美術学部で学ぶこと、学科、志望理由、就職先(読了時間:14分10秒)

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美術学部とは

美術学部は、美術やデザインに関する表現や技法について学ぶ学部です。

もともと絵を描くことが好きで本格的に絵の勉強をしたいと考えている人や、将来的にデザインに関わる仕事など美術的な素養が求められる職業を目指している人が、美術学部を志望するケースが多いようです。

美術学部では、デッサンや写生といった実技を中心としたカリキュラムになっています。

デッサンや模写制作をはじめ、自由制作が課されることもあります。

実技における指導と制作物の評価を繰り返すことで技能を高めてきた集大成が卒業制作となります。

美術学部に在籍する学生は少人数であることが多いため、互いに協力するところは協力しつつ、表現者としてお互いを尊重しライバルとして一線を引くような独特な雰囲気があります。

美術学部を卒業後は、表現者として画家や作家になる人が多いイメージを持たれやすい傾向がありますが、実際には美術1本でやっていく人は決して多くありません。

デザイン事務所やWeb制作会社のように、美術を学んできた素養を活かせる仕事に就く人もいれば、美術とは直接関わりのない一般企業の事務職のような仕事に就く人もいます。

就職率は決して低いわけではない大学が多く、幅広い進路の選択肢があるようです。

美術学部の理念

美術学部は、芸術のなかでも美術に関する教育・研究を専門的に行う学部です。

古くから受け継がれてきた美術の歴史を知り、創作に必要とされる技法やものの見方、作品を読み解く力、豊かな感性・表現力などを身につけ、社会に影響を与えることができる芸術家やデザイナー、教育研究者の輩出を目指します。

才能ある「作り手」だけではなく、次世代の芸術家を育成するために優れた人格を持った教育者を育てることも美術学部の目指すところです。

美術学部で学ぶこと、勉強すること、授業内容、卒論

美術学部で学ぶこと

美術学部は、入学後に専門とする美術の分野によって、いくつもの学科や専攻に分かれており、それぞれの場で専門性の高い教育が行われます。

いずれの学科・専攻でも共通して置かれているのは、美術家としての基礎になる美学・美術史、色彩学、デザイン史といった基礎専門科目です。

これらの基礎教育科目を知識として学んだうえで、日本画、油画、彫刻、工芸といった各学科・専攻ごとにデッサンや模写、自由制作などの実技を通じて、美術表現の技能を高めていきます。

美術学部の授業内容

座学のみならず、実技科目に多くの時間が割かれていることが、美術学部のカリキュラムの特徴だといえるでしょう。1対1の個人指導に力を入れている大学も多く見られます。

また、4年間の集大成としては各自が卒業研究および卒業制作の形で発表を行います。

そのため、専攻によっては1日のうち大半の時間をアトリエで作品と向かい合っていることもめずらしくありません。

創作のための技能や感性を磨き、卒業制作に向けて自己研鑽していくことが、美術学部での授業の大きな目的の1つと言えるでしょう。

美術学部の卒論の例

美術学部においては、卒業論文にあたる卒業制作を課している大学が多く見られます。

大学によっては卒業論文として提出することが認められる場合もあるので、ここでは卒論テーマの一例を挙げます。

  • 絵本の世界とその背景
  • トーベ・ヤンソンと北欧モダンの結びつき
  • 日本刀の鍔に描かれる兎と蜻蛉
  • 『ひまわり』に見る中原淳一の少女像とメディア創造
  • 日本におけるスターバックスの受容
  • デジタル技術時代の写真表現の可能性

美術学部で学んだことの口コミ

  • 構図などの美術的な感性を始め、共同制作などを通じて学んだ他者とのイメージ共有。
  • Photoshop&Illustratorの基本的な操作方法やそれを用いた紙媒体の作り方、製本技術、動画の作成の方法、プレゼンテーション用の効果的な資料の作成方法を学びました。
  • 考え方や見識を広めるために国際的な文化や日本の文化について学ぶなど、さまざまな知識を得ることができた。
  • 絵画について学んだことでデザインの仕事にも活かせる基礎的な技能を得られた。
  • デザインに関する知識やデザイン史、技術などさまざまなことを学びました。
  • アニメーション研究室に在籍していたのですが、アニメーションを作る過程でさまざまなソフトウェアの使い方や、イラストの描き方を学ぶことができました。
  • インテリアデザインが専門だったが、派生して建築についてもかなり専門的に学ぶことができた。

美術学部の主な学科・分野と概要

絵画学科

大きく「日本画」「油画」「版画」の専攻に分かれ、それぞれの分野における専門的技法を習得するとともに、豊かな感性と表現力を備えた人材を育成します。

彫刻学科

彫刻の概念を理解したうえで、石、金属、木、土といった多様な素材を用い、新たな表現の可能性に挑戦する人材を育成します。

工芸学科

おもに陶、ガラス、金属を扱い、素材を加工して新しいモノを生み出す技能と表現力を備えた人材を育成します。

グラフィックデザイン学科

ビジュアルコミュニケーションの基礎である造形力を養い、高度な視覚表現力を備えたデザイナーを育成します。

生産デザイン学科

日用品から乗り物、家電等、あらゆるプロダクトをデザインするうえで必要とされる技法や表現力、生産・製造に関する専門知識を備えた人材を育成します。

環境デザイン学科

豊かな感性と表現力をもって、住宅、店舗、公園、都市など、あらゆる空間を創造できる人材を育成します。

写真学科

写真を芸術表現のひとつとして捉えながら写真表現や写真技術の基礎を身につけ、この分野の第一線で活躍できる人材を育成します。

美術学部で学ぶ学問分野・概要

美術学には材料学、染色化学、保存科学、芸術論、美術史などの分野があります。

材料学
美術作品を製作する際に用いられる材料やその使い方について学びます。

染色化学
染色する場合の繊維の種類とそれらの化学的性質について研究します。

保存科学
博物館や美術館での展示・収蔵において必要とされる知識を学びます。

芸術論
美術作品を鑑賞する際の方法論について、実証的な観点から研究します。

美術史
美術作品の歴史について研究します。

美術学部で目指せる主な資格

・中学校教諭一種免許状(美術)
・高等学校教諭一種免許状(美術)
・学芸員資格

教職課程を履修することで、中学・高校の美術の免許を取得することができます。

また、所定の単位を取得することで学芸員資格を取得することも可能です。

そのほか、デザインソフトを日常的に使うのであれば、DTPエキスパートなどデザイン実務に活かせる認定資格の取得を目指すこともできます。

美術学部の大学選びのポイント

美術学部では、入学後だけでなく入学時点での試験においても、実技による評価が行われます。

そのため、一般的な学力の基準で大学の難易度を測るのは困難です。

自分が学びたい分野や創作していきたいジャンルの作品について、教わりたいと思う教授がいるかどうかが大学選びの1つの基準となるでしょう。

美術学部を設置している大学の中には、学園祭や卒業展で在校生の作品展示を行っているところもあります。

実際に在校生・卒業生の作品を目にすることで、「自分もこういった作品を製作してみたい」といった具体的な目標を持つことにつながりやすくなるでしょう。

美術学部の入試方法・受験科目

美術学部の入試では、学科試験と実技試験が課されるのが一般的です。

学科試験では、英語と国語の2科目といったように、主要な科目の学力が問われます。

これらの科目は入学後に文献を調べたり、レポートを書く際にも必須となりますので、多くの大学が試験科目として課しています。

実技試験は専攻に応じて行われます。

たとえば日本画専攻であれば、鉛筆デッサンと水彩画、彫刻であればデッサンと立体造形、プロダクトデザインであれば鉛筆デッサンと色彩構成といったように、基本となるデッサン力と併せて専攻する分野の力を測るケースが多く見られます。

美術学部の学費

美術学部の学費は、通常の授業料に加え実習費が必要になるのが特徴です。

一例として、多摩美術大学美術学部(日本画・工芸)の場合、初年度学費は1,915,000円(入学金300,000円、授業料1,187,000円、施設費・研究資料費等380,000円、実習費48,000円)、4年間の合計は6,760,000円となります。

実習費は学科によって異なり、たとえば彫刻学科であれば63,000円、芸術学科であれば32,000円となっています。

美術学部の志望理由、例文、面接

美術学部の志望動機

美術学部を選択する人は、美術を愛し、「美術の分野における表現者になりたい」あるいは「美術の研究家や教育者として生きていきたい」といった強い思いを持っている人が多いです。

学部自体の専門性が高く、各学科において入学試験でもデッサンなどの実技が実施されることから、早くから進路を固め、夢に向かって一直線で進んでいる学生がたくさんいます。

具体的な志望理由は一人ひとり異なりますが、入学時点で美術の世界で生きていく覚悟を決め、「将来はこのような活躍をしたい」というイメージを持っている人が大半となっています。

美術学部の志望動機の例文

私は高校で美術部に所属して以降、油絵を描いてきました。

言葉でコミュニケーションを図るとき、周囲の人との関係性を考えてなかなか素直に自分を表現できないことが多いのですが、絵画を通じてならば、より率直に自分を表現することができていると感じています。

そのため、将来の進路を選択する際には、何らかの形で美術に関わり続けていきたいとも考えています。

具体的には、プロダクトデザインなど多くの人にとって身近な製品をデザインすることにも興味があります。

貴校では、どの学科を専攻してもプロダクトデザインの講義を受けられると伺い、将来的にデザインの方面に進むとしても発揮できる技能や知識を学べると感じました。

美術に向き合う4年間を過ごし、ゆくゆくはその技能を活かせる仕事に就きたいと考えています。

以上の理由から、貴校の美術学部を志望いたします。

美術学部のAO・推薦入試の面接で聞かれること

美術学部では、作品の製作に打ち込み、作品と対峙し続ける日々を過ごすことになります。

そのため、「絵を描くことが好き」というだけでは志望理由として十分とは言えず、何らかの「表現したい」という強い動機や、将来に向けた目標を面接で伝えられることが重要になります。

面接においても、志望している学科や分野にどれだけ打ち込む意気込みを持っているか、が重要な観点になると考えられます。

また、美術学部で専門的に学ぶとなると、感覚的に作品を製作するだけでなく、理論的な裏付けや基礎的な知識を持っておくことも大切になります。

志望する分野の著名な作品や作者、時代背景についてはあらかじめ調べて頭に入れておき、質問されたら答えられるようにしておきましょう。

美術学部の志望理由の口コミ

  • 小さい頃から絵を描くのが好きで、中学生の時に油絵の具を触って楽しいと思ったのがきっかけです。
  • 高校の頃から普通科美術形のクラスに通っていたので、進学は自ずと美大になりました。
  • 高校でも美術を習っていて、将来はデザインの仕事に就きたいと思ったからです。
  • 漠然と美術の道に進みたいという強い思いが幼少の頃からあり、そのためには美術学科に進むしかないと高校の頃に決意して目指し始めました。
  • 子供の頃からきれいな建物や素敵な家、インテリアに興味があったので、そういったものについて学べる学部がある大学を選びました。

美術学部の雰囲気・男女比

美術学部の男女比は、女性の割合のほうがやや大きめとなっています。

ただし、学科や専攻によってもだいぶ異なり、プロダクトデザインを扱う学科では男子学生のほうが多いこともあります。

美術学部では、学生全員が美術に強い興味を持ち、美術に関する専門科目が多く設置されているため、文学部や経済学部といった学部とは異なる独特の雰囲気があります。

たいていの大学で各学科とも少人数教育が行われていることから学生同士の距離が近く、デッサンなど共同で作業をすることもあるため、一体感は生まれやすいようです。

とはいえ、美術の世界ではお互いに良きライバルとなり、個々が自分の理想とする表現を究めていきます。良い意味であまり他人に干渉せず、豊かな個性と独自の世界観を持つ学生も多いようです。

美術学部の雰囲気・男女比の口コミ

  • 学生の性格はさまざまですが、良くも悪くも枠に囚われない人が多いです。
  • 女性の割合が高いのもあってか世間一般のイメージよりは穏やかな雰囲気です。
  • マイペースで自己完結型の人が多かったと思います。
  • 漫画やアニメや小説、舞台など似たような趣味を持つ子たちが非常に多かったように思います。
  • 皆が美術の腕を高めたいという思いが先行しているので、他のことは疎かになりがちですが集中力はものすごいです。

美術学部の楽しいこと・大変なこと・つらいこと

ずっと作品づくりに集中していられることや、美術のことを考え続けられることが楽しかったと振り返っている人が多いようです。

たしかに高校までの生活では美術だけに没頭するのはなかなか難しかった人が多いはずですので、大学に入って美術に没頭する時間ができるのは大きな変化です。

とことん美術に向き合える反面、課題として出される制作物は決して少なくないため、常に作り続け、「作り上げなくてはならない」というプレッシャーとの戦いになるのが大変とのことです。

また、4年間を美術と向き合い続けて過ごすため、美術に対して並々ならぬ情熱を持った人でないと、途中でくじけてしまうこともあるようです。

寝ても覚めても美術のことが好き、といった情熱を持ち続けることが求められる学部と言えるでしょう。

美術学部の楽しいことの口コミ

  • 高校のときの「勉強」から解放されて、ほぼ一日中絵のことに没頭できたのが個人的に一番楽しかったです。
  • みんな自分のやりたいようにやっているので、周りに気を使わなくて済む人間関係でした。
  • 学年を重ねるごとに、デザインの技術やクオリティが上がっているのを感じられたこと。

美術学部のつらいことの口コミ

  • とにかく課題の量がたくさんあり、時間に余裕を持って制作しなければいけなかったことは大変でした。
  • 作品を発表する機会が多く、表現したい!という確たるものがなければ途中でくじけてしまいがちです。

美術学部の口コミ一覧

美術学部の就職先、業界、目指せる職業・仕事、進路

美術学部の就職先

美術学部の出身者は、一般企業などに就職をする人もいれば、画家、彫刻家といった芸術家として創作活動をしながら生きていく人もいます。

一般企業の場合、卒業学科によって就職先は異なりますが、印刷会社、アパレルメーカー、Web制作会社、映像制作会社、広告などマスコミ関係会社へ就職する人が比較的多めとなっているようです。

環境デザイン関連の学科出身であれば、建設業界の設計・デザイン会社なども代表的な就職先となります。

いずれの企業でも、美術学部で身につけたモノの見方や表現力を生かし、デザイナーなどの専門職として活躍する人がたくさんいます。

美術学部の就職の状況と需要

美術学部を卒業したのち、どのような就職先があるのかイメージしづらいと思っている人もいるかもしれません。

しかし、実際には美術学部卒の人材を求めている業界は幅広く存在します。

一例として、武蔵野美術大学の2017年度卒業生の進路状況を見ると、日本画学科、彫刻学科ともに就職希望者のうち全員が就職しています。

こうした傾向の一因として、20〜30年前は美大卒生の就職先は美術教師が最もメジャーだったのに対して、最近ではさまざまな業界・職種を就職先として検討する学生が増えたことが挙げられます。

美術学部で学んだ専門知識が、幅広い仕事で活かせる時代になってきていると言えるでしょう。

美術学部の就職以外の進路

大学によっては、半数近くの学生がより専門性を高めるために大学院へと進学しています。

また、海外の美術系大学や大学院へ留学し、現地で活躍の場を見つける学生もいます。

創作を本業としてやっていく人もいれば、フリーランスとして個人で仕事をしていく人もいます。

近年ではデザインソフトが比較的安価で購入できるようになり、個人利用することも十分可能になっています。

こうしたことも、フリーランスのような個人としての生き方を選びやすくなった要因と言えます。

美術学部の出身者は個々が強い意思と信念を持ち、自らの夢に向かい、さまざまな方向へ飛び立っているようです。

美術学部の就職の状況の口コミ

  • 大学院への進学、美術の先生、画家一本で頑張る人、広告代理店に就職する人などがメジャーですが、最近はゲーム系の会社に就職する人が増えてきたように感じます。
  • 建築を合わせて学んだので、建築設計事務所や工務店、ハウスメーカーへの就職が多かったです。
  • デザインを学ぶ学科だったので、就職先は広告代理店や書籍や映像に関する会社、プロダクト方面の会社など、デザインに関連する会社に就職する子が多いです。
  • フリーランスでイラストレーターをやっていくという人は少数で、多くが美術に関連する制作会社等に進みます。
  • 現実問題として美術と関係ない一般的な職業に付く人が最も多く、その後も続けようと自分で思わなければ美術をやめてしまいます。

美術学部から公務員を目指せる?

教員免許状や学芸員資格を取得する人も多く、卒業後は美術の教員として学校に勤務したり、美術館等で学芸員として活躍したりする人もいます。

公立の学校や美術館等で勤務する場合、公務員として採用されることになりますので、美術学部から公務員を目指すことは可能と言えます。

なお、教員を目指す場合は教職課程、学芸員を目指す場合は博物館に関する科目を履修する必要がありますので、履修科目を決める際には進路をよく考えて決める必要があります。

美術学部の卒業生の感想

美術学部を卒業後も、仕事はそれなりにあるので心配いらない、といった声が複数あります。

知識やスキルの面においても、美術学部で学んだことが実務で活かせる場面はたくさんあるようです。

一方で、美術学部を目指す人に対しては、受験時に必要なデッサンなどの試験対策を早めにしておいたほうがよい、という声もあります。

これまで我流で描いてきた人はとくに、対策をしっかりと練っておいたほうがいいかもしれません。

美術学部の卒業生の感想

  • 画家一本に拘らなければ意外と卒業後の生活も安定しますので、気軽に入ってもなんとかなります。
  • 美大に行っても将来役に立たない、と思われそうですが、画家になって食べていくとかは難しいけど、続けていればそれなりに方向性はあります(教師、デザイナー、Web関連、インテリアなど)。
  • 真剣に学べば、すべての学習が将来につながると言っても過言ではないほど、さまざまな技術が習得できます。
  • 良い意味で、美大系はやはり個人プレーな人が多いので、集団行動が苦手な人には向いてると思います。
  • もし志望するのであれば、余程の天才でもない限り、よく見て描けるようになるにはある程度訓練が要るのに加え、画材にある程度慣れておく必要があるので、早めの受験対策をお勧めします。

美術学部では、4年間かけて作品にじっくりと向かい合うという貴重な経験ができます。

美術を専門的に学びたい、技能を高めたいという高い意欲がある人は、美術学部に挑戦してみてはいかがでしょうか。

美術学部で過ごす4年間は、きっと何物にも代えがたい財産となることでしょう。

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