塗装工になるには
資格や免許はなくてもOK
塗装工として働くにあたって必要な国家資格や免許というのは特にありません。
たとえ未経験者でもやる気があって体力に自信がある人であれば誰もが挑戦できるのが塗装工の魅力です。
また、年齢に関しても特に重視されない傾向があります。
塗装工をめざす人の多くが10代や20代の若者で、高校卒業後に就職する人も少なくありません。
求人票を見ると全国各地で「塗装工見習い」の募集が出ているので、こうした求人に応募して建設会社や住宅メーカーの関連企業などで働くとよいでしょう。
採用の際には自動車の運転免許を取得していると重宝されることもありますが、それ以外の資格に関しては特に就職前に取得しなければいけないものはないようです。
「塗装技能士」という資格もありますが、働きながら取得をめざせば問題ありません。
塗装技能士は厚生労働大臣が認定する資格で、受験者のレベルに応じて一級、二級と試験内容が分かれています。
学科試験と実技試験がありますが、実務経験のある塗装工であればそれほど難しくない内容だといわれています。
就職前にこの資格を取得しておく必要はないので、仕事をしながら取得をめざすとよいでしょう。
また、塗装工として独立して専門事業を営む場合は、建設業務法に基づく「塗装工事業」の許可を申請する必要があります。
足場作業主任者の資格
塗装工は建物の工事現場で働くことも多く、ときには高層階のビルや二階建ての住宅などの塗装の際に足場を組んで作業をしなければいけないこともあります。
この作業自体は足場を組むプロフェッショナルである作業員に任せることも多いですが、塗装工がこの作業ができると仕事の幅が広がるので資格の取得をめざす人が多いのです。
一般社団法人である労働技能講習協会の「足場の組み立て等作業主任者技能講習」を受けると修了証を交付してもらうことができます。
また、塗装工が塗料を使って安全に作業するためには、シンナーなどの有機溶剤に関する知識が必要です。
こうしたことを踏まえて「有機溶剤作業主任者技能講習」を受ける人もいます。
カラーコーディネーターや色彩検定の資格
塗装の作業自体には直接関係ありませんが、資格を取得することでセンスを磨けるものもあります。
たとえば「カラーコーディネーター」や「色彩検定」は、それぞれの色味が持つ視覚的な効果や上手な活用の仕方を学ぶことができるので、色彩について勉強したいという塗装工にとって役立つ資格です。
実務に慣れて余裕ができた頃にステップアップの一環として挑戦してみるとよいでしょう。
20代で正社員への就職・転職
塗装工になるための学校
塗装工になるために進学したほうが望ましいとされる学校はあるのでしょうか。
まず、この業界で働く上で学歴は重視されないので、中卒や高卒の人でも採用に不利に働かないケースが多いことは知っておくとよいでしょう。
「自分には学歴がないから」と諦める必要はありません。
また、塗装工を養成するための民間の専門学校や通信教育もないので、多くの人が知識や経験がない状態で就職することになります。
例外的に、職業訓練校で塗装工をめざす人のための就業支援プログラムが受講できることがあるので、このプログラムを受けてから就職活動をする人もいます。
塗装工になるための就職試験
採用試験では、書類選考に加えて面接試験があるのが一般的です。
職人の世界なだけに、見習い期間を耐え抜くだけの根性とやる気があるかどうか、先輩にわからないことを尋ねられるコミュニケーション能力があるかどうかがチェックされます。
知識や経験がなくても、人間性やタフさを評価され採用されることが多い業界です。
20代で正社員への就職・転職
女性でも塗装工として働ける?
男性中心の業界
多くの塗装工が働いている建築の現場は、昔から男性中心の業界として知られています。
塗装工だけではなく大工や土木作業員、重機オペレーターなどの仕事はいずれも肉体労働なので、体力のある男性のほうが活躍しやすいという事情はあるのでしょう。
もちろん、女性がこの職業に就けないわけではありません。
塗装の仕事は知識や技術があれば性別に関係なく作業することができるので、女性の塗装工として現場に立っている人もいます。
肉体労働には覚悟が必要
それでは、女性が塗装工をめざす場合、どのようなことを注意しなければいけないのでしょうか。
まず、塗装の作業は重いペンキを何缶も運んだりローラーや刷毛で一日中色を塗ったりすることがあるので、ある程度の体力が必要なのは間違いありません。
外壁の塗装の場合は朝から晩まで屋外で作業することになるので、夏は紫外線で肌が日焼けしたり髪が傷んだりしてしまうこともあります。
自分で対策を取ることは可能でも完全に防ぐことは難しいので、屋外で働く大変さを理解した上でこの業界に飛び込んだほうがよいでしょう。
また、塗装の仕事は、作業中にどうしても塗料が飛び散ってしまうことがあります。
髪の毛や顔、作業着にたくさんのペンキが飛んでしまうので、汚れることが気にならない女性のほうが向いている仕事です。
着替えや休憩の環境が重要
女性が塗装工として働くことをめざすのであれば、就職前に着替えの場所やトイレがあるのかどうかは必ず確認しておいたほうがよいでしょう。
たいていの工事現場は男性が中心なので、女性用の休憩室やトイレをわざわざ用意しているところはめったにありません。
男性の作業員が着替えた後に交代で部屋を使わせてもらって着替える、同じトイレを使用する、ということも珍しくないので、このような労働環境に不安がある人は就職前にしっかり相談をしたほうが安心です。
塗装工が独立するには
独立に必要なスキル
塗装工として独立・開業をめざす人は、どのような準備が必要でしょうか。
まず、スキルに関してですが、最低でも十年くらいは塗装工として働いた経験があったほうがよいでしょう。
見習いとしての下積み期間が二年あるとして、その後はさまざまな現場を回ったり後輩を指導したりしながら技術を磨き、さらに業界の仕組みを理解したり人脈を増やしたりしておくことが必要です。
狭い業界なので、仕事が軌道に乗るまでは知り合いから仕事を紹介してもらったり人材を貸し出してもらったりすることもあります。
人間関係はとても重要なので、退社する際にはできる限り円満退社を心がけましょう。
独立に必要な資格
塗装工の仕事には特定の資格や免許は必要ありませんが、独立するにあたっては「塗装技能士」を取得することで信頼を得られます。
また、建設現場の足場を組むための「足場の組み立て等作業主任者技能講習」や塗料を安全に取り扱うための「有機溶剤作業主任者技能講習」などを受講しておくと仕事の幅が広がるでしょう。
専門事業を営む場合は、建設業務法に基づく「塗装工事業」の許可を申請する必要があります。
独立に必要な初期投資
塗装工として仕事を受けるためには、さまざまな工具や材料が必要です。
まず、現場に向かうためにはある程度の荷物を積むことができる社用車が必要ですし、塗装のためのローラーや刷毛、スプレーガン、コンプレッサー、塗料などは一通り揃えなければいけません。
さらに、こうした必需品を安全に保管するための倉庫や、社員が出勤するための事務所も必要です。
この他に、事業を始めるにあたっては宣伝をしなければいけないので、チラシを印刷したり新聞に公告を掲載したりする費用もかかります。
初期投資として数百万円はかかることが多いので、独立を考えるのであれば早い段階から資金を貯めておくとよいでしょう。
派遣の塗装工
非正規雇用の塗装工
塗装工として働いている人のなかには、契約社員や派遣社員という非正規雇用の立場の人もいます。
建設の仕事は案件が入ったときだけ忙しくなるので、人手が必要なときだけ塗装工を雇いたいと考える企業が多いのです。
特に、現場を転々とする派遣社員の需要は高く、建設会社や住宅メーカーの関連会社、工務店、自動車のボディや部品の塗装を行っている企業などで募集されていることがあります。
遠方での作業になる場合、工期の間は独身寮やビジネスホテルなどの一室を用意してもらえることあるので、就労の環境に関して知りたい人は確認してみるとよいでしょう。
派遣のメリットとデメリット
派遣の塗装工として働く上でのメリットは、さまざまな現場を経験することができるので、技術を磨きやすいということです。
住宅からタワーマンション、高層ビルやスタジアムなど、あらゆる建物の塗装に携わることも夢ではありません。
「若いうちに幅広い経験を積みたい」という人や「ベテランになっても新しい仕事にどんどん挑戦したい」という人にとっては、やりがいのある働き方となるでしょう。
また、ひとつの職場の上下関係やルールに縛られないので、人間関係で悩みたくないという人にとっても向いているスタイルかもしれません。
その一方で、派遣ならではのデメリットもあります。
一番のデメリットは雇用が不安定なことです。
正社員に比べると数年後の生活が描きづらいため、家族を養っている人にとっては厳しい働き方になります。
また、ボーナスがない、福利厚生の制度が整っていない、などの待遇面で正規雇用よりも劣ることもあります。
派遣で活躍するポイント
塗装工として働くためには資格や学歴等は必要ありませんが、派遣の塗装工としてさまざまな現場を転々とするのであれば、「塗装技能士」や「足場の組み立て等作業主任者」「有機溶剤作業主任者」などの資格を取得しておいたほうが自分の知識と技術を証明しやすくなります。
仕事の幅が広がるので時間を見つけて挑戦するとよいのではないでしょうか。