マンション管理人の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「マンション管理人」とは
マンションの受付、点検、清掃などを行い、住民が安心・快適に暮らせる環境づくりをする。
マンション管理人の仕事は、マンションの受付、点検、清掃などの業務を担当し、 マンションの住民が安心して快適に暮らすことができるよう、マンションを管理する仕事 です。
こうした業務を通して、入居者が安全かつ安心に、かつ快適に暮らせるようにすることが主な役割です。
働く人の多くは管理会社に雇われており、管理会社の従業員として各マンションに派遣される形で働きます。
マンション管理人の仕事をするために特別な資格や学歴は必要なく、誰でもなることができます。
仕事を求める高齢者の受け皿という側面があるためか、50代以上や60代のシニア世代の採用が中心となり、大半が契約社員や嘱託、パートとなっています。
給料はフルタイムでも15万円程度になる場合も珍しくなく、高い給与は望みにくいですが、特別な資格やスキルは求められないため、高齢者が未経験からでもスタートしやすい仕事です。
日々の巡回や清掃など有人でしかできない管理業務は多く、居住者の安心や安全を守るためにマンション管理人は全国で必要とされています。
「マンション管理人」の仕事紹介
マンション管理人の仕事内容
マンション住民が快適に暮らせるようさまざまな業務を行う
マンション管理人は、そのマンションに住む人が気持ちよく、安全に生活を送れるよう、マンション管理に関するさまざまな仕事を行います。
日常的に最も比重の大きい業務は「清掃」 で、エントランスや廊下、階段、ゴミ置き場など、マンション共用部の掃き掃除、拭き掃除を行います。
中でもゴミ置き場は、近年ゴミの分別ルールが非常に細分化・厳格化しているため、住民の出したゴミを再分別しないといけない場合もあります。
次いで主な仕事は「受付業務」で、マンションに来訪する人の窓口対応などを行います。
座っているだけのイメージがあるかもしれませんが、オートロックの付いていないマンションでは特に、ビラ配りやセールス業者などが頻繁にやってきますので、決して楽な仕事ではありません。
他にも「点検・立会業務」や「報告連絡業務」、「管理組合の補助」など、マンション管理人の仕事は多岐にわたります。
住人のためであれば、本来の業務以外のことまで手掛けるケースもよくみられ、宅配の受け取りや電球の交換など、個人的な依頼に応じることも少なくありません。
マンション管理人は、住人との良好な関係を築くために、こうした一人一人のニーズに応じたきめ細かな対応をすることもあります。
なお、一般的には「マンション管理人」と呼ばれるものの、職業としての正式名称は「マンション管理員」であり、求人時には管理員という名前で募集がなされます。
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マンション管理人になるには
マンション管理会社に採用され、各マンションに派遣される
マンション管理人の仕事をするために特別な資格や学歴は必要なく、誰でもなることができます。
マンション管理人は、一般的にマンション管理会社に所属し、そこから各物件に配属されるかたちで働きます。
求人募集を行っている マンション管理会社や管理組合の採用試験を受けて、合格すれば働くことができ ますが、正社員のケースは少なく、大半は契約社員や派遣社員、パートなどの非正規雇用です。
朝から夕方までひとつの物件を担当する「常勤」、1日に複数の物件をまわる「巡回」、建物内の部屋で生活する「住み込み」など、働き方にもばらつきがあります。
そのため仕事を求める高齢者の受け皿という側面があり、社会人経験の少ない若い世代のなり手はかなり少ないようです。
若くしてマンション管理を行いたいなら、各種業務が分業制になっていることの多い高級マンションやタワーマンションに職を求めるとよいでしょう。
そういったマンションには受付専門の「コンシェルジュ職」があり、20代や30代の比較的若い層が働いています。
多くの場合、マンションに派遣されて管理人として働き始める前には事前研修や現場実習が実施されるケースが一般的であり、そこで一通りの仕事を覚えることで現場に出ていきます。
なお、管理会社を通さず、管理組合やマンションオーナーから直接雇用されるケースも一部あります。
マンション管理人の学校・学費
学歴よりも優先されるのは経験や人柄
マンション管理人として就職するために大卒などの学歴は特に重要視されませんし、マンション管理人になるための専門学校や大学も存在しません。
それよりも必要なのは、実務経験や社会経験です。
マンション管理人の元には住民を中心に日々さまざまな人がやってきて、多種多様な業務が発生します。
性格も年齢も目的も異なる人々に臨機応変に対応し、業務を支障しなく進めていくためには、人生経験がものをいうケースも少なくありません。
人柄や働きが認められ、住民からの信頼を得られれば、それだけ雇用期間も長くなるでしょう。
まったく未経験で不安を感じるという場合は、都道府県や市町村が開催しているマンション管理人の講習会を受講して知識を身に付ける方法もあります。
マンション管理人の資格・試験の難易度
関連資格を取得すれば仕事上有利な場合も
マンションの管理に関する資格としては、「管理業務主任者」と「マンション管理士」の2つがあります。
しかしこれらはマンション販売会社などに勤める社員に必要な資格で、管理人に必須ではありません。
ただ、それらの資格を有していれば、マンション管理人としての仕事だけでなく、管理に付随する周辺業務も行えるようになるため、待遇面で有利になる可能性もあります。
将来的に転職したり、キャリアアップすることを視野に入れていたりするなら、資格試験にチャレンジしてみてもいいでしょう。
まずは比較的難易度が低く、管理人の仕事と関係の深い「管理業務主任者」について勉強してみるとよいでしょう。
マンション管理人の給料・年収
シニア世代の求人が多く、高給はのぞめない
高収入は望みにくい仕事
マンション管理人の給料は、所属する管理会社や雇用形態、勤務形態、マンションの規模、勤務地などによって少しずつ異なります。
一般的な給与は時給なら900円、月給なら15万円程度が相場で、年収に換算すると200万円に満たないことが一般的です。
地方では時給850円程度、月給12~13万円ということも珍しくありません。
経験や勤続年数を積んでも大幅に昇給することはほぼなく、高収入はのぞみにくい職業といえます。
特別な学歴や資格が必要なく、かつ中高年でもあまり体に負担をかけず働けるために、あまり待遇を厚くしなくても十分になり手を確保できることが要因と思われます。
より収入を求めるなら、高級分譲マンションで「コンシェルジュ職」として受付に特化したり、英語を習得して外国人専用マンションに勤めたりするなど、専門性を高めることが必要になるでしょう。
住み込みで働く場合
マンション管理人は、マンションに通勤をして決められた時間内で働く人もいれば、住み込みの形で働く人もいます。
住み込みの場合、「夫婦で働くこと」が条件になることが多く、給与は二人合わせて30万円~40万円程度が相場となっているようです。
さほど高い給与とはいえないかもしれませんが、マンション内に部屋を与えられ家賃や光熱費が無料になったり、引っ越し費用を会社が負担してくれたりすることも多いです。
給料としては決して高額ではありませんが、生活にはさほど困らないでしょう。
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マンション管理人の現状と将来性・今後の見通し
マンションの増加により今後も需要は増加傾向に
マンションの居住人口は1500万人を超え、今や国民の1割以上がマンションに住んでいます。
今後も高齢化の進展などからマンションでの生活を望む人は増え続ける見通しで、人口の減少する中にあっても、マンション管理人の需要は堅調に推移すると思われます。
一部のマンションでは警備会社と契約し無人でのセキュリティサービスを提供したり、ロボットを導入したりしはじめています。
しかし、マンション管理人の仕事の大半は機械化できないものですから、今後も管理人は必要とされ続けるでしょう。
ただし、需要が多いのは、あくまで東京などの都市部に限った話であり、マンションそのものが少ない地方エリアの求人はかなり少ないです。
マンション管理人の就職先・活躍の場
管理会社に就職し、そこから各マンションに配属される
マンション管理人は通常、管理会社に雇用され、そこから担当するマンションに派遣されて業務を行います。
管理会社の社員という立場ではありますが、その管理会社に出社することはほとんどなく、自宅から担当するマンションに出勤し、そのまま帰宅する「直行直帰」が一般的です。
朝9時~18時までなど決められた一定の時間、管理人室などでマンションの管理業務を行います。
またそれとは別に「住み込み」という勤務体系もあり、管理人専用の居室が与えられ、そのマンションに常駐して仕事を行いますが、近年では減少傾向にあるようです。
また規模の小さなマンションでは、一週間~一ヶ月に数回など、定期的に複数のマンションを回る巡回管理をしているところもあります。
マンション管理人の1日
清掃を中心にさまざまな業務をこなす
マンション管理人の1日はかなり流動的ですが、その6割~7割ほどは清掃作業に充てられます。
自分のペースでさまざまな場所をこまめに清掃しつつ、合間に受付や立会、巡回、点検などのほかの業務をこなします。
<日勤で働くマンション管理人の1日>
マンション管理人のやりがい、楽しさ
マンションの住人とよい人間関係を構築できること
マンション管理人は住民と直に接するため、「ありがとう」「ご苦労様」といった言葉をかけてもらいやすく、人の役に立っていることを実感しやすい職業といえます。
住民と毎日顔を合わせ、相談に乗ったり、ちょっとした面倒ごとを解決したりしていく中でコミュニケーションを重ねれば、自然と住民との人間関係ができてきます。
住民に信用され、頼られるようになることは、マンション管理人にとって大きなやりがいや楽しさにつながるようです。
また、年齢を重ねて身体能力の衰えた中高年でも働けることは、マンション管理人の大きな魅力です。
定年退職して年金暮らしとなった元サラリーマンや元公務員が、セカンドライフとしてマンション管理人を始めるケースもよく見受けられます。
マンション管理人のつらいこと、大変なこと
マンション管理人にとって住民は「お客さま」
住人からクレームや無理難題をいわれやすい
管理組合から委託を受け、管理会社から派遣されている管理人にとって、マンション住民は「お客さま」にあたります。
そういう関係上、住民に対して強く出られない場面が多々あります。
マンションにはいろんな住民がいますから、中には理不尽な文句を言う人もいますし、明らかに業務の範囲外にあたる頼みごとをしてくる人もいます。
マナー違反をしている住民に対して注意することも躊躇われますし、ときには注意した結果逆ギレされることもあります。
そうした場面でもできる限り誠実に対応しなければならないのが、マンション管理人の仕事のきつい部分といえます。
一人仕事で給料が低い
マンション管理人は基本的には一人で仕事をするので、一人が苦手だという人には不向きな仕事といえます。
点検や巡回など、仕事量自体は非常に多いですが、そのほとんどは単純作業であり、同じ仕事が続き退屈を感じてしまうという人もいます。
一方で、黙々と作業をこなすのが得意な人には向いているといえるでしょう。
また、雇用形態も非正規が大半であり、決して安定的な待遇とはいえませんし、キャリアを重ねても昇給もほとんど期待できません。
生活にどうしてもお金がかかる現役世代の家庭は、金銭的にかなり厳しい生活を強いられることになり、定年退職を迎えたシニア世代ならまだしも、若い世代にはおすすめしにくい職業です。
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マンション管理人に向いている人・適性
住民の世話焼きを苦にしない、面倒見のいい人
マンション管理人に寄せられる住民への要望はさまざまで、「鍵を忘れたから開けてほしい」「排水菅が詰まったから見てほしい」「ペットが逃げたから探して」など枚挙にいとまがありません。
依頼がたとえ業務範囲外であったとしても、相手に対して親身になって、ていねいに対応できる人、つまり他人のお世話をするのが好きな人こそ、マンション管理人に向いている人です。
またマンション管理人の仕事は、基本的にすべての仕事を一人でこなすため、どの業務をどの程度行うかは、すべて自分の手にゆだねられています。
誰かに指示されるよりも、自分で仕事のことを決めたい、マイペースで働きたいという人は、マンション管理人に向いています。
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マンション管理人志望動機・目指すきっかけ
人を支えたい、人に喜んでもらいたいという思いがきっかけ
セカンドキャリアとして
マンション管理人を目指すきっかけで多いのは、定年退職した元サラリーマンや元公務員などが、セカンドキャリアとして働き口を求めるケースです。
近年は60歳を過ぎても働き続けたいという人が増えています。
資格も専門的なスキルも必要なく、また体力的な負担もそこまで重くないマンション管理人は、そうしたシニア世代にはうってつけの仕事です。
とくに社会人経験があり、身だしなみやマナー、礼儀作法、言葉づかいなどがしっかりしていれば、管理会社側も採用しやすいでしょう。
マンション管理人には、さまざまな入居者に対して、よい印象をもってもらうことが大切であるため、接客や営業など多くの人と接する仕事をしていた人であれば、その知識やスキルを生かすことができます。
収入よりも人のために働きたいという思い
大きな収入を得にくいマンション管理人は、金のためだけでなく、誰かの役に立つために働きたいという動機が多いようです。
また、自身がマンションに居住していて、マンション管理人が自分たちのために働いている姿を実際に見て、自分もそのような仕事に就きたいとマンション管理人を志望するケースもよくあります。
マンション管理人の業務には学歴も専門的スキルも体力も不要で、誰でも目指すことができる仕事です。
だからこそ志望動機を考える際には「どのように入居者の役に立ちたいか」といった点に着目して、働く目的をしっかりと伝えることが大切です。
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マンション管理人の雇用形態・働き方
契約社員やパート・アルバイトなど非正規雇用がメイン
マンション管理人は管理会社に雇用されることが一般的ですが、正社員としての採用は少なく、多くは契約社員やパート・アルバイトです。
働き方もさまざまで、1日8時間前後の日勤で働く場合が多く、1日2~3時間程度で複数のマンションを巡回するケースもあります。
現在では少なくなりつつありますが、マンション内に住居を与えられ、住み込みで24時間常駐する働き方もあります。
非正規採用が大半を占めるために、身分と収入を安定させ、しっかりと自分の生活を築きたいと考える若い世代には、あまり向かない職業といえるかもしれません。
一方で、定年退職してもまだ働きたい、年金のほかに収入を賄いたいという高齢者には向いているといえます。
マンション管理人の勤務時間・休日・生活
時間が決まっており仕事と私生活を両立させやすい
マンション管理人の勤務時間は、日勤の場合9:00頃から18:00頃であることが多く、トラブルさえなければほぼ定時で仕事を終え帰宅することができます。
エレベータや消防設備などの点検作業が長引いた場合は、最後まで立ち会わないといけない関係上、残業することもあるようですが、そういった機会はあまり多くありません。
複数のマンションを管理する場合は移動の手間と時間がかかるものの、実際の勤務は1つのマンションにつき2~3時間程度です。
休日についても、日勤の場合は日曜日と祝日が休みであることが一般的で、休日に出勤することもほとんどありません。
住み込みで24時間常駐する管理人でなければ、私生活の予定は立てやすいでしょう。
マンション管理人の求人・就職状況・需要
都市部を中心に求人は多くみられる
高齢者世帯や共働き世帯が増加していることなどを背景として、利便性のよいマンションは戸建住宅よりも人気を集めています。
マンションの新築着工件数の増加に伴ってマンション管理人の需要も高まっており、特にマンションの多い都市部を中心に多数の求人があります。
ただ、どの企業も50~60代のシニア層を求める傾向にあります。
これは人生経験を積んで落ち着きのあるシニア世代の方が住民から信頼を得られやすいという管理会社側の思いがあるようです。
求人情報にはっきり「何歳以上でなければ採用しない」と明記はされませんが、若年層の採用には消極的で、実際に若い世代がマンション管理人になることはほぼありません
マンション管理人の転職状況・未経験採用
高齢になっても働きやすく定年退職者も多い
一般的な職業とは異なって新卒採用はほぼなく、現在マンション管理人として働いている人は、ほぼ100パーセントが中途採用者といってもよいでしょう。
管理人職は比較的体の負担が少なく、高齢になっても働くことができるため、前職を定年退職した後に、マンション管理人に転職する人が多い印象です。
実際に管理人として勤めている人も中高年が大半で、なかには75歳という人もいるようです。
また未経験の場合でも、一週間程度の研修や現場実習を実施している企業がよくあり、働きやすい職業といえます。
マンション住民との距離は非常に近く、頻繁にコミュニケーションを取るため、販売系や飲食系、宿泊系など不特定多数の人と接した職業のキャリアがあれば、非常に役に立ちます。
20代でもマンション管理人になれる?
20代や30代で雇用されることはほとんどない
学校を卒業したてや第二新卒などの若い世代の人が、マンション管理人になるケースはほぼありません。
マンション管理人は、老若男女さまざまな入居者を相手にするため、人生経験豊富なシニア層が好まれる傾向があります。
雇用するマンション管理会社側としても、社会人経験の浅い20代や30代の人にマンション管理を任せるのは不安があり、採用を避ける傾向にあるようです。
また、マンション管理人は正社員ではないケースが多く、長期的に安定した雇用が見込めなかったり、給料が低かったりといったデメリットもあります。
マンション管理人にはほとんど昇給もなく収入アップも見込めないため、経済的な面でも若い世代に向いている職業とは言えないでしょう。