調理師になるには・調理師免許とは?
調理師になるには
調理師免許を取得する方法は2つあります。
1.調理師学校(養成施設)に入学し、1年以上勉強し卒業することによって、無受験で調理師免許が取得できます。
2.飲食店などで2年以上実務経験を積み、調理師試験に合格することによって調理師免許が取得できます。
1、2のどちらのルートも一長一短です。
調理師学校では料理の基礎から学ぶことができますが、調理師学校に行かなくても実務経験があれば、調理師試験が受けられます。
現場に出た時にものを言うのはやはり実務経験です。
学校で習う知識は確かに大切ですが、免許の有無に関わらず就職後は下積みの雑用係からスタートします。
免許を持つことで就職のチャンスが広がる可能性もありますが、それに捉われる必要はありません。
中卒で未経験者可の求人を探し、下積みから始めて2年後に調理師免許を習得するという方法もあります。
20代で正社員への就職・転職
調理師の見習い・修行期間
下積みなくして一人前にはなれない
専門技術や知識が求められる調理師は、一般的に師匠の下で「見習い」として修行を積みながら、一人前を目指していきます。
ただ調理師免許を取りたいということであれば、専門学校などの調理師養成施設に入学し、必要な知識を1年以上学べば無試験で得ることが可能です。
しかし、いざ現場に出てみれば、そこで問われるのは「どれだけの腕があるか」ということ。
学歴や年齢などは関係なく、腕のある人が認められ、そして生き残っていけるのです。
一流の調理師、料理人を目指すうえで修行を避けることはできないといっても過言ではありません。
見習い時代の生活
調理の世界は師弟関係が強く、飲食店などに勤める新人調理師は、まず「見習い」という立場で扱われます。
店にもよりますが、見習い時代の仕事は、基本的に掃除、調理器具や食材の準備、洗い場などが中心となります。
最初の1〜2年間は洗い場ばかりを担当し、まったく包丁を持たせてもらえないといった職場もあるようです。
朝は先輩より早く出勤して店の掃除や仕込みを行い、営業時間後も最後まで残り、調理器具の片づけや翌日の準備などをするため、1日12時間以上働く日もざらにあります。
忙しい時期は、ほぼ休みなく1日中厨房内を動き回るようなこともあり、心身ともにタフでなくてはやっていけません。
それだけ働きながらも、給料は決して高いとはいえません。
場合によっては手取り10万円程度ということもあり、仕事のハードさや労働時間に見合わないという理由で、すぐ辞めてしまう人もいます。
もちろん、すべての店がこうした状況なわけではありませんし、日本料理、フランス料理などのジャンルによっても覚えるべきことは少しずつ異なります。
しかし、どのような道に進むとしても、新人が最初から戦力として扱われることは基本的にありません。
料理に対する強い情熱を持ち、下積み生活を乗り越えていくことで、徐々に難易度の高い仕事を任せてもらえるようになります。
新人、見習い時代の苦労は、料理人を目指す人にとって避けられない道なのです。
調理師の資格・難易度
調理師免許とは?
調理師免許とは、「調理師」と名乗って仕事をするうえで必須となる国家資格です。
調理師法に基づき都道府県知事が行う調理師試験に合格し、各都道府県の調理師名簿に登録されると、調理師と名乗ることができます。
しばしば誤解されますが、レストランなどで調理の仕事をするうえで、調理師免許の取得は必須ではありません。
調理師免許がなくてもお客さまに料理を提供できますし、店の開業も可能です。
ただし、無免許で「調理師」と名乗れば法律で罰せられるため、その点には注意が必要です。
調理師免許を取得するメリットは?
調理師免許がなくても調理の仕事はできますが、ここでは調理師免許を取得するメリットを挙げてみます。
・調理に関する専門知識が身につく
・調理師としての技術や技術があることを証明できる
・就職先の選択肢が広がる
調理師免許がなくても働ける飲食店は多々ありますが、一方で、調理師免許を保有していることを採用条件とするところも少なくありません。
そのため、調理師免許を持っていれば就職先の選択肢が広がります。
また、調理師免許取得のための勉強課程で、調理の正しい知識が身につくこともメリットといえるでしょう。
調理師試験の難易度は?
調理師試験の合格率は一般的に60%〜65%くらいです。
他の国家試験に比べると合格率は高めですが、調理師試験は年々難しくなりつつあるようです。
調理師資格の試験は食文化論、衛生法規、公衆衛生学、栄養学、食品学、食品衛生学、調理理論の中から出題されます。
試験自体の難易度はそれほど高くなく、数ヶ月ほど集中して勉強すれば合格できるといわれています。
ただし、調理師の世界は腕と実務経験こそがものを言うため、資格取得後も技術の向上に励む必要があるでしょう。
調理師免許を持たずに開業する人も
独立開業している調理師でも、調理師免許を持っていない場合があります。
若いうちから飲食業界に入り、師匠の下で何年も修行を積んで実力を磨いていき、いざ独立という道筋をたどってきたような人の場合、特別に調理師免許を持っていなくても腕は確かということはよくあります。
調理師免許は国家資格ではありますが、開業するためのものではなく、調理人としてさらなるステップアップを目指す人が取得するケースが多いようです。
ただし、調理師法の改正によって、最近では「飲食店で調理師免許を置くように努めなければならない」といった努力規定が設けられるようになっています。
今後、飲食業に携わるうえで調理師免許取得が義務化される可能性もゼロではありません。
20代で正社員への就職・転職
調理師になるための学校の種類
調理師専門学校
和食やフランス料理、イタリア料理など特定料理の調理師を目指す場合は、調理師専門学校に行くことで、上位の資格習得や海外留学のチャンスが生まれるなど、さまざまな恩恵が受けられます。
幅広い経験を積みたい場合や、ホテルやレストラン、福祉施設などで働きたい場合は、調理師専門学校に行くことを考えるとよいでしょう。
調理師専門学校以外の学校
専門学校に行く以外にも、高校や短大などの調理科を卒業すると調理師免許が交付されます。
高校や短大に行きながら資格を取りたいという人には、調理科のある学校へ通うのがおすすめです。
先に免許を取らなくてもよい
飲食関係に勤務するすべての料理人が調理師免許を持っているわけではありません。
調理師免許を持たずに何年も仕事をしている人も多くいます。
また、ラーメン店、そば職人、すし職人などの場合は、調理師免許を取るよりも、見習いとして就職し、経験を積んだほうがよいこともあります。
調理師養成施設にはどんなところがある? 専門学校・大学の違い? 学費・費用はどれくらい?
調理師に向いている人
とにかく料理が好きな人
調理師は基本的に勤務時間が長く肉体的にもハードな仕事です。
下積み期間は給与も少なく料理長やシェフなどの厳しい言葉に辛い思いをすることもあります。
調理師として一人前になるまでの辛さを乗り越えるには、とにかく料理が好きで、「自分の料理で人を笑顔にしたい」という強い思いを持ち続ける必要があるでしょう。
粘り強く向上心のある人
調理師の世界は上下関係が厳しく、縦社会です。
料理長や先輩の指導には多少の不満があっても従うという暗黙のルールがある職場も多いです。
理不尽なことがあっても粘り強く頑張れる人や、厳しい環境でも夢を持ち続けられる人、体育会系の部活経験のある人などは、調理師の世界になじみやすいといえます。
正確な味覚とセンスがある人
調理師は人々においしい料理を提供し、楽しんでもらうのが仕事です。
誰が食べてもおいしいと感じられる料理を作るためには、正確な味覚を持つことが何よりも重要です。
また、盛り付けの美しさや味付けのバランスなど、味覚センスや芸術的な感性が求められる仕事でもあります。
調理師のキャリアプラン・キャリアパス
調理師免許を取得すれば「調理師」と名乗って働き始めることができます。
しかし、実務経験がない場合はすぐに調理をさせてもらえるわけではなく、まずは見習いとして修行からスタートするのが一般的です。
厨房の掃除や片付け、食材の下処理、皿洗いなどの雑用をこなす下積み期間を乗り越えてはじめて、実際の調理や盛り付けを担当できます。
調理の経験を積んで職場内での地位が上がれば、食材の仕入れやメニューの考案などにも携わるようになります。
さらに腕が認められると料理長やシェフのポジションを任せられたり、独立開業の選択肢が見えてきたりします。
調理師の働き方の種類
調理師の雇用形態
調理師の雇用形態には正社員からパート・アルバイト、派遣社員までさまざまです。
正社員として働くには実務経験が必要となるケースが多いですが、なかには未経験者や調理師免許を持っていない人でも正社員として採用するところもあります。
調理師の養成学校を卒業した人は調理師免が交付され調理の専門知識も身についているため、実務経験がなくても正社員として採用されることが多いです。
ただし、一般的には未経験であればアルバイトやパートからスタートして調理の腕を磨いていくことになります。
未経験のアルバイトとして働きながら経験を積み、調理師資格を取って正社員登用を目指す人もいます。
また、調理師のなかには調理専門の派遣会社に登録し、派遣社員として企業や飲食店で勤務する人もいます。
正社員の調理師
正社員の調理師の仕事内容は?
正社員の調理師になると、実際の調理だけではなくお店全体の管理を任される場合が多いです。
人手が不足しているときは正社員の調理師がホールに立ってオーダーを取るなどの接客業務をおこなうこともあります。
また、営業時間の終了後に売上管理や食材の発注作業などを頼まれる場合もあります。
厨房の掃除・片付けといった雑務や、簡単な仕込み作業などはアルバイトに任せることが増えますが、シフト管理や研修への参加など調理以外の仕事は多くなるでしょう。
正社員調理師のメリット・デメリット
正社員の調理師になるメリットは、給与や待遇が安定していることが挙げられます。
時給で働くアルバイトや派遣社員の場合、勤務日数によって収入が変動するほか、社会保険などの福利厚生が整っていないことも多いです。
一方、正社員の調理師であれば、毎月の固定給や賞与が保証され、社会保険や有給休暇などの各種制度が利用できるようになります。
ただし、正社員になると現場をまとめたり他のスタッフの勤怠管理をしたりと、調理以外の仕事が増えて責任も重くなります。
調理師の給与は正社員でも決して高いとはいえず、責任の重さと長い労働時間に耐えられずに辞めてしまう人も少なくないのが実情です。
派遣の調理師
派遣の調理師の仕事内容は?
現代では、さまざまな業界や業種において「派遣」という働き方が一般的なものになっていますが、調理師の世界でも例外でなく、派遣として活躍する調理師も少なくありません。
派遣の調理師の働き方は、おもに以下のようになります。
まず、調理師としての知識や技術を持っている人が、調理師派遣サービスを手掛ける人材派遣会社に登録をします。
一方、調理師を求める企業や飲食店は、人材派遣会社に対して「こういうスキルのある調理師を派遣してほしい」と依頼を出します。
すると、人材派遣会社は双方の希望条件などを確認したうえでマッチングを行います。
マッチングされた調理師は、派遣先の企業や飲食店に出向き、そこで力を発揮するというスタイルです。
派遣の調理師として働くには
派遣の調理師として働きたい場合、調理のスキルを求めている人材派遣会社に登録を行うのが一般的です。
最近では、飲食業界や調理師に特化した派遣サービスを提供する人材派遣会社も出てきています。
派遣会社によってサポート体制は異なります。
できれば専属コーディネーターがおり、勤務開始前後にしっかりとフォローしてくれるところや、豊富な案件を抱えているところを選ぶとよいでしょう。
なお、派遣登録の際には、調理師の免許や経験を持っていなくてもOKの場合も多いようです。
派遣として働くメリット・デメリット
派遣として働くメリットとしては、就職先の勤務体系に沿って働かなくてはならない正社員とは違い、自分の希望の時間や日数で働きやすいということが挙げられます。
また、時給は都市部で1,000円~1,400円程度が相場のようですが、スキルや経験を積んでいるとさらに高時給が望めることもあります。
とくに調理の仕事の場合、調理師免許の有無によって時給に違いが出ることが多く、免許を持っていると優遇されるでしょう。
さまざまな職場を経験しやすいため、スキルアップを希望する人があえて派遣で働くこともあります。
一方、派遣のデメリットとしては、正社員に比べると適用される福利厚生や各種制度など、雇用条件が不安定である場合が多いということです。
ただし、一定以上の勤務時間などの条件を満たせば、社会保険に加入できる場合もあります。
また、派遣は決められた期間での勤務となり、期限が切れた場合、契約更新ができないこともあります。
経歴やスキル、希望条件などによっては、すぐに次の仕事を紹介してもらえない場合もあります。
アルバイト・パートの調理師
アルバイト・パートの調理師の仕事内容は?
調理師のなかにはアルバイトやパートとして働く人もたくさんいます。
未経験であればまずはアルバイトとして調理の仕事に就き、腕を磨いていくのが一般的です。
その場合、皿洗いや食材の下処理、片付けなどの雑務からスタートすることになるでしょう。
ただしアルバイトやパートの調理師でも、実務経験があれば採用された後すぐに調理の仕事を任されることもあります。
アルバイト・パートとして働くメリットとデメリット
アルバイトやパートの調理師として働くメリットとしては、働く日数や時間を調整しやすい点が挙げられます。
現場やスタッフの管理を任される正社員とは異なり、アルバイトやパートの調理師は決められたシフトのなかで働くのが一般的です。
調理師の仕事は長時間労働がしばしば問題になりますが、アルバイトやパートであれば比較的柔軟に働くことができるでしょう。
また、正社員の求人とは違って実務経験がなくても採用されるケースが多いため、調理に関心があるけれど未経験という人や、異なるジャンルの調理に挑戦してみたい人にとっては新しい職に就くチャンスが多くなります。
一方、アルバイトやパートで働く場合、正社員と比べて給料が低く、福利厚生や研修などの待遇を受けにくいという点がデメリットとなるでしょう。
調理師の独立・開業
調理師は独立開業ができる仕事
調理師は、腕さえあれば独立開業が可能です。
また、店舗を持たずケータリングや料理の講師として独立して働くフリーランスの調理師もいます。
実際、いま第一線で活躍する多くの若手調理師たちも、「いずれは自分の店を持ちたい、独立したい」という夢に向かって、日々修行に励んでいます。
独立開業するタイミングは人それぞれですが、飲食店の開業時に必須となるのが「食品衛生責任者」の資格です。
これは、食品の製造、加工、調理、販売を行う場合に求められるもので、各店舗に最低1名は有資格者を置かなくてはなりません。
この資格は、各都道府県が行う「食品衛生責任者養成講習会」を受講することで取得可能です。
ただし、「調理師」「栄養士」「製菓衛生師」「食品衛生管理者」などの資格を持っていれば、あらためて食品衛生責任者の資格を得る必要はありません。
独立開業の知識を得るためには
飲食店は、資金さえあれば比較的開業はしやすいものの、実際に生き残れるのはごくわずかです。
ある調査によれば、飲食店開業後、3年以内に廃業する割合は約65%。さらに、未経験者が開業した場合のそれは、約90%にものぼるとされています。
独立開業を目指すのならば、料理人としての実力をつけることはもちろんのこと、成功するための知識やノウハウをしっかりと身に付けてから実行することが大切だといえます。
非常に厳しい世界ですが、本気でやろうと思えば、独立のノウハウはいくらでも得られます。
たとえば、一流料理人の中には、飲食業界を盛り上げるために後輩の独立をどんどんサポートしたいと考える人が多くいます。
そのため、飲食店によっては「独立支援制度」が用意されていたり、師匠となる人から直接、独立開業のノウハウについて指南してもらえるケースもよくあります。
実際に開業を経験した人の声を聞きながら修行を積む、という経験は、その後の自分の料理人としての人生におおいに役立つでしょう。
そのほか、独立開業に関するノウハウを得るために、専門学校やスクールに通う方法も挙げられます。
学校によっては独立開業を目指す人向けのコースが置かれていたり、単発のセミナーが開かれることもあります。
大切なのは、まず「こういう店にしたい」という明確な意思を持ったうえで、資金の用意、料理人としての実力アップ、開業ノウハウを得るといったように、着実に準備を重ねていくことです。
勢いだけで押し切らないようにすれば、多くのお客さまから長年愛され続ける店を作ることも不可能ではありません。
副業・在宅の調理師
副業としても働ける?
調理師は、この仕事を本業としている人もいれば、まったく別の仕事を本業にしながら副業として働いている人もいるようです。
調理師免許や、調理技術の生かし方はさまざまです。
たとえば、本業が休みの日だけ飲食店に勤務して料理人として働くケース、自分でカフェなどを立ち上げて週末だけ営業するケースなどが考えられます。
自宅で料理教室を開いたりケータリングサービスを開業したりすれば、在宅で働くこともできます。
また、最近では身体が思うように動かせない高齢者や、小さな子どもがいて忙しい共働き家庭などに訪問し、お客さまのために調理をする仕事も需要が増えています。
こうしたサービスは、家事代行サービスの一環として行うことも多いようです。
本業で副業が禁止されていない限りは、「副業はこのように働かなくてはならない」といったことはありません。
食は人が生きていくうえで不可欠なものであるため、調理技術を生かし、さまざまな働き方の可能性があるといえます。
「調理師」と名乗るのであれば調理師免許は必要
たとえ副業であっても、「調理師」と名乗って仕事をしていくのであれば、調理師免許を取得しなくてはなりません。
調理師免許取得のためには、調理師の養成学校に1年以上通うか、飲食店などで調理の実務経験を2年以上積む必要があります。
なかには、昼間に働きながらでも調理師免許取得が目指せる夜間の学校もあります。
副業でどの程度稼げる?
副業の調理師としてどの程度稼げるかは、個々の仕事の仕方やスタイル、実力などによっても変わってきます。
たとえば、訪問調理サービスなどをするにあたって個人で仕事を請け負っていく場合は、基本的に自分でサービスの料金を決めることができます。
月に数千円~数万円程度の稼ぎを得る人もいれば、それ以上に稼ぐことも不可能ではありません。
いずれにしても、調理師は人の健康に関わる責任ある仕事であるため、正しい知識や技術を習得して、仕事に臨むことが重要です。
調理師を目指せる年齢は?
調理師資格の受験に年齢制限はありません。
調理師学校などで1年間の専門課程を修了するか、現場での実務経験が2年以上あれば、年齢に関係なく調理師資格を得ることができます。
調理師養成施設のなかには、社会人・働きながら資格を取りたい人に向けたコースを設置しているところもあります。
調理師になりたいという強い思いがあれば、30代や40代から調理師になることも不可能ではありません。
ただし、調理師の世界は見習いからのスタートが一般的です。
下積み期間が長く給与が低いことも多いため、できるだけ若いうちから目指すのが現実的だといえるでしょう。
調理師の心がまえ、大切なこと
「食」への飽くなき探究心と信念
調理師にとって大切なのは、日々調理の技術を磨くことはもちろんですが、その基本は「食」にどれだけ強い思い入れを持てるかということです。
誰かに「こうしなさい」と言われる前に、自分自身で日々、食材や調理法、衛生管理などについての研究を重ねていく。
そうしたことが自然とできる人でなければ、なかなか調理師として成功するのは難しいでしょう。
調理師は人気の職業であるため、次から次へと有望な人材が出てきます。
競争の厳しい職場においては、「こいつは知識がない、使えない」と判断されれば、簡単に首を切られてしまうこともあります。
そういった中で「一流の料理人」と言われるような存在を目指していくのであれば、「自分はこういう料理を作るんだ」という信念を持ち、それに向かって真剣に努力を続けることが、とても重要になってきます。
ただ調理をするだけなら素人でもできること。
だからこそ、「自分の料理でお客さまを笑顔にしたい」、「感動を与える料理を生み出したい」といった情熱こそが、調理師として成長していくための原動力になるのです。
厳しさは当たり前だと考える
調理の仕事は、経験と技術こそがものをいう世界です。
そのため、一人前になるまではつらいこと、大変なことのほうがずっと多いと考えておいたほうがよいでしょう。
飲食店に勤める場合、一般的な会社に就職するのとは、だいぶ異なる生活を送ることになります。
見習時代は給料をもらいながら仕事を覚えていきますが、最初は雑用的な仕事がほとんど。
また、上下関係の厳しい世界であるため、先輩に怒鳴られながら何とかついていくといったように、心身ともにハードな日々を過ごすことになるかもしれません。
こういった現実を知らないまま、「何となく楽しそう」、「なんでもいいから手に職をつけたい」といった安易な気持ちで仕事を始めた場合、現状に耐え切れず、あっという間に辞めてしまう人が大勢います。
いま第一線で活躍中の料理人たちも、多かれ少なかれ、みんな下積み時代を乗り越えて一人前になっています。
厳しい世界ではありますが、「必ず一流になってみせる」という覚悟があれば、ちょっとやそっとのことで簡単に夢をあきらめてしまうことはないはずです。
調理師は中卒・高卒から目指せる?
中卒から目指す場合
中卒で調理師免許を取得したい場合は、調理について学べる学校に進学するか、飲食店で2年以上働き、調理師国家資格の受験資格を得る方法が挙げられます。
このうち、中卒者が進学できる調理関連の学校として、3年制の「高等専修学校」があります。
これは、都道府県知事が認可する専修学校のうち、「中学校卒業程度以上の者」が入学資格として認められているため、中卒者でも進学することが可能です。
そのほか、数は多くありませんが、調理師養成指定機関に認定された「調理科」を置く高校もあります。
このような学校に3年間通えば、卒業と同時に高校卒業の学歴と、調理師免許を併せて取得可能です。
高卒から目指す場合
高卒から調理師免許を取得したい場合も、中卒と同様に調理について学べる学校に進学するか、飲食店で2年以上働き、調理師国家資格の受験資格を得る方法が挙げられます。
高卒者が進学できる調理関連の学校として、厚生労働大臣が指定した調理師専門学校があります。
ここで1年以上勉強して卒業すれば、試験を受けずに調理師免許が得られます。
そのほか、「調理師専攻」を置く短大で学べば、短大卒の学歴と調理師免許を同時に得ることもできます。
調理師免許を取らずに料理人を目指す道も
意外に知られていないことでもありますが、たとえ調理師免許がなくても、調理の仕事をしたり、料理人を目指したりすることは可能です。
全国には、和食や洋食をはじめ、業態さまざまな多くの料理店が存在します。
基本的に学歴はあまり問われない世界であるため、たとえ中卒であろうと高卒であろうと、意欲さえあれば雇ってくれる店もたくさんあります。
そういった店に「見習い」として入り、修行を積んでいけば、学歴関係なく立派な知識や技術を持った料理人としてキャリアを築いていけるでしょう。
ただし、店で修行をする場合、その店のオーナーや料理長の技術を間近で見ながら覚えていくことになります。
自分がどのような料理人になりたいのかをしっかりと考えたうえで、修行先を選ぶようにしたいものです。
調理師は女性でもなれる?
調理師というと男性が活躍しているイメージが強いかもしれませんが、もちろん女性でもなることができる職業です。
最近では、一流シェフや一流の料理人としてメディアに取り上げられたり、海外で活躍したりする女性の調理師も目立っています。
しかし、飲食業界は肉体的にも精神的にもハードな現場が多く、女性だからといって厳しさの程度に差がつくわけではありません。
レストランやホテルなどの厨房では男性と同等の体力が求められることを覚悟する必要があります。
病院や福祉施設、学校の給食センターなどであれば労働時間も安定しているため、女性の調理師にとっても働きやすい職場だといえるでしょう。
調理師の就職先・求人募集の状況
調理師の就職先にはどんなところがある?
調理師の就職先としてまず挙げられるのは、レストランなどの飲食店です。
日本には和食だけでなく、洋食や中華、フランス料理、イタリア料理、エスニック料理など、世界各国の料理を楽しめるレストランが存在します。
また、ジャンルだけでなく業態もさまざまで、老舗の料理店もあれば、全国に店舗を展開するファミリーレストラン、お酒が飲める居酒屋、パティスリーを併設したカフェなど、幅広い選択肢があります。
さらに、飲食店のほかにも、ホテルや旅館などの宿泊施設や、病院、介護施設、学校などでも調理師が活躍しています。
レストランなどで経験を積んだ調理師のなかには、独立して自分の店を開く人もいます。
調理師が活躍する場所は多岐にわたるため、料理を作るという点では共通していても、職場によって具体的な業務内容や勤務時間、待遇なども異なってきます。
就職先を探す際には、自分がどんな調理師になりたいか、どういった働き方を希望するのかといったことを事前に考えておくことが大切です。
調理師の求人の状況
調理師の需要はある?
現代は外食産業が盛んな時代です。
調理師の資格を持つ人は即戦力になるということで求人は絶えません。
ホテルや有名レストランにこだわらなければ、就職口は割とすぐに見つかります。
ただし、拘束時間が長く仕事がきついことから離職率が高い業界でもあります。
続けていくには、ハードな仕事でも負けずにがんばれるかが鍵となります。
調理師の就職状況
調理師専門学校を卒業した人の就職状況は、80%〜90%だといわれています。
調理師専門学校の卒業生は即戦力になる人間として有望視され、就職先も比較的見つかりやすいようです。
また、在学時にアルバイトをしていた店にそのまま就職するというパターンも多く見られます。
何らかの理由で以前の職場を離職した場合でも、再就職の道はそれほど困難ではありません。
とくに最近では老人福祉施設や学校給食、保育施設、企業の食堂、飲食店など、調理師を必要とする職場は数多くあります。
さらに、和食やフランス料理など特定ジャンルの料理人の場合は、ホテルや結婚式場などにも間口があることでしょう。
離職率の高い職場ですが、他の業種に比べると再就職口も見つかりやすい傾向があります。
ただし、ホテルにおいては、調理師の正社員としての求人はそれほど多くはありません。
契約社員やアルバイトから始まるところが一般的です。
調理見習いとしてまずはアルバイトで働き、実力を磨きながら正社員を目指していくことになるでしょう。
調理師の就職先の選び方
調理師は、他の業種に比べると再就職しやすい業種ですが、それでも短期間で離職を繰り返していては「忍耐力がない」と思われてしまいます。
自分のキャリアのためにも、いつでも離職できると思わずに、一つの職場に腰を据える覚悟で働くことが大切です。
そのためには、就職の際にしっかりと自分に合った職場を選ぶ必要があります。
独立を目指すならレストランかホテル
調理師を目指す人のなかには、ゆくゆくは独立して自分の店を持ちたいと考えている人もいるでしょう。
将来的に独立してお店を繁盛させるには、お客さまに来てもらえるだけの実力と、経営の知識が必要です。
自分の店を持ち、さらに成功させるだけの実力を養うには、著名な料理人のもとで修業を積むのが一番の近道です。
料理の評判がよい有名店や一流ホテル直営のレストランの門を叩き、腕を磨くことができれば、独立の夢はさらに近づきます。
個人経営のお店や小規模な飲食店であれば、調理から接客、運営まで幅広い経験が得られるので、経営の知識も身につくでしょう。
病院や学校、福祉施設はシフト制が多い
飲食店で働く調理師は、早朝の仕込みや深夜に及ぶ片付けなどで労働時間が長くなりやすく、勤務日も不規則なことが多いです。
一方で、病院や学校、福祉施設の給食を担当する調理師の場合、シフト制が組まれることがほとんどで、学校の場合は基本的に土日の勤務はありません。
独立や開業を目指していない人や、プライベートや子育てなどと両立したい人であれば、病院や学校などの調理師として活躍するのも一つの選択です。
ただし、個人経営のレストランに比べると労働環境はよいことが多いですが、栄養士とのやりとりや大量調理などに大変さを感じることもあるでしょう。
調理師の志望動機・面接
調理師の就職を目指す際の志望動機では、「将来どんな調理師になりたいか」を明確にすることが大切です。
ひと口に調理師といっても、就職先によって具体的な業務内容や働き方はさまざまです。
レストランやホテルなどで修業を積み、いわゆる「料理人」の道を目指すのか、病院や学校の給食作りに携わり人々の健康をサボートしたいのかなど、目指す方向によって志望動機も変わってきます。
さらに、採用の担当者は「なぜほかではなくうちの店(病院、施設)なのか」という理由をぜひ聞きたいと思っています。
履歴書や面接では、自分が目指す調理師としての将来像と、応募先の特徴やニーズがかみ合うような志望動機を伝えられるとよいでしょう。
また、調理師は食品を扱う仕事なので、清潔感のある服装で面接に臨んでください。
就職先はどのように探したらいい?
調理師の募集を探すには、調理師協会からの斡旋のほか、調理師仲間からの紹介、調理師専門学校からの紹介、求人情報誌などを使います。
また、近年はインターネットの求人サイトにも数多くの求人が掲載されています。
インターネットでは条件を絞って検索ができるため、希望の職場を見つけやすいでしょう。
調理師の職場は体力的にも精神的にもハードなことが多く、一時期に比べると労働環境は改善していますが、現在でも離職率は高い職業として知られています。
就職後のギャップをできるだけ小さくするためには、一つの求人情報のみを見て決めるのではなく、複数の方法で職場の情報を集めることが大切です。
実際に働いている人の口コミを探したり、卒業した学校の先生に評判を聞いたり、SNSで情報を集めたりなど、さまざまな経路から就職先を選ぶとよいでしょう。