行政書士のダブルライセンス・兼業で多いのは?
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行政書士のダブルライセンス・兼業事情
行政書士を取り巻く事業環境は、決して安泰とはいえません。
近年は行政負担を軽減するとともに市民サービスの向上を図るため、事務手続の簡素化が進められており、かつてなら行政書士に依頼することが当たり前だった業務も、自力で手続きする人が増えています。
一方で、行政書士人気は依然として高く、行政書士の登録者数は一貫して増え続けており、行政書士間の競争はますます激しくなっています。
このため、近年は行政書士一本で十分な収入を得ることが難しくなりつつあり、ほかの行政書士と差別化を図るために他士業とのダブルライセンスで事務所を経営する人や、兼業する人が増えています。
行政書士資格に定年制度がない関係上、早期に競争が緩和される可能性は低いと思われま、ダブルライセンスや兼業の必要性はますます高まっていくでしょう。
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行政書士のダブルライセンスの有効性
行政書士は、手掛けられる業務範囲の幅広さが大きな特徴であり、また魅力でもありますが、それは同時に、仕事でほかの有資格者と関わる機会が多いということでもあります。
もちろん、ほかの有資格者と協同で案件を進めることもできますが、もし自分で資格を保有していたら、より効率的に仕事ができるうえ、分配するはずだった報酬も一人で得ることが可能です。
また、ほかの資格を取得していれば、自身の専門知識を証明することにつながるため、依頼者からの信頼も得やすくなります。
行政書士として働きながらほかの資格試験を勉強するのは大変ですし、また取得後も、継続的に知識を更新していかなくてはなりませんが、その苦労に見合うだけの大きなメリットが得られるでしょう。
とくに独立開業を考えている場合は、行政書士資格だけでは十分に生活していけない可能性も少なくありませんから、複数資格取得の必要性はより高まります。
開業している行政書士のうち、約40%はダブルライセンスで活躍しているというデータもあるようです。
行政書士とダブルライセンス・兼業で多いのは?
行政書士との兼業で多いものとしては、司法書士、税理士、社労士(社会保険労務士)が挙げられます。
行政書士事務所のなかには、「〇〇司法書士・行政書士事務所」「〇〇税理士・行政書士事務所」など、ふたつの肩書を掲げている事務所も多く見受けられます。
これらの士業資格者は、個人だけでなく法人企業を相手にすることが多いという特徴があり、特定の企業と顧問契約を締結しているケースも珍しくありません。
このため、顧客との付き合いが深くなりやすく、本来の業務のついでに「〇〇許可を取ってほしい」「〇〇の変更手続きをやっておいてほしい」と要望されることはよくあります。
顧客の側からすると、複数の業務を一回の依頼で片づけることができるため、ダブルライセンスの資格保有者と付き合いがあると非常に便利であるといえるでしょう。
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行政書士のダブルライセンスで多い資格とそのメリット
司法書士
行政書士とのダブルライセンスで最も一般的な資格が司法書士です。
司法書士は、行政書士と同じく書類作成や申請手続きを代行することが仕事ですが、行政書士が官公署での手続きを手掛けるのに対し、司法書士は法務局や裁判所での手続きを手掛けるという違いがあります。
双方の資格を取得することで、提出先に関係なくさまざまな書類を作成することが可能になり、「法的書類のプロ」になることができるでしょう。
また、行政書士試験と司法書士試験では、「憲法」「民法」「商法」の3科目が重複しているため、勉強内容をお互いの試験に生かせるというメリットもあります。
社労士(社会保険労務士)
社労士は、厚生年金や健康保険といった社会保険手続きや、会社の就業規則を作成するなど、企業の労務・人事に関する業務を請け負う職業です。
会社経営に関連性の高い資格といえますので、行政書士としておもに法人を顧客にしたい場合は、取得すると非常に有効です。
行政書士は、設立手続きをはじめ、会社立ち上げ「初期」に活躍しやすい資格ですので、会社設立後の「運営」に深く携わることの社労士資格があれば、継続的に顧客と付き合っていくことができます。
税理士
税理士は、法人や個人と顧問契約を締結し、クライアントに代わって年末調整や確定申告といった手続きを行ったり、企業の法人税計算や記帳作業を代行したりする、税金のスペシャリストです。
税理士資格があれば、行政書士会に登録するだけで行政書士としても働けるため、税理士は行政書士の上位互換資格とみなすことができます。
税理士試験は非常に難易度が高く、数年にわたる長い勉強期間が必要になるケースが一般的ですが、税理士資格を取得できれば、行政書士として明確に差別化を図りやすくなるでしょう。
顧問契約を結んで、毎月定額の顧問報酬を得ることも可能ですので、経済的に安定しやすい点も大きなメリットといえます。
宅建士(宅地建物取引士)
宅建士は、土地や戸建住宅、マンション、ビル、店舗といった不動産の売買や仲介、およびそれらについての契約締結、説明などを行う仕事です。
飲食店の営業許認可や、農地転用の許認可など、行政書士の仕事には不動産が絡むケースもよくあるため、宅建士の知識が業務に役立つことも多いでしょう。
また、店舗を探している顧客などに不動産を紹介することで、宅建士として仲介報酬を得ることも可能です。
FP(ファイナンシャルプランナー)
FPは、住宅ローンや日々の収支、生命保険など、個人のお金にまつわる相談を受け付ける際に役立つ資格です。
行政書士として相続に関する手続きを請け負い「遺産分割協議書」や「遺言書」などを作成する際、FPの知識があれば、資金面や財産に関する相談に乗ることができるため、スムーズに業務を進められます。
難易度の異なる3つの段階の資格に分かれているため、自身の力量に合わせて勉強を進められる点も大きなメリットです。
中小企業診断士
中小企業診断士は、経営コンサルタントとして唯一の国家資格であり、経営面や事業戦略に関するアドバイスを行う仕事です。
会社設立や店舗開業許可といった手続きの代行を法人顧客から依頼された場合、中小企業診断士資格があれば、事務手続きと同時にコンサルティング業務も行うことができます。
行政書士試験とは「会社法」の科目が共通していますので、行政書士資格があれば勉強の負担を軽減できるでしょう。
ダブルライセンス・兼業のメリット
ダブルライセンス・兼業のメリットは、収入が安定しやすいということです。
それぞれの士業資格には、資格保有者にしか行えない「独占業務」があるため、資格が複数あればそれだけ請け負える案件の種類も増えます。
依頼された案件の内容によっては、同一の顧客から2件分の報酬を得ることもできるでしょう。
また、法律系士業資格は、ある程度試験で出題される分野が被っていることもよくありますので、試験勉強を進めるうえでも、これまでの知識を生かしやすいという利点があります。
ダブルライセンス・兼業のデメリット
反対に、ダブルライセンスのデメリットとしては、事務所の専門性・方向性がはっきりしなくなるという点が挙げられます。
士業資格者が請け負う案件は、いずれも依頼者にとって重要なものばかりであり、ときに人生を左右することもあるため、「どうせなら専門家に任せたい」と思うことは自然な心理といえます。
顧客によっては、たとえ依頼内容が別々の士業資格にまたがっていても、それぞれの資格者に別々に依頼するケースもあります。
そうした顧客に対しては、ダブルライセンスで経営していることはむしろマイナスに働く可能性もあるでしょう。
ダブルライセンスで業務を行うなら、顧客に余計な不安を抱かせないよう、行政書士と同様、ほかの士業についてもプロフェッショナルであることをわかりやすく説明する必要があるでしょう。
さらに、士業資格を登録していると、それぞれの資格を管轄している団体に年会費などを支払わなければなりません。
会費負担などが二重にかかる点は、ダブルライセンス特有のデメリットといえます。