獣医師になるには? 【資格の取り方・大学の選び方まで解説】

獣医師になるには、まず獣医系大学で6年間学び、獣医師国家試験に合格して獣医師資格を取得する必要があります。

獣医師国家試験の受験資格を得るためには、国内では17校の大学のいずれかに入学しなければならないため、狭き門となっています。

この記事では、獣医師になる方法と、獣医師を目指す人が知っておきたい、獣医師免許を取得した後の就職先まで解説しています。

獣医師になるには【獣医大学への進学・資格取得が必要】

獣医師になるまでのルート

獣医師になるには、獣医師免許が必要です。

獣医師免許を取得する一般的なルートは、高校卒業後に獣医系大学で6年間学び、獣医師国家試験に合格することです。

獣医師国家試験を受ける受験資格として、「獣医学の正規の課程(6年制)を修めて卒業した者」や「外国の獣医学校を卒業し、外国の獣医師免許を持っている者」などが定められています。

なお、獣医系の大学を出ていない人でも「獣医師国家試験予備試験」に合格していれば国家試験を受けられます。

ただし、この予備試験は外国の獣医学校卒業生か外国の獣医師免許取得者でないと受けられないため、日本人の多くの学生にとっては現実的ではありません。

したがって、高校卒業後には獣医系大学への大学進学を目指すのがよいでしょう。

この章では、獣医師になるための大学の選び方や、獣医師資格の取得の方法について解説します。

獣医になるための大学・学費

獣医師に必須の獣医師免許を取得するためには、獣医師国家試験に合格する必要がありますが、この獣医師国家試験の受験資格を得られる大学は国内に17校です。

内訳は国立大学10校、公立大学1校、私立大学6校で、獣医学部は倍率も高く、狭き門となっています。

獣医師になるための国内の大学一覧

大学名 国公立 学部・学科名 定員数 所在地
北海道大学 国立 獣医学部 共同獣医学課程 40名 北海道
帯広畜産大学 国立 畜産学部 共同獣医学課程 80名 北海道
農学園大学 私立 獣医学部 獣医学科 80名 北海道
北里大学 私立 獣医学部 獣医学科 120名 青森県
岩手大学 国立 農学部 共同獣医学科 30名 岩手県
東京大学 国立 農学部 獣医学科 30名 東京都
東京農工大学 国立 農学部 共同獣医学科 65名 東京都
日本獣医生命大学 私立 獣医学部 獣医学科 80名 東京都
日本大学 私立 生物資源科学部 獣医学科 80名 神奈川県
麻布大学 私立 獣医学部 獣医学科 120名 神奈川県
岐阜大学 国立 応用生物科学部 共同獣医学科 30名 岐阜県
大阪府立大学 公立 生命環境科学域 獣医学類 40名 大阪府
岡山理科大学 私立 獣医学部 獣医学科 140名 岡山県
鳥取大学 国立 農学部 共同獣医学科 35名 鳥取県
山口大学 国立 共同獣医学部 獣医学科 30名 山口県
宮崎大学 国立 農学部 獣医学科 30名 宮崎県
鹿児島大学 国立 共同獣医学部 獣医学科 30名 鹿児島県

難易度の一番低い獣医系大学でさえ、一部の医学部のレベルを超えているともいわれているため、しっかりと勉強をしなければ合格は難しいでしょう。

また、獣医系の大学といっても、研究に力を入れる大学もあれば、小動物や大動物などの臨床それぞれに強い大学もあるため、自分が獣医師としてどのような仕事をしたいのかを見据え、進学先を選ぶことが大切です。

獣医系大学で6年間しっかり学ぶと、獣医師国家試験の受験資格を手に入れることができます。

また、獣医系大学は医学部ほどではないものの学費が高めで、私立大学の場合は6年間で1,000万円以上かかるのが一般的です。

✅ 獣医系大学の学費の目安

  • 私立大学:入学金30万円、年間200万円、6年間で約1,000万円
  • 国立大学:入学金30万円、年間54万円、6年間で約350万円
  • 公立大学:入学金30万円、年間70万円(初年度は54万円)、6年間で約460万円
  • 獣医師免許の資格試験の難易度は?【合格率は約8割】

    獣医師国家試験の合格率は8割程度となっており、6年間のカリキュラムを真面目に受けていれば、合格の可能性は高いといえるでしょう。

    獣医師国家試験よりも、倍率の高い大学受験を突破することの方が難易度が高いといわれています。

    ただし資格の難易度はやさしいものではありませんし、獣医料の法令や生理学や薬学、病理学、衛生学、感染症に関する分野など出題範囲も広いです。

    しっかりと準備しておく必要があります。

    獣医師国家試験の難易度・合格率

    獣医師は高卒や社会人からも目指せる?年齢制限は?

    ポイント
    • 高卒では獣医師にはなれない
    • 社会人から目指すことはできるが、仕事との両立は難しい
    • 年齢制限はないが、公務員の年齢制限に注意

    獣医師は、残念ながら高卒から目指すことはできません。

    獣医師免許を取得するためには、獣医系の大学で6年間学んでいることが国家試験の受験資格となるため、大学進学が必須です。

    高校卒業後は、獣医系の大学への進学を目指しましょう。

    資格取得のための年齢制限はない

    獣医師を目指すのに年齢に制限はないため、社会人から目指すことは可能です。

    ただし、日中の時間を大学での講義や実習に充てる必要があるため、仕事を続けながら目指すことは困難でしょう。

    また、年齢制限がないといっても、6年間獣医系の大学に通い、国家試験に合格しなければいけないことを考えると、年齢は若いに越したことはないでしょう。

    公務員試験には年齢制限がある

    そして、公務員を目指す場合は、公務員試験の年齢制限があることに注意しなければいけません。

    国家公務員の場合は30歳まで、地方公務員の場合は受験資格は自治体によって異なりますが、26歳〜30歳としている場合が多いです。

    20代のうちに受験しておいたほうが、何度もチャレンジできるチャンスがあるといえます。

    一般企業の場合は年齢制限が設けられていないこともありますが、キャリアアップのことを考えると、できるだけ若いうちに目指したほうが良いといえます。

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    獣医の仕事【動物のお医者さんだけに限らない】


    獣医師の資格を取得したら、どのような仕事をするのでしょうか。

    多くの人がイメージするのはペットの診療をする「街の動物のお医者さん」、つまり動物病院の先生ですが、実は多くの活躍の場があります。

    この章では、獣医師資格を持つ人の仕事について以下の3つの例を解説します。

    獣医の仕事の例1.動物病院の先生

    動物病院の獣医師は、たくさんの動物たちの診察を行うため、一人前になるまでには時間が必要です。

    なお、獣医師は、医師のようにインターン制度が整っていないことから、大学卒業後は現場に入って仕事をしながら勉強を続けることになります。

    とくに1年目は先輩獣医師の補佐につきながら仕事を覚える一方、病院内の掃除や器具の片付け、タオルの洗濯などたくさんの雑用もこなさなければいけません。

    休日もセミナーや学会に参加したり、専門書で勉強するなど、忙しい日々を送ることになるでしょう。

    大きな動物病院では具体的なキャリアパスが用意されていることもあり、5年で副院長か専門医、7年ほどで院長などが目指せる場合があります。

    就職前にその職場のキャリアプランについて調べておくと、仕事を始めてからもキャリアアップを目指しやすいでしょう。

    獣医師は多くの経験や技術が必要であるため、就職してからも勉強し続けなければいけません。しっかりと技術が身につけば独立・開業し、自分の動物病院をもつことも可能です。

    獣医の仕事の例2.公務員

    獣医の中には公務員として以下のような仕事をしている人も数多くいます。

    ✅ 公務員として働く獣医師の仕事の例

    • 海外からの病原菌の流出防止
    • 家畜の食肉衛生検査
    • 家畜の繁殖・衛生面の手助け
    • 自治体が運営する動物園での勤務
    • 公営競馬場に勤務して競走馬を専門に診療

    公務員の獣医師は、農林水産省や厚生労働省などの省庁に勤務する国家公務員、地方自治体に勤務する地方公務員に分かれます。

    BSEや豚インフルエンザとなどの家畜の伝染病予防や消費者が安心して肉を食べられるようにするための衛生検査など、幅広い業務があります。

    獣医の仕事の例3.民間企業

    以下のような企業では、獣医学の専門知識を活用できる場合があります。

    ✅ 獣医師の民間企業への就職例

    • 製薬会社
    • 食品会社
    • ペットフードの研究・開発
    • 民間の水族館・動物園

    民間企業では、獣医師の専門知識を生かせる製薬会社や食品会社で働く人が多いようです。

    製薬会社では、製薬の研究から治験動物の診療などが業務となります。

    獣医師の仕事内容

    獣医師を目指すなら知っておきたい3つのこと

    この章では、獣医師を目指す人が知っておきたい3つのポイントについて紹介します。

    獣医師の平均年収は?【572万円で高め】

    獣医師の平均年収は以下の通りです。

    ✅獣医師の平均年収

  • 平均年齢:38歳
  • 勤続年数:8年
  • 月額給与:491,800円
  • 年間賞与:955,500円
  • 平均年収:6,857,100円
  • ※厚生労働省「令和5年度賃金構造基本統計調査」

    日本国民全体の平均年収が458万円前後(令和4年分民間給与実態統計調査より)であることを考えると、獣医師の年収は高めです。

    ただし、獣医師の年収は人によって大きな差があります。

    大学を卒業してすぐ、獣医師として雇われる場合には年収が450万円程度で、一般的な会社員と比べても決して高くはありません。

    動物病院では勤務が不規則になる人も多く、非常なハードな仕事でもあるため、獣医師という仕事に誇りと愛着がなければ務まりません。

    また、福利厚生も勤務先によって大きく異なります。

    小規模な動物病院では、あまり福利厚生が整っていないことが多い一方で、公務員や大企業に勤める獣医師は手厚い福利厚生を受けられます。

    獣医師の男性・女性の比率は?

    獣医師の約半数は女性で、男女問わず活躍できる仕事といえるでしょう。

    獣医師は動物病院や民間企業、公務員などさまざまな働き方がありますが、そのなかでも、動物病院などで動物の診察をする臨床獣医師は多忙な生活になりがちです。

    一方、公務員であれば休日が取りやすいため、育児休業制度などを利用しながら家事や育児と両立しやすいです。

    キャリアを磨きながら、家庭との両立をはかるのであれば、自分の生活スタイルにあった働き方や勤務先を選ぶのも大切なポイントです。

    女性の獣医師のキャリアパス・結婚後の生活

    獣医師に向いている人の特徴3つ

    獣医師に向いている人の特徴として、以下の3点が挙げられます。

  • 動物に対する愛情と冷静な心を持てる人
  • 勉強熱心でコミュニケーション能力が高い人
  • 体力があること
  • 獣医師は、動物に対する愛情と冷静な心を持てる人に向いています。

    動物全般に興味をもち、深い知識と技術を勉強し続け、突き詰めていく姿勢が不可欠です。

    そのため「勉強・研究熱心なこと」や「専門的に掘り下げるのが好きな人」も向いている素質といえるでしょう。

    ただし感情移入しすぎるのもよくありません。

    動物の命が助からなかったときに落ち込んで立ち直れないようでは、仕事を続けるのも難しくなるため、現実に冷静に対処できる精神力も必要です。

    また、獣医師は頭を使うだけでなく体力も必要な仕事のため「体力があること」も大切な素質となります。

    さらに動物病院では飼い主や職場仲間とのコミュニケーションも必要になることから「コミュニケーション力」も重要な要素です。

    獣医師に向いている人・適性・必要なスキル

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    獣医師になるには|まとめ

    獣医師になるには
    • 6年制の獣医系大学で学び、獣医師資格を取得することが必須
    • 獣医師資格試験の合格率は約8割
    • 年齢制限はないが高卒では目指せない

    獣医師になるためには、まずは全国的に見ても数が少なく、難関とされる獣医系大学への入学を目指さなくてはなりません。

    楽ではない道のりですが、動物への愛情を注げる人であれば、きっとやりがいを感じられるはずです。

    強い意思を持ち、計画を立てて、コツコツと勉強を進めていきましょう。