救急救命士の需要・現状と将来性

救急救命士の需要と現状

救急救命士の需要

ほとんどの救急救命士は消防署に勤務し、119番の通報を受けて早急に現場まで向かいます。

令和元年版の「消防白書」によると、救急車の出動件数は年々増えており、平成30年中には660万5,213件となっています。

急病だけでなく火事、交通事故などの際には、救急救命士は欠かせない存在です。

こうした現状を受けて、消防庁では3人1組の救急隊のうち、少なくとも1人は救急救命士の資格取得者を配備しておくよう呼びかけており、救急救命士の需要は高まりつつあるといえるでしょう。

平成31日4月1日現在には、全国726消防本部のうち725本部で救急救命士が配置されています。

また、救急救命士の資格を持つ消防職員は3万8,388人おり、そのうち2万7,387人が救急救命士として活躍しています。

この数字は年々増加傾向にあるようですが、いまだ出動件数に対して救急救命士の数は不足しがちであり、都市部だけでなく地方でもその傾向は高いといわれています。

救急救命士は全国的に需要が高く、社会的にも必要とされていることから、これからこの職業を目指す人にもチャンスは存分にあるといえるでしょう。

救急救命士の現状

このように、救急救命士の社会的な需要は大きいといえますが、国家資格を取得した全員がその資格を生かして働けるわけではありません。

現在、ほとんどの救急救命士は、消防官として消防署に勤務しています。

そのため、大学や専門学校などで救急救命士の資格を取得する場合、各自治体の消防職員採用試験に合格して、消防の救急隊員になる必要があります。

しかし、消防の採用枠には限りがあり、自治体や採用区分によっては20〜30倍もの競争率になることもあります。

消防職員として就職しない救急救命士のなかには、看護助手として病院で働く人や、介護施設や警備会社に勤務する人、緊急ではない患者搬送車を扱う会社に就職する人もいます。

これらの職は非正規雇用者が多く、国家資格を持っていても救急救命士として働くことができていない人も少なくないのが現状です。

救急救命士の将来性

長引く不況の影響を受け、安定職としての医療業界がにわかに活気づいています。

経済情勢に関わらず生命や健康に関わる医療業界は需要がなくならず、なおかつ高給であるケースが多いためだと考えられています。

そうしたなかで、救急救命士はハードな業務内容の割に比較的薄給であると考えられ、求職者の間ではやや敬遠されがちでした。

しかし、国内はもとより世界中に大きなショックを与えた東日本大震災をきっかけに、救急救命士の存在感は大きく世間に波及します。

震災直後、連日テレビなどのメディアでは被災地の救助活動が大きく取り上げられ、全国の救急救命士が救助に当たる姿が求職者や中高生に強い印象を与えました。

「人助けをしたい」と考える若者は多くおり、救急救命士国家資格試験の受験者数は伸びを見せています。

近年、「特定行為」が拡大されたことからも、救急救命士に対するさらなる活躍が期待されていることがうかがえます。

救急救命士は自然災害の多い日本において、今後も高い需要があると考えられます。

救急救命士の今後の活躍の場

救急救命士のほとんどは消防機関で働いていますが、なかには民間の病院や警備会社、搬送機関で勤務している人もいます。

消防署以外の機関では、医療行為が一部制限されるものの、傷病者の搬送の補助や、救急講習の指導などに知識や経験が生かせます。

そのため、消防署に属さない有資格者や、定年退職した救急救命士を積極的に採用する民間機関も増加しています。

厚生労働省でも、近年の高齢化や自然災害の多発などをかんがみて、消防機関に属していない救急救命士を活用していこうという指針を決定しています。

具体的には、地域の医療機関や医師に向けて研修を実施し、救命士へ指示・助言できる医師を増やしていくことで、救急救命士が地域でも高度な措置をおこないやすくする、という取組です。

今後は、病院や消防機関だけでなく、地域の集客施設やマラソン大会、大型イベントなどの場でも、救急救命士が活躍しやすくなるでしょう。