消防士になるには? 大学に行くべき? 専門学校や予備校でも大丈夫?
消防士は現場でいかに正しく動けるかが大切で、学歴はあまり重要視されません。
採用時は学歴による給料の差が生じますが、昇任試験に合格すれば同年代の大卒の人より給料が高くなることも珍しくありません。
消防士を目指すのであれば、高学歴を目指すというよりも、進学する学校で何を学びたいのかや、どのタイミングで消防士採用試験を受けたいのかなどを熟考し、進路を検討するとよいでしょう。
ここでは消防士になるための学校の種類や学校選びのポイントなどについて解説していきます。
消防士になるための学校の種類
大学からでも高校からでも消防士になれる
消防士になる第一歩は、各自治体が実施する消防士採用試験を受け、合格することです。
この試験の受験資格や試験内容は自治体によって異なりますが、多くの場合いくつかの区分で行われており、区分ごとに難易度(目安となる学歴のレベル)にも違いがあります。
たとえば東京消防庁の場合、
- 「Ⅰ類」
- 「Ⅱ類」
- 「Ⅲ類」
- 「専門系」
の4つの区分の試験が実施されており、Ⅰ類は大学卒程度、Ⅱ類は短大卒程度、Ⅲ類は高校卒程度、専門系は法律・建築・電気・電子・通信・化学・物理・土木・機械などの専門知識を持っている人が対象となります。
同時に、区分ごとに年齢制限が設けられる自治体もありますが、それを満たしてさえいれば、たとえば高卒の人が大卒レベルの試験を受けることも不可能ではありません。
消防士採用試験は、特定の学歴の人しか受けられないものではなく、幅広い学歴の人にとってチャンスがある試験だといえます。
消防士に学歴は関係ある?
世の中に数ある職業のなかには、学歴が高い人のほうが早く出世できたり、給料の面などで優遇されたりするものもあります。
消防士の場合、大卒の人もいれば専門学校卒や高卒の人もいて、人によって学歴はさまざまですが、一概に学歴が高いほうが有利とは言い難い部分もあります。
それというのも、高校を卒業してストレートで消防士になった場合、現場に入るのは大卒の人よりも何年も早く、その分若いうちから実務スキルを高めていきやすいという特徴があるからです。
専門的な知識や技能が求められる消防士は、高校や大学などの学校で何を学んできたかよりも、現場でいかに正しく動けるかが重視されやすい職業です。
学校の勉強はあまりできなかったけれど、消防士になってから大きく活躍し、キャリアアップしている人もたくさんいます。
また、消防士は採用時点では学歴による給料の差がありますが、高卒でも昇任試験の勉強をして合格すれば、同年代の大卒の人より給料がアップすることは珍しくありません。
こういったことからも、これから消防士を目指していくのであれば、進学する学校で何を学びたいのかや、どのタイミングで消防士採用試験を受けたいのかなどを見据え、進路を考えていくほうがよいといえそうです。
消防士になるための大学
中学や高校の頃から消防士を目指している人は、1年でも早く現場に出たいという思いから、高卒後すぐ消防士採用試験を受けるケースも多いようです。
一方で、大学に進学して卒業後に消防士になることももちろん可能ですし、最近では大卒の消防士も以前より増えているという声も聞かれます。
大学に進学するメリットは、「大卒」の学歴が得られることと、4年間という時間を有意義に使える点です。
学業以外にも、サークルやクラブ活動、ボランティア、アルバイト、海外留学などの経験を積んで見聞を広め、社会に出ることができます。
また、もし在学中に消防士以外の進路の選択肢が頭に浮かんできた際には、進路変更しやすいといったメリットがあります。
ただし、高卒の人よりも消防士として現場に出るタイミングが遅くなることや、4年分の学費がかかってくることは、デメリットといえるかもしれません。
なお、消防士を目指して大学に進学する場合、特定の学部・学科に進まなくてはならないということはありませんが、「専門系」の区分での消防士採用試験を受ける場合には、法律や理工学系といった専門的な知識を持っていると有利になります。
消防士になるための専門学校
高校卒業後に専門学校へ進んで消防士になる人もいます。
消防士のほか、警察官や自衛官といった公務員を目指す人向けの学科・コースを設けている専門学校は全国にいくつもあります。
そのような学校は1年制や2年制のことが多く、短期間で消防士採用試験への合格を目指すための授業が行われています。
大学との最大の違いは、大学が専攻する分野を中心に一般教養も含めて幅広い科目を学んでいくのに対して、専門学校では目指す職業に直結する科目がカリキュラムの大半を占めていることです。
消防士を目指す人向けの専門学校では、基本的に消防士採用試験合格に必要な学習が行われており、それに加えて、学校によってはパソコンやビジネスマナーの勉強、応急手当などの勉強もします。
専門学校によってカリキュラムや学費には違いがあり、なかには夕方以降に授業が行われる夜間課程で学べる専門学校もあります。
消防士になるための予備校
消防官採用試験の倍率は、地域によっては20倍を超えるケースもあります。
筆記試験自体の難易度はそこまで高いものではないものの、高い点数をとらなければ合格が難しいのは確かです。
こうしたことからも、最近では消防官採用試験の合格を目的とした民間の資格スクール・予備校が、首都圏や関西を中心にいくつも設立されています。
たとえば、さまざまな資格取得を目指すための大手予備校では、「消防官(消防士)コース」といったコースが用意されています。
こうしたスクール・予備校では、官公庁の元人事担当者を招いて講義を実施するケースも見られ、消防官採用試験で実施される「筆記・面接・体力試験」といったあらゆる内容の本格的な指導を受けられます。
スクールや予備校に通うことが必須ではありませんが、合格を目指して通学を検討する人も増えているようです。
また、大学などに通いながら、ダブルスクールで消防士採用試験合格に向けて資格スクール・予備校で学んでいる人もいます。
消防士の学校選びのポイントは?
消防士の学校選びのポイントは、本人の考え方次第で変わってくるといえるでしょう。
「大卒の学歴はいらない」と考えていたり、「いち早く消防士採用試験への合格だけを目指したい」といった考えがあったりしたら、高校卒業後にすぐ消防士採用試験を受けるのが一般的です。
自分で試験対策をするのが不安であれば、より実践的な知識やスキルが身につけやすい、専門学校や資格スクールへ通うのがよいかもしれません。
消防士以外の進路(民間企業など)へ就職する可能性もあるという場合や、じっくりと学生生活を送りながら教養を深めていきたいといった場合には、大学に進んでから消防士を目指すのもよいでしょう。
消防士採用試験は、さまざまな学歴の人が受けられるものとなっているため、自分次第で進路を決定できます。
ただし、自治体によって消防士採用試験には年齢制限があり、高卒者では25歳くらい、大卒者では最大で30歳くらいを超えてしまうと消防士になることが難しくなります。
年齢のことを考えながら、自分に適した学校選びをしてください。
消防士になるための学校選びのまとめ
消防士に必要なことは学歴ではなく、いかに現場で的確に動けるかどうかです。
そのため、いわゆる有名な大学に進学するよりも、学校で何を学びたいのかや、どのタイミングで消防士採用試験を受けたいのかなどを念頭に置いて進路を決めることが大切だと言えます。