国税専門官になるには

国家公務員である国税専門官として働くには、まず「国税専門官採用試験」に合格し、採用される必要があります。

この記事では、国税専門官になるまでのおおまかなルートと、目指せる年齢や学歴などについて詳しく解説しています。

採用されてからの研修やキャリアパスについても紹介しているので、国税専門官に興味がある人はぜひ参考にしてください。

国税専門官になるまでの道のり

国税専門官になるためには、まず「国税専門官採用試験」に合格する必要があります。

国税専門官採用試験を受けられるのは21歳以上30歳未満の人で、年齢を満たしていれば学歴は問われません。

しかしながら、試験の難易度から大卒受験者が多いため、国税調査官になりたいのであれば大学入学を目指すとよいでしょう。

採用試験は第1次試験・第2次試験があり、すべてに合格して最終合格者になると「採用候補者名簿」に記載されます。

この名簿から、各年の採用環境を考慮して、東京、名古屋、大阪をはじめ全国の国税局および沖縄国税事務所に採用され、各管内の税務署で勤務します。

国税専門官になるまでのルート

国税専門官の資格・難易度

近年では国税専門官が人手不足とあって、採用人数を増やす傾向にあり、試験突破の難易度は下がっています。

2021年度試験の結果を見ると、応募者13,163人に対して最終合格者4,193人で31.9%の合格率で、他の国家公務員試験に比べると合格率が高めです。

しかし、国税専門官採用試験の第一次試験(筆記)は難関といわれており、法律や会計の高度な専門知識が求められます。

大学で学べる教科の範囲は限られているため、参考書など使って独学で学習を進めたり、専門学校に通って勉強したりする必要があります。

国税専門官採用試験の難易度・合格率・倍率

国税専門官になるための学校の種類

国税専門官採用試験に合格し、採用されるにあたって、最終学歴や学部で判断されることは基本的にありません。

国税専門官採用試験で実力を発揮できるかが重要であり、もし学歴が高くなかったとしても気にする必要はないのです。

しかし、試験では会計学や商法を始めとする専門知識が求められるため、大学の経済学部や商学部で会計を学ぶ、あるいは法学部で法律を学んでいると多少は有利になるでしょう。

また、数学などの知識も必要になるため、文系の人で数学にあまり触れてこなかった人は、きちんと試験対策をしなくてはいけません。

なお、国税専門官は国家公務員のなかでも「税務職」に該当します。税務職の学歴別の人数比率をまとめたのが以下の図です。

税務職俸給表学歴別人数_2022

国家公務員の税務職に該当する職種は、国税専門官以外に「税務職員」などがあります。

税務職員採用試験はおもに高卒の人が受験するため、税務職の大卒・高卒比率は約半々になっていると考えられます。

国税専門官に向いている人

数字を扱うのが好き

国税専門官は常に数字を見る仕事で、数字から不正がないかを紐解き、きちんとルールにしたがって申告ができているかをチェックします。

税金に関する法律も計算方法も複雑であるため、論理的に考えることができ、数字にも強い必要があります。

特別に数学が得意である必要はありませんが、数字を見るのも嫌だという人には向いていない仕事といえるでしょう。

正義感が強い

国税専門官は、納税の不正を正し、適正に税金を徴収する仕事であるため、納税者に対して時には厳しく接する必要があります。

人間なので情が芽生えそうな瞬間もありますが、国税専門官はどんな時も公正に判断し、間違っていることは「間違っている」と誰に対しても言うことができる正義感の強さが求められます。

几帳面さと粘り強さ

国税調査官になると、納税者の確定申告のチェックといった事務的な業務もあります。

細かく数字やデータを見ていく必要があるため、きちんと工程を踏みながら隅々までチェックができる几帳面な人に向いている仕事です。

確定申告が提出される2月から3月は繁忙期となって残業も多くなるため、地道な作業でも粘り強く、正確に物事を進めていく粘り強さが求められます。

国税専門官に向いている人・適性・必要なスキル

国税専門官のキャリアプラン・キャリアパス

国税専門官採用試験を合格すると、まずは各地方にある国税局に「財務事務官」として採用され、税務大学校などの機関で研修を受けます。

研修期間は約4ヵ月間となっており、税法について詳しい講義を受けます。

また、「日商簿記2級」の資格を持っていない場合には、在校中の資格取得が求められます。

税務大学校での研修が終了すると、全国に点在する税務署への配属が決まります。

基本的には採用された各国税局の管轄内で配属先が決まりますが、人数調整などの理由から、ごくまれに管轄外に配属されるケースも見られます。

なお、配属後は3年間の実務経験を積み、7ヵ月の研修を受けることが義務付けられています。

その研修が終わると、本人の希望や適性を見て「国税調査官」「国税査察官」「国税徴収官」というそれぞれの役職に配属され、キャリアを歩んでいきます。

国税専門官の研修

国税専門官採用試験の合格者は、全国各地の国税局に採用されます。

その後、管轄の税務署に配属されて働くまでには、実務能力や専門知識の向上を目的とした研修が行われることになっています。

この研修は、正式には「専門官基礎研修」といい、約3ヵ月間にわたって税法・簿記といった税務職員として必要な知識や技能等を習得します。

そして、税務署に配属後には1年間の実務経験を経たのち、税務大学校地方研修所において約1ヵ月間の「専攻税法研修」を受講します。

さらに実務経験を積み、約7ヵ月間の「専科研修」を経て、国税調査官・国税徴収官などに任用されます。

研修の実施場所

国税専門官の研修は、おもに「税務大学校」といわれる場所で行われます。

税務大学校は国税庁の関連施設であり、税務署等で勤務する国税専門官の育成を目的として1941年に設立されました。

税務大学校の本校校舎は埼玉県和光市にあり、その他に地方研修所が以下の12の地域にあります。

税務大学校の地方研修所の所在地

北海道札幌市、宮城県仙台市、埼玉県朝霞市、千葉県船橋市、石川県金沢市、愛知県名古屋市、大阪府牧方市、広島県広島市、香川県高松市、福岡県福岡市、熊本県熊本市、沖縄県浦添市

研修の具体的な流れ

研修の具体的なステップは以下の通りです。

  1. 1.税務大学校和光校舎で基礎研修を受ける

    国税専門官採用試験に合格した後、合格者の全員が埼玉県和光市にある税務大学校和光校舎で専門官基礎研修を受けることになっています。

    基礎研修では所得税法、相続税法などの一般的な税法について広く学び、入校の4月から6月末まで講義が続きます。

    もし入校の際に「日商簿記2級」を取得していない場合には、6月の検定で合格するよう求められています。

    遠方に居住しているなどの理由から埼玉県の税務大学校まで通うことが困難な場合、税務大学校に隣接した寮に入ることもできます。

    ただし、人数制限があるため注意が必要です。

  2. 2.各地方で専門領域の研修を受ける

    税務大学校和光校舎で約3ヵ月の基礎研修を受けたのち、税務署で1年間の実務を経験します。

    それから、税務大学校地方研修所において、2ヵ月間にわたって外部事務に関連した実務的な事項を習得するための専攻税法研修を受講することになります。

  3. 3.税務署での実務後、さらに専科研修を受ける

    各地域で専門領域の研修を受けた後、税務署に配属され、2年間の実務が課せられます。

    その後、再び埼玉県和光市にある税務大学校和光校舎において、さらに実践的な内容の専科研修を7ヵ月間受けると、晴れて国税調査官・国税徴収官などに任用されます。

その後も場合によっては研修を受けることも

このように、国税専門官は採用後にたくさんの研修が用意されています。

さらに業務を通じて専門性を深めていくなかで、選抜試験などを経て「国際科」「専攻科」などの研修を受けることも可能です。

国税専門官は高度な専門性が問われる仕事であることから、継続的な勉強が必要であり、そのための充実の研修制度が整っています。

国税専門官を目指せる年齢は?

国税専門官採用試験を受けられる年齢は21歳以上30歳未満となっており、30歳までなら何度でもチャンスがあります。

大学卒業して民間企業で働きながら勉強して試験突破を目指す人もいますし、試験に集中するために専門学校で勉強して短期間での合格を目指す人もいます。

筆記試験と面接により合格が決まるため、試験突破することを最優先に考えるとよいです。

国税専門官は高卒から目指せる?

国税調査官は大学卒業程度の学力が必要となるため、多くの人は大学に通いながら目指します。

ただし、高卒の人であれば、国税専門官とほとんど同じ仕事をする「税務職員採用試験」を受けることができます。

税務職員として採用される場合、同じ仕事をしても国税専門官より給料が低めでスタートし、出世も限られてしまいますが、力があると認められれば税務署長になることもできます。

国税専門官志望者のの税務署訪問

税務署訪問とは?官庁訪問とは違う?

通常、国家公務員採用試験では、合格までの過程に「官庁訪問」というイベントが実施されます。

これは各省庁が国家公務員採用試験の受験者を対象に行う採用選考のひとつで、多くの受験者がしっかりと対策をして官庁訪問に臨みます。

ただ、国税専門官など国税に携わる「税務区分」の試験では、国家公務員総合職や一般職志望者が行う官庁訪問と同じ制度は設けられていません。

しかしながら、国税専門官を志す受験者の一部は、筆記の一次試験を突破したのち、最寄りの税務署を訪問し、実務内容の紹介などを受けるケースがしばしば見られます。

税務署訪問を行わなければ採用の対象にならないわけではありませんが、国税専門官志望者は「実際の業務について詳しく知りたい」「現場の空気を感じてみたい」「働いている人の年齢層や男女比が知りたい」などの理由から、積極的に税務署訪問を行っています。

税務署訪問にあたって気を付けたいこと

国税専門官志望者が税務署を訪問するのは有益ではありますが、本来、職場や仕事情報を調べるのは、採用試験を受ける前に行うべきことといえます。

事前に税務署訪問をし、「本当に自分がやりたい仕事なのか」「働いていけそうか」「待遇や条件に認識の違いはないか」、などを確認しておけば、実際に働き始めてからのミスマッチを防ぐことができます。

しかし、税務署では年が明けてから年度末に向かうまでは繁忙期となり、志望者訪問を断るケースもあります。

国税局によっては、税務署訪問の日程を定めているところもあるので、訪問日時については各税務署に問い合わせるか、国税庁のホームページから確認してください。