女性の作業療法士のキャリアパス・結婚後の生活
女性の作業療法士の現状
作業療法士協会の統計によると、作業療法士の男女比はおよそ4:6程度となっており、男性よりも女性の数のほうが上回っています。
リハビリというと、一般的に力仕事を想像する人も多く、また実際に患者の身体を支えたりするなど、筋力が求められるケースもありますが、作業療法士が得意とするのは、生活動作や手先の細かい動作です。
料理や洗濯などの家事動作や、裁縫や園芸といった趣味動作、折り紙やお手玉などの遊び動作など、作業療法士は日常におけるさまざま動作をリハビリプログラムに組み込み、患者の機能回復を図ります。
それらの動作は、どちらかというと男性よりも女性のほうが得意である分野が多く、そうしたことも女性の割合が高くなっている一因といえるでしょう。
また、同じくリハビリを専門とする理学療法士は、作業療法士とは反対に、男性のほうが女性よりも多いです。
運動機能の回復に特化し、より体力・筋力を必要とする理学療法士と、細かい動作を担当する作業療法士との間で、リハビリ職の男女の「棲み分け」がなされている、とみなすこともできるでしょう。
実際の職場でも、作業療法士と理学療法士は役割が分担されている一方で、双方が連携してリハビリにあたるケースもよく見受けられます。
女性の作業療法士の強み・弱み
作業療法士に限ったことではありませんが、医療職は、病気やけがを負って心身が弱ってしまった患者と直接ふれあうことになりますので、一般的な職業以上に気遣いが求められます。
とくに作業療法士の場合、身体面だけでなく精神面のリハビリも手掛けますので、女性ならではの優しさやあたたかさ、細かな心配りが、患者の傷ついた心を癒すのに役立つことも頻繁にあるでしょう。
一方で、女性はどうしても体力的に男性に劣るため、男女間での仕事内容や仕事量にまったく差がない作業療法士は、職場によってはつらさを感じることもあるかもしれません。
作業療法士は、食事や入浴など、患者の生活機能を取り戻すリハビリを手掛けますので、回復期の病院などでは、患者の生活リズムに合わせるために、「早番」や「遅番」をこなさなければなりません。
さらに、一部の介護施設では、早番と遅番に加えて夜勤まで求められるケースもあり、体力的な負担はより大きくなります。
女性だからといって、男性より楽なシフトが組まれることはほとんどありませんので、ムリなく働くためにも、就職先の勤務体系は事前によく確認しておいたほうがよいでしょう。
結婚後の働き方
同じ医療職の看護師などとは違って、作業療法士は急患に対応することがないため、急に忙しくなって残業に追われることがなく、日々の勤務時間はかなり安定しています。
また、休日に呼び出されることもなく、作業療法士は仕事と家庭生活を両立させやすい職業といえます。
さらに、作業療法士にはさまざまな勤め先があり、医療施設のようにシフト制で平日が休みの職場もあれば、介護施設のように土日祝日が休みの職場もあります。
配偶者の職業がなんであれ、職場を移ることで、相手の勤務体系に合わせて働くこともできるでしょう。
このため、結婚後も作業療法士として働き続けるという人が大多数を占めており、作業療法士協会の統計によれば、結婚を機に退職する人は協会員全体の1%以下となっています。
作業療法士は子育てしながら働ける?
施設によって多少異なりますが、作業療法士は女性のほうが多い職業であることもあって、子育てしながら働くための支援体制が充実している職場が目立ちます。
出産休暇や育児休暇制度に加えて、子どもがいる作業療法士に対しては時短勤務を認めているケースも多く、また大規模な病院では、院内に託児所も設けているところもあります。
仕事と育児を両立させることは大変ですが、そうしたさまざまなサポートを受けながら働き続けている作業療法士は決して少なくありません。
さらに、どうしても職場を離れなければならない場合であっても、退職ではなく休職手続きを取り、子育てがひと段落した後にはまた復職するというケースもよく見られます。
作業療法士の年代別就業率をみても、育児期間と重なる30代での就業率が低下している一方で、40代からは増加に転じており、子育てを終えてから復職する人が多いことがうかがえます。
作業療法士は女性が一生働ける仕事?
近年は、国が女性の社会参画を推進するためにさまざまな施策を打ち出しており、どの職業においても、結婚や出産、育児などを経ても、働き続けることを選択する女性が増えています。
しかし、作業療法士の場合、そうした取り組みが行われる以前から、せっかくがんばって国家資格を取ったのだから一生働き続ける人という人が非常に多かったようです。
作業療法士は非常に専門性の高い職業であり、ある程度の経験さえあれば、育児などでいったんキャリアを中断せざるを得なくなっても、再び職場に戻ることはさほど難しくありません。
また、常勤ではなく非常勤で働くことで、ムリなく徐々にブランクを取り戻すことも可能です。
さらに、医療、介護、福祉など、多様な分野の就職先がありますので、自身のライフステージに合った労働環境を選択しやすいことも、作業療法士ならではのメリットといえます。
これから日本は超高齢化社会を迎えるにあたり、お年寄りの健康寿命を伸ばす作業療法士のリハビリには、大きな期待が寄せられています。
社会的にみても、女性作業療法士が長く活躍し続ける意義は非常に大きいといえるでしょう。