法務の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
法務の仕事とは
法務は、契約書の作成や著作権の管理、訴訟や裁判といったトラブル処理など、所属する企業に関するさまざまな法的業務を手掛ける職種です。
普段あまり意識することはないかもしれませんが、日本は「法治国家」であり、法律によって国が運営されています。
私たちが日常生活を送るなかでも、企業が事業を営むうえでも、法律は最も重要なルールです。
法務担当者は、幅広い法律知識をもつ「法のプロフェッショナル」として、法的な側面から企業の事業運営を支えていくことが役割です。
近年はとくに社会全体でコンプライアンス(法令遵守)が重視されるようになっており、社員に対する法律教育や倫理教育を行うことも、法務担当者の大事なミッションのひとつとなっています。
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法務の具体的な業務の内容
契約業務
法務の仕事のなかで最も代表的なのは、売買契約やサービス契約、業務委託契約、業務請負契約など、各種契約に関する業務です。
自社が契約を先導する場合、法務担当者は契約書をイチから作成しなければなりません。
相手方主導で契約を行う場合は、先方が作成した契約書を事前に受領し、内容や文言に問題がないかを確認する「リーガルチェック」という作業を行います。
知的財産の管理業務
商品であれば「商標登録」や「意匠」、技術であれば「特許」など、自社の事業に関する「知的財産権」を管理することも、法務担当者の仕事に含まれます。
法的に自社製品や自社技術を登録することで、他社に類似商品を販売される、技術を盗まれるなど、自社の利益を損ねる事態を防ぐことができます。
海外に広く事業展開している企業の場合、国ごとに知的財産を管理することが必要になるため、国内の取引のみ扱う企業よりも、法務担当者の業務量は多くなるでしょう。
紛争対応業務
事業を運営していくなかでは、自社商品を購入したり、サービスを利用した消費者とトラブルに発展するケースも生じます。
顧客ではなく、仕入先や卸売先など、取引先との間でトラブルになることもあります。
そうした際に問題がこじれ、話し合いだけで解決できなかった場合、示談交渉や訴訟対応、裁判などによって事態の解決を図ることも、法務の重要な仕事です。
ただし、実際に法的な解決策を講じるのは顧問弁護士などの専門家であり、法務担当者は弁護士との打ち合わせなどがおもな業務となります。
コンプライアンス強化業務
企業は、ただ単に利益をあげればいいというわけではなく、社会の一員として責任をもって行動する「法令遵守」の精神が大切です。
とくに近年は、IT技術の進化やSNSの普及によって、ありとあらゆる情報は一瞬で世間に伝わるようになっており、不祥事は即、企業の信頼失墜と利益の喪失につながります。
食品の賞味期限を偽装した、営業マンが強引な手法で商品を売りつけたなど、法律に背いた行動が発覚すると、ときに取り返しのつかない損失を受けることになります。
こうした不祥事を招かないように、法律の大切さを説き、社員に高い「企業倫理」を植え付けることも、法務担当者の業務のひとつです。
法務の社内での役割・ミッション
営業や企画、広報、マーケティングなどを「攻め」の職種とすれば、法務は「守り」の性質が強い職種です。
コンプライアンス体制の強化によって未然にトラブルを防ぐ「予防法務」などは、その特色が表れた典型的業務といえるでしょう。
あまり陽の目を浴びることもなく、ほかの社員の裏方として力を尽くす法務は、「縁の下の力持ち」という表現がピッタリくる職種かもしれません。
契約書をチェックしたり、勉強会を主催したりして、自社の社員たちを法律面からサポートしていくことが、社内における法務という職種の役割です。
こうした役割から、法務は人によって向き不向きが分かれやすい職種でもあります。
「自分が自分が」と前に出るタイプの人よりは、一歩下がって誰かを手助けすることに喜びを感じるタイプの人のほうが、法務に向いているでしょう。
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法務の業界・企業規模による仕事の違い
法務担当者の仕事は、企業規模によってかなり異なります。
中小企業の場合、法務部は数人程度の小所帯であることが多く、「法務課」などの名称でほかの部の一セクションになっていたり、なかには社長自ら法務担当を兼務していることもあります。
その一方、大手企業や外資系企業では、「企業の経営リスクを低減する」というのが法務のミッションです。
大手や外資系企業では、法務が非常に重要視され、法務部に多くのスタッフを配置しているケースが目立ちます。
法務部社員の仕事も、商事法務担当や訴訟法務担当など、一人一人に個別に役割分担がなされています。
なお、近年は企業の不祥事が注目を浴びやすくなっている環境もあって、法務体制の強化を推進する企業が増えています。
法務を手掛けたい人にとっては、チャンスが拡大している状況にあるといえるでしょう。
法務と関連した職種
弁護士
弁護士は、法曹資格をもち、一般人や企業からの法律相談に応じたり、依頼者の代理人として相手方と交渉したり裁判で争ったりする職業です。
法律を使って企業の事業運営をサポートするという点においては、法務担当者も、企業の顧問弁護士も同じです。
しかし、法務担当者は、法律知識だけでなく、扱う商品や業界特性、経営理念、歴史など、自社についての豊富な知識を使って、弁護士とは違う視点からトラブル対応にあたります。
たとえば自社製品に危険物が混入していたケースでは、顧問弁護士が裁判や訴訟対応にあたる一方、法務担当者は仕入先や生産ラインのチェック、人為的ミス、偶発的ミスの可能性など、原因究明にあたります。
内部にいる社員だからこそできることもあり、弁護士とは明確な役割分担がなされています。
なお、大企業では法曹資格をもつ人が社員として働くケースもあり、そのような社員は「インハウスローヤー」と呼ばれます。
弁理士
弁理士は、特許、意匠、商標、実用新案など、知的財産全般を扱う職業です。
おもな仕事は個人や企業が発明した知的財産を特許庁に申請・登録することであり、とくにメーカーでは、法務担当者は弁理士とともに自社の技術を権利化する仕事が多くなります。
自社の専門技術についての深い理解が必要となる関係上、企業としては社内に弁理士がいることが望ましく、法務担当者が弁理士資格の取得を求められるケースも珍しくありません。
司法書士
司法書士は、不動産登記や商業登記、遺言や相続といった法的手続きを代行する職業です。
司法書士の業務も法務担当者と密接に関係しており、役員や定款を変更したり、子会社を設立したり、株式を発行・分割するなど、「組織法務」と呼ばれる分野でともに仕事をすることになります。
少額であれば、弁護士と同じように訴訟対応も自分でできますので、法務担当者がキャリアアップのために司法書士資格を目指すケースもよく見られます。