救急救命士養成校の入学から卒業までの流れ
救急救命士養成校に入学するためには
救急救命士の国家試験受験資格を得るために通う養成校には、大きく分けて「専門学校」と「大学」があります。
どの学校でもたいてい「救急救命学科」といった名称になっています。
どちらも入学の際には試験が設けられており、ほとんどの場合、高校卒業もしくは大検取得者のみに受験資格があります。
入学試験は高校の教育課程に準じた内容が出題され、入試問題の難易度や合格ラインは学校によってさまざまですが、専門学校と大学にさほど大きな差はありません。
大学の方が入試の難易度が高いのではないかと思われがちですが、救急救命学科の全国平均の偏差値はそれほど高くなく、専門学校とさほど変わりはありません。
救急救命士養成校を選ぶ際には、入試の難易度よりも、将来の進路や就職率などを考慮して選ぶのがよいでしょう。
大学を出れば、当然ですが「大卒」の学歴を得ることができます。
救急救命士養成校で学ぶこと
救急救命士養成校で学習する内容は厚生労働省が指定しており、授業の形式は学校によって異なるものの、同じ範囲を履修することになっています。
専門学校の場合は2年もしくは3年、大学の場合は4年間で卒業する流れです。
大学は4年間という時間をかけて学ぶ分、よりゆとりのあるカリキュラムになっていることが多いです。
一方、2年制の専門学校では短期間でみっちりと科目を履修していくため、より密度の濃い毎日を過ごすことになるでしょう。
救急救命士国家試験を受験するためには、上記に挙げた救急救命士養成校で2年以上の研修を受けることが義務付けられています。
具体的には、1年次には人体構造、人体機能、救急医療概論、解剖生理学、救急処置概論といった救急医学の基礎となる科目を学び、年次が上がるにつれて専門性の高い科目を学んでいきます。
以下に学習範囲と授業内容の簡単な例を挙げます。
<基礎分野(基礎教養)>
生物学、化学、数的推理、判断推理、政治・経済(社会保障・福祉)、消防学、倫理学など
<専門基礎分野>
解剖学、生理学、病理学、法医学など
<専門分野>
・救急医療概論(救急救命士法、救急処置概論など)
・救急症候学(心肺停止、発熱・めまい、意識障害、下痢・吐血など)
・疾病救急医学(神経症状、循環器疾患、消化器疾患、免疫疾患、感染症、泌尿器疾患など)
・外傷救急医学(外傷総論、脊椎外傷など)
・実地研修(救急救命シミュレーション、病院内実習、救急車実習など)
など
また、救急救命士の資格取得後は消防官採用試験に合格する必要があるので、消防官に必要な体力を要請するためのトレーニング、スポーツ実習などが設けられている救急救命士養成校も多数見受けられます。
救急救命士養成校の実習
救急救命士養成校の実習では、実際の現場を想定したものが多く、おもに以下のようなものがあります。
<救急救命処置実習>
心肺停止状態にある傷病者への処置が中心となります。心肺蘇生方法やAED(自動体外式除細動器)の使用方法などを学びます。
<外傷処置実習>
事故などにより負傷した傷病者を救護する処置をおこないます。交通事故などの突発的なケガを想定することで、実践に近い内容を学びます。
そのほかにも、実際の病院でおこなわれる病院実習、救急車に同乗し現場へ駆けつける救急車同乗実習、水辺での事故を想定した水難事故研修などをおこなっている学校もあります。
実習内容は各学校によって異なるため、どのような実習をカリキュラムに取り入れているのか、事前にチェックするようにしましょう。
救急救命士養成学校の雰囲気・学生生活
救急救命士養成校には、救急救命士をこころざす人が全国から集まってくるので、資格取得への意識がたかく、勉強への向上心が高いのが特徴のひとつです。
また、学校により多少のちがいはありますが、男女比は男性が多い現状にあります。
例として、2020年の救急救命士国家試験合格者の男女別内訳をみてみましょう。
<2020年 救急救命士国家試験合格者男女別内訳>
・男性:2,356人
・女性:219人
女性が少ない理由として、救急救命士の勤務体系が24時間交代制(シフト制)のため、深夜や早朝勤務があることが嫌煙される要因となっています。
しかし近年では、きめ細やかな気遣いや、女性ならではの視点の必要性から、女性救急救命士の需要も高まっていますので、これからの活躍が期待されています。
救急救命士国家試験の対策
救急救命士国家試験は毎年3月末におこなわれ、合格発表は4月上旬となっています。
したがって、救急救命士国家試験の受験は、救急救命士養成校を卒業する直前となります。
そのため、ほとんどの救急救命士養成校では、初年度から重点的に救急救命士国家試験の対策をおこないます。
過去問の解説・補習はもちろんのこと、中には予想問題を講師が作成して配布してくれる学校もあり、本番さながらの形式で受験対策を行うこともできます。
救急救命士国家試験の合格率は例年8割強とかなり高めで、養成校でしっかりと学習しさえすれば比較的通りやすい国家試験であるといえます。
しかし、この合格率8割強の内訳として、現役の消防官が合格している割合が最も多く、ついで専門学校卒業者、大卒者の順となっています。
しっかりとした受験対策をおこなえば十分合格できる試験ではありますが、現役の消防官たちと同じ試験を受けるという意識は持っておいたほうがいいでしょう。