美術学とは? 大学で学ぶことや就職先は?
美術学の概要・理念
ラスコーの壁画など、古くは洞窟壁画の時代から、人類は絵を描くことを表現や伝達の手段としてきました。
その後、時代の変遷とともに宗教と密接な関係を保ちながら、美術は世界の各地域で発達を続け、近現代においては個性を表現する方法の1つとして捉えられています。
美術においては、こうした長い歴史を持つ美術の一端を担う表現者として、絵画や彫刻をはじめとする美術作品を創作することを目指します。
絵画や彫刻、デザイン、工芸といった表現方法のうち、まず専攻を決めてから制作に着手することもあれば、表現したいことを先に決め、それに合った表現方法を選ぶ場合もあります。
近年では筆で絵画を描く以外にも、コンピュータ・グラフィックスを駆使して絵画やデザインを制作することも増えています。
このように、多用化する表現手法を用いつつ、自らが表現したいと考える世界観を具現化するための技法を学ぶことに、美術を学ぶ目的の1つがあるといえます。
美術学で学ぶこと
美術には、絵画・彫刻・デザイン・工芸などの分野があります。
絵画には、洋画・日本画・版画などの表現方法があります。
彫刻には、木彫・石彫・年度・石膏像・金属加工などがあります。
また、デザインにはグラフィックデザインをはじめ、環境デザインなど幅広いジャンルが存在します。
工芸では木工・金工・漆工・染色・陶芸などを学びます。
大学や指導教授によって専門とする表現方法はさまざまであり、洋画と日本画のいずれかを専攻する場合もあれば、デザインを含めて幅広く表現方法を選択できる場合もあります。
大学においては年次が進むにつれて制作による実習が主になっていき、自身が決めたテーマに沿って卒業制作物を完成させることを目指します。
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美術学の大学での授業科目の例
デッサン
静物や石膏像のデッサンを実際に行い、絵画を描く上での基礎となるデッサンの技能向上を目指します。
材料学
彫刻などの制作物を創る上で欠かすことのできない材料の性質や特徴について学びます。
デザイン論
産業界で発展してきた工業デザインなどを取り上げ、デザインの歴史や意図について探究します。
油絵実習
描く対象やテーマに従って油絵を実際に描き、制作上の技能向上を目指すとともに作品の合評が行われます。
西洋美術史
西洋で発展してきた美術の歴史や社会的背景について学び、美術作品に対する理解を深めます。
美術学のレポート・テーマの例
美術においては、卒業制作を含めて実技による絵画制作を提出するケースが多く、他の学問のようにレポートを作成する機会はそれほど多くありません。
一方で、美術史など基礎的な知識を身につけることを目的とした授業においては、レポートの提出を求められる場合もあります。
- ・ダリの作品と生涯
- ・ブーシェの身体表現について
- ・ゴッホの模写について
- ・北野恒富の女性表現
- ・葛飾北斎とジャポニスム
美術学と関連する学問
美術史は絵画の歴史的背景や作風の変遷を知る上で欠かせない知識ですが、各時代の時代背景を考えるには西洋史や日本史の知識が土台になることが少なくありません。
人間の文化活動の結果、絵画などの芸術作品が生み出されてきたことを鑑みると、美術は歴史学と密接な関係があるといえるでしょう。
また、美術作品を制作・鑑賞する際、「そもそも美とは何であるか」といった根源的な疑問が湧いてくることもあるでしょう。
こうした研究は美学と呼ばれる研究分野において行われています。
美術の本質について考える上で、美学の研究領域に踏み込んで考察する場合もあります。
美術学を学んで就職に有利な業界・仕事
美術関連の業界は、実はかなり幅広く存在しています。
美術作品を扱う広告や出版といった業界においては、美術を専門に学んできた経歴を評価される可能性があります。
仕事内容としては、企画やデザイン、プロモーション、アニメーション制作といった分野が想定されます。
また、デザイン事務所などでデザイナーとして活躍したり、DTPデザイナーやDTPオペレーターを目指したりする場合にも、美術に関する高い専門性を持つことは就職する際に有利になるでしょう。
美術教師として学校の教員になる場合も、大学で美術を専攻している必要があります。
ほかにも、学芸員の資格を取得して美術館などに勤務するなど、公務員を目指す際に美術の知識を活かせる仕事があります。
画家や彫刻家、デザイナーとして独立し、フリーランスとして活躍する人もいますが、プロとして生計を立てていくために必ずしも学問としての美術を学んでいる必要はなく、センスや才能が必要とされる職業といえます。
美術学の知識は人生でどう役立つ?
人は自分の意思を伝えたり意思疎通を図ったりする際、言葉を使っています。
高度な言語を使いこなせるのは他の動物には例がなく、人類だけが手にした優れた能力あることに間違いありません。
しかし、言葉はいつでも万能なものではありません。
複雑な感情や思いを表現する方法として、言葉以外の何かを持っていることは、人生を豊かなものにするために役立つはずです。
美大などで美術を学んだ人の多くが、卒業後もプライベートの時間を利用して油絵を描くなど、創作活動を続けるケースは多いようです。
自身の感情と向き合い、表現するための方法を持つことで、言葉では表現できない感情を人に伝えたり、自身で振り返ったりすることに大きく寄与していくことでしょう。
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