マーチャンダイザーの現状と将来性

アパレル業界は今、大きな変革期を迎えています。

EC市場の拡大、DX・AI技術の導入、そしてサステナビリティへの対応と、変化の波が次々と押し寄せています。

その中で、商品の企画から販売計画まで一手に担うマーチャンダイザー(MD)の役割も進化を求められているのです。

「MDの仕事はAIに取って代わられるのでは?」「アパレル市場の縮小でMDの需要は減るのでは?」

そんな不安の声も聞かれる一方で、実は人材市場ではMDの求人倍率が過去最高水準に達しています。

この記事では、データに基づきながらMDの現状と将来性、今後求められるスキルまで徹底解説します。

この記事のポイント💡
  • アパレル・ファッション業界の転職求人倍率は2023年に3.03倍と過去最高を記録、人材不足で需要は高い
  • EC市場拡大・DX推進・サステナビリティ対応でMDの役割はむしろ拡大中
  • AIが定型業務を補助するが、クリエイティブ判断や戦略立案は人間MDが必要
  • 従来スキル+デジタルスキルを身につければキャリアの幅も広がる
  • EC・SaaS企業への転身など、アパレル以外へのキャリアパスも開けている

マーチャンダイザーの現状

マーチャンダイザーを取り巻く現在の環境は、一言で言えば「変化と需要の両立」です。

業界全体には課題もありますが、MD人材への需要は高まっています。

国内アパレル市場の動向

国内のアパレル市場規模は、矢野経済研究所のデータによると2023年に約8兆3,564億円(前年比103.7%)となりました。

コロナ禍で大きく落ち込んだ市場は、徐々に回復基調に入っています。

一方で、世界に目を向けるとアパレル市場は今後も拡大が予測されており、2032年には約2兆3,000億ドル規模に達すると見込まれています。

グローバル展開を進める日本企業にとっても、チャンスが広がっているのです。

ただし、国内市場には構造的な課題もあります。

低価格競争の激化、在庫過剰、プロパー消化率の低下など、業界全体で解決すべき問題が山積しているのも事実です。

これらの課題を解決できるMDこそ、企業が求める人材といえるでしょう。

MD人材の需給バランス

人材市場に目を向けると、MDの需要は非常に高まっています。

doda転職求人倍率レポート(2023年7〜9月期)によれば、アパレル・ファッション業界全体の転職求人倍率は3.03倍を記録しました。

これは調査開始以来初めて3倍を超える数字で、企業の採用意欲が非常に高いことを示しています。

つまり、1人の求職者に対して3社以上が「採用したい」と手を挙げている状況なのです。

背景には、経験豊富なMDの不足があります。

商品企画から販売計画、在庫管理、データ分析まで幅広い知識とスキルが求められるMDは、育成に時間がかかる職種です。

そのため企業は優秀なMDを高待遇でヘッドハンティングしたり、社内育成に力を入れたりしています。

アパレル業界の課題:在庫過剰・低価格競争

一方で、アパレル業界は構造的な課題を抱えています。

日本では年間に30億点前後の衣服が供給されているとされており、その一部が売れ残りや廃棄となっていることが、業界調査や環境省などのマテリアルフロー調査でも指摘されています。

大量生産・大量廃棄の構造が常態化しており、プロパー(定価)で売り切れる率が低下し、値引き前提のビジネスモデルになっているのです。

この問題を解決するには、適正な在庫で計画的に売り切るMDの力が不可欠です。

過剰な仕入れを避け、データに基づいて需要を予測し、サステナブルな商品計画を立てられるMDこそ、今後の業界に求められる存在といえるでしょう。

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マーチャンダイザーの将来性【高い】

結論から言えば、マーチャンダイザーの将来性は高いといえます。

その理由を4つの観点から解説します。

理由①:EC市場拡大でMDニーズ増加

オンラインショッピングの拡大に伴い、EC専門のMDスキルが求められるようになっています。

実店舗とECでは、商品の見せ方も在庫管理の方法も異なります。

ECサイトでは商品ページの構成、検索キーワード対策、レコメンド機能の最適化など、デジタルマーケティングの知識が必要です。

また、リアルタイムの売上データを分析して素早く商品構成を変更する「デジタルMD」のスキルも重宝されています。

実際、EC事業に注力する企業からのMD求人は増加傾向にあります。

従来のアパレル企業だけでなく、D2Cブランドやオンライン専業の企業からもMD職の募集が出ているのです。

EC市場の拡大は、MDにとって新たなフィールドが広がることを意味しています。

現場の声:元MDがEC・SaaS企業で活躍

アパレル本部でMD・DB(データベース)の経験を積んだ方が、在庫分析SaaS企業「FULL KAITEN」のカスタマーサクセスに転職した事例があります。

「在庫・売上の数値に毎日向き合ってきた経験が、在庫課題を抱えるアパレル企業をサポートする業務に直結しました。

週1出社・週4リモートで働きやすく、『世界の大量廃棄問題を解決する』という社会貢献にもつながっています」

MDとして培ったスキルは、アパレル業界の外でも通用するのです。

出典:note | FULL KAITEN社員インタビュー

理由②:データドリブン経営の浸透

従来のMDは「勘と経験」が重視されてきましたが、今はデータ分析力が必須になっています。

AIを活用した需要予測ツールや在庫最適化システムを導入する企業が増えており、これらのツールを使いこなせるMDが求められているのです。

ただし、データやAIはあくまで判断材料を提供するツールです。

最終的に「このデータをどう解釈し、どんな商品戦略を立てるか」を決めるのは人間のMDです。

そのため、AIがどれだけ進化しても、最終的な感性や統合的な判断は人間のMDが担うべきだと考えられています。

つまり、データ分析力を持ち、かつクリエイティブな判断ができるMDの価値はむしろ高まっているのです。

理由③:サステナビリティへの対応

環境問題への関心が高まる中、アパレル業界にもサステナビリティが強く求められるようになりました。

環境省や業界団体はファッション産業の脱炭素化ガイドラインを策定し、企業に対応を促しています。

ここでMDが果たす役割は大きいのです。

適正在庫を実現し、無駄な廃棄を減らす商品計画を立てるのはMDの仕事です。

また、企画段階からリサイクル素材を採用したり、サーキュラーデザイン(循環型設計)を取り入れたりするのも、MDの判断次第です。

💡 「サステナブルMD」という新潮流

環境負荷を減らす商品企画・適正在庫管理が求められる時代になっています。

リサイクル素材の活用、製品寿命を延ばす設計、リセール(中古販売)事業への展開など、サーキュラーエコノミーに対応した商品計画を立てるのがMDの新たな使命です。

「売れれば何でもいい」ではなく、「環境にも配慮した持続可能な売り方」を実現するMDが、今後ますます求められるでしょう。

理由④:グローバル展開の加速

日本のアパレル企業は海外進出を進めており、外資系ブランドも日本市場を強化しています。

世界のアパレル市場規模は2032年に約2兆3,000億ドル規模に達すると予測されており、グローバルに活躍できるMDへの需要は高まり続けるでしょう。

海外展開を担当するMDには、語学力(英語・中国語など)、異文化理解、各国市場の知識が求められます。

実際に、グローバルMD統括として複数国の商品戦略を統括したり、海外駐在して現地のトレンドを直接リサーチしたりするキャリアも開かれています。

AI・DXがMDの仕事に与える影響

「AIの進化でMDの仕事はなくなるのでは?」という不安の声も聞かれます。

実際のところ、AIはMDの仕事をどう変えるのでしょうか。

AI需要予測ツールの導入

すでに一部の企業では、AIを活用した需要予測ツールが導入されています。

過去の販売データ、天候、SNSのトレンド、経済指標などを分析し、商品ごとの売上を予測するシステムです。

ユニクロを展開するファーストリテイリングも、AI在庫管理システムを導入して在庫の最適化を図っています。

これにより、MDは膨大なデータ集計作業から解放され、より戦略的な判断に時間を使えるようになります。

AIは「MDの敵」ではなく「味方」

AIが得意なのは、過去のデータに基づくパターン認識と計算です。

つまり、「去年この商品がこれだけ売れたから、今年はこれくらい売れそう」という予測はAIが得意とするところです。

しかし、以下のような判断はAIには困難です。

・「今シーズンはこのカラーがトレンドになりそうだから、いつもより多めに発注しよう」(トレンド感覚)
・「ブランドイメージを守るため、この商品は値下げせずに売り切ろう」(ブランド戦略)
・「デザイナーのこだわりを活かしつつ、原価を抑える素材提案をしよう」(クリエイティブと現実のバランス)

こうした理由から、AIが普及してもMDの役割そのものがなくなるわけではありません。

AIはMDの強力なサポートツールですが、MDの仕事を完全に代替することはできないのです。

💡 「AI MD」とは?

過去の販売データやトレンド情報からAIが需要予測を行い、最適な商品構成を提案するシステムのことです。

すでに一部企業で導入が始まっており、在庫の適正化や発注業務の効率化に貢献しています。

ただし、AIが提案するのはあくまで「データ上の最適解」です。

ブランドのコンセプトや今シーズンの戦略、デザイナーの意図といった要素を加味して最終判断するのは、人間MDの役割です。

MDに求められるスキルの変化

AI時代のMDに必要なスキルは、従来のスキルにデジタル対応力が加わったものといえます。

従来から必要なスキル:
・商品企画力
・数値分析力
・トレンドを読む感性
・コミュニケーション力(社内外調整)

新たに求められるスキル:
・データ分析ツールの活用(Excel、BIツール、Pythonなど)
・Webマーケティング知識
・AIツールの理解と活用
・デジタル施策の立案

つまり、「従来のMDスキル」×「デジタルスキル」を持つ人材が、これからの時代に活躍できるのです。

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マーチャンダイザーのキャリアの広がり

MDとして経験を積むと、多様なキャリアパスが開けます。

従来のキャリアパス

アパレル企業内での昇進ルートとしては、以下のような道が一般的です。

アシスタントMD → MD → MDマネージャー → 商品本部長 → 経営層

大手企業では、MD経験者が取締役や執行役員として経営に携わるケースも珍しくありません。

商品戦略は企業の売上を左右する重要な分野なので、MD出身者が経営陣に登用されやすいのです。

新しいキャリアの選択肢

近年は、アパレル業界の外へキャリアを広げるMDも増えています。

EC事業責任者:ECサイトの商品戦略・マーケティングを統括
SaaS企業:在庫管理ツールやMD支援ツールを開発・販売する企業で、アパレル業界の課題を解決する側に回る
コンサルタント・フリーランスMD:複数ブランドのMD顧問として独立
データアナリスト:MDで培ったデータ分析スキルを活かして、他業界で活躍

特にEC・SaaS企業への転身は、「アパレルMDの経験を社会課題の解決に活かす」という新しいキャリアとして注目されています。

MD志望者へのアドバイス

これからMDを目指す方、またはすでにMDとして働いている方に向けて、将来を見据えたアドバイスをお伝えします。

今から身につけるべきスキル

データ分析スキル:Excel関数やピボットテーブルは最低限使いこなせるように。

可能であればBIツール(Tableau、Power BIなど)やPythonの基礎も学んでおくと強みになります。

デジタルマーケティング知識:ECサイト運営、SEO、SNSマーケティングの基礎を理解しておきましょう。

オンライン講座(Udemyなど)でも学べます。

サステナビリティへの理解:環境問題、サーキュラーエコノミー、サステナブル素材について基礎知識を持っておくと、今後のトレンドに対応できます。

英語力:グローバル展開を目指すなら、ビジネス英語は必須です。

海外ブランドの動向をチェックしたり、海外出張に対応したりするには、最低でもTOEIC700点以上を目標にしましょう。

将来を見据えたキャリア戦略

「服が好き」という情熱は大切ですが、それだけでは長く活躍し続けるのは難しい時代になりました。

テクノロジーやデータ活用を学ぶ姿勢を持ち、常に業界の変化にアンテナを張ることが重要です。

具体的な行動としては:

・オンライン講座でExcel・データ分析を学ぶ
・業界ニュース(繊維ニュース、WWD JAPANなど)を毎日チェックする
・EC企業やD2Cブランドの成功事例を研究する
・サステナビリティに関する本や記事を読む

こうした地道な努力が、5年後・10年後のキャリアに大きな差を生むでしょう。

まとめ

マーチャンダイザーは、DX・AI時代においても将来性の高い職種です。

EC市場拡大、データドリブン経営、サステナビリティ対応、グローバル展開と、MDが活躍する場はむしろ広がっています。

AIが定型業務をサポートしても、クリエイティブな判断や戦略立案は人間MDの領域です。

従来のMDスキルにデジタルスキルを加えれば、アパレル業界内でのキャリアアップはもちろん、EC事業やSaaS企業への転身など、多様なキャリアパスも開けます。

「変化の時代」は「チャンスの時代」でもあります。

今からMDを目指す方も、すでにMDとして働く方も、スキルアップを続けることで明るい未来を切り開けるでしょう。

📚 この記事の参考資料・データ出典

本記事は以下の公的統計および信頼できる情報源を基に作成しています。

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