歯科衛生士の給料はいくら? 年齢別の年収や初任給、手取り額なども解説

歯科衛生士は、医療系の専門職として女性から高い人気を誇る職業です。

各種データより、歯科衛生士の平均年収は300万円~400万円程度がボリュームゾーンであると考えられます。

収入は勤続年数やスキルが上がるにつれて昇給しますが、一定の経験を積んだり年齢を迎えたりすると頭打ちになりやすいことも特徴です。

ここでは歯科衛生士の年収や給料について詳しく解説します。

歯科衛生士の平均年収・給料の統計データ

まずは、歯科衛生士の平均年収・給料について、公的なデータ、民間の調査データも見ながら説明します。

歯科衛生士の平均年収・月収・ボーナス

歯科衛生士は国家資格であり、また歯科診療の場においては不可欠な職業であることから、日本全国さまざまな場所で求人が出されており、安定した需要があります。

ただし、給与・待遇の内容については、歯科医院やクリニックごとに大きく異なります。

手厚い待遇を用意している施設だと、資格手当など各種手当が多く支給されたり、ボーナスの額も多かったりします。

しかし、経営状況がやや厳しい施設では、長く働いても高収入は望みにくい場合があります。

歯科衛生士は女性の割合が多い職業であり、正社員以外にアルバイト・パートや派遣社員、あるいはフリーランスなど、多様な形態で働く人が多いこともあって、収入は人によって差が出やすいです。

賃金構造基本統計調査

歯科衛生士の平均年収_2023

令和5年度の厚生労働省賃金構造基本統計調査によれば、歯科衛生士の平均年収は37.8歳で約404万円となっています。

  • 平均年齢: 37.8歳
  • 勤続年数: 8.1年
  • 労働時間/月: 164時間/月
  • 超過労働: 8時間/月
  • 月額給与: 296,200円
  • 年間賞与: 488,800円
  • 平均年収: 4,043,200円
  • 出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」

    歯科衛生士の年収の推移_r5

    ※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
    ※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

    歯科衛生士の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

    賃金構造基本統計調査を見ていくと、歯科衛生士の平均年収が404万円、そこにボーナスが49万円含まれているとすると、手取り月収は22万円~26万円ほどになると考えられます。

    小さなクリニック勤務や正社員以外の働き方などで、勤務先で社会保険に加入しない場合には、稼いだお金(決められている時給など)がそのまま手元に入ってきます。

    ただし、自分で国民健康保険や国民年金に加入し保険料を支払わなくてはならないため、まだ給料が高くない新人の歯科衛生士は、やや苦しい生活を送っている人もいるようです。

    歯科衛生士の初任給はどれくらい?大卒と専門卒で違いはある?

    正社員として採用された歯科衛生士の初任給は、18万円~21万円程度が相場といわれていますが、地方ではもう少し低めになることがあります。

    歯科衛生士になるためのルートはいくつかあるため、4年制大学を卒業している人と、3年制の短大や専門学校を卒業している人では初任給に差があります。

    同じ職場でも、4年制大学を出ている場合は、ほかの学歴の人よりも1~2万円ほど高めの初任給になることが多いでしょう。

    歯科診療の場で必要とされる専門的な知識・スキルが重要視される職業であるため、初任給や20代の給料はさほど高くありませんが、キャリアアップによって昇給が望めます。

    歯科衛生士の勤務先の規模別の年収(令和5年度)

    歯科衛生士の年収を規模別に見ると、10〜99人規模に勤める歯科衛生士の平均年収は403万円、100〜999人規模は387万円、1,000人以上規模は449万円、10人以上規模平均は404万円となっています。

    ほとんどの歯科衛生士は小規模の診療所で働いていますが、規模の大きい病院で勤務する歯科衛生士の年収は高めと推定されます。

    歯科衛生士の年収(規模別)_r5

    賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

    歯科衛生士の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)

    歯科衛生士は、年齢が上がっても給与はそれほど変わらないようです。おおむね300万円~500万円の間となっています。

    全年代の平均年収は404万円となっています。

    歯科衛生士の年収(年齢別)_r5

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    歯科衛生士の待遇・福利厚生

    歯科衛生士の待遇や福利厚生は、勤務先のクリニックによってだいぶ異なることがあります。

    ここでは、代表的な待遇の特徴と、求人を見る際にどんな点に気をつければいいのかを紹介します。

    求人を見る時に注意すべきこと

    歯科衛生士として歯科医院で働くことを希望する場合、誰しもが待遇を確認することでしょう。

    主にチェックする項目は、給与、賞与、昇給交通費、勤務時間、年間休日、有給の有無などでしょうが、もう一つ重要なチェック項目があります。

    それが「福利厚生」です。

    福利厚生とは、事業所(歯科医院)が、従業員が豊かな生活を送れるように給与以外にサポートするものをいいます。

    歯科クリニックでよくある福利厚生としては、「厚生年金」や「健康保険」「出産祝い金」「人間ドックなどの健診費用の補助」などが挙げられます。

    福利厚生では加入する保険をチェック

    さほど規模が大きくない歯科医院の場合、大企業ほどの福利厚生は残念ながら期待できません。

    クリニックが小規模の場合、まず加入保険をチェックする必要があります。

    歯科医院が法人化していたり、常勤が5名以上いる場合には社会保険に加入する義務があるため、そういった施設では、基本的に勤務する歯科衛生士も社会保険に加入できます。

    厚生年金と健康保険を半額を歯科医院が負担し、残りの半額が給与から天引きされることになります。

    一方、地方だと常勤の歯科衛生士やスタッフが少なく、法人化していない歯科医院も多いです。

    この場合は、歯科医師国保というものに加入し、自分で保険料を支払いにいく必要があります。

    また、パートで週の労働時間が20時間以上で1か月以上働いている場合は、国民保険や社会保険の加入はできませんが、雇用保険と労災保険の適用が受けられます。

    このように、歯科医院の経営方針によって福利厚生に差があるため、給与・賞与・休日だけで判断せず、細かい勤務条件にも目を向けるようにしましょう。

    歯科衛生士の給料・年収の特徴

    ここからは、歯科衛生士の給料・年収の特徴を、さらに詳しく説明します。

    特徴1.勤務する歯科医院・クリニックによって給料が異なる

    歯科衛生士の給料・年収の水準は、勤務先によってまちまちです。

    日本全国にはたくさんの歯科医院・クリニックがあり、歯科医師や歯科衛生士が複数人所属している大きなところもあれば、1人の歯科医師と1人の歯科衛生士しかいない小さな医院も存在します。

    ただし、単純に規模が大きければ給料や待遇がよいわけではなく、小規模であっても自費診療に力を入れており利益が多く出ているクリニックなどでは、高めの給与設定にしていたり、待遇を手厚くしていたりするところもあります。

    一方、ある程度の地域差は見られ、地方よりは都市部の歯科医院・クリニックに勤務する人のほうが、高めの給料・年収を得ているというデータもあります。

    特徴2.昇給の仕方も勤務先ごとに違いがある

    基本的に、歯科衛生士の給料はキャリアと能力に応じてアップするため、勤務年数が増えれば昇給も望めるでしょう。

    しかし、職場によっては昇給額は微々たるものであったり、ある程度のところで頭打ちになったりすることもあります。

    正社員のフルタイム勤務であれば収入はある程度安定していますが、30代、40代とずっと働き続けたとしても、給料が上がり続けるというわけではない場合も多いことには注意が必要です。

    このような事情もあり、あえてひとつの歯科医院に勤めず、別の歯科医院への転職をきっかけに収入アップを目指したり、フリーランスとして複数の歯科医院での勤務を掛け持ちしたりする人もいます。

    特徴3.歯科衛生士は若い世代が中心

    歯科衛生士は若い世代が活躍している仕事であるといえます。

    2023年賃金構造基本統計調査によると、正職員として働いている歯科衛生士の平均年齢は37.8歳でした。

    そのためどうしても平均年収が低めとなってしまう傾向にあります。

    一方で、2010年の同じ調査での平均年齢は33.3歳であり、およそ10年で歯科衛生士の平均年齢が上昇していることが分かります。

    これは結婚や出産年齢の上昇による影響や、50歳以上になっても働く人が増えていることが原因と考えられます。

    なお、歯科衛生士の免許は、何歳からでも取得することができます。

    年齢による返納の義務は現在のところなく、定年制度がない歯科医院では、65歳を超えても働き続けることが可能です。

    年齢を重ねても働き続ける人が増えれば、平均年齢は上がり平均年収も上がっていくのではないかと考えられます。

    特徴4.年収に対する満足度は約4割

    令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書によると、歯科衛生士としての年収の満足度は、全体でみると、「満足」と「ある程度満足」の合計が 39.7%と、現在の年収に満足している人は約4割しかいませんでした。

    一方、「不満」と「非常に不満」の合計が 28.6%で、約3割ほどの歯科衛生士が年収に不満を感じていることがわかります。

    歯科衛生士の勤務実態調査報告書 公益社団法人 日本歯科衛生士会

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    歯科衛生士の給料が高い地方はどこ?

    歯科衛生士の初任給を地域別で見ると、「関東」が25万2,932円で唯一25万円を超えており、「関西」と「中部」がそれに続きます。

    北海道と比べると、その差は数万円となります。

    年収を都道府県別に見た場合、一番高い都道府県は広島県、二位は神奈川県、三位は愛知県となっています。

    やはり大都市を抱える関東、関西、中部地方が年収が高いことがわかります。

    男性と女性で年収に違いはある?

    公益社団法人 歯科衛生士会の歯科衛生士の実態調査報告書によると、歯科衛生士の性別は女性が99.0%、男性が0.4%です。

    歯科衛生士の就業数は女性が14万人を超えているのに対して、男性はわずか100人未満です。

    歯科衛生士という職業は男女関係なく活躍でき、年収も違いはありません。

    ただし、男性の歯科衛生士が少ないのは、全体として収入が低めであり、将来を考えたり、家庭を持ったりする男性の場合、家計を支える難しさを感じる人が多いことも一因となっていると考えられます。

    歯科衛生士の正社員以外の給料・年収

    歯科衛生士は、正社員以外に、派遣やパート、フリーランスなど、さまざまな形態で働く人がいます。

    それぞれの働き方による給料や年収の特徴を説明します。

    派遣社員

    正社員の歯科衛生士を雇う余裕がない歯科医院や、歯科衛生士の急な退職などで人手不足になった際などに、派遣社員の歯科衛生士が募集されることはよくあります。

    派遣の場合、事前に登録しておいた派遣会社から勤務先(派遣先)の歯科医院を紹介してもらい、条件が合えば契約を結んで勤務します。

    給料は時給制のことが多く、地域にもよりますが1,300円~2,000円ほどで働いている人が多いようです。

    派遣の歯科衛生士には即戦力になれる知識・スキルが求められるため、経験豊富な人ほど高い時給やよい待遇で働けるチャンスが掴みやすいです。

    アルバイト・パート

    アルバイト・パートであっても、「歯科衛生士」として採用される以上は、歯科衛生士の国家資格が求められます。

    したがって、特別な資格を持たずに就ける事務職などよりは、アルバイト・パートとしての時給相場は高めです。

    首都圏では時給1,500円〜2,000円、地方では時給1,000円〜1,200円程度が相場と考えられます。

    ただし、実務経験年数や年齢によっても時給には差が出るため、実際は面接時や採用後にスキルの確認を経て、給料が決まることが多いです。

    アルバイト・パートの待遇は正社員より劣ることが多いものの、一部の歯科医院ではボーナスの支給があったり、資格手当が付いたりすることもああります。

    フリーランス

    現状では、フリーランスとして働く歯科衛生士は決して多いわけではありませんが、徐々にこのスタイルで働ける場も増えています。

    フリーランスの場合、個人事業主として歯科医院・クリニックと契約を結び、事前に勤務条件を決めて働きます。

    特定の歯科医院に所属する社員ではないため、いくつかの医院を掛け持ちすることが可能です。

    たとえば、A医院では日給15,000円で週に2回、Bクリニックでは日給18,000円で週に1回といったようなかたちで働く人もいます。

    経験豊富で高いスキルを持ち、どのような歯科医師とでもスムーズに連携して動ける歯科衛生士は、高い報酬を得られることがあります。

    歯科衛生士の働き方の種類・雇用形態

    歯科衛生士は年収1000万円を目指せる?

    歯科衛生士で年収1,000万円を稼ぐのは、難しいとされています。

    年収が日本人全体の平均年収よりも低いため、ただ働いているだけでは年収1,000万円を目指すことはかなり厳しいです。

    歯科医院などに雇われて働く場合では年収400〜500万円が限界で、とくに地方などで働いている場合は、定年まで働いて役職などに就いても、大幅な年収アップは見込みにくいです。

    歯科衛生士が収入を上げるためには?

    歯科衛生士として、もっと収入を高めたいと思った場合には、どのような行動をとればよいのでしょうか?

    考えられる主な選択肢を紹介します。

    よりよい環境を求めて転職する

    転職する日本全国、歯科診療を行うあらゆる場で歯科衛生士は求められるため、歯科衛生士が活躍できる場は非常に多いです。

    国家資格を取得し、現場で経験を積んでいけば昇給が見込めますし、よりよい給料・待遇を求めて転職することも決して難しくはありません。

    しかしながら、歯科衛生士は勤務先の選択肢が多すぎるがゆえ、その選び方に迷ってしまい、なかなか自分に合う職場が見つからずに悩んでいる人もいます。

    とくに歯科衛生士は勤務時間中、限られた人たち(歯科医師・歯科助手など)と、限られた場所(病院・クリニック内)で過ごします。

    やや閉鎖的な雰囲気になりやすいため、実際に働いてみると医師の人間性や診療方針が合わなかったり、他のスタッフとの人間関係がうまくいかずに、結果的にすぐに離職してしまう人もいるのが現実です。

    もちろん収入重視で勤務先を選ぶことが悪いわけではありませんし、待遇のよさは充実感や、やりがいにもつながります。

    それに加えて、病院・クリニックの考え方や雰囲気が合うかどうかもよく考えて選択するほうが、結果的に長く、いきいきと働ける可能性が高いでしょう。

    資格を取得し専門性を高める

    歯科衛生士として給料アップを目指す場合、専門性を高める方法もあります。

    歯科衛生士には認定資格があり、資格を取得して仕事を増やしたりよりよい転職をしたいという人も非常に多く、資格取得者は年々増加している傾向にもあります。

    認定資格には、以下のようなさまざまな分野の資格があります。

    歯科衛生士の認定資格
    • 日本歯周病学会認定歯科衛生士
    • 日本歯科審美学会歯科衛生認定士
    • インプラント専門歯科衛生士
    • ホワイトニングコーディネーター
    • 日本小児歯科学会認定歯科衛生士

    こうした資格のなかから、まずは自身が勤めている診療科に関連する認定資格を取得するところから始めてみるのもよいでしょう。

    「歯科衛生士の平均年収・給料」まとめ

    歯科衛生士の年収は、一般的な職業と比べても同程度であり、とびぬけて高収入を目指せる仕事ではありません。

    しかしながら、需要が大きく全国どこでも求人が出ていること、また働き方も正社員やパート、フリーランスなど多様であるため、よりよい給料・待遇を求めて転職する人も多い職業です。

    勤務先によって給料や待遇には違いがあり、また人間関係や職場の雰囲気もさまざまであるため、就職先を決める際には事前にしっかりと調べて、納得できる職場を選びましょう。