休むことは非常に困難です。
大企業のように社内に託児所が設けられているところもほぼないため、もし育児しながら働くなら、フルタイムで子どもを預けられる保育所を利用する必要が出てくるでしょう。
しかし、保育所に預けるとしても、日中に厳しい肉体労働をこなしつつ、夜以降に子どもの世話をするのは大変ですし、授乳や夜泣きなどでろくに寝られないことも頻繁にあります。
さらに、保育料の負担が重くなるという経済的な問題や、そもそも「待機児童」がさかんに取り沙汰される状況を考えれば、保育所自体が見つからない可能性もあります。
このため、残念ながら大工が子育てしながら働くことは、現状では難しいといわざるをえず、業界をあげての早期の環境改善が望まれます。
大工は女性が一生働ける仕事?
1990年代初頭までは、女性の大工はほぼおらず、たとえ女性が大工になりたいと親方に弟子入りを志願しても、門前払いされて泣く泣く夢を諦めるしかありませんでした。
しかし、現状では女性の受け入れ態勢も整いつつあり、女性の大工は決してめずらしい存在ではなくなっています。
ただし、ライフイベントの多い女性にとって体力的負担の大きい大工を続けることは容易ではなく、とくに出産や育児の際は、キャリアを中断せざるを得ないケースが大半です。
それでも、大工が好きで、大工を続けたいという熱意さえあれば、多少のブランクを挟むとしても、子育てがひと段落した後には再び大工として働くことも決して不可能ではありません。
組織に属することなく、フリーランスで働くという道もあるため、技術さえあれば大工に年齢は関係なく、何歳になっても復帰が遅すぎるということはないでしょう。
ときに家族のサポートを受けながら、現場で輝く女性大工が今後ますます増えていくことが期待されます。