小説家になるには
社会人生活を経験し、社会の空気を肌で感ることがよい作品作りにつながることもあるでしょう。
早く作家になりたいと考える人も多いですが、本当によい作品が書けるのか、これからのキャリアプランを考えることも大切です。
また出版社の主催する文学賞に応募し、賞を受賞して書籍化されるというのが、一般的なデビューまでの流れで、プロの小説家になりたい人は応募する文学賞に間に合うように小説を書き出します。
さらに近年では、出版社と契約して自費出版や同人誌活動などからデビューを目指す形もあります。
この記事では、小説家になるために必要なことを解説します。
小説家になるきっかけ
社会人生活を経て作家に
小説家になったきっかけは、
- 小説家を目指して文学賞に応募して、果夢の小説家になれた人
- 小説を趣味で書いていて、たまたま文学賞に出したら受賞し、小説家の道を歩むことになった人
など作家それぞれですが、大半は社会人生活を経て小説家になっています。
社会人経験を生かした作品
社会のなんたるかも知らず、社会の荒波に揉まれもしないで小説家になった人というのは会社を知らなければ社会も知りません。
社会の空気を肌で感じ、それを実感できない人は、よい作品を書くことはできません。
出来るだけ早く小説家になりたいと思っている人も大勢いると思いますが、自分が経験してきた道のりを思い返し、本当によい作品が書けるのか、これからのキャリアプランを考えることも大切です。
20代で正社員への就職・転職
小説家になるには
小説家としてデビューするとは、自分の小説が書籍として売り出されることです。
出版社の主催する文学賞に応募し、賞を受賞して書籍化されるというのが、一般的なデビューまでの流れです。
文学賞を受賞したことは、選考委員である有名小説家に一定の評価を受け、お墨付きをもらうことになります。
またメディアにも多く取り上げられ、消費者をひきつけられます。
芥川賞と直木賞
芥川賞・直木賞はマスコミからも注目される日本の代表的な文学賞です。
受賞をすると世間からの注目を浴び、本の売れ行きも上がります。
また、受賞後は芥川賞作家、直木賞作家と呼ばれるようになり、知名度も一段と上がります。
芥川賞
芥川龍之介賞、通称『芥川賞』は作家、芥川龍之介の業績を記念して作られた賞です。
直木三十五賞と共に昭和10年に制定されました。
新聞や文芸誌などに掲載された、純文学短篇作品が対象となり、主に無名作家の方や新人の作家の方に贈られる賞です。
審査は上半期と下半期の年2回行われ、『文藝春秋』には受賞作が全文掲載されます。
受賞作の多くは文芸5誌と呼ばれる
- 文學界
- 新潮
- すばる
- 文藝
- 群像
の中から選ばれることが多く、多くの作家はこれに掲載されることを目指しています。
直木賞
直木三十五賞、通称『直木賞』は作家、直木三十五の業績を記念して作られた賞です。
芥川賞と同じく昭和10年に制定され、新聞、文芸誌などに掲載された、大衆小説に贈られます。
いわゆるエンターテインメント作品が対象で、芥川賞と違い無名・新人の小説家にも贈られる賞です。
審査は芥川賞と同じく年2回で、直木賞受賞作は『オール讀物』に掲載されます。
日本の代表的な文学賞
小説を対象とする賞は数え切れないほどあり、
- 純文学系
- エンターテインメント系
- ライトノベル
- 地方自治体主催の賞
- 企業主催の賞
などジャンルもさまざまです。
そのため、
- アマチュアから選ばれる賞
- プロから選ばれる賞
- プロ、アマ問わずの賞
- 女性限定の賞
- 年齢が限定されている賞
などもあり、
- 枚数
- 〆切
- ジャンル
- これまでの受賞傾向
- 各賞の特色
などを考え、自分に合う賞を見つけてから応募するのがよいでしょう。
- 文學界新人賞(文藝春秋社)
- 新潮新人賞(新潮社)
- 群像新人賞(講談社)
- 文藝賞(河出書房新社)
- すばる文学賞(集英社)
- オ―ル讀物新人賞(文藝春秋社)
- 小説すばる新人賞(集英社)
- 松本清張賞(日本文学振興会)
- 江戸川乱歩賞(日本推理作家協会)
- 日本ホラー小説大賞(角川書店)
- 電撃小説大賞(アスキー・メディアワークス)
- スニーカー大賞(角川書店)
- スクエア・エニックスライトノベル大賞(スクエア・エニックス)
- スーパーダッシュ小説新人賞(集英社)
- 坊っちゃん文学賞(松山市)
- 北日本文学賞(北日本新聞社)
- ゆきのまち幻想文学賞(ゆきのまち通信)
20代で正社員への就職・転職
ジャンルにとらわれない作品作り
プロの小説家になりたい人は、自分が応募する文学賞をあらかじめ決めておいて、その締め切りに間に合うように小説を書き出します。
そうした際、よく作品作りの前にジャンルを考える人もいますが、自分でジャンルを制限してしまう必要はありません。
まず最終選考までいかないことには選考委員の目には触れませんし、逆に最終選考に残った作品というのは往々にしておもしろい小説です。
選考委員は自分が好きな小説を選ぶのではなく、いい小説・おもしろい小説・新しい小説を選ぶのです。
何作か小説を書くと、おのずと自分が書きやすいジャンルの傾向というものが見えてくるため、ジャンルにとらわれるのではなく、自分にとって自信のある作品を応募することが大切です。
文学賞以外でデビューする方法
文学賞を受賞するのが小説家デビューの近道ですが、プロとしてデビューする方法は他にもあります。
- 出版社と契約して自費出版
- 同人誌作家として活動する
- 文芸倶楽部やサークルに所属する
- インターネット上で小説を公開する
- 出版社へのもち込み
出版社と契約して自費出版
自費出版とは、自費出版を推奨している出版社にもち込んだり、その出版社が主催している文学賞に応募したりして出版社と提携し、自費で本を出版する方法です。
自費出版を推奨している出版社の場合、しっかりと編集の手が加わる反面、自己負担率は100万から200万ほどかかるケースもあります。
ただし、よい作品で、それほど修正をかける必要がなければ費用も少なく済みますし、出版社側も売り出したいと考えて自己負担が少なくなることもあります。
自費出版の場合は「本を作った」という実績にはなりますが、基本的に全国の書店に置いてもらうことはできず、出版社が契約している書店の取り扱いのため、一般的な本のように多くを流通させることはできないことをあらかじめ知っておくことが大切です。
同人誌作家として活動する
自身で作品を書き、印刷会社に依頼し書籍を作り、同人誌即売会などで収益を売る方法があります。
ただし、この方法では生活をたてらえるほどの収入を得られないのがほとんどで、小説家を夢見る人が趣味としている場合がほとんどです。
実力が認められ、商業誌でデビューするという人もいるため、小説家として芽が出る可能性、おまったくないわけではありません。
文芸倶楽部やサークルに所属する
数十年前は、この方法は今の文学賞デビューのように一般化されていました。
アマチュア小説家が集まって団体を作り、会員がお金を出し合って出版化していたのです。
かつてはこれがプロデビューへの方法で、このような団体が出した本の中から芥川賞やその他の賞が選んでいた時期もありました。
実際、現在の大御所と呼ばれている小説家にも依然としてこの団体を支持している傾向があります。
現在でも数は少ないですが、まだ活動している団体もありますので、一度調べてみるのもいいでしょう。
インターネット上で小説を公開する
インターネット上で小説を公開することは、若者を中心に一時期大流行しました。
現在いわゆる「ケータイ小説」と呼ばれるジャンルは下火になりましたが、インターネットの普及でウェブ上に小説を公開する人が増え、そこに出版社が目をつけ、書籍化・メディアミックス化に至った作品もあります。
近年では小説投稿サイトやSNSから火が付き、人気が出た作家も多いため、今後はインターネットからデビューする作家もより増えてくることでしょう。
出版社へのもち込み
昔は出版社へのもち込みも一般的でしたが、近年ではもち込んでも門前払いされることが多いようです。
かつては小説もエンターテインメントとして非常に人気がありましたが、出版業界の不況が続き、読書離れが加速する中、出版社も書籍化する小説家を厳選しなければならないのです。
書籍化には数百万円という金額がかかり、またPRや広告費にもお金をかけなければならないため、ヒットしなければ出版社は高額な赤字を被ることになります。
出版社になんのツテもなくもち込みするのは現実的でありませんが、もち込みする出版社主催の文学賞やコンテストに最終予選まで残ったなどという経歴があれば、編集者が目を付けてくれる可能性はあります。
小説家になるにはどんなことをすればいい?
小説家になるためにやるべきこと
本を読む
小説を書くためにはある程度の文章力が必要となります。
たとえば、
- 言葉のボキャブラリー
- 言い回し
- 比喩表現
- 国語的文章表現
などを身につけるためには、本をたくさん読むことが大切です。
童話や絵本・詩や短歌・ビジネス書など、世に出回っている書籍はプロの作家やライターが書き、さらにプロの編集の手が加えられているので、読むことによって国語的文章力が備わります。
また、小説をたくさん読むことで、独特の世界のみで使えるような
- 言い回し
- 表現方法
を学べます。
本当に作家を目指すのであれば、小説を読んで「おもしろかった」と思うだけではなく
- 何を読者に伝えたいのか
- そもそもこの小説のテーマは何なのか
などを考えてみましょう。
読む力が身につけば、必然的に書く力も身につくものです。
日頃読んでいる小説ももう一度角度を変えて読めば、また変わった学びがあるかもしれません。
小説を書く
小説家になるために一番重要なのは「書くこと」です。
書かなければ、せっかくのアイデアや文章スキルが使われないまま涸れてしまいます。
小説家としてやっていくもっとも重要な才能は、「最後まで書ききること」です。
書いている途中に挫折してしまったり、飽きてしまったり、読み返して諦めてしまうこともあるでしょう。
どんな稚拙な文章でも、どんな乏しい表現力でも最後まで書き切りましょう。
すると、達成感と幸福感が湧き、また書いている途中では認識できなかった修正箇所が見つかったりするものです。
小説家としての生活習慣を身につける
小説家はひとりで物事を作業する職業です。
売れない・書けないからと言って、誰のせいにすることもできませんし、悩みを解決する手段を与えてはくれません。
その中で、小説家が日々イスに座って、1日中小説を書くという作業は生半可な体力と精神力では保てません。
そのため、執筆のための生活習慣を身につけていくことが大切です。
- 1日何時間書くのかを決める
- 決めた時間内は机に向かう
- 書く環境を変える
こうした執筆スタイルを確立することで、より小説が書きやすくなるとともに、不規則な生活を防ぐこともできます。
小説家は一人で仕事をするため、どれだけ仕事をしても評価されることはありませんし、逆にどれだけ仕事をしなくても怒られることはありません。
ただし、作品を最後まで書ききり、納期を守って提出するためには、こうした生活習慣や環境が非常に重要なのです。
小説家を目指す人は、今のうちから心がけておいた方がよいでしょう。
新人小説家にとって大事なことは? 文章がかけなくなったら?
新人小説家にとって大事なこと
二作目が重要
文学賞を受賞すると、その受賞作が出版化され、そこでどれだけ売れたかによって小説家は今後の命運が分かれると言っても過言ではありません。
新人小説家が最も大事にしなければならないのは、このデビュー作と、そして二作目です。
出版社の多くは二作目の作品に重きをおきます。
受賞作から日が空いてしまうと、話題性もなくなってしまうため、話題性に富み、書店でも大々的に売り出してくれる時期に売り出したいと出版社は考えています。
「一発屋」の小説家にならないために
二作目を出すためには、新人小説家の執筆のスピードに依存します。
新人小説家のほとんどはストックをもっていないため、二作目に行き詰ってしまう人が多いのです。
すぐに書けるようにプロットやアイデアを貯めて置いたり、二作同時進行で執筆したりすることも大切です。
もし二作目も売れれば、固定ファンも付き、次回作からコンスタントに発行部数を伸ばしていけるでしょう。
小説家の新人時代は小説家として今後やっていけるかどうかの分岐点でもあります。
せっかくデビューし夢をかなえたとしても、一発屋となって文壇から消えないように努力することが肝要です。
文章が書けないときの小説家の対処法
- 執筆から離れて、趣味などに打ち込む
- 取材や気分転換などで外に出て、異なる環境に身を置く
- 本や資料を読み込む
小説のことは一切忘れて趣味に打ち込んだり、スポーツやフィットネスジムなどで体を動かして気分転換したりする人は多いようです。
また、作家の中には書けなくなった時に環境を変えるため、
- 行きつけの喫茶店や飲食店などに行く
- 執筆用にマンションの一部屋を借りる
- 出版社の会議室やホテルを借りる
といった人もいます。
「うまく文章が書けない」「いい表現が思い浮かばない」といった場合には、他の小説家が書いた本や資料として集めたものの中からよいインスピレーションを受けることもあります。
小説とは一朝一夕で書けるものではありません。
必ずスランプに陥り、書けなくなってしまう時や、やる気がなくなる時は訪れます。
大事なのは、そうならないように心がけるのではなく、そうなってしまったときにどうやって抜け出すかです。
小説家のストック
ストックが必要な理由
文学賞の最終予選まで残った際、書籍化を前提とる場合は小説のストックについて聞かれることがあります。
書籍化となった場合、枚数が少なく一冊の本にならないときはストックの中からよさそうな作品を担当が選び、受賞作品と合わせて一冊の本にするからです。
もちろんそのまま本にするのではなく、担当編集者から修正が入り、新たに1から描き上げるよりは時間と手間が省けます。
二作目を見越して
もう1つは、プロデビューしたあとのことを考えてです。
小説家が売れるか売れないかは二作目で決まると言われています。
もし二作目でどんと質が下がってしまうと本は当然売れません。
また、ストックを持っていないと新たに書きはじめて書籍化されるまでに時間がかかってしまい、文学賞を受賞した話題性も消えてしまいます。
出版社側としては前作と同じかそれ以上のクオリティーを保ちつつ、二作目を早く出したいという思いが強いため、ストックを日ごろから溜めておく必要があるのです。
「小説家になるには」のまとめ
出版社の主催する文学賞に応募し、賞を受賞して書籍化されるというのが、一般的なデビューまでの流れです。
芥川賞・直木賞はマスコミからも注目される日本の代表的な文学賞です。
昔は出版社への持ち込みも一般的でしたが、近年では持ち込んでも門前払いされることが多いようです。