秘書の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

「秘書」とは

秘書の仕事内容・なり方・年収・資格などを解説

企業の社長や役員などにつき、スケジュール管理や電話・来客応対など庶務全般をこなす。

秘書とは、社長や役員といった企業の重役、あるいは医師や政治家、弁護士などに付いて、庶務のすべてを管理し、処理する人のことです。

多忙な上司が本業に集中できるよう、裏で支える役割を担います。

具体的な業務内容は、電話応対をはじめ、メールや手紙の処理、スケジュール管理、来客対応、文書作成など多岐にわたります。

新入社員を秘書として採用するケースはほとんどなく、事務職などで経験を積み、そこから適性や能力が認められると秘書に抜擢されるケースが多いです。

秘書として働くうえで資格は必須ではありませんが、文部科学省認定の「秘書技能検定」などを取得すると有利に働くことがあります。

高度な事務処理能力やビジネスマナー、教養、コミュニケーションスキルなどが求められる職種です。

「秘書」の仕事紹介

秘書の仕事内容

企業の重役などに付き、庶務全般やスケジュール管理などを総合的に担う

秘書とは、企業の社長や役員といった重役、あるいは政治家、医師、弁護士などに付き、庶務全般の仕事を担当する人のことです。

上司の職業や業界によっても具体的な業務は異なりますが、スケジュール管理や来客応対、文書作成、データ収集、ファイリングなど、一般的な事務作業を担当しながら、上司が本業に集中できるようサポートします。

社内関係者をはじめ、取引先企業やクライアントにいたるまで、上司に携わる人間とのコミュニケーションの機会も多く、高度なビジネスマナーや一般常識、教養が求められます。

上司の求めるものに応える力が必要

秘書の業務内容は幅広く、一概に「これ」といえるものではありません。

自分が付く上司がなにを求めているのか、状況に合わせて臨機応変に行動する力が求められます。

マニュアル化できない業務も多く、個々の能力が問われる重要な職種といえるでしょう。

なお、同じ秘書であっても、医療機関で働く人は「医療秘書」、法律事務所で働く人は「弁護士秘書」、政治家事務所で働く人は「議員秘書」などと呼ばれることもあります。

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秘書になるには

新卒者は他の部門で経験を積んでから異動になることが多い

社長や役員の秘書を目指す場合には、企業へ就職することが第一歩となります。

秘書はありとあらゆる業種の企業で活躍しており、規模が大きめの企業には「秘書室」や「秘書課」を置き、複数の秘書が在籍するケースが目立ちます。

ただ、新入社員をいきなり秘書として採用することはほとんどありません。

新卒から秘書になる場合、まずは企業に就職して配属された部署で経験を積み、ビジネスマナーや社会人としてのスキルを積んで、秘書課への異動を目指すのが通常のルートです。

上司からの引き抜き、社内の人間からの推薦によって転属する人も多いです。

また、秘書科を置く大学や専門学校で学んだり、秘書検定の資格をとって派遣会社に登録し、仕事の紹介を待つのもひとつの方法です。

企業以外の秘書を目指す場合

弁護士事務所や法律事務所の秘書、病院の秘書、議員秘書、大学教授の秘書などを目指す場合には、各業界の専門的な知識が求められることがあります。

秘書として必要なビジネスマナーを身につけつつ、目指す業界に入り、事務職などで経験を積んでいくのが近道となるでしょう。

秘書になりたい思いをアピールしたり、積極的に資格取得を目指したりするのも大切です。

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秘書の学校・学費

学歴よりもスキルや適性が重視されやすい職種

秘書となるために、必ず通わなくてはならない学校はありません。

しかし、スキルや適性が重視されやすい職種であることから、学生のうちに秘書学を勉強しておくのも有用です。

大学で秘書学を専門に学べるところはありませんが、一般教養を広く身につけられる点でメリットが大きいです。

また、大手企業では、そもそもの採用試験の応募資格として大卒以上の学歴を求めることが多いため、大学に進学しておくと就職先の選択肢が広がります。

より専門的に秘書の勉強がしたいと考えるのであれば、専門学校がおすすめです。

秘書の専門学校、あるいは秘書検定や簿記などの資格取得を目指すビジネススクールでも秘書に関する勉強ができます。

ただし、医療秘書など、より専門的な分野の勉強をする学校もあるため、自分がどのような秘書として働きたいかを考えておきましょう。

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秘書の資格・試験の難易度

企業秘書におすすめの検定試験

秘書としての就職・転職時には、業務に関連する資格を取得しておくと有利になる場合があります。

ここでは、秘書におすすめの資格として代表的なものを紹介します。

秘書技能検定

文部科学省が後援する「秘書技能検定」は、一般常識やマナー、気配り、言葉づかい、コミュニケーションスキルなど、秘書として必要な技能を証明できます。

試験種目は、難易度の易しいほうから3級・2級・準1級・1級に分かれています。

受験を推奨する企業も多く、準1級以上は就職に非常に有利となるとされています。

日商簿記検定

企業で働く秘書は、企業の財政や経営状態を把握できる知識を身につけておくと有利です。

日本商工会議所が主催する「日商簿記検定試験」は、大きく分けると簿記初級・3級・2級・1級で実施されます。

秘書を目指すなら、3級以上を所得しておくとよいでしょう。

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秘書の給料・年収

一般的な事務職よりも給与水準は高め

秘書の年収は、一般的な事務職よりもやや高めの水準です。

正社員として企業に勤める秘書の平均年収は、400万円前後と推定できます。

経験やキャリアによって金額には差がついていき、社長クラスの秘書になれば大幅な収入アップも望めます。

また、外資系企業や金融業界の秘書も、経験を積んでいくと年収が上がりやすく、600万円から1000万円近い年収を得ている人が少なくないようです。

秘書は比較的大きな規模の企業で働くことも多いため、福利厚生が充実しているケースが多く、安定した働き方が実現できるでしょう。

専門的な能力を備えた秘書は収入を上げやすい

秘書の年収を決定する要素は、秘書の経験年数に加え、語学力や専門分野のスキルなどによって大きく変わってきます。

医療秘書、議員秘書、弁護士秘書など、一般的な秘書スキルに加えて各業界特有の知識を備えている人は、よい待遇で採用されることもあります。

どのような職場でも能力のある秘書は重宝され、高く評価されやすいです。

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秘書の現状と将来性・今後の見通し

優秀な秘書はいつの時代でも歓迎される

秘書は専門性の高い職種であるため、社会人としての経験を積み、秘書スキルを身につけた人は、さまざまな場で活躍することができます。

大企業を中心に専属の秘書を雇用する企業は多くありますし、役員秘書として経験を積んだのち、弁護士秘書や議員秘書など専門職へのキャリアチェンジも可能です。

また、グローバル化が進む現代では、外資系企業に限らず、多くの業界に語学堪能で国際感覚が豊かな人材が求められています。

これから秘書を目指すなら、語学力を磨き、自分の希望する業界の専門知識を学ぶことで、キャリアアップも望める将来性のある職業だといえるでしょう。

能力のある秘書は、どの職場でも手放したくないという思いから、よい待遇で雇用されるケースが多いです。

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秘書の就職先・活躍の場

一般企業をはじめ、病院、法律事務所など豊富

秘書の就職先は、一般企業のほか、病院などの医療機関や法律事務所、あるいは政治家事務所など多岐にわたります。

企業の秘書は、社長や役員などの重役に付いて、日々の業務のサポートを担当します。

医療機関で働く「医療秘書」は、病院以外にも製薬会社や医療機器メーカー、調剤薬局などで活躍できます。

法律事務所で働く「弁護士秘書」は、パラリーガル業務や法律関係業務など、専門性が高い業務を担うことになります。

政治家事務所で働く「議員秘書」は、衆議院議員や県議会議員などが直接雇用する「私設秘書」と、国会議員の下で働く「公設秘書」の2つの種類があります。

高度な事務処理能力やタスク管理能力、コミュニケーション能力などはすべての秘書に求められますが、勤務先によって、プラスアルファの専門性が重視されることがあります。

独立した名称がある秘書ほど、その分野に特化したスペシャリストとしての活躍が期待されます。

秘書の1日

地味なようで多忙な役員秘書の1日

秘書の1日の過ごし方は、その日の上司の予定によって変化しますが、基本的には上司より早く出社し、上司が帰った後に職場を後にします。

常に上司の予定や動きを見ながら、先回りして仕事が進めやすいようにサポートしていく、臨機応変な行動が求められます。

ここでは、一般企業で働く秘書のある1日を紹介します。

7:00 出社・予定確認
8:00 上司出社・スケジュールを伝える
9:00 始業・会議準備
10:00 電話やメール対応・関係各所への連絡
11:30 来客対応
12:30 休憩
13:30 出張手配
15:30 打ち合わせ
16:30 上司外出
18:00 残務処理後、退社

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秘書のやりがい、楽しさ

上司からの感謝の言葉や外部からの評価

秘書にとって、最も喜びを感じられるのは、自分が付く社長や役員からの「ありがとう」の感謝の言葉です。

秘書に求められることは非常に多く、またこれといった正解がないため、常に上司の様子を見ながら動かなくてはなりません。

難しい仕事に携わるだけに、上司と良好な信頼関係を築くことができ、「あなたのおかげで助かっている」といった言葉をかけてもらえると、達成感が得られます。

また、上司を取り巻く社内外関係者からのお褒めの言葉も励みで、活力になります。

秘書として働いていると、日常生活ではなかなか会えないような重役との出会いも多いです。

人脈が広がりますし、ビジネスの最前線の様子を肌で感じられることにやりがいを感じる秘書も多いです。

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秘書のつらいこと、大変なこと

気苦労が多くプレッシャーも感じやすい

気苦労が多くプレッシャーも感じやすい

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秘書に向いている人・適性

よく気が利き、サポート役に徹することができる

秘書は、さまざまな職種のなかでも、とくに適性や向き不向きが出やすい職種といえるでしょう。

ここでは、秘書に向いている性格や適性の一例を紹介します。

人をサポートできる

秘書は、上司となる人に敬意を払い、立場をわきまえつつ謙虚な態度で接しなくてはなりません。

また、常に上司のサポート役となるため、裏方に徹することを苦にしない人に向いています。

気配り上手、機転が利く

上司が効率よく仕事に集中できるようにするには、細かな配慮が必要です。

指示を得なくても、相手が望むこと、求めることを先読みして行動できるタイプの人には秘書が向いています。

几帳面、柔軟性

秘書は、身の回りの雑用からスケジュール管理、会議資料の作成まで幅広い業務を担当し、ときに機密事項も扱います。

一つのミスが大きな問題につながる可能性もあるため、几帳面さが欠かせません。

また、急な会議の予定変更、イレギュラーな事態にも即座に対応することが求められるため、臨機応変に立ち回れる柔軟性がある人が望まれます。

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秘書志望動機・目指すきっかけ

人をサポートする役割に魅力を感じて

現役秘書として活躍している人の志望動機は「人に役立つ仕事をしたかった」「秘書が格好良く働く姿に憧れて」というものが多いようです。

また、この職種は一般事務や営業、受付、客室乗務員など異業種や異職種から転職した人も多くいます。

前職でのキャリアアップや将来性に限界を感じ、またビジネスマナーや接遇能力などの経験を生かせる職種として、秘書を目指す人が目立ちます。

秘書は一つのことにこだわらず幅広く仕事をしたい人、機転を利かせて臨機応変に対応することが好きな人には向いている職種といえます。

求められるものが多い分、気苦労も絶えませんが、人をサポートすることにやりがいを見出せる人であれば、やりがいを感じられるでしょう。

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秘書の雇用形態・働き方

社員として企業に勤務する人のほか、個人で契約を結ぶ人も

秘書として働く人の大半は、正社員、もしくは派遣社員、契約社員として働いています。

企業に勤務する秘書の場合、自社の社員として秘書室などに所属し、複数人のチームで上司をサポートするのが一般的な形です。

雇用形態によって勤務時間などは異なりますが、同じ会社に勤務する他の職種の社員と、立場は同じようなイメージです。

このほか、外資系企業や法律事務所、あるいはフリーランスとして働く人と、個人的に契約を結んで働く秘書もいます。

このような秘書は「個人秘書」もしくは「私設秘書」と呼ばれることがあります。

また、最近では「在学秘書」や「リモート秘書」といった形態で、オフィスに出社せず、自宅などのリモートで秘書の仕事を請け負う人もいます。

秘書の勤務時間・休日・生活

上司の動き方次第で勤務時間も変わってくる

秘書の勤務時間は、就職先によって異なります。

企業に勤務する場合は各企業の就業規則に則って働き、日勤が基本です。

ただ、あくまでも自分が付く上司のスケジュールで秘書の動きが決まってくるため、日によっては早朝や、深夜に対応しなくてはならない業務が入ることもあり得ます。

休みは土日祝日を中心に、決まった曜日に取得できる職場が多いですが、土日を挟んだ出張同行をすることや、休日出勤対応を求められることもあります。

また、ときに上司が参加する夜の会食やパーティーなどに秘書が同席するケースもあり、残業が増える時期もあります。

「秘書は上司より早く来て遅く帰る」が基本であるため、自分主体でスケジュールを立てづらいのが、秘書の大変な一面です。

秘書の求人・就職状況・需要

需要は大きいものの表に出る求人は少ない

秘書は、あらゆる企業や、さまざまな業界で需要がある職種です。

学生時代から秘書の働き方に興味をもち、この仕事を目指す若者も少なくありませんが、新卒者の求人は非常に少ないのが実情です。

秘書の資格として有名な秘書検定は、新卒者にとってはビジネスマナーや一般常識を身につけていることを証明できますが、それだけで確実に就職できるとは限りません。

正社員の求人が少ないゆえに就職は厳しい状況のため、秘書専門の人材紹介エージェントや人材派遣会社を活用する人も増えています。

まずは大手企業などで事務職などの経験を積み、ビジネスマナーや事務処理スキルを磨いたうえで、秘書室などへの異動のチャンスを探るか、秘書への転職を目指すのもひとつの方法です。

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秘書の転職状況・未経験採用

秘書に求められるスキルや適性をよく考えておく

新卒者の正社員での秘書の求人は稀少で、これはつまり、未経験者のの採用率が低いことを示しているといえます。

実際のところ、秘書になる人の多くが別の職種からの転職者です。

同じ会社内で、社内辞令や異動をきっかけに秘書になる人もいますし、事務職や広報、受付など別の職種から秘書への転職を目指す人もいます。

秘書は社内業務を理解していることのほか、事務処理能力やビジネスマナー、接遇力などが不可欠です。

また人間性も重要視され、なにより重役にとって信頼に足りうる人でなくては秘書になれません。

未経験者が秘書を目指す場合には、パソコンスキルや資料作成の正確性、社内の人間関係、接客応対スキル、ヒューマンスキルなどを総合的に判断され、秘書としての適性があるかどうかを判断されます。

これまでの実務経験をどう秘書に生かせるのかよく整理して、転職活動に臨む必要があるでしょう。

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男性でも秘書になれる?

秘書の適性さえあれば性別は関係ない

秘書は昔の名残もあって女性の活躍が目立つ職種ですが、決して男性が目指せない職種ではありません。

現代では、人事異動の際も男女の区別なく行われますし、実際にさまざまな企業や組織で、男性秘書は活躍しています。

女性社長や女性役員に男性秘書が付くこともありますし、国会議員の秘書である「議員秘書」については、男性のほうが圧倒的に多いほどです。

秘書の仕事をきちんとできるかどうかは、性別というよりは、適性によるところが大きいといえます。

細かなスケジュール管理ができ、マルチタスク能力に長けていること、加えて上司や取引先、お客さまなど大勢の人への気遣いや接遇能力も欠かせません。

几帳面でよく気が利く男性であれば、秘書として大きく信頼されるでしょう。

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秘書と事務、アシスタントの違い

それぞれが異なる役割をもって働く

「秘書」と近しい領域で働く職種に「事務」や「アシスタント」があります。

事務の特徴は、民間企業や官公庁、団体などの組織において、デスクワークを中心とした事務作業全般を担当する職種です。

勤務先によっては、営業や経理、医療といった専門的な知識が求められることもありますが、あくまでも「事務業務」を主軸とした業務を担当します。

秘書のように、社長や役員といった個人の上司に付くのではなく、配属先のチームや部署全体のために仕事をするのが基本です。

次に、アシスタントですが、こちらは上司のパートナーとして、共に仕事をする人のことを広く指しています。

秘書はあくまでも陰で上司のサポートに徹しますが、アシスタントの場合、ときには上司に進言やアドバイスをすることもあります。

また、アシスタントは「見習い」の意味で使われることも多く、いずれその仕事をするための下積み期間ととらえる人も多いです。

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