助産師になるには? 必要な資格は?
ただし、助産師の国家試験は、まず「看護師資格」を取得していないと受けることができません。
ここでは、助産師になるための道のりや、資格の内容について詳しくまとめています。
助産師になるまでの道のり
看護師学校卒業後に助産師養成校に入る
助産師になるための一般的なルートは、まず看護師になるための勉強をして、看護師資格を得ることです。
看護専門学校または看護系の短大を卒業後、看護師国家試験に合格して看護師の資格を取得後、さらに指定助産師養成校で1年以上の課程を修了すると「助産師国家試験」の受験資格が与えられます。
その後、助産師国家試験を受験し、合格することで助産師として勤務できるようになります。
助産師養成コースもある4年生の看護系学校に入る
一部の4年制の看護大学または専門学校には、看護師養成課程の中に、助産師養成のためのカリキュラムやコースを備えているところがあります。
そのような課程を修了することで、看護師と助産師、両方の国家試験の受験資格を同時に得ることが可能です。
しかし、看護師と助産師を同時に目指す道のりは勉強もハードですし、そもそも学内で優秀な成績を収めないと、このルートに進めないことが多くなっています。
また、助産師国家試験に合格していても、看護師国家試験が不合格であったら助産師の免許は取得できません。
20代で正社員への就職・転職
助産師国家試験は難しい?
助産師国家試験の新卒合格率は例年90%以上と高いため、まじめに授業を受け、しっかりと試験対策をすれば高い確率で合格できます。
しかしながら、助産師を志す人にとって本当に難しいのは、助産師国家試験に受かることよりも、むしろ助産師養成学校やコースに入ることでしょう。
その理由としては、助産師養成学校やコースは看護学部や看護専門学校と比べて数が少なく、定員も少数だからです。
それゆえ、毎年かなりの競争率となる狭き門です。
また、自身の通学圏内に助産師養成学校がない場合も少なくありません。
環境や経済的理由などで進学が難しいケースなどもあり得るため、早めにどのような学校があるかを調べておくとよいでしょう。
助産師になるための学校の種類
助産師になる2つのルートをあらためてまとめます。
- 3年制の短大もしくは専門学校の看護師養成課程を卒業して看護師資格を取り、その後、1年制の助産師養成所へ入学して助産師資格を目指す
- 4年制大学の看護学部や看護学科で看護師と助産師資格の同時取得を目指す
順当に進級し、2つの国家試験をストレートでパスできれば、最短4年で助産師資格を取得することができます。
ただし、看護師・助産師の両方の国家試験受験資格が得られるコースには定員が設けられ、学内選抜試験が実施されます。
もし希望のコースに入れなかった場合には、看護師免許を取ったのち、あらためて助産師養成校に通う必要があります。
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助産師の求人・就職募集状況
助産師の就職先にはどんなところがある?
助産師の就職先として、以下のような施設が挙げられます。
- 大学病院や総合病院の産婦人科
- 街の産科クリニック
- 助産院
お産の形にこだわりを持つ妊産婦の多様なニーズに応えるために、さまざまな独自性やカラーを打ち出す産科クリニックも増えています。
よりきめ細やかな出産・分娩ケアに、助産師は欠かすことができません。
少子高齢化が進む時代ではありますが、定年や離職により現役の助産師が現場を退くという状況もあり、まだまだ助産師の数は不足しています。
今後も変わらず、助産師のニーズは一定してあるものと考えられます。
助産師の求人の状況
昨今の少子高齢化、晩婚化などの社会背景により、1人の女性が生涯に産む子どもの数は減っている一方、少ない子どもに愛情を集約して育てたいという考える母親もたくさんいます。
助産師は、妊娠から分娩、そして出産後まで、継続的な母子のケアに携わります。
核家族化やワンオペレーションなどの社会問題もあるなか、助産師は、慣れない育児に不安を感じ、子育てと向き合っていく母親にとって頼れる存在となり、孤立から守る役割が期待されています。
今後、地域の母子保健支援活動においても、助産師の活躍の場は広がっていくと考えられます。
また同時に、助産師は若い世代が「妊娠・出産・育児」に希望が持てる性教育や知識の普及、社会づくりにも貢献できます。
そして、産師の就職先を占める病院・診療所においても、「助産師外来」が広がってきています。
医療設備と、産科医のバックアップ体制が整った環境で、助産師が安心感と自信を持ってさらに活躍できる場が増えていくことでしょう。
助産師の志望動機・面接
助産師は、中学生や高校生など早い段階で目指す人もいれば、いったん社会人になってから助産師の仕事の素晴らしさを知り、転職によって目指す人もいます。
いずれの人でも、「医療職のなかでもなぜ助産師になりたいのか」や、「とくに看護師ではなく助産師を選ぶ理由」については、きちんと答えられるように考えておくことが大事です。
助産師に向いている人
他者に対して思いやりや共感力がある人
産科で勤務する助産師は、他の診療科に比べて繊細なケアが求められる場面が多いです。
産前・産後の女性は情緒不安定になりやすいため、ささいな訴えや不安にも耳を傾け、妊産婦に寄り添う姿勢が大切です。
女性の人生において最も大切な瞬間である出産に立ち会う助産師には、思いやりと、人に寄り添う心が欠かせません。
タフである人
分娩のときは、当の妊婦さんはもちろん、助産師や産科医師も体力や神経を消耗します。
お産が立て込み、同時に複数の現場を掛け持ちしなければならない過酷なタイミングにおいても、弱音を吐かず妊産婦が頼れる存在でいられるタフさやパワフルさが必要です。
また、お産は24時間365日いつ始まるかわからないものです。
状況や進み具合などもさまざまで、助産師は状況に合わせて柔軟に対応することが求められます。
夜勤や休日出勤、病院やクリニックによっては緊急の呼出しもあるなど勤務スタイルは不規則になりますし、お産が長引けば勤務時間が延びることもあり得ます。
そんなハードな毎日のなか、業務をこなしていくだけの気力・体力も求められます。
精神的に安定した人
助産師は命の誕生に立ち会い、母子を支えることにやりがいを感じられますが、すべての妊娠出産が幸せな結末に終わるとは限りません。
流産や死産などの悲しい場面に立ち会うことも少なくなく、そのようなとき、悲しみや失意の中にある母親や家族に寄り添い、支えるのも助産師の大切な役割です。
どんなときも患者さんに寄り添い、支えることに全力を尽くす、そんな強さをもつ人がこの仕事に適任であるといえます。
助産師の働き方
助産師は、大学病院や総合病院、あるいは街の産科クリニック、助産院などで働いています。
雇用形態はさまざまで、正職員など正規雇用されることもあれば、パートや派遣などの非正規雇用で働く人もいます。
また、助産師のなかには独立・開業し、自分で助産院を立ち上げて経営者となる人もいます。
これらの働き方にはそれぞれ異なる特徴があり、一概に「これがベスト」といえるものではありません。
自身の希望やライフステージに合わせて働き方をスムーズに選択できるよう、ここからは助産師の雇用形態について紹介していきます。
正職員の助産師
正社員の助産師は、大きな病院でも大勢活躍しています。
お産は365日24時間体制で対応する必要があるため、基本的にローテーションでシフトを組まれることが多いです。
週末や祝日など、固定で休日が決まることはほぼないと考えてよいでしょう。
病院のさまざまな診療科のなかでも、とくに産科はお産のタイミングが読めず、残業や休日出勤などは業務上、切り離すことができません。
毎日忙しく責任も重大ですが、社会保険や福利厚生、勉強会などの教育研修制度などがしっかり構築されており、待遇面では最も充実している働き方といえるでしょう。
昇給やキャリアアップのチャンスもあり、安定した雇用環境のなかでやりがいを感じながら自身のキャリアパスをイメージして長期的に働けるのがメリットです。
パートの助産師
大きな病院の助産師はシフトに夜勤が入ることが多いですが、自身が育児中など、夜勤をするのは難しい場合もあるでしょう。
そういった人が選択することが多いのが、パートとして働く方法です。
パートの助産師の求人は、フルタイムで働く正社員助産師のサポート役を目的に出されることがあります。
出勤時間や曜日の相談や、残業・夜勤不可という希望が出せることが多いです。
助産師の経験がありながらもフルタイムでの勤務が難しい場合には、パートは働きやすいと感じられるでしょう。
就業条件によっては社会保険や厚生年金、雇用保険に加入することも可能ですし、条件を満たせば正職員同様に有給休暇も与えられます。
なお、パートとして働くのはなにも昼間だけとは限りません。
夜勤のみに対応するパートの助産師もおり、その場合は夜勤手当がつくため、短時間でも高収入を得やすいです。
派遣の助産師
助産師のもうひとつの働き方として「派遣」があります。
派遣の助産師は、必要とされる場所で、自身の助産師としての経験や技術を生かして働くことができます。
とくに人員が不足している産科分野においては、新しい雇用の形として近年注目されています。
派遣助産師として働くことのメリットは、自分の都合に合う時間や期間だけ働くことができることでしょう。
勤務先は大学・総合病院や産科クリニック、助産院、ときに保健センターなどさまざまですが、雇用にあたっては派遣会社と契約を結びます。
もし派遣先で問題や、勤務条件の食い違いがあった場合は、派遣会社に報告すれば、派遣会社が派遣先の担当者と話し合い、改善策を見つけてくれます。
また、解決しない場合は、別の派遣先を紹介してくれたりといったサポートが受けられます。
派遣なら、深く複雑な人間関係の中に身を置かず、自身の仕事にだけ専念できる環境に身を置けるため、気が楽と話す人もいます。
一方で、社会保険、有給休暇、退職金などの福利厚生は、派遣助産師には適応されないのが一般的です。
待遇面の手厚さでいうと、やはり正規雇用には及ばないことがほとんどです。
助産師のキャリアプラン・キャリアパス
転職する人も多い
医療従事者全体にいえる傾向ではありますが、助産師がひとつの病院で長く働くというケースは珍しいです。
多くの場合、他の病院やクリニック、助産院などに転職しながらキャリアを積んでいくことが多いでしょう。
キャリアに応じた役職が設けられていることもよくあります。
最終的には、助産師を束ねる「助産師長」を目指すことも可能です。
病院勤務以外のキャリアパス
病院やクリニックで勤務を続ける場合以外にも、助産師には多彩なキャリアパスがあります。
助産師として海外で働くケースもありますし、助産院を開業することもできます。
また、産科業界でマタニティ用品などを企画・開発する企業などに就職して、商品開発をするといった働き方もあります。
そのほか、資格を取って「保健師」に転身したり、マタニティヨガやアロマなどの指導者になるなど、助産師の免許や経験を生かしつつ、医療業界とは異なる職種に就くことも可能です。
助産師の独立・開業
助産師のキャリアアップのひとつとして、「独立・開業」が挙げられます。
医師や歯科医師同様、助産師には開業権が与えられているため、一人で助産院を開業することができます。
出産に臨む妊婦やその家族のニーズの変化や、産科医が不足していることなどから、昨今では開業して助産院を運営する助産師も増えているようです。
開業をするメリットは、自分がよいと考えるお産や、妊婦やその家族の希望により沿ったお産が実現できるという点が大きいです。
大学・総合病院の産科や産科クリニックなどの組織で働いているときは、チーム医療や病院側の方針に則ってお産や検診などを進めなければなりません。
それらをシステマチックな業務だと感じる助産師も少なくないのです。
助産院を開業したいと思う助産師は、もっと一人ひとりの妊産婦としっかりコミュニケーションを取り、寄り添いながら温かいお産のサポートをしてあげたいと考える人が多いようです。
とくに最近は自宅出産や家族での立会出産など、できるだけ自然な形でお産に臨みたいと考えている妊婦や家族が増えているため、こうしたニーズに応えられることは助産院ならではといえます。
ただし、助産院を開業し、運営していくうえで、命の誕生を扱う以上、やはり多くのリスクを伴うことは事実です。
また、お産はいつはじまるかわからないため、深夜や休みの日でも出産が始まればすぐに対応しなければなりません。
経営について人材の確保や育成、また集客など、さまざまな課題に直面することは多々あります。
これらのリスクを覚悟したうえで開業に臨む必要があるでしょう。
助産師を目指せる年齢は?
助産師を目指す人の多くが、まず看護師として免許を取ったのち、助産師養成学校に通って助産師免許を取っています。
いったん看護師として現場に出た人や、看護師として何年も働いていくうちに助産師への転職を考えた人、また医療とは別の仕事をしていたけれど助産師への道を選びなおした人など、助産師になる人の背景や年齢はさまざまです。
助産師の学校に通ったり、国家試験を受けたりすることに年齢制限はありません。
もちろん、歳を重ねてから学びなおす苦労はありますし、努力も必要ですが、何歳になっても本気で目指す気持ちがあれば、助産師になれるチャンスはあります。
参考:助産師に関するデータ
助産師数の推移
助産師の数は年々増加しつつあります。令和2年の助産師数は37,940人となりました。
年齢別の助産師数
助産師の数を年齢別に見ると、25歳〜29歳が5,797人と最も多くなっています。若い世代に助産師の人気が高まっていると考えられます。
助産師の雇用形態
助産師の雇用形態は、正規職員80.9%、非常勤職員18.9%、派遣0.2%となっています。