職業訓練指導員の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説
「職業訓練指導員」とは
公共職業訓練施設などにおいて、求職中の人が就職できるようにアドバイスや指導を行う。
職業訓練指導員は、「ハローワーク」などの公共職業訓練施設や民間の認定職業訓練施設において、求職者や学卒者(高卒)の人を対象とした、就職の手助けとなるための訓練を担当する人のことです。
主に「ものづくり」の職業訓練に携わり、教育プログラムの作成や講義のほか、ときには就職のためのアドバイスや生活指導にまで関わることもあります。
職業訓練指導員として働くには「職業訓練指導員免許」を取得したうえで、職業能力開発施設の採用試験を受けて合格する必要があります。
行政施設もしくは国に準ずる公的な機関に勤務するため、給料や待遇面も含めて安定性があるといえます。
その時代の社会のニーズを掴み取り、それに対応した訓練を行う職業訓練指導員は、今後も変わらず求められ続けていくでしょう。
「職業訓練指導員」の仕事紹介
職業訓練指導員の仕事内容
就業希望者に対し、技能取得につながる訓練を専門的に実施する
職業訓練指導員とは、都道府県の職業開発訓練施設などにおいて、就職や仕事に必要な「技能」や「技術」の指導を行う人のことです。
「テクノインストラクター」という愛称で呼ばれることもあります。
訓練を行う相手は、高校新卒者や求職者、在職者など、さまざまです。
具体的な訓練の内容は、プログラミングやデザインなどのIT関係、また機械や電気、建築といった「ものづくり」に関連するものが中心ですが、施設によっては医療や福祉関係の訓練を提供するケースもあります。
120を超す職種に対してそれぞれ担当指導員がおり、全国の公共職業能力開発施設などで働いています。
職業訓練指導員の役割
職業訓練指導員は、求職者に対して技術指導を行うことはもちろん、就職できるまでのさまざまなサポートも提供します。
たとえば「キャリアコンサルタント」としてキャリア形成の相談にのったり、ときには生活指導の改善のアドバイスを行ったりすることもあります。
また、職業訓練カリキュラムや教材の開発にも積極的に取り組み、各地域において、適切な訓練が実施できるように努めます。
職業訓練には「雇用のセーフティーネット」としての役割が期待されており、職業訓練指導員は、社会的意義の大きな仕事に携わっているといえるでしょう。
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職業訓練指導員になるには
職業訓練指導員免許の取得が必須
職業訓練指導員になるためには、大前提として「職業訓練指導員免許」の取得が必須です。
この免許を取得する方法はいくつかあります。
(1)職業能力開発総合大学校に通い、職業訓練指導員養成を目的とした課程で学ぶ
(2)職業訓練指導員に関する「技能検定」に合格する
(3)大学などの学校教育を修了し、一定期間の実務経験を積む
(4)高等学校教員免許を取得する
このうち、2や3のルートでは、さらに厚生労働大臣が指定する「48時間講習」の修了もしくは「職業訓練指導員試験」を受験することが必要です。
1や4に該当する人は、各都道府県に免許申請を出すことで、職業訓練指導員の免許が得られます。
職業訓練指導員を目指すルートはやや複雑なため、事前に詳細を調べておくことをおすすめします。
職業訓練指導員のキャリアパス
職業訓練指導員の免許を得た人の多くは、都道府県の「公共職業能力開発施設」、もしくは事業主団体などによる「認定職業訓練施設」に勤務します。
単純に職業訓練の指導を行うのではなく、各地域の人材ニーズに合わせた就職支援を行っていくことが求められます。
現場に入ってからは実務経験を積み、さらに職業能力開発総合大学校で指導員技能習得訓練を受けるなどして、さらなる指導力アップを目指せます。
将来的には管理職に昇進し、施設全体の運営に携わっていく人もいます。
職業訓練指導員の学校・学費
職業訓練指導員を目指すルートによって、通うべき学校は異なる
職業訓練指導員を目指すルートはいくつもあるため、どのようなルートを選択するかによって、通うべき学校、必要になる学費が異なります。
まずは「職業能力開発総合大学校」に進学し、職業訓練指導員の免許取得を目指す場合を取り上げましょう。
職業能力開発総合大学校は4年制となっており、必要となる学費は国立大学に通う場合と同程度です。
入学金で約30万円、年間の授業料として50~60万円が必要となります。
一方「職業訓練指導員講習(48時間講習)」を受講して免許の取得を目指す場合、受講料はテキスト代を含めると約15,000円~30,000円程度です。(※都道府県によって異なります)
一般の大学に進学してから職業訓練指導員を目指すのか、それともはじめから職業能力開発総合大学に進学するのかなど、事前によく考えておくとよいでしょう。
職業訓練指導員の資格・試験の難易度
免許取得の方法はいくつもあるが、要件が細かい
職業訓練指導員として働くにあたり、職業訓練指導員免許の取得は必須事項です。
この免許は、以下のいずれかの方法によって取得することができます。
・職業能力開発総合大学校 指導員養成課程を修了する
・48時間講習を修了する
・職業訓練指導員試験に合格する
・高等学校普通教育免許を取得する
「48時間講習」というのは、厚生労働大臣の指定する職業訓練指導員講習です。
講習を受講するには「技能検定の1級合格」「免許職種に係る学科を卒業後、2年以上実務経験を積むこと」といった要件を満たさなくてはなりません。
その他の各方法でも、取得にいたるまでのさまざまな要件が掲げられているため、事前によく確認しておきましょう。
職業訓練指導員試験の難易度は?
職業訓練指導員試験は、各都道府県で年に1回実施しています。
この試験を受けるには、「技能検定の2級合格」「免許職種に係る実務を1年以上経験していること」のいずれかの要件を満たす必要があります。
難易度や倍率の詳細は公表されていませんが、都道府県によって応募者数には差があることが予想できます。
試験は「学科」と「実技」で構成され、それぞれ志望する職種に応じた内容で実施されるため、職種に応じた勉知識を備え、技能を身につけておくことも大切です。
関連記事職業訓練指導員免許のメリットは? 資格の取得方法を紹介
職業訓練指導員の給料・年収
都道府県の職員と同程度の年収が見込める
職業訓練指導員の給与水準は、基本的に各都道府県の公務員と同等になるように設定されています。
職業訓練指導員全体で見ると、民間企業の平均年収よりはやや高めの年収が見込め、年収500万円ほどがボリュームゾーンとなっているようです。
都道府県の職員として職業能力開発校などで勤務する場合は「地方公務員」の身分となります。
期末・勤勉手当(いわゆるボーナス)が業績や景気に左右されず支給され、その他の手当や休暇制度など、福利厚生面も充実しています。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置する職業能力開発施設で働く人もいますが、そちらも国に準ずる公的な機関であるため、安定した働き方が可能です。
安定した待遇が期待できる
職業訓練指導員は、景気などの影響を大きく受けることなく、一定の収入が得られます。
ただし、一部の民間企業で見られるような、自分が大きな成果を上げれば収入が大幅にアップする、といった給与体系でもありません。
落ち着いた環境で安定した待遇を求める人にとっては、魅力的と感じやすいでしょう。
関連記事職業訓練指導員の年収はいくら? 給料についてくわしく解説
職業訓練指導員の現状と将来性・今後の見通し
各都道府県で指導員としての人材が求められている
職業訓練指導員の多くが働く公共職業能力開発施設は各都道府県に設置されており、各地域の雇用の下支えに貢献しています。
各施設において、それぞれの地域ニーズに沿った科目が用意されており、受講希望者も大勢います。
公共の施設であることから、そこで働く職業訓練指導員の安定性は非常に強く、いったん職に就けば、長期的に腰を据えて働ける安心感が得られるでしょう。
基本的には公的機関で働くことが前提の職種ですが、最近は大学やNPO法人といった民間教育訓練機関に職業訓練を委託するケースもあります。
職業訓練指導員の知識や技能を持つ人材が求められる場が広がっているため、自身の能力を発揮できる場所を探してみるとよいでしょう。
職業訓練指導員の就職先・活躍の場
都道府県の職業能力開発施設を中心に活躍する
職業訓練指導員の主要な活躍の場は、都道府県が設置・運営する「職業能力開発施設」です。
具体的な施設としては、職業能力開発大学校、職業能力開発短期大学校(ポリテクカレッジ)、職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)、職会社職業能力開発校などがあります。
これらで働く職業訓練指導員は各都道府県に採用され、地方公務員の身分で勤務します。
このほか、事業主団体や職業訓練法人が設置する「認定職業訓練施設」と呼ばれる施設で活躍する人もいます。
さらに、さほど数は多くありませんが、法務省の「矯正施設」で法務技官として働く職業訓練指導員もいます。
法務省に所属する場合の身分は国家公務員です。
職業訓練指導員の1日
技術指導を中心としたスケジュールとなる
職業訓練指導員の1日の流れは、勤務する施設によっても異なってきます。
メインとなるのは公共職業能力開発施設で、そこでは技術指導を中心に、キャリアコンサルティング、訓練コーディネート、訓練カリキュラム開発など、さまざまな業務を担当します。
スケジュールはだいたい決まっているため、規則正しい生活を送りやすいといえるでしょう。
ここでは、「ものづくり」に関する訓練を実施する、職業能力開発校で働く職業訓練指導員のある1日を紹介します。
関連記事職業訓練指導員の1日のスケジュール・勤務時間や休日についても解説
職業訓練指導員のやりがい、楽しさ
業務を通して人の成長を支援し、社会に貢献できる
職業訓練指導員のやりがいは、業務を通して人の役に立っているという実感を味わえることです。
求職者は「職業訓練」を通して技術を身につけ、その技術を生かせる就職先を見つけて仕事をスタートします。
職業訓練指導員は一人ひとりの訓練生に対し、日々の技術指導はもちろん、キャリアに関する相談にものりながらサポートを行います。
無事に就職が決まれば心から感謝してもらえ、「力になれてよかった!」という気持ちが沸き起こります。
また職業訓練指導員は、それぞれが担当分野を持っています。
訓練生に正しく指導するためには、自らも専門知識・技術を磨き続ける必要があるため、仕事を通して自分自身の成長につながるのも職業訓練指導員の魅力のひとつです。
職業訓練指導員のつらいこと、大変なこと
さまざまな訓練生と触れ合う難しさを感じることも
職業訓練指導員は、さまざまな訓練生との出会いがあります。
年代も経歴もさまざまな訓練生と接し、きちんと指導をしていくのは決して簡単なことではありません。
もちろん素直でやる気に満ちあふれている訓練生も多数いますが、なかにはやる気のない訓練生や、頑張ろうとはしていても、どうしても理解が遅い訓練生に出会うこともあります。
どのような相手に対しても真摯に向き合い、その人のやる気を引き出すための指導をしていくことに、苦労を感じる瞬間もあるでしょう。
職業訓練指導員は、学校の先生とは異なる立場ではありますが、「人の成長を支援する」という重要な役割を担っていることは確かです。
さまざまな訓練生に教えることがつらくなってしまうと、仕事そのものに苦痛を感じてしまう人もいるようです。
職業訓練指導員に向いている人・適性
人に教えることが好きで、人の成長を支援したい人
職業訓練指導員は「技術を学びたい!」と考えるさまざまな求職者と接します。
学校の先生とはまったく異なりますが、訓練生から見れば「先生」のような存在です。
だからこそ、職業訓練指導員は一人ひとりの訓練生に対して、どのような時でも真摯に向き合い、熱心に指導ができる人に向いているといえるでしょう。
ときには訓練生からキャリアに関してのアドバイスを求められることもあります。
相手が希望する道に進めるようにするにはどうすべきかを考えられる人、人の成長を支援したいと心から思える人でないと、なかなかこの仕事は務まらないでしょう。
また職業訓練指導員は、自分が担当する職種の知識・技術については、常に学び続ける姿勢が求められます。
訓練指導員として担当する職種に情熱を持ち続けられるかどうかも、適性を見極める際の重要なポイントの一つだといえるでしょう。
関連記事職業訓練指導員に向いている人とは? 適性や必要な能力を紹介
職業訓練指導員志望動機・目指すきっかけ
職業訓練の目的を正しく理解しておく
職業訓練指導員の志望動機としてはよく挙げられるのは、教育への関心や、社会貢献に対する思いです。
自分の身につけた専門知識・技術を生かせる職として、この仕事を目指す人もいます。
なお、職業訓練生は社会人経験者が多いため高校や大学と雰囲気は異なるものの、「何かを学ぶ場所」という点では共通しています。
職業訓練指導員として「なぜ人に教えたいと考えたのか」や「訓練生とどう向き合っていきたいのか」を、志望動機を通して伝えられるとよいでしょう。
まずは職業訓練の目的を理解し、それに対して自分が指導員としてどのように貢献したいのか、自分のスキルをどう生かせるのかを伝えることも大切です。
また、職業訓練指導員は待遇面などでは安定的に働ける仕事ではありますが、さまざまな性格の訓練生と根気強く向き合うことが求められます。
対人関係が得意であることを伝えると、採用担当者によい印象を残せる可能性があります。
職業訓練指導員の雇用形態・働き方
正社員以外の働き方も選択できる
職業訓練指導員の雇用形態は正社員が中心ですが、それ以外に、フルタイムの契約社員や短時間勤務をするのパートの求人も出されています。
職業訓練校は日本全国にあるため、職業訓練指導員の免許を取得していさえいれば、各地の職業訓練校へのエントリーが可能となります。
ただし、常に希望のタイミングで自分が専門とする職種の職業訓練指導員の募集が出るとは限らないため、こまめに情報を探さなくてはなりません。
非正規雇用の場合、雇用期間が1年もしくは1年半と決まっている場合もあるため、さまざま施設で働きながらキャリアを形成するという選択肢もあります。
職業訓練指導員の勤務時間・休日・生活
勤務時間や休日は明確に決まっており、規則正しい生活ができる
職業訓練指導員の多くは、地方公務員または独立行政法人の職員として働いています。
勤務時間は各都道府県によって多少異なりますが、基本的に日勤のみで、8:30~17:00もしくは9:00~17:30くらいの時間帯に勤務します。
変則スケジュールになることは通常ないため、規則正しい生活を送りやすいでしょう。
休日は週休2日制で、土日と祝日はきちんと休めます。
さらに有給休暇や夏季休暇、年末年始、介護休暇、育児休暇制度などが設けられています。
忙しさは勤務先によっても多少異なりますが、残業時間は少なめとなっており、そこまで激務になることはないと考えておいてよいでしょう。
職業訓練指導員の求人・就職状況・需要
求職者だけでなく在職者への需要もある
職業訓練指導員として働くには、職業訓練指導員の免許取得が必須です。
しかし、いざ免許をしても採用決定というわけではないことには注意が必要です。
実際、各都道府県での職業訓練の募集件数は1~3名など非常に少なく、都道府県によって募集している科目も異なります。
ちょうどよいタイミングで希望の求人が出るとは限らないため、それまでは民間企業で働きながらチャンスをうかがう人も多いのが実情です。
なかなか厳しい道のりではありますが、職業訓練指導員の就業先は公的機関がメインであり、今後も少ないながら安定した需要は見込めるでしょう。
近年は認定職業能力開発施設への委託訓練も増えており、以前よりは活躍の場が広がりつつあります。
職業訓練指導員の転職状況・未経験採用
民間企業で働きながら転職のタイミングを計る人も
職業訓練指導員は、どのような人でも、まずは職業訓練指導員としての免許を取得する必要があります。
免許があれば、いつでも転職は目指せます。
しかし、地方公務員としての職業訓練指導員は募集人数が少ないうえ、採用枠に応募者が殺到するため、非常に狭き門となっています。
認定職業能力開発施設で働く道も考えられますが、その場合、非正規雇用として募集されることが多くなります。
職業訓練指導員の免許を取得しても、すぐに職業訓練指導員として安定した働き方ができるとは限りません。
民間企業で働きながら、こまめに情報を探して転職できるタイミングをねらうのもひとつの方法でしょう。