マーチャンダイザーの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
単なる仕入れ担当ではなく、商品開発から販売計画、予算管理まで一貫して統括するブランドの舵取り役といえます。
本記事では、マーチャンダイザーの具体的な仕事内容から、必要なスキル、バイヤーやVMDとの違いまで、わかりやすく解説します。
- マーチャンダイザーは商品企画から販売戦略まで一貫して担当する「ブランドの舵取り役」
- 国内従事者約29,500人、平均年収約473万円で需要が高まっている職種
- バイヤーは「買い付け」、VMDは「視覚演出」、MDは「商品戦略全体の統括」が役割
- データ分析力とトレンド感覚の両方が求められる専門性の高い仕事
- トレンドの最前線に立ち、自分のアイデアが店頭で形になる大きなやりがいがある
【所要1分】あなたに合った仕事は? 無料で適職診断(全世代OK)
「適職診断 by キャリアガーデン」は、あなたの適職を9つ提案する無料サービスです。
「どんな仕事が合っているか知りたい」という方に受けていただきたい診断です。
マーチャンダイザー(MD)とは?
マーチャンダイザーは、アパレルや流通・小売業界において、商品開発や販売計画、予算管理などを専門的に担当する職種です。
これらの業界の企業では、さまざまな商品を消費者に届ける活動を行っており、「消費者が求めるものは何か?」「特定の商品を、どの時期に、どれくらいの量、どれだけの価格で販売するのか?」そうしたあらゆる計画を中心となって一から立てていくのがマーチャンダイザーです。
つまり、マーチャンダイザーは企業が商品の販売戦略を立てる際には不可欠な存在であり、流通のすべてに関わるプロフェッショナルといえます。
厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」によると、国内のマーチャンダイザー・バイヤー従事者数は約29,500人とされています。
また、令和6年賃金構造基本統計調査では、マーチャンダイザー・バイヤーの平均年収は約473万円と、日本全体の平均年収を上回る水準です。
マーチャンダイジングとは何か
マーチャンダイジング(merchandising)は日本語で「商品化計画」や「商品政策」といった意味を持ちます。
それを実行するマーチャンダイザー(merchandiser)は、アルファベットを略して「MD」と呼ばれることもよくあります。
ひとつの商品を開発するには、市場調査、売上動向の分析、開発計画立案といったように、さまざまな工程を踏む必要があります。
商品を売り場に並べるまでの計画を、トータルに決定、管理していく責任者となるのがマーチャンダイザーです。
マーチャンダイジングには「5つの適正」と呼ばれる基本原則があります。
- 適品(Right Product)
- 適所(Right Place)
- 適価(Right Price)
- 適量(Right Quantity)
- 適時(Right Time)
の5つです。
これらをバランスよく設定することで、商品は売れやすくなるとされています。
MDとバイヤー・VMDの違い
マーチャンダイザーと混同されやすい職種に「バイヤー」や「VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)」があります。
それぞれの役割を明確に理解しておきましょう。
バイヤーは商品の「買い付け」を行う仕事です。
企業やブランドのコンセプトを理解したうえで、顧客ニーズとトレンドを考慮し、売れそうな商品を選んで仕入れをします。
「仕入れ」のプロフェッショナルといえます。
VMD(ビジュアルマーチャンダイザー)は、店舗での「視覚演出」を専門とする職種です。
店舗レイアウト、マネキンのコーディネート、POP配置などを通じて、商品を魅力的に見せる空間づくりを行います。
一方、マーチャンダイザーは、バイヤーと同様に仕入れ計画を立てることもありますが、販売やマーケティングといった「仕入れ後」の部分にも大きく責任を持ちます。
販促活動やマーケティング活動を通じて、どう商品を売り切るかを徹底的に考え、実行に移していくのがマーチャンダイザーです。
ときにはリーダー親分のようなポジションに立って、売るための商品づくりに一緒に取り組んでいるバイヤー、デザイナー、パタンナー、プレスなど、社内の多様な職種のスタッフを盛り上げていきます。
大企業であれば各職種を別々の部門として機能させているケースが多いものの、中小企業や一部の大手企業、あるいはブランドによってはマーチャンダイザーがバイヤーを兼務することもあります。
20代で正社員への就職・転職
マーチャンダイザーの具体的な仕事内容
マーチャンダイザーの業務は多岐にわたります。
ここでは主な仕事内容を5つに分けて解説します。
【1】市場調査・トレンド分析
マーチャンダイザーは、常に時代の流れや消費者のニーズを素早く的確にとらえる必要があります。
そのために、競合ブランドの調査、展示会の視察、SNSでのトレンド分析、POS実績データの収集などを日常的に行います。
厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」によると、「流行やトレンドを押さえる」タスクの実施率は9割台に達しています。
雑誌やSNSで話題になった後を追うだけでなく、「次のシーズンにどんな色・丈が来るか」を先回りして商品ラインに仕込むのが、アパレルMDの腕の見せどころです。
また、「展示会に出席し売れる衣服を探す」を行う人は約6割にのぼります。
流行の"芽"を見つけるために、年に何度も国内外の展示会を回り、サンプルをチェックするのもMDの大事な仕事です。
三陽商会エポカでMDを務める担当者は、「店舗スタッフから『こういうパンツが欲しい』という声を聞いて企画した商品がヒットしたときは本当にうれしかった」と語っています。
現場の声に耳を傾け、データと感覚を組み合わせてトレンドを読む力が、MDには求められます。
出典:Ready to Fashion | 三陽商会エポカMDインタビュー
【2】商品企画・ライン構成
市場調査で得た情報をもとに、シーズンごとの商品構成を企画します。
「今シーズンはどんなテーマで、どんなアイテムを何型投入するか」といった商品ラインナップ全体を設計するのです。
厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」によると、「新商品やプライベートブランド(PB)商品の開発を検討する」というタスクを行う人は約5割です。
店頭に並ぶ"自社だけのオリジナル商品"の裏には、MDが原価や売価、売れ筋を計算しながら企画したストーリーがあります。
この段階でデザイナーやパタンナーと密に連携し、「売れるデザイン」と「作りたいデザイン」のバランスを取りながら商品を形にしていきます。
【3】生産管理・納期調整
商品企画が固まったら、次は生産段階に移ります。
マーチャンダイザーは、どの工場でいつまでに何枚生産するかを決定し、納期管理を行います。
厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」によると、「仕入れのために海外出張する」タスクの実施率は約6割、「海外の生産者と打ち合わせをする」が9割近くにのぼります。
アパレルのMDは、生産拠点が海外に集中する中で、現地工場と交渉しながら品質と価格のバランスを取る"国際派バイヤー"でもあるのです。
原価計算も重要な業務です。
素材費、人件費、物流費などを細かく積み上げて、利益が出る価格設定を行います。
【4】販売計画・在庫管理
商品が完成したら、次は「どこで・いくらで・どれだけ売るか」を計画します。
各店舗への配分数を決め、販売期間を設定し、在庫の動きを常にチェックします。
売れ行きが好調な商品は追加生産を検討し、逆に売れ残りそうな商品は早めに価格改定(値下げ)やアウトレット送りなどを判断します。
この判断が遅れると在庫過多で利益を圧迫するため、MDにはスピーディーな意思決定力が求められます。
実務では、MDは商品のSKU(最小管理単位)ごとに販売数や在庫を管理し、売れ筋・死に筋商品の見極めや消化率の算出などを行うことが一般的です。
【5】販売促進・マーケティング
マーチャンダイザーは商品を企画するだけでなく、「どのように売るか」の戦略も立てます。
プロモーション施策の提案、広告戦略の立案、店頭での陳列方法の指示などを行います。
厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」によると、「広告戦略を考える」「店頭での陳列を考える」というタスクはいずれも実施率8割超です。
どの商品をどの棚のどの高さに置くかまで、数字と顧客心理を組み合わせて決めるのがマーチャンダイザーの仕事なのです。
VMD担当者と協力して店舗のビジュアル演出を企画したり、ECサイトでの見せ方を検討したりすることもあります。
マーチャンダイザーの業務範囲は年々広がっています。
従来は「商品企画と数値管理」が中心でしたが、現在はECサイトの商品ページ構成やSNSプロモーション施策まで、デジタルマーケティング領域にも関与するケースが増えています。
多様なスキルを駆使して商品を売り切る、まさに「ブランドの総合プロデューサー」といえる存在です。
マーチャンダイザーの1日の流れ
マーチャンダイザーの働き方は、基本的に本社(本部)での日中勤務が中心です。
ここでは、ある日の1日のスケジュール例を紹介します。
9:30 出社・メールチェック
前日の販売実績データを確認し、店舗や生産担当からの連絡に対応します。
10:00 販売データ分析・資料作成
ExcelやMDシステムを使って、週次レポートを作成。
売れ筋・死に筋商品を分析し、追加発注や価格改定の判断材料を整理します。
11:00 企画会議・部署間ミーティング
デザイナー、バイヤー、営業担当と次シーズンの商品を検討。
サンプルを見ながら「この色は売れそうか」「価格設定はどうするか」といった議論を重ねます。
12:00 昼休憩
13:00 サンプル確認・生産管理との打ち合わせ
デザイン画やサンプルをチェックし、原価計算を行います。
生産数量の最終決定もこの段階で行います。
14:00 店舗視察・競合リサーチ
自社店舗で品揃えや陳列状況を確認。
販売スタッフと会話して現場の声を拾います。
その後、競合ブランドの店舗を回ってトレンドをチェックします。
16:00 オフィスに戻り発注作業・在庫調整
追加生産の指示や、店舗間の在庫移動指示を出します。
価格改定が必要な商品があれば検討します。
17:00 翌日準備・メール返信
明日の会議資料を最終確認し、バイヤーや店舗への指示を出します。
18:00 退勤
繁忙期は残業もありますが、基本的には定時退社を目指します。
20代で正社員への就職・転職
マーチャンダイザーに求められるスキル
マーチャンダイザーには、多様なスキルが求められます。
データ分析力
売上データ、在庫データ、市場トレンドデータなど、大量の数値を読み解く力が必要です。
Excelやデータ分析ツールを駆使して、「なぜこの商品が売れたのか」「次はどう手を打つべきか」を論理的に導き出します。
トレンド感覚・マーケティング知識
流行を先読みする感性と、消費者心理を理解するマーケティング知識が欠かせません。
常に市場にアンテナを張り、新しい情報をキャッチし続ける好奇心も重要です。
コミュニケーション能力
社内であれば営業やデザイナー、販売スタッフ、社外であれば取引先など、たくさんの人と接しながら仕事を進めていくため、人間関係を上手に構築する力も重要です。
ときには意見が対立することもありますが、全体最適を考えて調整する交渉力が求められます。
意思決定力・リーダーシップ
「この商品を何枚発注するか」「値下げするタイミングはいつか」といった判断を日々下す必要があります。
決断が遅れれば在庫リスクや売上損失につながるため、スピーディーな意思決定力が不可欠です。
また、多様なスタッフをまとめ上げていくリーダーシップも求められます。
膨大な業務に追われるなかでも自分の仕事で精一杯になるだけではなく、他の人の動きや置かれている状況、考え方まで理解しようとする視野の広さ、そして知識や経験に加えて人間性も問われます。
業界知識
アパレル業界の場合、素材、縫製技術、ファッション史、業界動向など、幅広い専門知識が必要です。
また、サステナビリティやDX(デジタルトランスフォーメーション)といった最新トレンドにも対応できる柔軟性が求められています。
マーチャンダイザーに向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
マーチャンダイザーとバイヤーの違い
マーチャンダイザーとバイヤーは、しばしば役割がを混同されますが、明確な違いがあります。
それぞれの職種の役割
バイヤーは商品の「買い付け」を行う仕事です。
具体的には、企業やブランドのコンセプトを理解したうえで、顧客ニーズとトレンドを考慮し、売れそうな商品を選んで仕入れをします。
その過程では、どのくらいの量を仕入れるのかといった計画を立て、値段については仕入れ先との交渉も行います。
「売れる!」と思える商品を見極めて、できるだけ安く仕入れ、店頭に並べることがバイヤーのおもな役割です。
一方、マーチャンダイザーは、バイヤーと同様に仕入れ計画を立てることも行いますが、販売やマーケティングといった「仕入れ後」の部分にも大きく責任を持ちます。
販促活動やマーケティング活動を通じて、どう商品を売り切るか。
それを徹底的に考え、実行に移していくのがマーチャンダイザーです。
仕入れ部分に関してはバイヤーが深い知識を持っていますが、マーチャンダイザーのほうが、より幅広い知識・スキルを必要とされることが特徴です。
兼務することもある
このように、マーチャンダイザーとバイヤーは日ごろから「どのようなものが売れるのか?」を考え続けており、業務内容や役割が重なっている面もあります。
大企業であれば両者を別々の部門として機能させているケースが多いものの、中小企業や一部の大手企業、あるいはブランドによってはマーチャンダイザーがバイヤーを兼務することもあります。
バイヤー職として経験を積んだ人がマーチャンダイザーになるというキャリアパスもあります。
バイヤーとマーチャンダイザー(MD)の違いは? 仕事内容・年収・なり方を比較
マーチャンダイザーのやりがい
マーチャンダイザーの仕事には、大きなやりがいがあります。
自分のアイデアが形になる
市場調査から商品企画、販売計画まで一貫して関わるため、「自分が考えた商品が店頭に並ぶ」「自分の戦略で商品が売れる」という達成感を得られます。
これは他の職種ではなかなか味わえない醍醐味です。
トレンドの最前線に立てる
常に最新のファッショントレンドに触れ、誰よりも早く情報をキャッチできる環境は、ファッション好きにとって大きな魅力です。
展示会や海外出張を通じて、世界中のトレンドを肌で感じることができます。
ブランドの成長に貢献できる
マーチャンダイザーの意思決定は、ブランドの売上や利益に直結します。
自分の戦略でブランドが成長し、会社に貢献している実感を得られることは、大きなやりがいとなります。
ある現役MDは「MDの使命は『売れる商品を開発し、利益を作ること』。一番のやりがいは、開発した商品が計画以上に売れたときです」と語っています。
マーチャンダイザーの大変なこと
やりがいの大きい仕事ですが、同時に大変なことも多くあります。
数字のプレッシャー
マーチャンダイザーの仕事は、売上といった数字に直結します。
計画通りに売れないときは真っ先に原因を問われ、精神的な負担は決して小さくありません。
とくに重要な仕事をこなしている時期は、気が休まらない日々を送ることもあります。
責任の重さ
どんなに魅力的なデザインの商品も、ビジネスである以上、最終的に売れなければ成功とはいえません。
世の中のニーズを敏感に汲み取りつつ多様な知識を駆使して、消費者たちからは見えないところで試行錯誤の日々を送ることになります。
また、商品はそのままブランドや企業にとってのイメージにもつながってくるため、その点も見越してどのような商品を展開すべきか考えていかなくてはなりません。
仕事量の多さ
商品企画、会議、資料作成、店舗視察など、業務範囲が広く、仕事量も多いです。
繁忙期(展示会シーズンやシーズン立ち上げ前)は残業や休日出勤が発生することもあります。
まとめ
マーチャンダイザーは、「何を・どれだけ・いつ・どこで・いくらで売るか」を設計するブランドの舵取り役です。
市場調査から商品企画、生産管理、販売計画、プロモーションまで、商品に関わるあらゆる工程を統括する専門性の高い職種といえます。
データ分析力とトレンド感覚の両方が求められ、多様なスキルを駆使しながら日々忙しく動き回る仕事ですが、自分のアイデアが形になり、店頭で売れる喜びは何物にも代えがたいやりがいがあります。
アパレル業界を目指す方、販売職からのキャリアアップを考えている方は、ぜひマーチャンダイザーという職種にも目を向けてみてください。
📚 この記事の参考資料・データ出典
政府統計
- 総務省「令和2年国勢調査」(従事者数データ)
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」(平均年収データ)
- 厚生労働省「職業情報提供サイト job tag マーチャンダイザー、バイヤー」(2024年更新)
業界調査
- 矢野経済研究所「2024年版 アパレル産業白書」(市場規模データ)
- パーソルキャリア「doda転職求人倍率レポート(2023年12月)」(転職市場全体の求人倍率データ)



































