美容師の志望動機と目指したきっかけ(体験談)

空前の美容ブーム

私が16歳の頃、空前の美容師ブームがやってきます。

仕掛人は原宿にあるアクアでした。テレビのゴールデンタイムには、多くの美容師が出演する番組や、美容師を題材にしたドラマが流行していました。

ちょうど進路を模索していた時期でしたので、当然そのブームに感化されてしまいます。

簡単な気持ちで、九州の田舎から18で上京して専門学校に通う事になりますが、専門学校ではバイトと遊びとバンド生活で明け暮れます。

授業は本当に適当に受け流していました。

20歳の時なんとか国家試験をパスし、倍率数十倍の表参道の人気店に就職が決まりました。お店にはあの時のテレビで見ていた有名なカリスマ美容師がぞろぞろいました。

自分も何か偉くなったかのようになった気がして嬉しかったのを覚えています。

しかしお店に勤め始めて3ヶ月で、私はお店に辞表を提出していました。とにかくキツかったのです。

今思えば甘えた新卒生だと思います。それから2年、私は好きだった音楽をやり続けます。

カリスマのいない美容室

23歳の夏に美容の世界に戻ってきます。再就職先は、カリスマのいない小さな美容室でした。この時に、私は美容のコアとなる精神を学びます。

よくオーナーに言われた言葉が、「考えなさい」でした。お客さまがお茶を残したのはなぜか、キョロキョロとしているのはなぜか、咳き込んだのはなぜか、顔をしかめているのはなぜか。

とにかく考えることが仕事だと教わりました。

それから5年。私は自分の小さなお店を出します。それまで支えてくれた仲間や、お客さまに支えられてできた美容室でした。

嬉しかった。ようやく美容師になれた気がしたのを覚えています。

独立して

今ではたくさんの美容師仲間とお客様に囲まれて、とても充実した日々を送っています。

美容師になろうと思ったきっかけは、たかが知れています。ただ世の中がブームだっただけです。(もちろん他にかっこ良く言うこともできますが)

ですがようやく私も美容師になってきた気がします。

美容師はつらい仕事です。だけど笑顔が溢れかえる仕事でもあります。私が美容師になれたのも、美容師を続けようと思えたのも、この周りのダイレクトな笑顔のお陰ではないでしょうか。

もちろんきっかけは原動力になる大切なことだと思いますが、一番大切なことは美容師を続けることだと思います。

どうぞ、立派なきっかけを持っていなくてもいいですから、臆することなく美容師を目指して下さい。続ければきっかけや理由は、必ず自ずと付いてきます。