食品衛生監視員の需要、現状と将来性
食品衛生監視員の現状
公務員として働く食品衛生監視員は、「日本の食の安心・安全を守る」という重要な役割を担っています。
現在、カロリーベースで約6割もの食品を海外からの輸入食品に依存している日本。
その輸入食品の安全性を検査し、法律に基づいた形で国内に流通させるために、国家公務員として働く食品衛生監視員は、全国各地の検疫所で専門的な業務に携わっています。
また、検疫所勤務の食品衛生監視員は、国内に常在しない感染症の病原体の侵入を水際で防ぐ役割も担っています。
新型インフルエンザや新型コロナウイルスのような人々の健康に影響を及ぼす病原体についても、法律に基づき、感染の疑いのある入国者に対する体温測定やPCR等の検査を実施します。
一方、市民の生活に密着する各地域の保健所においても、食品衛生監視員の活躍は欠かせません。
「食品衛生のプロ」として、飲食店や食品メーカーの営業許可認定や施設の立ち入り調査、衛生指導などの業務に携わるのが、地方公務員として働く食品衛生監視員です。
保健所勤務の食品衛生監視員は、人々が口にすることになる食品が安全なものであるかを厳しくチェックし、食中毒を未然に防ぐことにも貢献しています。
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食品衛生監視員の需要
食品衛生監視員は公務員であり、国家公務員の場合は厚生労働省、地方公務員の場合は地方自治体に所属します。
国家公務員には定員があり、退職者の人数などの事情に応じて、新規採用者の人数も決められていきます。
2018年度の時点では、厚生労働省に所属する食品衛生監視員は合わせて約400人で、今後もこの数字が大きく変わることは考えにくいです。
2020度の国家公務員食品衛生監視員採用試験の採用予定数は約25名となっており、決して採用人数が多いわけではありません。
ですが、今後も食品の輸入量が増え続けていくことが予測されるなか、食品衛生監視員の業務量は増大傾向にあり、食品衛生監視員の増員要請が国会でもなされています。
地方公務員の場合は自治体によって採用状況が異なり、年度によってはまったく採用がない自治体もあります。
とはいえ、 全国(都道府県、政令指定都市、中核市、保健所設置市)には約8400人の食品衛生監視員がおり(2018年度時点)、どの地域でも需要のある職業であることは間違いありません。
食品衛生監視員の将来性
2020年6月、食品衛生業界では大きな変化がありました。
2018年6月に可決した改正食品衛生法によって、「HACCP(ハサップ)」という国際基準の新しい食品衛生管理の制度が施行されたのです。
「HACCP」というと難しく聞こえるかもしれませんが、かみくだいて説明すると、まずは食品に関わる事業者自らが、食中毒菌汚染や異物混入などの危害要因を把握します。
そのうえで、食品の製造や出荷といった各工程のどの部分で、そうした危害の影響を受けやすいかを予測・分析し、被害を未然に防ごうという取り組みです。
これによって食品の安全性を確保するとともに、食品を扱う場での衛生水準を改善し、維持することが「HACCP」のおもな目的です。
「HACCP」の施行から1年間は移行期間となっているため、本格稼働するのは2021年6月からですが、以降は食品関連事業者の取り組みや各都道府県等における監視指導も「HACCP」に沿った形で実施されることになります。
こうした変化のなかで、今後、食品衛生監視員が担う役割も、ますます大きくなることが予想されます。
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食品衛生監視員の今後の活躍の場
食品衛生監視員の活躍の場は、今後も全国各地の検疫所や、地域の保健所が中心になると考えられます。
これらの場は食品衛生に関する業務を専門的に担う機関として、しっかりとした調査・分析・検査などの体制が整えられています。
また、国家公務員であれば厚生労働本省や地方厚生局などへの出向、その他にも食品衛生監視員の専門知識が必要な行政各機関に配属される場合もあります。
「国民の食の安全を守る」という大きな役割は変わりませんが、この先「HACCP」の取り組みが本格稼働すれば、食品衛生監視員の具体的な業務内容にも多少の変化が見られるかもしれません。