医療秘書になるには
医療秘書になるまでの道のり
特別な学校を卒業しなくても目指せる
医療秘書は「医師」や「看護師」のように、医学系の大学や看護学校を卒業しなければなれない職業ではありません。
学歴に関して厳しく問われることもなく、どのような勉強をしてきた人でも医療秘書になれる可能性があります。
ただし、医療秘書として採用されるためにはある程度の「適性」や「知識」が重要になってくるため、就職前に準備をしておきましょう。
なお、医療機関によっては採用条件のひとつに「短大卒以上」「専門学校卒以上」などの学歴要件を掲げる場合があるため、短大や専門学校、あるいは大学に進学しておけば、就職先の選択肢は広がります。
医療秘書としてあるとよい適性
秘書の適性として、「コミュニケーション能力が高く、よく気が利くこと」「積極的に周囲の人のサポートができること」「段取りをつけるのが上手で、ミスなく丁寧な仕事ができること」などが挙げられます。
さらに、パソコンスキルや電話応対のスキルなど、事務関連の基本的なスキルも重視されるため、できれば就職活動前にこのような勉強をしておいたほうが安心でしょう。
パソコンソフトのWordやExcel、PowerPointなどは日常的によく使用するため、自分で触って慣れておくか、パソコンスクールに通って学ぶのもひとつの方法です。
さらに重要なのは、医療に関する知識を身につけておくことです。
「医療秘書技能検定」の資格の勉強をしておくと、基礎的な知識が身につくでしょう。
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医療秘書の資格
医療秘書には国家資格が存在しません。
資格不要で働ける職業ですが、最近では医療秘書の人気の高まりによって、「医療秘書技能検定」や「日本医師会認定医療秘書資格」などの資格に合格してから、この職業を目指す人が増えています。
医療関連機関の多くは、医療秘書の志望者に対して特別な資格を要求することはありませんが、事前に資格を取得しておいてムダにはならないはずです。
おもな医療秘書資格の種類
日本医師会認定医療秘書資格
「日本医師会認定医療秘書」は、「日本医師会」が認定する資格です。
高度な情報化社会の中で、高い情報処理能力や専門的な医療事務の知識を兼ね備えた人材の育成を目的としています。
この資格の認定を受けるには、日本医師会が指定した大学などの教育課程の修了・認定試験の合格・検定の取得が必要となります。
医療秘書技能検定
「医療秘書技能検定」は、「医療秘書教育全国協議会」が認定する資格で、年に2回ある試験に合格することによって資格が与えられます。
受験資格はとくになく、誰でも受験できます。
日本医師会認定医療秘書資格の詳細
試験の概要
日本医師会認定医療秘書の試験では、専門的な医療事務の知識と最新の情報処理技能を備えているかどうか、また、医師を補佐する医療秘書として、ふさわしい対応ができる能力があるかが認定されます。
医療秘書認定試験は、
(1)認定養成機関におけるカリキュラムを修了すること
(2)医療秘書認定試験に合格したあと、日本医師会既定の秘書技能課目を3課目取得すること
上記の2つの条件をクリアしないと資格の取得ができません。
条件の1でいう養成機関としては、県医師会が直接養成を行う「通信制」(2年)と、県医師会が外部教育機関に養成を委託する「全日制」(1年以上)があります。
医療秘書認定試験は年に一度実施され、合格率は90%を超えています。
試験の内容
医療秘書認定試験は、以下の2教科で実施されます。
・医療・保健・福祉基礎教科:からだの構造と機能や臨床検査と薬の知識、医療にかかわる用語、コミュニケーション論など
・医療秘書専門教科:医療秘書概論、医療秘書実務、医療情報処理学、医療関係法規概論、医療保険事務など
試験合格後に規定の秘書技能科目(秘書検定、情報処理、保険請求事務など)取得を条件に資格認定されます。
医療秘書技能検定の詳細
試験の概要
医療秘書技能検定試験は「3級」「2級」「準1級」「1級」と分かれており、「1級」が最も難易度が高いとされています。
受験料は「3級」4000円、「2級」5100円、「準1級」5800円、「1級」6500円となっています。
試験時間が異なる級に関しては、併願して一日のうちに2つの試験を受けることも可能です。
試験の内容
医療秘書技能検定試験では、医療事務や医療関連の法規に関する知識、病気や人体に関する知識などが幅広く問われます。
(領域Ⅰ)として「医療秘書実務、医療機関の組織・運営、医療関連法規」、(領域Ⅱ)として「医学的基礎知識、医療関連知識」、(領域Ⅲ)として「医療事務(レセプト作成、診療報酬点数表の理解)」が出題されます。
「医療秘書検定テキスト」や「医療秘書検定問題集(2級、3級)」などの本を読んで勉強するとよいでしょう。
また、民間の専門学校や通信講座の「医療秘書コース」などを利用して勉強するのもひとつの方法です。
医療秘書になるための学校の種類
医療秘書になるために、必ず通わなくてはならない学校はありません。
しかし、医療秘書として活躍するには、事務の高い技能に加え、医療に関する基礎的な知識や「医療事務」に関わる知識も必要になってきます。
そうしたスキルを効率的に習得できるのが、医療秘書や医療事務の専門学校です。
「医療秘書」コースや学科では、診療受付での対応や患者さんに応対する際のマナー、医療分野に関する知識に加え、事務作業に使用するPC操作スキルなど、さまざまな勉強ができます。
医療秘書や医療事務の専門学校の学費は、2年間で200万円前後が一般的です。
高校を出てすぐに入学する人もいれば、いったん社会人や主婦などを経て学びなおしに来る人など、背景はさまざまです。
夜間のコースや通信教育の講座などもあるため、予算や時間などの都合など、自分の状況に合わせて選ぶとよいでしょう。
医療秘書になるための大学・学部
一部の大学や短期大学では、医療秘書に関連した学科が設置されています。
医療秘書の志望者が学校で学ぶメリットとしては、医療機関でのさまざまな実務を「現場実習」で経験できることや、実務に即した体系的な学びができること、また、卒業までに複数の資格取得を目指せることなどが挙げられます。
なかでも医療業界とつながりが強い学校や、関連病院が併設されている学校は就職にも強いため、就職実績を調べておくとよいでしょう。
学費は年間120万円~150万円程度かかる大学が主流となっており、専門学校よりも少し高めの傾向です。
また、学費とは別で必要となる「諸経費」は、学校によってに大きな差が出る場合があります。
医療秘書になるための専門学校
医療秘書として、より実践的なスキルを身につけたい、少しでも早く就職して現場に出たいという人は、専門学校に設けられている医療秘書関連コースで学ぶとよいでしょう。
「医療秘書科」や「医療事務・医療秘書コース」などの名称をつけている専門学校も多いです。
専門学校の魅力のひとつは、医療秘書の実務に関連する各種資格(医療事務士、医事管理士、診療報酬請求事務能力認定試験、メディカルクラークなど)の取得サポートが充実していることです。
また、大学に比べれば履修期間が短いこともメリットといえるでしょう。
2年ほどで医療関連法規や医療請求事務についての学びを深め、医療医務の実習を経験し、医療秘書として現場で活躍できる力を身につけられます。
専門学校の場合、医療機関から学校に求人情報が届くことも多いため、就職先を探しやすいことも魅力です。
学費の相場は年間100万円程度で、大学と同様、諸経費は学校ごとにさまざまです。
医療秘書になるための通信講座
大学や短大、専門学校が自宅から通学できる範囲にないという場合は、通信講座を検討してみるのもよいでしょう。
通信講座を受講する大きなメリットは、自分が思い立ったタイミングで学習を開始できること、自宅など好きな場所で時間にしばられずに学習を進められることです。
通信講座の標準的な学習期間は、6ヵ月~12ヵ月程度です。
じっくり学びたい人や短期集中で学びたい人、また、比較的時間がある人や働きながら医療事務の資格取得と転職を目指す人まで、どのような人でも、自由に学習ペースをコントロールができるメリットがあります。
学費は通学制の講座よりだいぶ安く抑えられます。
医療秘書の学校選びのポイントは?
医療系の学校を選ぶにあたって注目しておくべきポイントは、
(1)実習の有無
(2)就職状況
(3)資格試験の合格率 の3点です。
とくに就職状況や資格試験の合格率は、重要視すべきポイントです。
冒頭で紹介したとおり、特定の学歴や資格・免許がなくても働くことができる医療秘書は、就職活動に力を入れて、しっかりと自分をアピールしなくてはなりません。
学校がしっかりと就職のサポートをしてくれるかどうかは、希望の道に進むためにも大切な要素です。
最近はインターネット上でも就職状況や資格試験の合格率などを公開している学校が多いため、意識してチェックしてみてください。
独学で医療秘書を目指せる?
医療秘書関連の資格は、まったくの無勉強では合格が難しいですが、独学での合格は「可能」です。
過去の出題内容やポイントを解説したテキストが市販されているため、それを活用し、自分で計画立てて学ぶことができる人であれば、合格は難しくないでしょう。
それでは少し不安があるという場合は、補完的に通信講座を利用してみるのもひとつの方法です。
通信講座では、テキストやDVDを使っての勉強のほか、添削課題や模擬試験も用意されており、市販テキストを使っての勉強よりも計画的に勉強しやすいことが魅力です。
気になるスクールがあれば、まずは資料を取り寄せてみるとよいでしょう。
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医療秘書に向いている人
医療秘書はスタッフのサポート役であり、決して表舞台で目立つ仕事ではありません。
そのため、あまり目立たない立場でも人の役に立ちたい人、人をサポートすることが得意な人には適性があるといえるでしょう。
さらに、医療秘書は医療スタッフとの連携やコミュニケーションをとる機会が多いため、円滑に間をとりもつためには、人と接することが苦にならない、むしろ好きな人のほうが向いているといえます。
医療秘書のキャリアプラン・キャリアパス
医療秘書という職業は、現代になって少しずつ知名度やニーズが高まっている職業であり、求人自体もそれほど多いわけではありません。
しかし、現在の医療現場では医師や看護師の不足によって、過重労働問題の発生や、スタッフ間の連携を図ることが難しい状況に陥っているところも見られます。
そのような状況下において、医療機関での事務的作業を一手に引き受けることのできる立場として、医療秘書に注目している病院も増えつつあります。
今後は診療科の専門化や細分化に伴い、医療系の事務職もさらに専門性を増し、細分化されていくと考えられています。
今後、医療秘書の認知度や需要の高まりには期待ができる状況といえるでしょう。
医療秘書を目指せる年齢
医療秘書という職業には、はっきりとした年齢制限はありません。
また、この職業を目指す人の背景もさまざまです。
新卒で病院やクリニックに就職してフルタイム勤務をするパターンもありますし、結婚・出産後にしばらく仕事から離れていた人が、なにか手に職をつけたいと医療秘書の資格を取得して、パートとしてクリニックなどで職に就く場合もあります。
組織内で働く場合は「コミュニケーション力」が重要な要素になってきます。
必ずしも年齢が若い人が好まれるということではなく、年齢よりも意欲があるかどうかや、秘書としての適性といったことのほうが重要視される職業といえるでしょう。
ただし、医療業界は時代の流れとともに変わり続けるため、常にアンテナを張り、業界の情報を最新のものにアップデートしていく必要があります。
医療秘書の働き方と勤務形態の種類
医療秘書の雇用形態
医療秘書の求人を見ると、正社員や契約社員、アルバイト、派遣社員など、さまざまな雇用形態が存在することがわかります。
フルタイムでしっかりと働くこともできれば、パートタイムで限られた時間のみ働くといったこともしやすく、ワークライフバランスのとりやすい職業であるといえます。
なお、医療秘書の勤務条件や給料に関しては、勤務先となる医療機関のほか、雇用形態によっても異なります。
勤務時間や業務内容に加え、給与や待遇面などまで総合的によく検討して、自分に合った職場・就業条件を検討しましょう。
ここからは、雇用形態別に、医療秘書の働き方の特徴を紹介します。
正社員の医療秘書
フルタイムで働く正社員の医療秘書は、大学病院や総合病院、クリニックなど、さまざまな医療機関で活躍しています。
だいたい朝8時半から9時半前後に勤務スタートとなり、17時半から18時前後に終業といったパターンが中心です。
収入や待遇面は、他の職種と同様、正社員が最も安定しているといえます。
患者数が多く、経営が安定している病院で勤務する場合、月収15万円~25万円ほどは見込めるでしょう。
医師の学会準備の手伝いなどで残業や休日出勤が多い医療秘書は、手当がついて年収300万円以上を稼げることもあるようです。
福利厚生に関しても、各種社会保険のほか、家賃補助や住宅手当、退職金制度、財形貯蓄制度、保養所の利用、各種休暇制度といったさまざまなものが用意されている職場が多いです。
安定性という面でみれば、正社員が最もすぐれているといえるでしょう。
派遣や契約社員、アルバイト・パートの医療秘書
正社員に対し、派遣社員や契約社員、あるいはアルバイト・パートとして働く医療秘書の場合は、やや給与水準が低めとなります。
公的な統計は出ていませんが、求人サービスなどの情報を見ていくと、月収15万円以下になるケースもめずらしくありません。
また、パートやアルバイトの給料は一般的に時給制で、経験・能力によって金額が決定されることが多いです。
一般的な事務の仕事と同程度くらいの給料になるケースが多いと考えておいてよいでしょう。
ただし、長く働いて経験を積み、スキルが認められると、ある程度は収入アップが望める職場もあります。
勤務時間に関しては、正社員よりも融通が利くのがメリットです。
派遣やアルバイト・パートであれば、事前に自分が希望する勤務条件を伝えておけるため、ワークライフバランスを重視したい人には魅力的な働き方と感じられるかもしれません。
他の仕事との掛け持ちや、家事・育児、介護など家庭の事情と両立させながら、医療秘書の仕事を続けている人もいます。