美容師になるには
この記事では、美容師になるまでのルートや資格を取得する方法、美容師として働き始めてからのキャリアパスなどについて紹介しています。
美容師になるには
ここでは、美容師になるまでの道のりについて解説します。
必要な資格は「美容師免許」
美容師として働くには、美容師法に基づいた「美容師免許」が必要です。
この免許取得のためには、厚生労働省が指定する美容養成施設で所定の教育を受け、国家試験を受験しなくてはなりません。
美容養成施設は、以下の3種類があります。
- 昼間部2年
- 夜間部2年
- 通信課程3年
これらいずれかに進学し、修了することで、国家試験の受験資格を得ることができます。
そして、国家試験に合格することで美容師免許の交付を受けられます。
現場で使える技術を身につける
美容師養成学校を卒業して美容師免許を取得すると、いよいよ美容師としての生活がスタートします。
美容師の働き方としては、美容室に就職すること、あるいは「ヘアメイクアーティスト」として事務所に所属することの2パターンが一般的です。
ただし、新人の美容師は美容室へ就職する人が大半です。
結婚式場の美容室などに就職する人もいますが、倍率は高めとなっています。
美容師は日本全国で需要がある職業のため、就職の状況は悪くなく、ほとんどの美容学生が就職先を見つけることができています。
とはいえ、美容師として第一線で活躍するには、「カット」「カラーリング」「パーマネントウエーブ」「セット」といった各技術をきちんと身につけなくてはなりません。
国家試験をパスし、免許を取得した時点では、現場で通用するような確かな技術はまだ身についていません。
学校内で得られる知識は国家試験対策に近しいところがあり、現実的にお客さまに向けた技術とはいえないところがあるため、実際に施術として使える技術は、就職後に努力して身につける必要があります。
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美容師の資格・難易度
美容師の国家試験は「筆記試験」と「実技試験」があります。
筆記試験については、専門学校の授業をきちんと受け、過去問で対策しておけば十分に合格できる内容です。
実技試験に関しては、日頃の反復練習が大切です。
筆記試験はパスしても、実技試験で不合格になってしまう人は少なくなく、本番で緊張して頭が真っ白になってしまったり、焦ったりしないように気を付けることも大切です。
ただし、美容師の国家試験は毎年合格率が高めであり、受験者数が減少していることを考えると、今後も合格率が極端に下がることはないと考えられます。
きちんと学校で学んでいれば、不合格になる心配はほとんどいりません。
美容師になるための学校の種類(専門学校・大学・通信課程)・必要な資格は?
美容師になるための学校(養成施設)は、美容専門学校が中心です。
専門学校に比べると数は非常に少ないですが、一部の大学や短大でも、美容師国家資格の受験資格が得られます。
各学校の特徴について紹介します。
美容師になるための学校の種類
美容師を目指す人の多くは、美容専門学校に2年から3年間通った後、国家試験を受けます。
基本的には1年間で基礎を経験し、2年目は自分の興味のある分野を絞り込んで勉強します。
夜間の学校でも2年間通って国家試験を受けることになりますが、夕方からの授業であり、国家試験に向けた授業が中心となっています。
通信課程では3年間学んだ後に国家試験を受けることになり、ほとんどの人が美容室で見習い・アシスタントとして働きながら、夕方、もしくは夏期・冬期に学校へ集中して通い、必須科目を受講しています。
美容専門学校といっても、学校ごとにさまざまな特色があるため、しっかりと調べてから進学しましょう。
美容師になるための専門学校
日本全国にはたくさんの美容専門学校があります。
各学校にはそれぞれ特徴があり、校風や学費に関しても異なります。
「美容師になるための知識や技術を身につける」という点で基本的に大差はないですが、学校によって科目の種類やネームバリューに違いが見られます。
美容専門学校の科目の種類
美容学校では国家試験対策の他に、以下のような内容が授業内容として組み込まれることがあります。
- エステ・ネイルなどの美容に関する科目
- ブライダルなど特殊な美容に関する科目
- デッサン・ヘアショーなどヘアデザインに関する科目
- 海外研修 など
こうしたさまざまな科目を体験することは、美容師として働く上で貴重な経験になるでしょう。
たとえば美容学校を卒業して、美容師としてではなくエステやネイルの世界に目標を変更する人もいますし、ブライダルの魅力に気が付き花嫁のヘアメイクを担当する就職先を選ぶ人もいます。
在学中にさまざまな体験をすることで自分の明確なビジョンを設定したい人は、より多くの科目が用意されている学校を選ぶのもおすすめです。
美容専門学校のネームバリュー
就職の際、有名学校を出ているからといって「優秀」だとされることはまずありません。
しかし有名学校は卒業生が多く、その点でメリットを感じられることがあります。
たとえば、面接を受けに行ったサロンのオーナーやスタイリスト、先輩にあたる人が、自分と同じ学校出身ということで採用されることもあるようです。
また、大手の美容専門学校は美容室やサロンとのパイプが太いため、就職先を見つけやすいといったメリットもあります。
美容専門学校の選び方
美容専門学校は、学費が安いから、規模が小さいからといって十分な訓練が受けられないということはまずありません。
もちろん逆も同じことがいえます。
つまり、美容専門学校に通って国家資格をパスすることを目的とするならば、自宅から通いやすいところを選べば十分です。
それ以外に、友人をできるだけ増やしたい、いろいろな体験を学生時代にしたいなど目的がある場合は、それに見合う学校を選択するのがよいでしょう。
美容専門学校の昼間制と通信制の違い
美容専門学校には、昼間制と通信制があります。
以下では、双方のさまざまな違いを紹介します。これらをしっかりと踏まえた上で進学先を選ぶようにしましょう。
在学年数の違い
昼間制の場合、「2年間」の通学で学科・実習合わせて「1400時間以上」の履修で美容師国家試験が受けられます。
一方、通信制は「3年間」の通学が必要で「300時間以上(非従事者は600時間以上)」の履修で美容師国家試験が受けられます。
学習方法の違い
昼間制の専門学校では、決められた時間に決められた授業を受けます。
そのため、しっかりと授業を受けてさえいれば一定の知識と技術が身についた状態で卒業できます。
一方、通信制の場合は自分で課題をこなさなくてはならないため、自主的に勉強をする必要があります。
自分でスケジュールを決めて計画的に勉強しなくては、何年かかっても卒業できないということもあり得るため注意が必要です。
学費の違い
学費は通信制のほうが安いです。
昼間制の1/3から1/4程度の学費に抑えることができ、家庭の事情で高い学費を払えない人でも十分な教育が受けられますし、アルバイトをしながらでも勉強可能です。
技術レベルの違い
国家試験対策としては、昼間制のほうが有利になるでしょう。
週5日の授業の大半を国家試験対策に費やし、講師がつきっきりで対策するため、十分な技術と知識が得られやすい環境が整っています。
通信制では、多くの学生が昼間には美容室などで働いているため、国家試験用の対策は空いた時間や、300時間という限られた授業内で集中して行わなくてはなりません。
ただし、美容室で働いている場合は、先輩の施術を間近で見たり、実際に働いている美容室で練習も可能です。
国家試験にパスしてからサロンワークに移行すると、通信制でサロンワークを経験していた人の技術レベルは、昼間制と比較にならないほど差がついていることが多いようです。
卒業後の違い
現場で技術を学びながら国家試験対策がしやすい通信制のほうが、卒業をして第一線でいち早く活躍する上では有利になりやすいです。
ただし、通信制卒業者よりも専門学校卒業者を優先して採用する企業もあるため、就職先に希望がある場合には、事前に各美容室の採用状況を調べておいたほうがよいでしょう。
通信制のメリット・デメリット
通信制の最大のメリットは、時間を自由に使えることです。
アルバイトをしながら、美容室で働きながらなど、自分に合ったスタイルで勉強できます。
自分の都合で勉強ができるため、ときにはプライベートや自分の体調を優先することも可能です。
デメリットとしては、自分でしっかりと計画をたて自己管理しなくては勉強が進まないことです。
また、学校へ通う回数が少ないため、同じ夢を持つ人と出会う機会が少なく、人脈がつくりにくいことが挙げられます。
美容師になるための大学・短大
美容師を目指す人のほとんどは専門学校に進学しており、大学や短大へ進む人はそこまで多くありません。
ただし、一部の大学や短大で、美容師の養成課程を設置している学部・学科では、美容師国家試験の受験資格が得られます。
四年制大学の中には、ヘアメイクのほか、ファッションも含めて総合的に「美」に関する深い学びができるところもあります。
ただし、専門学校に比べると非常に数が少ないことや、大学に通った場合は資格取得まで専門学校よりも時間がかかることになるため、将来のことを見据えてどの学校に通うかを慎重に検討していきましょう。
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美容師に向いている人
美容師の仕事に大切なのは「美容に関する探究心を持って、コツコツと努力を続けていけるかどうか」です。
美容業務で必要な技術スキルは、人によって習得スピードには差があるものの、反復練習によってクリアすることができるものばかりです。
よって、手先の器用さはさほど気にしなくても構いません。
それよりも、一人前の美容師になるためには、現場に出てからの「アシスタント」の時期をいかに乗り越えられるかが重要です。
地道な業務を続けていく粘り強さ、美容の仕事に対する強い情熱を持つ人でなくては務まらないかもしれません。
美容師のキャリアプラン・キャリアパス
練習を重ねてスタイリストになる
美容室に就職した場合、まずは店内でサロンワークを重ねながら技術の向上を目指します。
就職して数年間はアシスタントとしてシャンプーやブローなどの簡単な施術・掃除・先輩スタイリストの手伝いなどをし、営業時間外に練習を行います。
美容師という職業は技術あってこそのものなので、反復練習を日々行い、技術を身につけていくことが大切です。
休日には研修があることも多く、休む暇がないほど忙しい日々を送る人もいます。
練習を重ね、すべてのメニューのテスト(社内テスト)をパスすると、スタイリストに昇格します。
ここで初めて、ご来店されるお客さまに1対1での提案やスタイルの提供ができるようになります。
スタイリストデビュー後
スタイリストになると、いかに指名客を増やしていくかが勝負となります。
カットや接客の技術を磨き、お客さまの支持を得ることが必要です。
キャリアを積んだ後は、より高度な技術を身につけて昇格し「トップスタイリスト」や「ディレクター」などの肩書で活躍する人、「店長」や「エリアマネージャー」として店舗や会社の運営に関わる仕事をする人もいます。
また、自分で店舗を開業し独立する人や、メイクアップアーティストになる人など、多様な活躍の道が考えられます。
美容師を目指せる年齢は?
一般的に、初めて美容師を目指す人の多くは10代後半から20代です。
何歳からでも資格を取って目指せる職業ではあるものの、美容師は華やかな見た目とは裏腹に体力勝負の仕事のため、あまり年齢を重ねていると体力的に厳しいと感じるかもしれません。
ただし、美容師の資格には定年もないため、自身が健康でお客さまから必要とされれば何歳まででも働くことができます。
美容師になったあとにあるとよい資格は?
美容師として働き始めてからも、さらに業務の幅を広げたり、ステップアップを目指したりするために、特別な資格を取得する人もいます。
ここでは、美容師になったあとにあるとよい資格を紹介します。
管理美容師
「管理美容師」は、多くの美容室で必要とされる資格です。
「美容師法第12条の3」により、「美容師である従業者の数が常時2人以上である美容所の開設者は、当該美容所を衛生的に管理させるため、美容所ごとに、管理美容師を置かなければならない」とされていて、美容師一人だけで営業する場合以外は、すべての美容室に必須のものなのです。
管理美容師は、美容師の免許を受けた後3年以上美容の業務に従事し、講習に参加することが必要です。
各都道府県により差はありますが、講習は年に2回開催され、3日間にわたり受講するのが一般的です。
福祉美容師
「福祉美容師」とは、NPO法人日本理美容福祉協会の認定資格です。
高齢者や体に障害がある人などへ施術をするために、介助や介護福祉の知識を身につけます。
福祉美容師として自宅に出張したり介護施設等で施術をしたりする人も増えつつあり、これからの高齢化社会を担う職業として、注目を集めている資格です。
着付け資格
美容室の中には、着付けを行うところもあり、着付けができると手当てが支給されることもあります。
着付けをするために特別な資格は必要ありませんが、国家資格の「着付け技能検定」などを取得していると、美容師として有利になります。
美容師免許がなくてもできる仕事
誤解されている方も多いですが、美容師免許を持っていなくても、店員として美容院で働くこと自体は可能です。
店の掃除や片付け、受付、電話応対程度であれば行うことが可能で、美容師以外に受付スタッフを雇っているサロンもあります。
一方、美容室では美容師免許の所持者にしかできない業務があります。
「美容師法」では、第6条に「無免許営業の禁止」となっており、「美容師でなければ、美容を業としてならない」といったことが書かれています。
美容師免許を持っていない場合、美容師が日々行っているお客さまへのカットやパーマ・カラー・シャンプーをしてはいけないということになります。
現場ではこの線引きが曖昧になっていることも多く、とくに美容学生は学校に通いながら美容室で働くことがあります。
そういった人たちはアシスタント業務としてシャンプーやブローなどの簡単な施術は任されているケースもあるようですが、本来は美容の施術を提供できるのは美容師免許を取得した人だけとなっています。
「美容師になるには?」まとめ
美容師として働き始めるには、まず美容養成学校で所定の課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
多くの新人美容師は美容室に就職し、アシスタントから地道に技術や接客スキルを磨いてスタイリストを目指します。
自分の腕で勝負する専門職であるため、美容師になるまでも、なってからも、コツコツと努力を積み重ねる意識が大切な仕事です。