IRの需要・現状と将来性
IRの現状
IRは、投資家や株主への対応を専門とする職種であり、企業の価値を向上させたり、事業運営を安定化させるために不可欠な、きわめて重要な役割をになっています。
しかし、日本における歴史は浅く、アメリカで発祥したIRが国内に伝わって、「日本IR協議会」が発足したのは1993年のことです。
つまり、日本でIRが誕生してから、まだ30年ほどしか経っていないということになります。
IRという職種名やその役割が、世間一般に十分に浸透しているとはいまだいえず、社長や役員などの経営陣のなかにさえ、きちんと理解していない人も見受けられます。
組織的にみれば、IR部門は、本来であれば専門の部署を設けるか、あるいは経営企画部などに置かれるべきです。
しかし実際には、株主総会の準備などを役割とする総務部に置かれたり、広く一般的な広告活動を手掛ける広報部に置かれたりするケースが目立ちます。
いまだ「発展途上の職種」にとどまっているのが、IRの置かれた現状といえるでしょう。
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IRの需要
IRの需要は、現状、決して豊富にあるとはいえません。
IR部門が置かれるのは、投資家への対応が必要な上場企業に限られ、日本において圧倒的大多数を占める中小企業のほとんどには、IR担当者はいません。
また、IRは、たとえば営業職のように大人数が必要になるタイプの職種ではなく、各社に数人いれば足ります。
IR業務を手掛けるには、社内事情のすみずみにまで精通していなければならないため、生え抜きの社員がIRになるケースが大半であり、中途募集もあまりありません。
IR担当者のマーケットはかなり小さく、また流動性も低いといえるでしょう。
ただし、財務知識や会計知識、経営戦略立案スキル、語学力など、数多くの能力を高いレベルで兼ね備えた、本当の意味での「IRの専門家」は、どの企業も欲しがる超有能な人材です。
実績あるIR担当者については、ヘッドハンティングされて好待遇で引き抜かれるなど、企業間の移籍が活発になっているケースも見られます。
IRの将来性
日本は、現状IRについては後進国といわざるを得ない状況です。
しかし、企業が正しい情報を広く開示していくこと、いいかえれば「説明責任を果たしていくこと」は、当然の社会的責務です。
現代のビジネスシーン・金融シーンは急速に国際化が進展していますので、IR業務についても、すぐにグローバルスタンダードになっていくでしょう。
現に、すでに国内でも、アクティビスト、いわゆる「ものいう投資家」がメディアに登場するケースが増えており、IR担当者の対応は非常に重要になりつつあります。
こうした業界環境に対して、IRのプロが非常に少ないことから、IR業務を手掛けられる人の将来性は明るいといえるでしょう。
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IRの今後の活躍の場
IRの今後の活躍の場は、その業務が正しく認知されるにつれて、海外と同じように、より経営層に近づいていくものと思われます。
それに伴って、現状のように、広報や総務と兼務して活躍するIR担当者は、自然といなくなっていくでしょう。
株主や投資家と対話し、信頼関係を構築していくことは、企業統治(コーポレートガバナンス)においてきわめて重要なミッションであり、経営の根幹をなす戦略です。
IRは、海外と同じように、「経営陣に昇進できる出世コース」のキャリアとして、認知されるようになるでしょう。
すでに、「将来の社長候補者こそ、IR部署に異動してIR業務を経験すべき」と提唱する専門家もいるほどです。
IRは、脚光を浴びるポジションになっていくことが期待されます。