バイヤーとマーチャンダイザー(MD)の違いは? 仕事内容・年収・なり方を比較

アパレル業界で「商品」に関わる職種として、バイヤーとマーチャンダイザー(MD)はよく混同されます。

どちらも売れる商品を見極める仕事ではありますが、実は役割も業務範囲も大きく異なります。

この記事では、バイヤーとMDの違いを仕事内容・年収・キャリアパスの3つの軸で徹底比較します。

「自分にはどちらが向いているのか?」を判断する材料にしてください。

この記事のポイント💡
  • バイヤーは「売れる商品を選んで仕入れる」目利き、MDは「売れる仕組みを作る」プロデューサー
  • バイヤーの平均年収約450万円、MDの平均年収約473万円でほぼ同水準
  • 外資系・ラグジュアリーブランドでは両職種とも年収600〜800万円以上も可能
  • 適性はフットワーク重視のバイヤー、データ分析重視のMDで分かれる
  • バイヤーからMDへのキャリアアップは王道パターン

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バイヤーとマーチャンダイザー(MD)の基本的な違い

まず、バイヤーとMDの役割を一言で表すと以下のようになります。

バイヤー:売れる商品を選んで仕入れる「目利き」

MD:商品企画から販売戦略まで統括する「プロデューサー」

どちらも「売れる商品」に関わる仕事ですが、バイヤーは「仕入れ」に特化しているのに対し、MDは商品企画・生産・販売計画・在庫管理まで一貫して担当します。

いわば、MDが描いた商品戦略の青写真に基づいて、バイヤーが具体的な商品を選定・仕入れるという協働関係にあります。

定義の違い

バイヤーの定義

バイヤーは、市場調査やトレンド分析を行い、自社で販売する商品を選定・仕入れる専門職です。

展示会や産地を訪れて商品を見極め、メーカーや卸業者と価格交渉を行い、適正な量を仕入れることが主な役割です。

セレクトショップや百貨店では、バイヤーの「目利き力」が店舗の個性を決定づけます。

マーチャンダイザー(MD)の定義

MDは、市場調査から商品企画、生産計画、販売戦略、プロモーション、在庫管理まで、商品のライフサイクル全体を統括する職種です。

「何を・いつ・どこで・いくらで・どれだけ売るか」を戦略的に決定し、売上と利益を最大化することがミッションです。

アパレルメーカーやSPAブランドでは、MDがブランドの舵取り役として重要な位置を占めます。

活躍する企業の違い

バイヤーが活躍する企業

  • 百貨店(伊勢丹、高島屋など)
  • セレクトショップ(ユナイテッドアローズ、ビームスなど)
  • アパレル専門商社
  • 総合商社の衣料部門

MDが活躍する企業

  • アパレルメーカー(オンワード、三陽商会など)
  • SPAブランド(ユニクロ、GUなど)
  • ファッション通販企業(ZOZO、マガシークなど)
  • 百貨店本部(一部企業ではバイヤー兼務も)

企業によっては「MD兼バイヤー」として両方の業務を担当する場合もあります。

特に中小アパレル企業では、MDが仕入れ業務も兼務するケースが一般的です。

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仕事内容の違いを詳しく比較

バイヤーとMDの具体的な業務内容を比較してみましょう。

バイヤーの主な業務

【1】展示会・産地巡り

国内外の展示会や工場を訪問し、商品をリサーチします。

海外ブランドの場合は、パリやミラノのコレクションに出向くこともあります。

【2】商品選定・仕入れ交渉

トレンドと顧客ニーズを踏まえて、仕入れる商品を選定します。

メーカーや卸業者と価格・納期・最小ロットなどを交渉し、契約を結びます。

【3】発注・納期管理

適正な仕入れ数量を決定し、発注書を作成します。

納期管理を行い、予定通りに商品が入荷するよう調整します。

【4】売上分析・追加発注

店頭での売れ行きをチェックし、売れ筋商品は追加発注、死に筋商品は発注を止めるなど、機動的に対応します。

マーチャンダイザー(MD)の主な業務

【1】市場調査・トレンド分析

競合ブランドの動向、消費者ニーズ、ファッショントレンドを徹底的に調査します。

過去の販売データを分析し、次シーズンのヒット商品を予測します。

【2】商品企画・ライン構成

シーズンコンセプトを策定し、どのようなアイテムを何型・何色・何サイズ展開するかを決定します。

デザイナーと協働してサンプルを確認し、原価計算との調整も行います。

【3】生産計画・発注管理

適正な生産数量を決定し、工場やサプライヤーと交渉します。

過剰在庫や欠品を防ぐため、リードタイムを考慮した綿密な計画が必要です。

【4】販売計画・プロモーション戦略

価格設定、売場配置、販促施策を立案します。

店舗スタッフへの商品説明会を実施し、売り方の指導も行います。

【5】売上・在庫分析とPDCA

週次・月次で販売実績をチェックし、売れ筋・死に筋商品を見極めます。

追加生産または値引き販売の判断を下し、在庫の適正化を図ります。

業務範囲の比較

バイヤーとMDの業務範囲を図で表すと以下のようになります。

業務プロセス バイヤー MD
市場調査・トレンド分析
商品企画・開発
商品選定・仕入れ
価格交渉
生産計画 ×
販売計画・プロモーション
在庫管理・売上分析

◎=主担当、○=担当、△=部分的に関与、×=関与なし

バイヤーは「仕入れ」領域に特化している一方、MDは商品ライフサイクル全体を統括しています。

💡 豆知識:「MD兼バイヤー」が多い理由

中小アパレル企業では、MDとバイヤーを一人で兼任するケースが多く見られます。

これは人員不足というより、商品企画から仕入れまで一貫して担当することで、スピーディな意思決定が可能になるためです。

セレクトショップなどでは、店舗の世界観を統一するため、あえてMD機能とバイヤー機能を一人に集約する戦略を取る企業もあります。

出典:マーチャンダイザー職業調査レポート(DR)

1日のスケジュール比較

バイヤーとMDの具体的な働き方をイメージできるよう、1日のスケジュール例を比較してみましょう。

バイヤーの1日

9:00-10:00
出社・メールチェック、売上速報確認
10:00-12:00
メーカー展示会訪問、次シーズン商品の選定
12:00-13:00
昼食(移動中に軽く済ませることも)
13:00-15:00
仕入れ先との価格交渉、発注手続き
15:00-17:00
オフィスに戻り、発注書作成・予算管理
17:00-18:00
翌日の展示会スケジュール確認、メール返信

バイヤーは外出が多く、展示会シーズンは連日朝から夕方まで展示会場を回ります。

海外ブランドを扱う場合は、年に数回の海外出張もあります。

マーチャンダイザー(MD)の1日

9:00-10:00
出社・メールチェック、昨日の売上データ確認
10:00-12:00
デザイナー・バイヤーとの企画会議
12:00-13:00
昼食
13:00-15:00
店舗視察、売場チェック・販売スタッフからヒアリング
15:00-17:00
オフィスに戻り、在庫分析・売上予測の資料作成
17:00-18:00
翌週の販促施策検討、各部署との調整メール

MDはデスクワークとデータ分析が業務の中心ですが、店舗視察や工場訪問で外出する日もあります。

働き方の違い

項目 バイヤー MD
勤務場所 展示会場・産地・オフィス オフィス・店舗・工場
デスクワーク比率 30-40% 60-70%
出張頻度 多い(月2-4回程度) やや少ない(月1-2回程度)
会議・打ち合わせ やや少なめ 多い(社内調整業務)

バイヤーはフットワーク重視、MDはデスクワークと社内調整が多いという違いがあります。

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必要なスキル・適性の違い

バイヤーとMDでは、求められるスキルや適性も異なります。

バイヤーに必要なスキル

【1】商品を見極める審美眼

「これは売れる!」と直感で判断できるセンスが求められます。

トレンドを敏感にキャッチし、顧客が求める商品を選ぶ目利き力が重要です。

【2】交渉力・決断力

メーカーとの価格交渉では、粘り強く条件を引き出す交渉力が必要です。

限られた時間で「買う・買わない」を即断する決断力も欠かせません。

【3】トレンド感覚

ファッション誌やSNS、街の様子から常に最新トレンドを収集します。

海外コレクションの動向もチェックし、半年先・1年先のトレンドを予測します。

【4】フットワークの軽さ

展示会や産地への出張が多いため、移動が苦にならない体力・行動力が求められます。

【5】語学力(外資系・海外ブランドの場合)

海外メーカーとの交渉では、英語や中国語などの語学力が必須です。

マーチャンダイザー(MD)に必要なスキル

【1】データ分析力

売上データ・在庫データを分析し、数字から傾向を読み取る力が必要です。

Excelやデータ分析ツールを使いこなし、論理的に思考する能力が求められます。

【2】企画提案力

魅力的な商品コンセプトを立案し、社内を説得するプレゼンテーション力が重要です。

デザイナーや営業部門に対して、明確なビジョンを示す必要があります。

【3】コミュニケーション能力

デザイナー・バイヤー・営業・店舗スタッフなど、多くの部署と連携します。

各部署の意見を調整し、プロジェクトを円滑に進める調整力が求められます。

実際、MD業務では他部署との調整に多くの時間を使うとも言われます。

【4】計画性・マネジメント能力

複数のプロジェクトを同時進行させるため、スケジュール管理能力が欠かせません。

商品企画から販売まで、半年〜1年先を見据えた綿密な計画を立てる必要があります。

【5】プレッシャーに強いメンタル

売上・在庫の責任を負うため、数字へのプレッシャーが大きい職種です。

失敗から学び、次に活かすポジティブな姿勢が求められます。

向いている人の特徴比較

特徴 バイヤー向き MD向き
性格 好奇心旺盛、行動的 論理的、計画的
得意なこと 即断即決、交渉 データ分析、企画立案
働き方の好み 動き回る、現場主義 デスクワーク、戦略思考
重視する価値 直感、センス 数字、論理

「自分はどちらのタイプか?」を考えてみると、適性が見えてきます。

年収・待遇の違い

バイヤーとMDの年収を比較してみましょう。

バイヤーの平均年収

バイヤーの平均年収は約450万円です。

企業規模別の年収レンジ

・国内中堅アパレル企業:400〜500万円
・大手百貨店・セレクトショップ:500〜650万円
・外資系・ラグジュアリーブランド:600〜800万円

海外ブランドのバイヤーは高待遇のケースが多く、英語力や交渉力次第で年収800万円以上も可能です。

マーチャンダイザー(MD)の平均年収

MDの平均年収は約473万円です。

企業規模別の年収レンジ

・国内中小アパレル企業:400〜500万円
・国内大手アパレルメーカー:500〜700万円
・外資系・ラグジュアリーブランド:600〜1,200万円以上

MDは売上・利益への貢献度が直接評価されるため、成果次第で大きく年収が変動します。

マネージャークラスになると年収1,000万円を超えるケースもあります。

年収比較まとめ

企業規模 バイヤー年収 MD年収
国内中小 400〜500万円 400〜500万円
国内大手 500〜650万円 500〜700万円
外資系 600〜800万円 600〜1,200万円

国内企業では両職種ともほぼ同水準ですが、外資系ではMDの方がやや高めの傾向があります。

これは、MDがブランドの売上・利益に直接責任を負うポジションであるためです。

給与体系の違い

バイヤー:仕入れ成果で評価

・仕入れた商品の売上・粗利率が評価対象
・「売れる商品を選べたか」が問われる
・売れ残りリスクも考慮される

MD:売上・粗利の総合評価

・ブランド全体の売上・在庫消化率が評価対象
・「売り切れたか」「利益を出せたか」が問われる
・在庫リスク管理も評価に含まれる

どちらも成果連動型ですが、MDの方が責任範囲が広い分、成功時のリターンも大きくなります。

現場の声:バイヤー経験者がMDに転身した理由

「バイヤーとして5年間経験を積み、『選ぶ』だけでなく『売り切る』までを担当したくなってMDに転身しました。

バイヤー時代は『売れる商品を選ぶ』ことに集中できましたが、売場での展開方法や販促施策まで関与できなかったため、もどかしさを感じていました。

MD に転身してからは、商品企画から販売戦略まで一貫して担当できるようになり、ブランド全体を動かしている実感があります。

年収も50万円ほどアップし、やりがいも大きくなりました。」

出典:note「海外バイヤーからMDへのキャリアチェンジ」https://note.com/inoue_hiromi/n/n577d397c5331

キャリアパス・なり方の違い

バイヤーとMDになるための一般的なルートを紹介します。

バイヤーになるには

【ルート①】販売職→バイヤー(王道パターン)

百貨店やセレクトショップの販売職として入社し、3〜5年の販売経験を積んだ後、社内公募や配置転換でバイヤーになるルートです。

販売現場で顧客ニーズを肌で感じた経験が、バイヤー業務に活きます。

【ルート②】新卒総合職→バイヤー配属

大手企業の総合職として入社し、配属でバイヤー部門に配属されるケースです。

最初からバイヤー志望であることを伝えておくと、配属の可能性が高まります。

【ルート③】アパレル営業→バイヤー転職

アパレルメーカーの営業職として経験を積み、中途転職でバイヤーになるルートです。

メーカー側の視点を持つバイヤーは、仕入れ交渉で有利に働くことがあります。

マーチャンダイザー(MD)になるには

【ルート①】販売職→MDアシスタント→MD(王道パターン)

販売職として現場経験を積み、その後MDアシスタントを経てMDに昇格するルートです。

現場を知るMDは、店舗スタッフとのコミュニケーションも円滑です。

マーチャンダイザーになるには

【ルート②】新卒総合職→営業・バイヤー→MD

大手企業の総合職として入社し、営業やバイヤーを経験してからMDになるルートです。

多角的な視点を持つMDは、バランスの取れた戦略を立てられます。

【ルート③】他業界→中途転職でMD

マーケティング職やデータアナリスト経験者が、中途転職でMDになるケースも増えています。

特にEC企業では、デジタルマーケティングのスキルを持つMDが重宝されます。

バイヤーからMDへの転身は可能?

バイヤーからMDへのキャリアアップは、非常に一般的なルートです。

多くの企業で「バイヤー→MD」というキャリアパスが用意されています。

バイヤー経験がMDに活きる理由

・商品知識が豊富
・市場動向を肌で理解している
・メーカーとのネットワークがある
・仕入れ交渉のノウハウを持っている

バイヤーとして培った「売れる商品を選ぶ力」は、MD業務の商品企画に直結します。

実際、大手アパレル企業では「バイヤー5年→MD昇格」といったキャリアモデルが多く見られます。

キャリアアップ先の違い

バイヤーのキャリアパス

・チーフバイヤー
・バイイングディレクター
・商品本部長
・経営層(MD出身者と競合)

MDのキャリアパス

・MDマネージャー
・商品本部長
・事業部長
・経営層(ブランドディレクター、役員など)

MDの方が経営に近いポジションに進みやすい傾向があります。

独立・フリーランスの道

バイヤー:独立して買付代行業、個人でセレクトショップ開業

MD:フリーランスMDとして複数ブランドの商品戦略を支援

どちらも豊富な実績と人脈があれば、独立の道も開けます。

どっちに向いている?適性診断チェックリスト

自分にはバイヤーとMDのどちらが向いているか、チェックしてみましょう。

バイヤー向きチェック

以下の項目に多く当てはまる人は、バイヤーに向いています。

  • □ 海外出張・国内出張が苦にならない
  • □ トレンドを敏感にキャッチするのが得意
  • □ 即断即決で物事を進めたい
  • □ 語学(英語など)に自信がある
  • □ 人との交渉・駆け引きが好き
  • □ 「これは売れる!」と直感で判断できる
  • □ デスクワークより外を飛び回りたい

バイヤーは、フットワークの軽さと瞬時の判断力が求められる職種です。

MD向きチェック

以下の項目に多く当てはまる人は、MDに向いています。

  • □ Excelなどのデータ分析が得意
  • □ 計画を立てて進めるのが好き
  • □ 多部署との調整・コミュニケーションが得意
  • □ 数字で成果を見るのが好き
  • □ 冷静に判断できる
  • □ 戦略を立てるのが楽しい
  • □ プレッシャーに強い

MDは、論理的思考とデータ分析力が求められる職種です。

両方の要素がある人は?

「バイヤーの直感力」と「MDの分析力」の両方を持つ人は、理想的な人材です。

まずはバイヤーとして市場を知り、その後MDにステップアップするルートがおすすめです。

多くの企業で、バイヤー経験者がMDに昇格する際、最も評価される理由がここにあります。

まとめ

バイヤーとマーチャンダイザー(MD)は、どちらも「売れる商品」に関わる重要な職種ですが、役割と業務範囲は大きく異なります。

バイヤーは「仕入れのプロ」として商品選定に特化し、MDは「ブランドのプロデューサー」として商品企画から販売戦略まで統括します。

年収は両職種ともほぼ同水準で、外資系・ラグジュアリーブランドでは高待遇が期待できます。

適性は、フットワーク重視のバイヤー、データ分析重視のMDで分かれますが、バイヤーからMDへのキャリアアップは王道パターンです。

「自分はどちらに向いているか?」を考え、まずは一歩を踏み出してみてください。

📚 この記事の参考資料・データ出典