救急救命士の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
救急救命士の仕事とは
救急救命士は、救急車に同乗し、病院までの搬送中に心肺停止などの緊急事態が起こったときに、医師の指示の下で救急救命の処置を行う職業です。
具体的には、「心肺停止状態の傷病者に適切な応急処置・蘇生処置を行いつつ、病院などの医療機関に速やかに搬送すること」と定められています。
救急救命士のほとんどは消防官として消防署に勤め、「救急隊員」として事故や火事の現場に急行します。
しばしば誤解されがちですが、救急車に乗っている救急隊員のすべてが救急救命士というわけではありません。
心肺が停止した危篤状態の傷病者を担当する、いわば蘇生処置専門のスタッフが救急救命士にあたります。
現在、消防庁では3人1組で動く救急隊員のうち、最低でも1人は救急救命士の資格を持つよう指導を進めています。
救急救命士の業務の内容
救急救命士の「特定行為」とは
従来、人に対して医療的な処置を施す「医療行為」は医師のみにしか許されておらず、救急隊員が処置を行うことはできませんでした。
しかし、救命率の向上を目的とし、医師以外でも緊急時に救命処置を行うことができるよう、1991年に救急救命士の資格が作られました。
救急救命士による、医師の具体的指示を必要とする救急救命処置のことを「特定行為」といいます。
- 心肺停止時の電気ショック
- 薬剤の投与
- 点滴
- 器具を使用した気道確保
- 気管挿管
- 心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保
- 輸液
- 血糖測定
- 低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与
なお、電話による医師の指示を受けず、救急救命士の判断で特定行為を施すことは禁じられています。
出動以外にも事務作業あり
救急救命士は、レスキュー隊のような1分1秒を争う現場に立ち会うことはもちろんですが、実際には「待機」をしている時間も少なくありません。
待機時間中は、救急車の中の機器の整備や安全確認のほか、書類作成等のデスクワークもします。
また、小中学校に赴いて応急処置などの指導をすることもしばしばあります。
ほとんどの救急救命士の所属は、病院などの医療機関ではなく消防署です。
そのため、消防の仕事も兼ねています。
最後は体力勝負
救急救命士は消防隊のように力仕事こそあまりありませんが、基本的に24時間勤務のシフトで働いています。
朝8時に出勤し、昼食・夕食の休憩と仮眠の時間は設けられていますが、どんなときでも出動命令があれば現場に急行しなくてはなりません。
睡眠リズムが崩れやすく、現役の救急救命士の方の多くは体力勝負の仕事だといいます。
日頃から体力トレーニングを続け、バランスの取れた食事を心がけて心身共に健康に気を配る必要があります。
救急救命士の役割
救急救命士は、人の命を左右する局面において重要な役割を担う仕事です。
命の危険が迫る人を救急車へ乗せてから病院に搬送されるまでの間に救急救命処置を行い、医師へ引き渡すまで命を繋ぎ止める使命があります。
目を背けたくなる事態に直面することもあり、精神的な負担も大きい仕事ですが、緊急を要する状態にある傷病者と最初に向き合う救急救命士は、社会的役割も非常に大きい職業です。
病気や事故の傷病者だけでなく、地震や水害などの災害時にも、救急医療の最前線に立ち、その責務を果たしています。
人の命を助けることができ、患者の家族や地域の人から「ありがとう」の声をかけてもらえる救急救命士の仕事は、大きなやりがいを感じられる職業でもあるでしょう。
救急救命士の勤務先の種類
ほとんどの場合、救急救命士の勤務先は日本全国の消防署です。
救急救命士になるには、大学や専門学校などの救急救命士養成コース・学科で学んだ後、国家試験に合格する必要があります。
さらに、その資格を生かして働くには、消防士採用試験を受けて合格し、消防機関に勤務するルートを辿るのが一般的です。
消防機関以外にも、病院や自衛隊、海上保安官、警察の一部において、救急救命士が働いていることもありますが、募集の数が少ないため、ほとんどの救急救命士は消防隊員として消防機関に勤務しています。
消防隊員は、自治体の消防本部に勤務する地方公務員の身分です。
そのため、救急救命士として活躍するために消防隊員を目指すのであれば、地方公務員試験を受験し、合格する必要があります。
救急救命士の仕事の流れ
救急救命士の仕事の流れは、自治体や勤務先の規模によって異なります。
ここでは、ある消防署に勤務する、24時間勤務中の救急救命士の仕事の流れをご紹介します。
-
1.出勤
出勤したら、前の時間帯に働いていた消防士から引き継ぎを受け、車両の点検や搬送先のチェックをします。 -
2.訓練などを行って待機
勉強や訓練を行いながら、出動指令に備えて待機します。合間で素早く食べられる「消防めし」で昼食をとります。 -
3.出動
引き続き待機し、指令があれば速やかに出動。病院から戻ってきたら書類を作成します。 -
4.仮眠・待機
夕食後、深夜は出動の合間に仮眠をとり、翌日の早朝まで待機します。24時間勤務をした翌日は、1日非番になるサイクルが一般的です。
救急救命士と関連した職業
救急救命士と関連した職業として、「救命医」や「救命看護師」が挙げられます。
救命医は、救急治療を専門とした医師のことを指し、医師免許が必要となる職業です。
救命医の主な勤務先は、大きな病院の救急救命センターで、救急救命士を含めた救急隊と連携を取りながら、一刻を争う救急患者さんの初期診療や緊急手術をおこないます。
救急看護師は、看護師のなかでもとくに救急医療施設やドクターヘリなどにおいて、救急処置を実施する看護師のことをいいます。
心肺停止の状態になってしまった傷病者への救急蘇生処置や、骨折時の処置、止血や包帯法などの応急処置を行うほか、救急治療にあたる医師をサポートしたり、救急処置を受けた患者さんの心のケアにも関わったりするなど、多岐にわたる業務を担います。
救命医・救命看護師が病院内で治療にあたるのに対し、救急救命士は出動先から病院までの間に処置を施すという違いがあります。
また、救急救命士は、医師の指示なしで処置を行うことはできません。