美容師の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「美容師」とは
美とヘアスタイルの専門家。技術と創造力を駆使して、お客さまを美しく変身させる。
美容師は、おもに美容室において、カット、カラー、セット、シャンプーブロー、パーマなどの施術をし、お客さまに喜んでもらえるヘアスタイルを創り上げる仕事です。
ヘアスタイルに関することだけでなく、ネイル、メイクや着付けなどの施術を行うこともあります。
美容師として働くためには、国家資格である「美容師免許」が必要です。
美容師免許を取得するためには、通学課程(2年)または通信過程(3年)美容専門学校で所定の科目を修了したのち、美容師国家試験に合格しなければなりません。
美容師の待遇は、アシスタント時代は厳しい場合が多いですが、トップスタイリストになったり、独立したりすることによって、高収入を得ている人もいます。
美容師として経験を積むと、メイクアップアーティストや着付け師などの勉強をして、業務の幅を広げる人もいます。
「美容師」の仕事紹介
美容師の仕事内容
お客さまが理想とするヘアスタイルを創り上げる
美容師の仕事は、お客さまの髪の毛のカット、カラーリング・ヘアセット・パーマ・シャンプー・ブローなどの施術をし、希望のヘアスタイルを提供することです。
美容師が働く場所は美容室、美容院、ヘアサロンなどの店舗で、これらの店舗では、ヘアスタイルに関するサービスを中心に提供しています。
そのなかでも最新の薬剤を使ったカラーリングを売りにしているお店、メンズのヘアカットが得意なお店など、店舗ごとに特徴があります。
ヘアスタイル以外のメニューに力を入れることも
美容室やヘアサロンによっては、ヘッドスパやハンドマッサージなどのリラクゼーションや、ネイル、エステなどといった、ヘアスタイリング以外の美容メニューも用意しているところがあります。
その場合、各領域のプロである「ネイリスト」や「エステティシャン」などと一緒に働くケースや、美容師自身が他の資格も取得して各種メニューを提供するケースも考えられます。
なお、美容師と似た職業に「理容師」がありますが、理容師と美容師は必要な国家資格が異なり、施術できる内容も異なります。
美容師になるには
まずは美容師免許の取得を目指す
美容師として働くには「美容師免許」が必要です。
美容師免許取得のためには、厚生労働省が指定する美容学校(昼間部2年、夜間部2年、通信科3年のいずれか)に進学し、修了します。
これらの学校を卒業すると国家試験の受験資格が得られ、さらに国家試験に合格することで美容師免許の交付を受けられます。
多くの人は美容師免許を取得すると、美容室やヘアサロンへ就職して勤務します。
アシスタントとして経験を積む
美容師の世界では、美容師免許を取得した時点では、現場で通用するような確かな技術はまだ身についていないと考えられるのが通常です。
実際に施術として使える技術は、就職後に現場で地道な練習と勉強を続けながら習得しなくてはなりません。
多くの美容室やヘアサロンでは、新人美容師は「アシスタント」として採用され、営業中はシャンプーやブローなどの簡単な施術と、そのほか掃除や先輩スタイリストの手伝いなどを中心におこないます。
練習を繰り返し、一定の段階にくると就職先によっては社内テストが実施され、先輩に認められると、ようやくスタイリストとしてデビューします。
美容師の学校・学費
さまざまな美容専門学校から選択できる
美容師を目指す人は、美容専門学校に2年間(通信科は3年)通ったのち、国家試験を受けることになります。
基本的には1年間で基礎を経験し、2年目は自分の興味のある分野を絞り込み勉強します。
夜間の学校でも2年間通って国家試験を受けることになりますが、夕方からの授業であり、国家試験に向けた授業が中心となっています。
通信制では3年間学んで国家試験を受けることになり、ほとんどの人が美容室で見習いとして働きながら、夕方、もしくは夏期、冬期に学校へ集中して通い、必須科目を受講しています。
美容専門学校は全国各地にたくさんあり、学校の規模や学費もまちまちです。
また、学校によってカリキュラムや学内イベントなどにも違いがあるため、いくつかの学校を比較するとよいでしょう。
美容師の資格・試験の難易度
筆記と実技の2種類の試験がある
美容師国家試験は、毎年2月と8月に行われ、多くの学生は在学中の2月に受験します。
試験内容は「筆記試験」と「実技試験」の2種類で構成されており、どちらにも合格する必要があります。
しかし、美容師国家試験の合格率は、新卒者であれば毎年90%以上で、そこまで難関な試験ではありません。
とくに筆記試験については、美容専門学校の授業をきちんと受け、過去問で対策しておけば十分に合格できる内容です。
暗記で対応できる問題も多いため、教科書やテキスト、過去問題集などを使ってきちんと勉強時間を確保していれば安心です。
実技試験は日頃の練習が合否を分ける
美容師国家試験の実技試験に関しては、なによりも日頃の反復練習が大切です。
筆記試験はパスしても、実技試験の準備が不十分で不合格になってしまう人がいます。
また、本番で緊張して頭が真っ白になってしまったり、焦ったりしないようにするためにも、しっかりと練習をしておきましょう。
美容師の給料・年収
アシスタント時代の給料は低め
美容師の平均年収は、理容師と合わせた調査では310万円前後とされています。
もちろん勤務先や経験、能力などによっても差はでますが、上記の数字だけ見ると、あまり高い収入は望みにくいといえます。
とくに、若手のうちの給料は低くなりがちなのが、美容師の特徴です。
現場に出たばかりの時期はアシスタントとして勤務し、正社員でも手取りの月給は10万円台前半になることもあります。
スタイリストに昇格してやっと月給20万円ほどになりますが、そこまでに何年かかかるケースが多いため、アシスタント時代は厳しい生活も覚悟しておいたほうがよいでしょう。
指名が増えると大きく収入が上がる場合も
「歩合制」をとっている美容室では、スタイリストとして指名してくれるお客さまが増えれば増えるほど収入が増えます。
売れっ子の美容師になれば、年収1000万円を超えることも夢ではなく、勤める店舗やスキルにより年収に大きく差が出るのが美容師の世界です。
また、正社員以外に、フリーランスとして働く人や、独立して自分のサロンを立ち上げる人もいます。
さまざまな働き方ができることもあり、その点でも個々の収入に差が出やすい職業です。
関連記事美容師の年収・給料はいくら? 手取り額やスタイリスト・アシスタントの収入の違いも解説
美容師の現状と将来性・今後の見通し
福祉分野やグローバルに活躍する美容師も
現在、美容業界は競争がますます激化しており、決して好景気とはいえません。
しかし「美しくなりたい」「自分に似合うヘアスタイルにしたい」という思いはいつの時代でも多くの人が抱くものであり、美容師という仕事がなくなることはないでしょう。
美容師の技術は世界中に共通するものなので、まだまだ可能性のある業界だといえます。
とくに近年では、高いスキルを武器に海外に進出し、グローバルに活躍する美容室・美容師も増えています。
グローバルな視点と日本人特有の質の高いサービス力があれば、海外でもやっていくことはできるでしょう。
最近では高齢化社会を見据えて、福祉美容師としてのスキルを磨き、活躍の幅を広げている人もいます。
どんな時代にも臨機応変に対応できる視点と行動力が、これからの美容師として生き残っていくためには必要な要素のひとつといえるでしょう。
美容師の就職先・活躍の場
美容室以外にも活躍の場がある
美容師の活躍の場といえば、美容室や美容院、ヘアサロンなどが一般的ですが、ほかにもさまざまな活躍の場があります。
たとえば、新郎新婦や来客のヘアセットを行う結婚式場、芸能人のヘアセットを行うテレビ局、モデルのヘアセットを行う雑誌の撮影やファッションショーなども、美容師の活躍の場です。
ヘアアレンジとメイクを同時に行えるスキルを身につけると、女優やモデルなどにメイクを施す「メイクアップアーティスト」に転身する人もいます。
最近はトータルビューティーの考え方が広まっており、ヘアスタイルのみならず、幅広い「美」を追求して、仕事の幅を広げている美容師も増えています。
美容師の1日
店舗の営業時間に合わせて働く
美容室やヘアサロンなどで働く美容師は、勤務先となる店舗の営業時間に合わせて働きます。
一般的には10時頃から20時頃で営業する店舗が多いですが、都市部では閉店時間をもっと遅めている場合もあります。
営業時間や店舗の方針によっても変わりますが、美容師の労働時間は長くなりがちです。
ここでは、一般的な美容室で働く美容師のある1日を紹介します。
関連記事美容師の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
美容師のやりがい、楽しさ
自分のスキルでお客さまを喜ばせることができる
美容師は、専門的な知識とスキルを駆使してお客さまの望むヘアスタイルを実現しますが、そこにはクリエイティブな要素もたくさん含まれています。
たとえお客さまが同じように要望を伝えたとしても、担当する美容師によって、できあがりは変わります。
技術力のみならず、センスや感性まで求められるのが美容師の仕事です。
自身の施術によって目の前のお客さまを喜ばせることができたときに、美容師は大きなやりがいを感じられます。
自分がスキルアップして指名客が増えれば達成感が増しますし、収入アップにもつながりやすく、さらにモチベーションがアップします。
美容師のつらいこと、大変なこと
休みが少なく長時間労働になりがち
美容師は忙しく働いている人が多いです。
休日は週1日程度、月にして4日から6日が平均的で、そのわずかな休日も技術やマナーなどの講習に費やすこともあり、他業種と比べると休みが少ない部類に入るでしょう。
また、美容室やヘアサロンは営業時間が長いために、美容師は朝早くから夜遅くまで長時間働くことが多いです。
プライベートな時間があまりとれず、その点につらいと感じることもあるかもしれません。
さらに、美容師はさまざまな身体のトラブルを抱えがちです。
とくに手荒れに悩まされている美容師は多いですし、立ち仕事で腰痛になったり、腕や肩の痛みに悩む人もいます。
美容師に向いている人・適性
研究熱心で練習をコツコツと続けられること
美容師の仕事で大切なのは「探究心を持って、やるべきことをコツコツと続けていけるかどうか」ということに尽きます。
美容業務で必要な技術スキルは、人によって習得スピードには差がありますが、反復練習によってクリアすることができるものばかりなので、手先の器用さは気にしなくても構いません。
見習いやアシスタント時代は、地道な作業や練習の日々が続き、この時期に仕事を嫌になってしまう人もいます。
ですが、一人前の美容師として活躍するためには、見習いやアシスタント時代を乗り越えるしかありません。
少しつらいことがあっても、コツコツと仕事を続けていく粘り強さ、強い心を持つ人であれば、美容師として成長し続けられるでしょう。
美容師志望動機・目指すきっかけ
国家資格を生かし手に職をつけて働きたい
雑誌やSNSで人気を集めているカリスマ美容師に憧れて、美容師を目指したという人は少なくありません。
一時期の美容師ブームは去ったものの、いまだに美容師の人気は衰えず、多くの人を美しくしたいと美容師を目指す若者は大勢います。
また、美容師は一度国家資格を取得してスキルを身につければ一生働ける職業です。
日本全国場所を問わずに資格を生かし、性別や年齢関係なく働けることから、「手に職」を求めて美容師を目指す人も多いです。
こうしたことから、10代の若者だけではなく、社会人になってから美容師を目指す人もいます。
関連記事美容師の志望動機と例文・面接で気をつけるべきことは?
美容師の雇用形態・働き方
フリーランスで働く美容師も
美容師の多くは美容室やヘアサロンに就職し、店舗のスタッフとして働いています。
雇用形態は正社員、派遣社員、アルバイト・パートなどが主流ですが、なかには店舗に所属せず「フリーランス」の形で働く美容師も存在します。
フリーランスの美容師は「面貸しの美容師」などと呼ばれ、美容室と業務委託契約を結び、「時間あたり」「1日あたり」で使用料を支払い、美容室内の一部を借りて施術を行います。
雇われて働く形態とは異なり、自由なスタイルで働きやすいことが魅力です。
しかし自分の名前そのものでお客さまを獲得しなくてはならないため、雇われるのとはまた違う厳しさや苦労があります。
美容師の勤務時間・休日・生活
長時間労働になりやすい仕事
美容業界は長時間労働が常態化しており、忙しく働いている美容師が非常に多いです。
店舗ごとに定めている労働時間と、実際の拘束時間はだいぶ異なる美容室も多いようです。
拘束時間が長いうえ、ほとんどの美容師は営業終了後、技術向上のための時間を自分で作ったり教えたりしているため、無給で残業をしていることになります。
練習内容によっては休日を返上して練習する場合もあり、とくにアシスタント時代はあまり自由な時間を作れないことも多いです。
最近では、できるだけ休みをしっかりとり、オンオフのメリハリを大切に働くことを重視する美容室も増えていますが、それでもある程度の忙しさは覚悟しておいたほうがよいでしょう。
美容師の求人・就職状況・需要
求人は多いが人気のある美容室は狭き門
美容室の数は一時期に比べれば少し減少傾向といわれますが、それでも日本全国、あらゆる街に数多くの美容室があります。
慢性的に人手不足の美容室もあるため、美容師免許を持っている人であれば、就職先が見つからないということはほとんどないでしょう。
しかし、都市部の人気店では採用倍率が高く、狭き門となっています。
とくに最近では、即戦力になれる中途採用を優先して行うところが増え、新卒者の採用数を少なくしている美容室も増えているようです。
できるだけ条件がよく、希望の美容室への就職を考えているのであれば、学生時代にライバルに差をつけるだけの実力を磨いておく努力が不可欠です。
美容師の転職状況・未経験採用
働きながら美容師を目指すこともできる
社会人としてすでに働いている人が、美容師への転職を目指す例は実際に見られます。
もし働きながら美容師になるための勉強をしたい場合には、夜間や通信制の美容専門学校に通う方法が挙げられます。
美容師になるためには美容師免許を取得しなければスタートラインにも立てないため、何とか専門学校で学ぶ時間を確保する必要があります。
美容師免許を取得すれば、新卒者と同じように美容師として採用されるチャンスが得られます。
しかし、転職者でも美容師としてのキャリアはアシスタントからのスタートになるため、厳しい下積み時代を乗り越える覚悟が求められます。
アシスタント時代は待遇があまり恵まれないことや、体力的な問題を考えると、できるだけ早いうちに美容師への転職を決めることをおすすめします。
美容専門学校で勉強すること・学生生活
美容師としての知識・技術を基礎から学ぶ
美容専門学校では、美容師になるための知識や技術を基礎から学びます。
具体的には、国家試験を受けるための必修授業として「学科授業」と「実習授業」が用意され、昼間部の場合、合計1400時間以上履修することが定められています。
美容専門学校によってカリキュラムには多少の違いがありますが、学科と実技で学ぶのは、おもに以下のような内容です。
学科
・関係法規
・衛生管理
・保健
・運営管理
・技術理論
実習
・カッティング
・ワインディング
・セッティング
・その他(カラーリング、メイク、着付け、ネイルなど)
美容専門学校で所定のカリキュラムを修了すると、国家試験の受験資格が得られます。
国家試験対策の授業にも力を入れている学校が多いため、学校でしっかりと学習していれば合格は決して難しいものではありません。
授業以外に、校内イベントとして、ヘアメイクに関するショーやコンテストなどが行われる学校も多いです。
美容師の仕事道具
どの美容師にも欠かせない仕事道具がある
美容師は、ハサミはもちろんのこと、さまざまな道具を駆使して理想のヘアスタイルを創り出していきます。
ここでは、美容師がよう使う仕事道具を簡単に紹介します。
<ハサミ(シザー)>
髪の毛をカットするのに使うのがハサミ(シザー)です。
同じように見えるハサミ類も、実は「ベーシック」「セイニング」「スライド」などの名称がついており、それぞれ特徴が異なります。
<コーム>
コームとは、刃が直線状に並んだ櫛(くし)のことです。
目の粗さはさまざまで、髪の毛を揃えたり、取り分けたりするときに使います。
<シザーケース>
ハサミやコームを入れるためのケースで、腰に巻いたり肩から掛けたりして使います。
<ブラシ>
髪の毛をブローしたり、セットしたりするときに使うのがブラシです。
「デンマンブラシ」「ロールブラシ」「クッションブラシ」などがあります。
<ダッカール>
カットやカラーをしやすくするために、髪の毛を留めるクリップのことです。
介護美容師・福祉美容師とは? 必要な資格はある?
高齢者や障害のある人に対しても安心して施術できる美容師
美容師の一種として「介護美容師・福祉美容師」と呼ばれる人たちがいます。
介護美容師・福祉美容師とは、高齢などで介護が必要な人や障害を抱える人に向けて、ヘアカットなどの施術をする美容師のことです。
施術を希望するお客さまの自宅や病院、老人ホームなどの施設へ直接出向いて施術することが多いです。
介護美容師・福祉美容師になるには、通常の美容師免許を取得したうえで、介護・福祉に関連する知識の習得をする必要があります。
資格としては美容師免許さえ持っていれば問題ありませんが、別途「認定福祉美容介護師」や「福祉理美容士」などの資格取得を目指すことで、介護美容師・福祉美容師としての知識やスキルを備えられます。
なかには介護職としての専門資格を取得する人もいますが、取得ハードルがやや高いため、さほど例は多くありません。
高齢化社会が進むなかで、介護や福祉の領域でも活躍できる美容師の需要は高まっています。
美容師免許が生かせる仕事は?
美容やリラクゼーション関連の仕事がある
美容師免許を取得した人は、美容師の仕事のみで長く活躍し続ける人も多いですが、なかには美容師の経験を生かしつつ、他の美容・リラクゼーション関連の仕事の勉強にも着手する人がいます。
美容師免許が生かせるおもな仕事には、下記のようなものがあります。
どれも美容師と関連性がある仕事で、幅広い知識・スキルを身につけることで活躍できる場が広がるでしょう。
メイクアップアーティスト
モデルやタレントの撮影現場で、あるいは結婚式などのイベント時にお客さまのヘアメイクを担当します。
ネイリスト
爪を整えたりネイルアートをしたりして、人の爪を美しくする仕事です。
エステティシャン
ボディケアやフェイシャルなどの施術を通して、人の肌や身体をより美しくします。
着付け師
慶事や弔事などの際に着用される着物を美しく着付ける仕事です。