獣医師の年収・給料はいくら? 勤務先別に詳しく解説

獣医師の仕事は専門性が高く、国家資格が必要なこともあり、平均年収や給料は一般的な会社員よりもやや高めの水準となっています。

規模の大きな動物病院に勤めていたり、独立・開業したりすると日本人の平均年収よりも大幅に高い収入を得ている人もいます。

この記事では、各種統計データも見ながら、獣医師の年収・給料の特徴や、勤務先別の給与水準について詳しく解説しています。

獣医師の平均年収・給料の統計データ

求人情報や統計データを見ると、獣医師の平均年収は400万円強となっていることが多いです。

一方、厚生労働省の調査では年収686万円となっており、獣医師の年収には幅があることが特徴です。

勤務先や地域、経験、スキルによって差が出ることが見受けられるため、人によっては低めの水準となりますが、勤務条件や経験年数によっては高水準で働くことができるでしょう。

獣医師の平均年収・月収・ボーナス

賃金構造基本統計調査

獣医師の平均年収_2023

厚生労働省の令和5年度賃金構造基本統計調査によると、獣医師の平均年収は38歳で約686万円となっています。

  • 平均年齢: 38歳
  • 勤続年数: 8年
  • 労働時間/月: 167時間/月
  • 超過労働: 27時間/月
  • 月額給与: 491,800円
  • 年間賞与: 955,500円
  • 平均年収: 6,857,100円
  • ※出典:厚生労働省「令和5年度 賃金構造基本統計調査」

    獣医師の年収の推移_r5

    ※平均年収は、きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額にて計算。
    ※本統計はサンプル数が少ないため、必ずしも実態を反映しているとは限りません。

    獣医師の手取りの平均月収・年収・ボーナスは

    厚生労働省の調査から、獣医師のボーナスは月収の2か月分と推定できます。

    獣医師の平均年収を410万円とした場合、平均月収は約29万円、ボーナスは約58万円です。

    そこから手取りを算出すると月収は約23万円、ボーナスは約46万円でしょう。

    国家資格が必要な専門性と難易度が高い仕事ではありますが、人間を診る医師に比べると、給与水準はそこまで高くはないようです。

    獣医師の初任給はどれくらい?

    動物病院で働く獣医師の初任給は、23万円〜25万円が相場になっています。

    院長クラスになると月収35万円ほどとなり、技術と経験によって給与が上がる場合が多いです。

    地方自治体で働く場合には地方公務員となるため、その地方の給与体系にしたがって給与が支給されます。

    医薬・製薬関連企業へ就職した場合は、企業規模によっても異なりますが、一般的に公務員よりよい初任給を見込めるでしょう。

    獣医師の勤務先の規模別の年収(令和5年度)

    獣医師の年収は、勤務先の事業所の規模が1000人以上の場合の年収が高くなっています。

    10〜99人の事業所に勤める獣医師の平均年収は661万円、100〜999人は564万円、1,000人以上は902万円、10人以上平均686万円となっています。

    獣医師の年収(規模別)_r5

    賃金構造基本統計調査より作成。本統計は調査の母数が少ないため、必ずしも実態を反映していない可能性があります。

    獣医師の勤務先の年齢別の年収(令和5年度)

    獣医師の年収を年齢別に見ると、800万円~1,000万円がボリュームゾーンといえそうです。最も年収が高い世代は、55~59歳の1,166万円です。

    全年代の平均年収は686万円となっています。

    獣医師の年収(年齢別)_r5

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    獣医師の福利厚生の特徴は?

    獣医師の福利厚生は、働く職場によってさまざまです。

    たとえば小さな動物病院の場合は、雇用保険と労災保険にしか入っておらず、そのほかの福利厚生制度が整えられていないこともあります。

    働く獣医師が少ないために、産休・育休制度そのものや、活用した前例がない場合もあるかもしれません。

    一方公務員の獣医師は、休日や休暇が取りやすく、産前産後の休暇、育児休暇、看護休暇など手厚い待遇で、福利厚生が充実しているのが特徴です。

    働きやすさを重視して、臨床獣医師から公務員に転職する獣医師もいます。

    獣医師の給料・年収の特徴

    ここでは、獣医師の給料・年収の特徴を紹介します。

    特徴1.勤務先によって給料・年収の幅は大きい

    獣医師に「高収入が得られる仕事」というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、獣医師の勤務先は多岐にわたるため、年収は人によって差が出やすいです。

    小さな臨床病院の駆け出しの獣医師と、独立・開業して成功している人の年収の差は非常に大きなものとなります。

    またハードな仕事内容に対して、給料や待遇はあまりよくない場合もあるため、収入を第一で考えていると毎日がつらいと感じてしまうかもしれません。

    特徴2.駆け出し時代の給料はさほど高くない

    駈け出しの獣医師が雇われて働く場合は、年収350万円〜450万円程度といわれています。

    一般的な会社員と同じくらいの水準であり、決して高くはありません。

    現場で何年も経験を積み、ようやく一人前の獣医師として認められるようになると、収入が少しずつ上がっていきます。

    特徴3.年収が高くてもハードな仕事

    経験を積むほど獣医師の給料や年収は上がりますが、その分仕事もハードです。

    たとえば動物病院に勤める場合、週休1~1.5日で、1日平均12時間くらい働くことがあります。

    手術などがあれば勤務時間は15時間にもおよぶこともあり、時給計算すると、決して割がいいといえない部分もあるのです。

    まずはこの仕事が好きで、忙しい中でも、やりがいや情熱を持ち続けられるかどうかが、獣医師を長く続けていくポイントになるでしょう。

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    獣医師の勤務先別の給料・年収

    獣医師には、いくつかの勤務先の種類があります。

    ここでは、代表的な勤務先別の給料・年収の特徴を紹介します。

    動物病院で働く獣医師

    動物病院で臨床獣医師として働く人の給料・年収は、約300万円〜350万円程度です。

    給料を算出すると約21万円〜25万円程度となるので、ほかの職業と比べても決して高い水準とはいえません。

    動物病院の勤務医は、獣医師として現場で実績を積みたい若い獣医師が多いため、平均年収が低くなる傾向にあるようです。

    公務員として働く獣医師

    公務員として国家公務員、都道府県職員、市町村職員として働く獣医師は、所属する地方自治体によって給料・年収が異なります。

    場合によっては規模の大きな動物園に比べて収入が低い場合もありますが、たとえば動物園などの獣医師の年収は約400万円〜450万円です。

    公務員は定時で帰りやすく休暇制度など福利厚生も整っているため、働きやすい勤務先でしょう。

    また正確には公務員ではありませんが、農林水産大臣の監督下にある特殊法人JRAで働く場合、年収は約650万円〜1,200万円とされており、高収入が得られます。

    JRA(日本中央競馬会)の獣医師

    JRA(日本中央競馬会)でも、「獣医職」という肩書きで、獣医師は活躍しています。

    JRAの獣医職には「臨床獣医職」と「研究職」があり、3か月の見習い期間が設定されています。

    「平常業務」では、臨床獣医職は競走馬の病気・外傷を治療する診療業務や予防注射などの防疫業務を、研究職は競走馬全般に関する調査・研究を行います。

    土曜日・日曜日の競馬開催日には「開催業務」として、出走馬の馬体検査や事故馬の救護・診療等を行います。

    2023年4月実績を見ると、初年度採用の給与は以下のようになっています。

    JRA獣医師初年度採用の給与
    • 初任給260,600円~
    • 賞与:年2回(6月・12月)
    • 諸手当:家族・住居手当、通勤交通費など

    その後キャリアを積んだ場合のJRA獣医師の平均年収は約650~1,200万円となっており、他の獣医師と比較すると非常に高額です。

    JRAは、農林水産大臣のもと日本政府が資本金の全額を出資しているため、経営も安定しており、近年の競馬ブームも相まって就職を希望する獣医学部生も多くなっています。

    一方で就職難易度も非常に高く、毎年5~6名ほどの採用であるため、狭き門となっています。

    そのほか、JRA以外にもNAR(地方競馬全国協会)でも獣医の採用があり、ほぼ同様の条件で働くことができます。

    参照:日本中央競馬会(5010405002453)の役職員の報酬・給与等について

    民間企業で働く獣医師

    製薬会社、食品会社、飼料関連会社などの民間企業で働く獣医師の給料・年収は、働く企業によっても異なりますが、年収は約600万円〜800万円です。

    勤務先の規模によっても給料は変わってきますが、民間企業では獣医師が重宝されるため、実績が認められれば高収入を得ることができるでしょう。

    動物園や水族館で働く獣医師

    動物園や水族館で働く「動物園獣医師」の平均年収は、求人情報等から見ると約400~450万円ほどと考えられます。

    平均月収は約30万円前後となり、一般的な勤務医と比較すると、やや高い傾向にあります。

    また、各都道府県や自治体で運営している動物園や水族館の場合は、公務員の専門職として採用されることが多いです。

    給与や福利厚生もしっかりしており、専門職採用であることから異動も少ないため、安定して働きやすい環境が整えられています。

    獣医師の正社員以外の給料・年収

    獣医師は、正社員として雇用される人のほか、派遣やアルバイトとして雇われる人もいます。

    さらに、フリーランスの形態で活躍する人や、自ら動物病院を開業する人もいます。

    ここでは、それぞれの働き方別の給料・年収の特徴を紹介します。

    派遣社員

    派遣社員として働く獣医師の給料は、時給1,600円〜2,400円ほどが一般的です。

    仕事内容は派遣先によってさまざまで、派遣先は動物病院から研究施設で実験動物の管理や飼育、研究補助などを担当するため、給与設定も職場によって幅広くなっています。

    アルバイト

    アルバイト・パートの獣医師の給料は、地域や職場によっても異なりますが、時給1,600円〜2,200円ほどです。

    動物病院で募集されていることが多く、犬猫を中心とした小動物の診療や治療、手術、入院管理などを行います。

    フリーランス

    フリーランスとして活躍する獣医師は、動物病院で診療する臨床獣医師が多いです。

    知識や技術を十分に身につけてから、特定の病院に所属せず、複数の動物病院と提携して診療業務を行っています。

    複数の病院で診療する場合は契約内容によっても異なりますが、日給10,000円〜18,000円が相場です。

    どれだけ休みの日を作るかは自分次第なとなるため、人によって年収が変わってきます。

    独立・開業

    独立して自分の動物病院を開業した場合、動物病院は診療の値段を自由に決められる「自由診療」です。

    自分で動物病院を開業し、その病院が大人気になれば、年収数千万円という大きなお金を得ることもできます。

    副業・在宅

    副業・在宅の獣医師の仕事内容は人によってさまざまです。

    よくみられるのは、動物病院やペット関連のWebサイトに掲載する記事の執筆をしたり、専門家としてペットの飼い主からの電話相談やメール相談に回答したりする仕事です。

    シフト制で在宅勤務する場合は、時給1,000円〜1,200円ほどと、ほかの仕事と大きな差がありません。

    獣医師の働き方の種類・雇用形態

    獣医師の年収が低いといわれる理由は?

    獣医師は、専門性の高い職業である割に、年収は低めといわれることがあります。

    なぜそのようなことが言われるのか、理由を探っていきます。

    理由1.長時間労働や時間外労働が多い

    獣医師は専門性が高く、医療系の仕事であることから給与が高いイメージがありますが、実際に働いている人は「給料は高いとはいえない」と感じる人も多くいます。

    その理由の一つは、獣医は長時間労働や時間外労働が多い事です。

    特に動物病院で働く場合、動物の容態によって緊急手術をしたり、イレギュラーな対応をしなくてはならなかったりと、勤務時間が長くなりがちです。

    また、動物とはいえ命に関わる仕事であるため、、気力、体力ともにハードであると感じている人も多く、労働量と収入が見合わないと感じる人も少なくありません。

    理由2.ペットの飼育頭数の減少

    動物病院の数が多いことも、年収の低さに影響しています。

    農林水産省が発表した「都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況」によると、令和3年度では全国で16,478件開設しています。

    平成29年の調査では11,839件であったことから、動物病院は年々増加していることが分かります。

    それに対し、飼育されている犬などのペットの数は減っており、今後も人口減少とともにペットの飼育頭数は減少傾向が続くと考えられます。

    とくに犬は減少傾向にあり、動物病院業界が飽和状態となっているため、年収が上がりにくい傾向にあります。

    参照:農林水産省 飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)

    理由3.自由診療の弊害

    動物病院は「自由診療」であり、基本的に動物病院での診察料は全額飼い主の自己負担です。

    そのため、治療費が高額になりやすく、病院に連れていくことをためらう飼い主も少なくありません。

    動物は痛みや病気を自ら訴えることは難しいため、人間と同じように、気軽に動物病院に行くということはないのです。

    一方で、動物病院では、人間の病院と同様にさまざまな設備や人手が必要です。

    なかなか利益を上げることが難しい現状の中で必要な設備や維持費などをまかなうため、どうしても人件費が抑制され、年収は低めになる傾向があります。

    他の職業と比較した際の獣医師の年収

    ここからは、獣医師に関連する他の職業と、獣医師の年収を比較します。

    他の医療系職種と比較した場合

    獣医の年収が低いといわれる理由に、同じ6年制大学を卒業した医師と比べると、圧倒的に平均年収が低いことが挙げられます。

    厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、医師の平均年収は、44.1歳で1,429万円なのに対し、獣医の平均年収は約687万円です。

    医師免許も獣医免許も同じ国家資格でありながら、獣医の年収は医師の半分ほどしかありません。

    また、同じく医療系職種である歯科医師の平均年収は、38.1歳で810万円であり、獣医の年収は歯科医師に比べても低いことがわかります。

    一方で、薬剤師の平均年収は41.1歳で583万円ほどでほぼ同等、看護師の平均年収は40.7歳で約508万円となっていることから、看護師に比べると平均年収は高めとなっています。

    他の動物に関わる職種と比較した場合

    獣医師と共に働くことが多い「動物看護師」の平均年収は、35.7歳で312万です。

    そのため、動物看護師と比べると、獣医のほうが年収が大幅に高いことがわかります

    また、「動物飼育員(動物園、水族館)」については、全体の給与データはありませんが、平均年収は240万円~320万円ほどと推測され、こちらも獣医のほうが圧倒的に高いと考えられます。

    獣医師が収入を上げるためには?

    獣医師として、さらに年収を上げる方法はいくつか考えられます。

    ここでは、主な収入アップの方法を説明します。

    獣医は年収1000万円を目指せる?

    病院や公務員として働く獣医がただ働いているだけでは年収1000万円を超えることは難しいでしょう。

    獣医が年収1000万円に到達するには「独立開業する」、「大手製薬会社への就職し研究職となる」といった方法を取る必要があります。

    そのほかには、JRAなど非常に待遇のよい就職先で働く必要があります。

    独立・開業する

    獣医師が年収を上げるための方法として一般的なのは、独立して自分の動物病院を開業する方法です。

    成功した場合には年収1,000万円以上も夢ではありません。

    なかには年商数何千万円を得る人もいますが、開業してもお客さん患者が少ないと赤字経営となり、廃業に追い込まれる可能性もあるため、しっかりと準備をしてから独立することをおすすめします。

    製薬会社など民間の大企業へ就職する

    就職先を変えて年収アップを狙う方法もあります。

    規模の大きな動物病院では、経験を積み昇進すれば年収1,000万円以上を得られるケースもあります。

    開業資金などの出費を抑えてローリスクで高収入を得たい人は、こうした動物病院に就職や転職する方法も考えられるでしょう。

    また,
    民間企業へ専門職や研究職として就職する方法もあります。

    一般的には動物病院に勤務するよりも民間企業で働いた方が給与は高い傾向にあり、大企業であればあるほどボーナスや福利厚生も整えられており、安定して働くことができます。

    公務員での就職を狙う

    安定した年収を目指すのであれば、公務員としての就職を狙う方法があります。

    各自治体の動物園や水族館といった場所で求人が出ることがありますし、家畜の検査や管理を行う獣医師が、公務員の定期採用で専門職として募集されることもあります。

    ただし採用人数はかなり少ないため、粘り強く転職活動をすることが必要になるでしょう。

    「獣医師の年収・給料」まとめ

    獣医師は、一般的な職業から比べると高めの給料を見込むことができますが、働く場所や経験、働き方によっては年収に差があります。

    とくに若いうちは、激務な割に、なかなか年収が上がらず、苦労することもあるかもしれません。

    ただし、規模の大きな動物病院に勤めたり、独立・開業したりすることで、より多くの収入を得られるチャンスも掴めます。