調理師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「調理師」とは
料理にまつわる確かな知識・技能を持ち、厨房でお客さまのために腕を振るう。
調理師は、レストランや料亭、ホテルなどで料理を作る仕事です。
学校の給食や病院の入院食のように、各施設の利用者に対して決められた献立通りに調理を行う場合もあります。
調理をすること自体に資格は必須ではありません。
ただし「調理師」と名乗ることができるのは、調理師国家試験に合格し、免許を取得した人のみです。
調理師免許を取得するためには、調理師学校で1年以上学ぶか、飲食店などで2年以上実務経験を積んだのちに調理師試験に合格することが必要です。
一人前の料理人になるまでの道は険しく、厳しい下積み期間を何年も過ごしながら技術を磨いていかなくてはなりません。
若手調理師の待遇はあまり恵まれていませんが、経験を積めば自分の飲食店を開いたり、海外へ渡って活躍したりする人もいます。
「調理師」の仕事紹介
調理師の仕事内容
食や料理の知識・技術を生かして調理をする
調理師は、レストランやホテル、料亭などで料理を作る仕事です。
資格がなくても料理を作ること自体は可能ですが、「調理師」と名乗って働けるのは調理師国家試験に合格した人のみです。
調理師は、レストランやカフェなどの場で自らのセンスや独創性を生かしたオリジナルな料理を作ることもあれば、学校や病院などでは、決められた献立に沿って大量に同じメニューを作ることもあります。
いずれの場でも、調理師は食や料理に関する広い知識や調理技術を生かして、お客さまや利用者のために腕を振るいます。
衛生面にも十分に気をつけて、安心・安全な食を届けます。
専門とする料理のジャンルは人によって異なる
そもそも調理師とは、調理を行う人を総称する言葉です。
調理師のなかでも、日本料理を専門とする人は「板前」、寿司を専門とする人は「寿司職人」、西洋料理のコック長は「シェフ」など、さまざまな呼ばれ方がされています。
各調理師には専門とする料理のジャンルがあり、厨房に入ると見習いからキャリアをスタートして、各料理で求められる知識と技術を身につけていきます。
調理師になるには
学校で調理の基礎を習得してから現場に出る人も多い
調理師を目指す人は、調理師免許を取得できる調理師専門学校を卒業してから就職するケースが多いです。
調理師専門学校に通えば、在学中に調理の基本がひと通り習得できますし、食材の扱い方、厨房での動き方の基礎も学べます。
まったく未経験で調理の仕事をする人よりも、スムーズに仕事になじめるでしょう。
学校卒業後はレストランやホテル、旅館などに就職し、調理の仕事をスタートします。
新人は基本的に見習いからスタートする
調理師の免許の有無に関わらず、就職後の新人は基本的に「見習い」としてキャリアをスタートします。
下積みの時期は勤務先によっても異なりますが、厳しいところでは一人前とみなされるまでに5~10年ほどかかります。
最初の1~2年は雑用や洗い物ばかりで、この時期の厳しさに耐えられずに仕事を辞めてしまう人もいるのが現実です。
調理師専門学校を出ているからといって、いきなり第一線で活躍できるケースは多くありません。
調理師は現場経験が重視される職業であるため、少しでも早くキャリアをスタートするために、中学あるいは高校卒業後にすぐ修業ができる場を探す人もいます。
調理師の学校・学費
調理師専門学校は全国に数多くある
調理師を目指す人向けの代表的なが学校が、調理師専門学校です。
養成施設に認定されている調理師専門学校で1年以上学べば、無試験で調理師免許が取得できます。
専門学校では料理の基礎から学ぶことができますし、学校によっては調理師以外にも、食に関するさまざまな資格の取得を目指せます。
幅広く食や料理の知識を身につけておきたい人にはよいでしょう。
このほか、調理科のある高校や大学、短大でも調理について学べます。
大学や短大では、卒業までに最短で2〜4年が必要となりますが、調理以外の科目も履修するため、幅広い知識や教養を学ぶことができます。
ただし、調理の現場では、なによりも実務経験が重視されます。
どのような学校を出たとしても、多くの現場では、雑用をこなしながら技術を習得していく見習いからのスタートです。
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調理師の資格・試験の難易度
受験する都道府県によって問題が異なる
調理師免許は、都道府県知事が行う調理師試験に合格し、各都道府県の調理師名簿に登録されることで取得可能です。
調理師試験の試験は食文化論、衛生法規、公衆衛生学、栄養学、食品学、食品衛生学、調理理論から出題されます。
試験自体の難易度はそれほど高くなく、独学でも数ヵ月ほど勉強をすれば合格できるといわれています。
調理師試験の特徴は、受験する都道府県によって問題が異なることです。
出題傾向が違うため、受験予定の都道府県の過去問題をチェックしておきましょう。
調理師免許を取得するメリット
調理師免許は、調理の仕事をするために必須ではありません。
実際に免許を持たずに働いている人も多くいますが、一方で、調理師免許を保有していることを採用条件とするところも少なくありません。
つまり、調理師免許を取得しておくことで、就職先の選択肢が広がります。
また、免許取得のための勉強を通して、調理に関する専門知識を身につけられますし、調理師としての一定のレベルに達していることを証明しやすくなるのがメリットです。
調理師の給料・年収
経験や技術によって大きな差がつく
調理師の給料は、勤務先や働き方をはじめ、経験や技術によって大きな差が出ます。
厚生労働省の令和元年度賃金構造基本統計調査によれば、調理師の平均年収は43.8歳で341万円ほどとなっています。
しかし、見習いの新人調理師とキャリア十分のベテラン調理師では、収入には大きな差がつきます。
とくに調理師の世界では、見習い時代の給料が低めとなっており、入社1~2年目は正社員のフルタイム勤務でも、手取り15万円~20万円ほどにしかならないことがあります。
一人前とみなされるまでは、厳しい生活を強いられる可能性があることは覚悟しておいたほうがよいでしょう。
待遇や福利厚生は勤務先によって異なる
調理師は拘束時間が長くなりがちな仕事です。
営業時間外に仕込みや厨房の清掃、片付けなどを「サービス残業」のようなかたちで行わなくてはならない職場もあるのが実情です。
大手企業や有名ホテルに就職すれば、ある程度の安定した待遇は期待できますが、個人経営の飲食店ではボーナスの支給がなく、福利厚生もほとんど見込めない場合もめずらしくありません。
この職業でよい待遇を得るには、ひたすら技術力を高めていくしかありません。
一流レストランや老舗割烹の料理長、板長クラスになれば、給料は大幅にアップして1000万円クラスになる人も出てきます。
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調理師の現状と将来性・今後の見通し
活躍の場が多岐にわたり、技術があれば職には困らない
外食産業が発展した現代では、調理師の需要は安定しており、今後もなくなることはないでしょう。
しかし、コンビニなどが惣菜やお弁当の販売を強化したり、配食サービスを利用したりする人が増加したりなど、飲食店の競争相手が増えているのが実情です。
これに対抗しようと、各飲食店では過度なコストカットや長時間労働を強いるケースが目立ち、調理師を取り巻く環境は厳しくなっています。
一方、こうした現状を打破して調理師不足を解消しようと、待遇面の改善をする企業も増えつつあります。
調理師は、人が生きるために不可欠な「食」を担う職種ですし、日本には和食から洋食、中華、エスニック料理までさまざまな国の料理を楽しめる飲食店があり、活躍の場は多岐にわたります。
基本的に、調理の確かな技術があればいつでも職に就くことができ、就職口には困りません。
また、ゆくゆくは独立して自分の店を開く人や、海外に渡ってさらなる飛躍を目指すなど、多様なキャリアを実現できる可能性を秘めた職業です。
調理師の就職先・活躍の場
飲食店以外にも多様な活躍の場がある
調理師が働く場として最も代表的といえるのが、レストランやカフェなどの飲食店です。
日本全国、どの街にも大小さまざまな飲食店があり、企業が経営する大手チェーン店から個人経営の地域密着型の小さな店まで、その個性や種類も多彩です。
このほか、ホテルや旅館、結婚式場内にあるレストランや、食品メーカー、ケータリングサービスを手掛ける企業で調理のスキルを発揮する人もいます。
あるいは学校の給食室、また企業や病院・福祉施設の調理場に勤務して、学生や各施設の利用者に向けた食事を作る調理師もいます。
調理師として活躍できる場は非常に数が多く、各企業や施設で求められる技術レベルや経験が異なります。
また、経験を積んだ調理師は独立し、自分で飲食店を開業する人も少なくありません。
調理師の1日
勤務先によっては拘束時間が長くなる
調理師の1日のスケジュールは、勤務先や職場での役割、立場によって異なります。
ランチからディナーまで長時間にわたって営業する飲食店ではシフトを組んで働くこともあれば、通しで長時間勤務する日もあります。
また、営業時間外に仕込みや清掃、片付けなどをする必要があるため、拘束時間は長くなりがちです。
ここでは、街のレストランに勤務する調理師のある1日を紹介します。
調理師のやりがい、楽しさ
料理で人を笑顔にし、感動を与えられる
調理師のやりがいのひとつは、自分の料理で人を笑顔にできることです。
自分が作った料理を食べた人が「おいしかった!」と喜んでくれることは、素直にうれしいものです。
とくにホテルやレストランで働く場合には、記念日やプロポーズの場など、お客さまの大切な1日の食事に関わることもよくあります。
自分の料理で感動してもらえたときには、自分自身をも認めてもらえたような気分になれます。
調理師の世界は厳しく、常に実力が試されるためにプレッシャーと厳しさは半端なものではありませんが、だからこそ日常のちょっとした喜びが活力となります。
また、自分の腕一つでのし上がり、独立して繁盛店を目指したり、どこまでも料理を極めていくことにやりがいを感じる人も多いです。
調理師のつらいこと、大変なこと
上下関係の厳しい世界で修業を重ねること
調理師として大変なことのひとつは、労働環境が厳しい場合が多いことです。
飲食店の現場は拘束時間が長く、古くから早出残業が当たり前の世界です。
とくに下積み期間のうちは、先輩よりも朝早く出勤し、夜は遅く帰るのが通例となっていますし、少しでも空いた時間があればスキルアップのために練習を重ねなければなりません。
休みも週に1日あればよいほうで、プライベートの時間はほとんど持てない場合もあります。
また、料理人の世界は師弟関係で成り立っているところがあり、どうしても上下関係が厳しくなりやすいです。
新人時代は先輩から厳しい叱責を受けるなど、いわゆる体育会系の雰囲気が根強い職場もあります。
加えて、重い食材を運んだり、立ちっぱなしの作業であるため、腰痛や肩こり、腱鞘炎などを発症しがちで、心身ともにハードな日々を送る人が少なくありません。
調理師に向いている人・適性
一人前の料理人になるための強い熱意があること
調理師にとって大切なのは、料理をすることが好きなのはもちろんですが、料理を極めていくためにコツコツと努力することです。
調理師の世界は決して甘いものではなく、見習いからキャリアをスタートし、何年もかけて一人前を目指さなくてはなりません。
この過程では先輩から叱られることのほうが多く、落ち込んだり逃げ出したくなったりする日もあるでしょう。
実際に、修業中に耐えられなくなり現場を離れてしまう人も決して少なくありません。
しかし、一流の調理師になるには、厳しい下積み期間を耐えて乗り切る覚悟と熱意が求められます。
食に対する向上心と探求心にあふれる人
調理師の仕事を続けるには、料理が大好きであることに加え、どれだけ向上心と探求心をもち、スキルアップのために頑張れるかが重要な要素となってきます。
料理に正解はありませんし、どれだけ上達したと思っても、上には上がいる世界です。
常に慢心せず、よりおいしい料理、美しい料理を目指して探求を続けられるタイプの人は、調理師の適性があるといえるでしょう。
専門ジャンル以外のさまざまな食や料理に関心をもつことも大事です。
調理師志望動機・目指すきっかけ
食そのものに興味があり、調理をすることが好き
調理師を目指す人は、基本的に「食べることが好き」「調理をすることが好き」というケースが共通しています。
小さいころから料理を作る母親の手伝いをしていたり、実家が飲食店を営んでいたりしたのを機に、調理師を目指す人は少なくありません。
あるいは手に職をつけて活躍できる仕事を探すなかで調理師に興味を抱く人や、料理そのものの美しさや繊細さ、芸術性に惹かれたという人もいます。
人間にとって欠かせない「食」に深く関わる職業なだけに、特別な思いをもって調理師を目指す人が多いようです。
目指す調理師の姿をイメージしておく
調理師といっても、その活躍の場はさまざまです。
飲食店で働く道ひとつとっても和食・洋食・中華など、さまざまな料理のジャンルが考えられます。
あるいは飲食店ではなく、学校給食や病院、福祉施設などで調理の仕事に携わりたいと考える人もいるでしょう。
どの道に進むかによって、身につけるべき知識や技術は変わってくるため、できるだけ早いうちに、自分が目指す調理師の姿をイメージしておくことが大切です。
調理師の雇用形態・働き方
正社員やアルバイト、独立・開業など多様な働き方
飲食店やホテルなどに勤務する調理師の雇用形態は、正社員からパート・アルバイト、派遣社員などさまざまです。
新人の調理師はまずアルバイトとして雇われ、ある程度の経験を積んだ時点で、正社員として雇用される飲食店もあります。
調理専門の派遣会社に登録し、派遣社員の形で企業や飲食店で勤務することも可能です。
また、調理師は経験を積んでいくと、独立・開業する人が少なくありません。
飲食店によっては、従業員に対して「独立支援制度」を設けており、在職中に、師匠となる人から直接、独立開業のノウハウについて指南してもらえるケースもよくあります。
オーナーや経営者となれば自分の理想の店づくりができますし、オリジナリティを追求した料理が提供できます。
調理師の勤務時間・休日・生活
勤務先によって勤務体系、労働環境が大きく異なる
勤務先にもよりますが、一般的に、調理師の仕事は勤務時間が長く、休みを自由にとりにくいのが特徴です。
規模が小さめの飲食店では、ギリギリの人数で店を回しており、1日に12時間以上の拘束時間となることも決してめずらしくはありません。
また、土日祝日が休業の職場に勤めていない限り休日は平日中心で、週に1日しか休めない場合もあります。
お盆や正月などの長期休暇は、飲食店を利用する人が多いため、世間と同じような時期で休みを取るのは難しいです。
一方、大手チェーン店や学校・病院の食堂などに勤務する場合には「早番・遅番」などシフトを組んで働くことが多く、個人店の調理師よりは、やや落ち着いた働き方が可能です。
勤務先によって、勤務体系や労働環境には大きな違いが出る職業と考えておいたほうがよいでしょう。
調理師の求人・就職状況・需要
就職先の選択肢が豊富で求人数も多い
近年は外食産業が盛んで、また人手不足から調理師の需要は非常に大きくなっています。
とくに調理師の有資格者、調理の経験者は即戦力として優遇されるため、勤務先を見つけること自体はさほど難しくないでしょう。
ただし、調理の世界は拘束時間が長めで、仕事もハードであることから離職率が高く、入れ替わりの激しい業界でもあります。
職場の雰囲気や待遇、勤務体系などは勤務先によってまったく異なるため、自分のイメージする働き方をよく考えて、応募していくことが大切です。
もし将来的に独立を目指すのであれば、著名な料理人のもとで修業を積むのが一番の近道です。
一方、個人経営のお店や小規模な飲食店では、調理から接客、運営まで幅広い経験が得られ、経営の知識も身につくなどのメリットがあります。
調理師の転職状況・未経験採用
実力主義で厳しい現場も多い
調理師は求人数が多いため、異業種から調理師を目指そうと考える人は少なくありません。
「料理が得意」「食べるのが好き」であれば、なおさらでしょう。
調理の現場には調理師免許がなくても入れるため、未経験からも挑戦しやすい仕事です。
ただし、調理の世界は実力主義で、さらに昔ながらの師弟関係がハッキリとしている職場が多いです。
調理師としては未経験の場合、たとえ高い学歴を持っていたり、これまで別の仕事でキャリアを築いてきたりした人でも、まったくゼロの状態から先輩に付き、見習いとして下積みの日々を送らなくてはなりません。
この時期の収入は安定せず、あまりゆとりのある生活は送れない可能性があるため、転職の際はそれなりの準備や貯金をしておく必要があるでしょう。
調理師が公務員として働くには?
自治体の採用試験を受験する必要があるが、採用数は少なめ
調理師の働き方のひとつとして、公務員になる道があります。
公務員の調理師の活躍の場は、おもに学校給食を提供する給食施設や学校などです。
これらの場では、レストランのように一人ひとりのお客さまのオーダーに細かく対応するのではなく、「栄養士」が事前に考えた献立に基づいて、子どもたちに安全・安心かつおいしい給食を作ります。
「大量調理」といわれるような、数百人分の給食を一度に作ることになるため、複数の調理スタッフが分業で調理を行います。
公務員の調理師を目指す場合、各自治体(都道府県・市町村)の公務員試験を受験し、合格して採用される必要があります。
なお、近年は給食調理を民間企業に外部委託するケースが増えており、公務員の調理師として働けるチャンスは減少傾向です。