数学者の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「数学者」とは
大学などに所属し、数学の未解決の問題を解きいて論文にまとめ、学会で発表する。
数学者は、主に数学の未解決の問題を解き、論文にまとめ、学会で発表することが仕事です。
大学などで教員としての立場を担う人がほとんどで、研究のほかに書籍の執筆や講演なども行う人が多いです。
なかには、数学の専門知識を活かして、金融機関の商品開発分野で働いている人もいます。
数学者になるには、大学院の数学研究科に進学し、博士の取得を目指すのが一般的ですが、近年は大学の学部学科の改組が相次いでおり、ポストは減少傾向です。
学生の間に研究実績を作ることができれば、その後の進路に大きくプラスになるため、早いうちから研究者としての自覚を持つことが大切です。
大学教授ともなれば高収入が期待できますが、専任として勤めるまでには長い時間がかかるため、生涯年収としてはそこまで高いわけではありません。
研究だけで生計を立てるまでに至るのは非常に難しく、今後も現状は大きく変わることはないと考えられます。
そのため、海外に活躍の場を求めて留学したり、研究の拠点を移したりする人も増えてきています。
「数学者」の仕事紹介
数学者の仕事内容
数学に関する分野の調査や研究を行う
多くは教育機関に所属して働いている
数学者は、数学に関する分野についての調査および研究をすることが仕事です。
多くの数学者は大学をはじめとする教育機関に所属し、教鞭をとりながら、研究を続けています。
また、科学者であっても研究領域によっては、数学者として評価を受ける場合もあります。
大学であれば研究に費やせる時間は一定程度確保できますが、教育機関によっては学生の指導がメインになってしまうことも少なくありません。
とりわけ、小学校、中学校、高等学校に勤務すると、仕事中心の生活になりがちです。
なかには、数学の専門知識を活かして、金融機関の商品開発分野で働いている人もいます。
日中仕事に追われる在野の数学者たちは、帰宅後や休日の時間を使って研究を進めています。
教育と研究を両立させる
数学者のほとんどが、大学などの教育機関に在籍している教員で、学生や生徒に授業を行うことも重要な仕事です。
数学は学ぶ側からすると、解けた時の喜びを強く感じやすい学問であり、その点では教える側の楽しみも大きく、やりがいを感じている数学者が多いといえます。
また研究成果や実績を発信することは、大切な仕事のひとつです。
自分が論文を発表する時などは準備期間も含め非常に多忙になり、学会に出席するために国内外問わず出張することが多くなるため、不規則な生活になることも少なくありません。
さらに、数学の情報を広く発信するためには書籍の執筆や講演なども行うことがあります。
数学者になるには
大学院に進学後、それぞれの方法で研究者を目指す
まずは博士の取得を目指す
数学者を志す場合は、大学院の数学研究科に進学し、博士の取得を目指しましょう。
学部も理学部数学科であることが望ましいですが、理系であればどの道でも目指すことは不可能ではありません。
学生の間に研究実績を作ることができれば、その後の進路に大きくプラスになるため、早いうちから研究者としての自覚を持つことが大切です。
学生時代に留学をし、海外で学ぶことも有効で、研究と並行して語学力向上のための努力も求められます。
各種教員を職業とする傍ら、余暇を利用して研究に励む道もあるため、大学、大学院在籍中に教員免許は取得しておくとよいでしょう。
数学者としての複数の道のり
数学者になる方法としては、まず教師として生計を立てる道が考えられます。
研究に費やせる時間がとりづらいというデメリットはありますが、数学者としては道を切り開きやすいといえます。
また高専の教員として活躍する数学者も多くいます。
次に、研究所への就職ですが、これはごく少数です。
官公庁や企業でも専門性の高い分野に従事しながら研究活動を続けることも可能ですが、ごく限られた人のみに開かれた進路であるため、目指す場合は相当の努力が必要です。
また、数学者の中には海外の大学や研究所に在籍している人もいます。
日本より数学研究が進んでいる国もあるため、海外に活躍の場を求める人も多く、学生時代に留学をするのも進路の幅を広げるのに適しているといえます。
数学者の学校・学費
学生でいる期間が長く、一定のポストに就くには長期戦を覚悟
大学院の博士課程まで進学することは、数学者だけでなく研究者全般に必要な学歴で、これには継続的に学費がかかることを覚悟しなければなりません。
進学先が私立大学か公立大学かによって負担額の大きさは異なります。
また、博士課程を終えたからといって大学での専任職をすぐに確保できるわけではなく、まずは助手、講師、助教授等の役職を段階的に目指していくことになるでしょう。
ポスドクとして研究室に残るにしても、生計を立てるまでには至らない場合がほとんどであるため、厳しい道のりを乗り越える覚悟が必要です。
学会発表などの場を通して、他大学の教授陣に顔を売り、少しずつでもコネクションを広げることで、就職に有利な状況を作ることが大切です。
数学者の資格・試験の難易度
資格は不要だが、その分数学に関する学力が必要
数学者になるためには特別な資格は必要ありませんが、まず大学院へ進み、博士課程を修了する必要があります。
現在、大学教員の就職口はとても少なく狭き門です。
偏差値の低い大学院を出ると、採用してくれる大学はその偏差値以下のところが多くなってしまい、ただでさえ少ない就職口がますます減ってしまいます。
それなりに名の知れた大学および大学院に進み、確かな実績を積み重ねていったほうがよいでしょう。
そのためにも、難関大学の入学試験を突破できるだけの、学力をつける必要があります。
なお生計を立てるにあたり教員免許が必要になることも予想されるため、大学では教職課程を履修しておくと、より活躍の場が広まります。
中高数学一種免許を取得するのが一般的で、大学院を修了すると専修免許が付与されます。
数学者の給料・年収
大学に就職できれば高収入が期待できる
大学における年収
数学者に関する給料は、どのような場所で勤務し、どのような立場で働くのかによって大きく異なります。
大学における年収は、国立・公立大学の教授で平均1000万~1100万円、私立大学の教授では平均1200万~1600万円程度です。
次いで準教授で700万~800万円、講師で600万~800万円、助教授、助手で500~700万円となっています。
給料は勤続とともに徐々にアップしていき、各種学会が設置する賞を受賞するなど、研究で功績を修めると報奨金が発生するとともに給与にも反映される場合がほとんどです。
ただし大学の学部学科の改組が相次いでおり、ポストは減少傾向です。
加えて専任として勤めるまでの期間が長いため、生涯年収としてはそれほど多くないともいえます。
高専の教授の場合、平均年収は750万円ほどと大学よりは低いです。
不安定な立場で働かなくてはならないことも
博士号を取ったばかりのポスドクの場合、平均年収は200~300万円程度、月収にすると16~20万円程にとどまることは珍しくありません。
一般企業に就職した新卒の学部生よりも、低い年収になることは珍しくなく、厳しい生活となるでしょう。
教員としての初任給は、東京都採用で都内に勤務する場合、大学卒採用が約25万円、短大卒が約22万円とされています。
一方、ポスドクや非常勤講師などの場合、健康保険や通勤手当、ボーナスや昇給がない場合も多いのが現状です。
給料も低めとされているため、副業や講師の掛け持ちをしながら教授職を目指す人は大勢います。
数学者の現状と将来性・今後の見通し
海外に活躍の場を求める人が増えてきている
数学はこれまでに多くの人が謎を解き明かしており、現在行われている研究だけで生計を立てるまでに至るのは難しいです。
これは今も昔も同様であり、今後も大きく変わることはないと考えられます。
さらに、最近では大学の学部学科の改組が相次いでおり、数学科も例外ではありません。
一方で、金融機関において理系出身者を特別枠で採用するケースが出始めており、このような新しい活躍の場を志す人は増えてきています。
また数学は万国共通の学問であるという特性を生かし、海外に活躍の場を求め移住する人も少なくありません。
優秀な学生を海外に留学させるための助成金を設置している大学も多く、なかには数学に特化したプログラムも見られます。
数学者の就職先・活躍の場
主な就職先は大学だが、他の教育機関で働く場合も
数学者が最も多く勤務しているのは大学です。
大学であれば、研究する上で必要な時間や予算を得ることができますし、安定した立場で研究を続けることができます。
ただし、大半の大学では、講義やゼミ生への指導、組織の役職などもついて回るため、数学者が研究だけに没頭するのは難しいといえるでしょう。
大学ではなく高専や高校、中学などの教育機関に就職する人もいますが、その場合はどうしても研究より教務の占める割合が圧倒的に多く、余暇を使って研究をしなくてはなりません。
なお大学教員は副業を認められているため、書籍の執筆や講演、教育番組への出演など、多方面に活躍する人も少なくありません。
数学者の1日
研究以外の仕事も多くこなさなくてはならない
数学者の生活の中心は数学の研究です。
研究の内容は、主に未解決の問題を解析し論文にまとめることで、難問の場合は長期間を要することもあります。
もともと数学が好きという人が大半であるため、研究に没頭していると休憩や寝食も忘れてしまう、という生活を送る人も多いようです。
<大学で働く数学者の1日>
数学者のやりがい、楽しさ
好きなものを突き詰めていく仕事であること
数学者は、自分で数学をとことん突き詰めたいという思いを持ち、結果的に数学者になったという人たちが圧倒的に多いです。
好きなことを突きつめた先に、これまで他の人がなしえなかった研究成果をあげられる可能性がある、というのは数学者にとって大きなやりがいです。
また現代の生活には、数学は切っても切り離せないものです。
数学は結果が出るには非常に時間のかかる学問ではありますが、一度結果が出るとさまざまな分野に波及し、大きく飛躍を遂げることも多いです。
自分が研究した成果が、間接的に社会の役に立っているということは、数学の大きな魅力です。
数学者のつらいこと、大変なこと
研究以外にも多くの仕事をこなす必要がある
日本の大学では、数学者は研究にだけ没頭することができません。
講義や事務仕事、大学組織の運営など、他の業務が数多く発生します。
これは日本ならではの慣習であり、たとえばアメリカの大学では研究する人と教える人は分けられているのが普通です。
日本では、数学者の社会的影響力も過小評価されがちであり、研究者の中で取り立てて待遇がよいわけではありません。
ノーベル賞にも数学はありませんし、どれだけ研究の成果を出したとしても、日本では世間の注目を集めることはほとんどないといってもいいでしょう。
そのため、自分の研究だけしていたい、あるいは正当な評価を受けたいと願う数学者は、海外の大学に移るケースが多いです。
数学者に向いている人・適性
数学が好きで難問にチャレンジする情熱がある人
数学者を志す人は、とにかく数学が好きで、数学のことならば一日中考えていても苦にならないという人が多いです。
そのため、仕事として割り切って数学をやるという人はほぼいません。
これまで誰も解くことができなかった難問にチャレンジすること、そして一つの問題に長期間向き合うことは生半可な気持ちではすることができません。
人生を賭けて新しい数学の理論を証明しようとする、強い気持ちと情熱を持つ人が向いています。
また、大学に勤めるならば、学生たちに講義を行い、後進を育成していかなければならないため、指導力が必要です。
大学組織の運営に携わるため、コミュニケーション能力や責任感もなくては仕事が務まらないでしょう。
数学者志望動機・目指すきっかけ
数学が好きでその謎を解き明かしたい
数学者を志望する理由は、数学が好きで、とにかく数学に関わる仕事がしたいという人が大半です。
子どもの頃から数字が好きで、数学に打ち込んできた人もいれば、中学や高校で数学の面白さを知り、大学で本格的に学ぶようになったことで数学を志した人もいます。
数学者になる際に志望動機が求められることはあまりありませんが、自分がどの分野の数学を専門としたいのかは早いうちに考えておく必要があります。
数学には代数学、幾何学、解析学などさまざまなジャンルがあり、さらにそれぞれが細分化されています。
特定の分野を専門に研究できる大学や機関は限られているため、できれば進路を考える際には自分が進む道を考えておいた方がよいでしょう。
数学者の雇用形態・働き方
大学に所属することが多いが、不安定な期間が長い
多くの数学者は大学で働きますが、安定して働くことのできる教授のポストは非常に狭き門です。
まずは大学に就職できるかどうかが高いハードルとなります。
ようやく非常勤講師になれても年収は300万円ほどですし、社会保険や学会にかかる費用は自分で負担しなければならず、苦しい生活をしながら研究を進めなくてはなりません。
そのなかからも専任になれるのはごくわずかで、実績や運、人との出会いがなければ難しいでしょう。
大学以外には高専や小中高などで教える道もありますし、もしくは金融機関で専門知識を活かす道も用意されていますが、これらも非常に狭き門です。
常勤や正社員で働ける可能性が高いという点では安定性がありますが、その分、研究に割ける時間は少なくなるでしょう。
数学者の勤務時間・休日・生活
就職先によって大きな差がある
大学に勤務する場合、授業や教授会といった固定の業務以外は、自分の裁量でスケジュールを組むことが可能です。
自由度の高い生活をすることができ、研究をする時間も自由にとることができます。
休日は主に授業のない土日となりますが、学会に出席したり海外へ行ったりする際には長期休暇をとることも可能です。
大学以外の学校では、一般的な教員と同じような働き方をしますが、業務量が多いため残業が多く、さらに部活動の顧問を引き受けると、休日出勤が頻発することもあります。
金融機関の場合は、どの機関で働いているか、あるいはどの部署に所属しているかによって仕事の仕方は変わってきますが、多くは一般的なサラリーマンと同様の働き方です。
数学者の求人・就職状況・需要
大学以外の選択肢も視野に入れておくことが大切
数学者志望の多くは、大学に就職することを夢見ています。
しかし、大学教員は募集人数が少ないため、採用まで至るのは非常に厳しいのが現状です。
京都大学数理解析研究所のように、数学に関する研究所もありますが、雑務に煩わされず研究に没頭できるような環境で働けるのはごくわずかにすぎません。
大学に就職できなかったときに備え、高専や小中高の教員、金融機関で働くなどといった他の選択肢を用意しておく必要があるでしょう。
とりわけ金融機関は、商品開発において数学の知識が求められがちですので、実績さえあれば需要は高いといえます。
数学者の転職状況・未経験採用
在野の研究者として実績を残すことは可能
大学教授を目指すため、他業種からの転職すること自体は、不可能ではありません。
しかし、大学教授になるまでには長い期間がかかるため、転職して一から目指すとなると、その間の生活をどう成り立たせるのかが問われることになります。
ハードルの高さから挑戦する人は少なく、実際に転職で教授になったという人はほとんどいません。
しかし、他業種で仕事をしていたとしても、新しい数学理論を発見すれば、在野(公職に就かず民間で活動する)の数学者として実績をあげられる可能性はあります。
めざましい評価を得られれば、大学側から声をかけられる可能性もあるため、転職を目指すのであれば目の前の努力を続けることが大切です。