消防士の階級・消防の組織

消防官(消防士)の階級とは?

10の階級が存在する

消防官には、一人ひとり「階級」というものが割り当てられています。

ここでいう階級とは、消防官としての地位をわかりやすく表すもので、一般企業でいう役職と似たようなものといえます。

警察官」や「自衛官」にも階級が存在しますが、消防官には独自の階級制度が存在しています。

具体的に消防官の階級は、火災発生と同時に現場へ急行し消火の任務にあたる「消防士」から、トップの地位にある「消防総監」まで10の地位に分かれています。

ただし、日本各地のすべての自治体で10の階級に分かれているわけではなく、地方の消防本部では5つ程度の階級となっていることも珍しくありません。

消防士の階級について

ここからは、消防官の階級を、位が高い順に紹介していきます。

消防総監

この地位と職名は、東京消防庁のみのもので、東京以外の消防本部に対しては権限を有しません。

消防吏員の階級としては最高位にあたり、階級を表すと同時に職名としても使われています。

消防司監

政令指定都市の消防本部で消防長を務める職員の階級です。

政令指定都市では消防長(消防局長)、東京消防庁においては次長・部長の地位となります。

消防正監

消防吏員の数が200人以上、または人口30万人以上の市町村における消防本部の消防長の階級にあたります。現場に出ることはありません。

消防監

消防吏員の数が100人以上、または人口10万人以上の市町村における消防本部の署長・消防長の階級にあたります。消防正監同様、現場に出ることはありません。

消防司令長

消防活動の現場では、複数の隊を掌握しつつ統括・遂行の指揮にあたります。実際の消火活動や人命救助にあたることはありません。

昇任試験の合格、または辞令によってこの地位に就きます。

消防司令

災害現場での指揮をとることがおもな任務です。現場での指揮決定権をもち、最高責任者として任務を遂行します。

消防本部では、担当課長・課長補佐・係長、出張所長、消防署署長の階級にあたります。

消防司令補

消防士長を数年間務めた後に、昇任試験を受けて任命されるのが通例です。

現場では、ポンプ隊・救急隊・特別救助隊・化学機動中隊・機動部隊など、部隊(小隊)の隊長として任にあたることが多いとされています。

消防士長

消防副士長や消防士の中から、昇任試験を受けて任命されるのが一般的です。

初級幹部として位置づけられる、消防司令補に次ぐ階級です。現場では、小隊(ポンプ・救急・救助)の隊長として任務にあたります。

消防副士長

消防士長と消防士の中間にあたる階級で、消防士の中ではリーダーのような存在です。消防士として優秀な成績を収めるなど、年功や勤務成績によって任命されます。

消防士

火災が発生した際に火災現場へ急行し、消火活動・人命救助にあたる任務を負っています。

消防吏員(しょうぼうりいん)の階級のひとつで、一般的には消防隊員とも呼ばれています。

※消防吏員とは、一般には消防士と呼ばれていますが、消防本部に勤務する消防職員のうち、階級を有して消火・救急・救助などの業務を遂行する職員の正式な呼称です。

消防庁長官について

消防庁の組織内の階級とは別に、総務省の管理下にあって消防庁の官職を務め、庁務の統括、所部・職員任命・罷免の任務を遂行する立場につくのが「消防庁長官」です。

組織図として描いたときは、すべてを統括する役割を負っていることから組織のトップのように描かれますが、あくまでも総務省の事務官として監督にあたるポストであって、消防庁組織の階級のひとつには数えられません。

自治体によって構成される消防組織

日本の消防組織は「消防組織法」という法律に沿って構築されています。

消防組織法には、消防の職務範囲や教育訓練についてなど数多くの重要なポイントが記されていますが、なかでも法律の根幹となるのが「自治体消防」についてです。

「消防の管理を行いその責任を負うのは市町村である」と消防組織法の第6条で明記されている通り、日本の消防組織は、各々の自治体が独立して構成していることが大きな特徴です。

その背景には、火事や災害は容易に対応マニュアルを作ることができず、環境や状況に応じた個別の対処をしなければならないという点があるようです。

たとえば、ある地域では木造民家が密集しているために飛び火を防ぐ工夫がより一層必要であるとか、この地域では台風が来ると地すべりの危険があるので早期の避難が必要だなど、状況によって対応策はさまざまです。

消防組織の持つノウハウは、どこまでも実践的であることが求められます。

そのため、自治体住民の意見が議会を通じて反映されやすいよう、消防組織は各自治体が責任を持って管理・運営を行っています。

消防機関とその役割

日本の消防機関は、「消防本部」「消防署」「消防団」の3つに分かれています。

それぞれの役割は以下の通りです。

消防本部

消防本部は各自治体の消防組織全体の事務的な業務を行う組織です。

おもに人事、庶務、予算管理などを行っています。

消防署

消防署は消防活動の第一線で活躍する組織であり、多様な専門技能を持った消防官が多数配属されています。

日常的に起こりうる火災や事故に対処するだけでなく、大規模災害の際のレスキュー隊も所属しています。

消防団

消防団で活動をする人は、非常勤の特別職地方公務員という身分になります。

普段は団員各々が別の仕事を持っていますが、大規模な災害や火災の際には消火活動、救助活動を行います。

また、平時は消火訓練や避難訓練の誘導を行うほか、地域住民に対する広報活動も行っています。

消防士と消防団員の違い

自治体を超えた消防組織

先に挙げた通り、消防組織は基本的には各自治体で完結していますが、大規模災害が発生した際など、各市町村だけで対応できない場合には、他の自治体と連携を組んで対処します。

こうした場合に備え、各自治体は相互応援に関する協定を結び、消防官の応援出動の規模や経済的負担などについて、あらかじめ決めることができます。