消防士と消防官・消防団員の違い
消防士と消防官の違いとは?
消防士と消防官、どちらも日常的に使う言葉ですが、その正確な違いを知っている人はあまり多くありません。
それぞれの言葉の意味と由来は以下のようになります。
消防士
世間では、消防組織で働く人を総称して「消防士」と呼ぶことが多いですが、本来、消防士とは「消防吏員(しょうぼうりいん)」で定められた最も下位の階級を意味します。
「消防吏員」はあまり耳慣れない言葉でしょうが、各自治体の消防署に所属する消防隊員をそういいます。
消防署には119番の通報を受けて現場に急行して消火活動を行う人や、署内で消防車に指示を出す人、全体の指揮を取る人などさまざまな役割の人が働いていますが、そうした人を全部まとめて「消防吏員」と呼ぶことが消防組織法で定められています。
消防士はその中でも最下位の階級で、警察官でいえば「巡査」に当たります。
消防官
「消防官」は、消防士の俗称です。
法律上には消防官という呼び名は存在せず、警察官に対応する形で消防士を消防官と呼び始めたのではないかといわれています。
また、一般的には「消防吏員」という言葉にあまりなじみがないことから、消防組織で働く人をまとめて消防官と呼ぶこともあるようです。
私服警官のことを刑事と呼ぶように、消防官はオフィシャルではない消防士の呼び方のひとつです。
「消防官」とは言わないほうがよい?
消防学校などの面接の際には、「消防士」「消防官」「消防吏員」の、どの呼び方を使えばよいのか迷ってしまうこともあるようです。
最も無難なのはやはり消防組織法に明記された「消防吏員」ですが、たとえば東京消防庁では、採用試験について「消防官採用試験」としており、一般的に広く認知されている言葉として「消防官」もオフィシャルな場で使われています。
ですので、そこまで深く考えず、自分にとってなじみのあるものを使っても問題ないでしょう。
ただし、面接などで「消防官」「消防士」「消防吏員」を混ぜて使うのはやめたほうがよいかもしれません。
その理由としては、面接官に「言葉の違いをあまり勉強してきていないのかな」という印象を与えてしまいかねないからです。
本来の言葉の意味や違いを理解したうえで、どれかひとつに統一して話したり書いたりすることをおすすめします。
消防士や消防官と、消防団員は何が違う?
消防団員は消防団に所属する人
ここまで見てきた消防官・消防士・消防吏員と似た名前を持つ仕事として、「消防団員」というものがあります。
消防官などと消防団員には、役割や業務内容などについても明確な違いがあります。
それを理解するために、まず日本国内の消防組織について説明しましょう。
日本国内の消防組織は、国の機関である「消防庁」と、地方自治体が所轄する「消防本部・消防署」、さらに「消防団」という構成になっています。
このうち、消防団員とは、各市町村に設置される消防機関である「消防団」に所属して活躍する人のことをいいます。
消防署が常備の消防機関であるのに対し、消防団は普段は別の仕事をしている住民が、火災・風水害・震災時に消防団員となって消防活動を行う非常備の消防機関です。
消防団の役割
もともと消防団では火災の消火のほか、災害時の救助・救命活動、防災の啓蒙活動など、住民自らが地域の安全を守るための消防組織としての役割を担ってきました。
とくに高齢化が進む地方では消防署だけでは対応できず、消防団がかなり大きな存在感を示していることも珍しくありません。
自分たちで町を守ろうという自治の考え方が浸透してきたこともあって、ここ数年のあいだに、女性消防団員の数も増えてきたようです。
主婦や若い学生などが自主的に参加を申し出ています。
消防士と消防団員の立場の違い
消防吏員(消防官・消防士)は地方公務員であり、所属は市の職員ということになります。
なるためには、所属する市町村の採用試験を受けて採用される必要があります。
合格後は、半年のあいだ消防学校へ入校することが義務づけられています。卒業が認められた後に、消防専門の任務に就くことになります。
一方、消防団員は準公務員という位置づけではありますが、市の職員ではありません。
常勤ではないため、「非常勤特別職地方公務員」という身分になります。
消防団員は、自営業や会社員など普段は自分の仕事をもちながら、災害時に出場するような体勢をとっています。
入団については所属する町によって異なりますが、定期的な募集を行っていたり、欠員などに備えて随時募集を行っていたりする町もあります。
ほとんどの消防団が一般の市民・町民によって構成され、町の防火と安全のためにボランティアで参加しています。
給料・待遇の違いは?
消防士の場合、地方公務員としての給料や待遇が適用されます。
職務の危険性などから一般的なデスクワークの地方公務員よりも給与水準は高めとなっており、諸手当の支給や福利厚生なども充実しているといえるでしょう。
一方、消防団は基本的にはボランティアでの活動となります。
しかし、多くの市町村で年間に数万円程度の報酬と、訓練に出動した際には1回あたり数千円程度の出動手当を支給しているようです。
このほか、消防団としての活動で死傷した場合には公務災害補償金の対象となるなどいくつかの待遇もありますが、基本的に消防団だけで生活していくのは不可能と考えておいたほうがよいでしょう。