スタイリストの仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
スタイリストの仕事とは
スタイリストとは、タレントやモデルなどに着せる服や周辺小物をコーディネートする人のことをいいます。
ファッションコーディネートの多くはスタイリストによって行われていますが、ひと口にスタイリストといっても役割はさまざま。
おもに雑誌を担当する人もいれば、テレビに出演するタレントのコーディネートをしたり、映画撮影の現場で役者の衣装を担当したりする人もいます。
スタイリストの仕事は、クライアントとの打ち合わせのなかで案件に沿ったイメージを練り、コーディネートを考えるところから始まります。
使用する衣装の方向性が決定したら、撮影に向けて洋服や小物をレンタルやリースなどで用意します。
撮影や収録の当日は、モデルやタレントに衣装を着てもらい、メイク担当やカメラマンなど他のスタッフと協力しながら作品を完成させていきます。
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スタイリストの業務の内容
スタイリストの業務内容は、働き方によって大きく2種類に分けることができます。
ひとつは、スタイリスト事務所に所属するタイプ。
もうひとつは、フリーランスで活動していくタイプです。
事務所に所属するスタイリストの場合
事務所に所属して働く場合、基本的に事務所が請け負った仕事を割り振られ、担当します。
仕事内容は多岐にわたり、テレビや雑誌、広告、デパートのカタログ、メーカーのパンフレットなど、さまざまな媒体に出演するタレント・モデルに対してのファッションコーディネートを行います。
一般的な会社員とは違い、勤務時間はハッキリと決まっていないことが多いです。
現場によっては、深夜や早朝に仕事をしなければならない日もありますし、世間が連休の時期に動くこともあります。
スタイリスト事務所に所属すれば、さまざまな仕事が経験できたり、多くの人たちとのつながりができたりします。
そのため、まずは事務所で経験を積んだ後に、フリーランスになるという人が多いようです。
フリーランスで働くスタイリストの場合
スタイリストは、まず「アシスタント」として業界に入り、修行を重ね、それから一人前のスタイリストとしてデビューする人がほとんどです。
全体として、フリーランスで活躍する人の割合が大きいことも、この職業の特徴といえるでしょう。
仕事内容は事務所所属の場合と大きく変わらず、媒体や作品に合わせて、出演するタレントやモデルの服をクライアントの指示に従いコーディネートしていきます。
ただし、フリーランスの場合、仕事は営業活動を通して自分で取ってこなければなりません。
また、アシスタントを雇えない駆け出しの身であれば、取引先への請求書の発行や交通費清算などの庶務仕事も自分でしなければなりません。
そのため、案件が重なれば多忙な日々になりがちですし、睡眠時間は短くなったり、体力的にキツい思いをしたりすることもあります。
しかし、慣れてくれば自分で時間や仕事量をコントロールしやすいのはメリットだといえます。
さらに、経験を積むことで幅広い現場で働くことができたり、事務所に所属している時よりも多くの収入を得られたりする可能性もあります。
こういったことから、フリーランスで活躍することは、駆け出しのスタイリストたちの憧れにもなっています。
スタイリストの役割
作品のテーマや世界観を表現する
スタイリストは、おもにテレビ番組や映画、雑誌、広告などに出演するタレントやモデルの衣装や小物を提案し、スタイリング(着こなし)を演出する仕事です。
これらの作品は、必ずテーマや目的のもとに制作されます。
たとえばテレビドラマや映画なら、原作者や監督が視聴者に伝えたい想いや世界があります。
また、商品や企業などの宣伝のために作られる広告の場合、アピールしたいものの特徴を消費者にわかりやすく伝えなければなりません。
スタイリストはそういった作品に出演するタレントやモデルに対し、最もその人の魅力が引き出せる衣装を選んだり、作品の目的やイメージに合うファッションを提案したりしながら、カメラマンや編集者などと一緒に作品を作りあげていきます。
多くの現場では、メイクやヘアスタイルはメイクアップアーティスト(ヘアメイク)が担当しますが、中にはスタイリストが兼務することもあります。
いずれにせよ、スタイリストはヘアメイクも含めた全体のバランスを見て、コーディネートがきちんと決まっているかをチェックします。
日本におけるスタイリストの立場とは
スタイリストの語源はフランス語「styliste(スティリスト)」に由来し、これは日本の「デザイナー」を指す言葉となっています。
つまり、何もないゼロのところから創造する、非常にクリエイティブな意味を持っている仕事です。
しかし、海外に比べると日本におけるスタイリストの歴史は浅く、実際「スタイリスト」といっても、その担う役割は人によって少々異なっているようです。
前述したように、タレントやモデルのスタイル全体を決定する役割を任される人もいれば、常に重い荷物を持ち歩いて、衣装の貸し出しと返却をひたすら繰り返すような肉体労働を必死でこなすだけで終わる人もいます。
衣装を用意したり、現場を忙しく走り回ったりするのは、スタイリストにとって必須の仕事です。
とくにアシスタントなど下積み期間は、肉体労働に耐えることも大切です。
ただし、力がないと判断されてしまえば、いつまで経っても雑用的な仕事ばかり任されることになるでしょう。
本来の意味でのスタイリストのように、自分の知識や感性でファッションを提案する役割を担えるようになるには、相応の時間と努力、またセンスを磨くことが必要なのです。
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スタイリストの仕事の流れ
スタイリストの仕事の流れは案件によって細かな部分は異なりますが、たとえば雑誌撮影の仕事に携わる場合、基本的な仕事の流れは以下のようになります。
1.仕事の依頼を受け、クライアントと要件の打ち合わせをおこなう
↓
2.衣装協力をしてくれるブランドやメーカーから衣装や小物をリースで用意する
↓
3.モデルやタレントの衣装をスタイリングする
↓
4.他のスタッフと協力しながら撮影を開始する
↓
5.撮影した写真をスタッフやモデルと確認し、後片付けをおこなう
↓
6.後日、撮影当日にリースした衣装や小物を返却する
これらの内容以外にも、編集者やディレクターをはじめ、制作スタッフとの細かい打ち合わせ、衣装のリース追加等はしばしば発生します。
急な事態にも、臨機応変に対応していく必要があります。
スタイリストの勤務先の種類・活躍の場
勤務先の種類
スタイリストの勤務先としては、スタイリスト事務所に所属するか、フリーランスのスタイリストのアシスタントになるかのどちらかが一般的です。
事務所に所属して働く場合、雑誌やテレビ、映画など、どういった分野のスタイリストとして活躍したいかによって所属先を決めるとよいでしょう。
また、スタイリストのなかには、雑誌やテレビの撮影ではなく、ブライダル業界やイベント・ショーなどに特化した衣装のスタイリングをおこなう人もいます。
たとえばブライダ業界の場合、ブライダルを請け負うスタイリスト事務所だけでなく、ホテルのブライダル部門や結婚式場、ドレスのレンタルショップなども勤務先の選択肢となります。
フリーで活躍するスタイリストのアシスタントになる方法はコネや人脈がないと難しいのが実情ですが、不可能というわけではありません。
実際に、雑誌社や制作会社などに憧れのスタイリストの連絡先を問い合わせて手紙などを送り、弟子入りがかなった人もいます。
メディア・マスコミ業界で活躍するスタイリスト
スタイリストの活躍の場として最も代表的なのは、雑誌、テレビ、映画、広告などのメディア・マスコミ関係です。
タレントやモデルがこういったメディアに出演する際は、魅力的な洋服を着て自分の役柄やキャラクターを演じ、流行の先をいくファッションに身を包みます。
こういった裏ではほぼ必ずスタイリストの活躍があります。
洋服や小物そのものを中心に取り上げるファッション誌の場合、スタイリストの存在感は、さらに大きなものとなります。
最近では「人気スタイリストのコーディネート」のような企画も増えており、トレンドに敏感なスタイリストに対する世間の注目度も高まっています。
媒体ごとの具体的な仕事について見ていきましょう。
雑誌(出版社系)
書店に行けば、ありとあらゆるジャンルの雑誌が置かれています。
スタイリストは、その中でも主に「ファッション雑誌」に出演するモデルを、流行のファッションにコーディネートしていきます。
この場合、基本的に出版社が意図するテーマで服を用意しますが、スタイリストの意見が求められることもあります。
また月刊誌の場合、出版社が決めたモデルに対してコーディネートすることが多いものの、単発で発売される雑誌であれば、モデル選びからスタイリストに委ねられることもあります。
TV・CM(映像系)
TVに出る有名タレントや、司会者等の衣装をコーディネートします。
担当するタレントによって売り出し方やキャラクターが違うため、そのイメージを損なわないようなコーディネートをする必要があります。
CM撮影の場合は、クライアントから指示のあった色や雰囲気の服を用意して、タレントにコーディネートします。
また、タレントとスタジオに同伴して、撮影の合間を見ては服のヨレやホコリ等を直すのも、現場での重要な仕事のひとつです。
映画・ドラマ系
連続ドラマや単発のドラマ、さらには映画に出演する俳優・女優の衣装を揃え、コーディネートします。
制作スタッフの指定した衣装を揃え、内容に合った衣装を選び、着せていくことになります。
映画やドラマでは、「キャラクター設定」や「シーン設定」が明確になされているため、スタイリストの感性などで自由にコーディネートするのではなく、作品の脚本・台本に合った衣装を用意します。
たとえば服が汚れてしまうシーンや、あえて破れた服を着ている役柄を演じる場面では、そういった服を用意しなければなりません。
基本的にスタイリストも現場に同行し、シーンの度に衣装を直します。現場によっては「衣装さん」と呼ばれることもあります。
広告系
企業ポスターや、量販店のチラシ等に出演しているタレントやモデルをコーディネートします。
広告会社(クライアント)の指示に従い、衣装を用意します。
たとえば求人系の広告撮影の場合は、フレッシュマンやビジネスマンらしさを表現できるようなスーツを用意します。
チラシ撮影の場合は、自社商品だけでコーディネートを完成させたり、PRしたい商品を使ったコーディネートを依頼されたりすることもあります。
このように、媒体によってスタイリストの仕事の仕方は少しずつ異なります。
オールマイティーにさまざまな現場をこなす人もいますが、フリーランスでは「雑誌専門」「映像専門」といったように、専門分野を中心に活躍するスタイリストも存在しています。
百貨店、アパレルショップで働くスタイリスト
メディアやマスコミ以外にも、スタイリストが活躍する場はあります。
たとえば百貨店内のブランドやアパレルショップです。
そのような場で働くスタイリストは、商品知識を持ち、自らのセンスを生かして来店されたお客さまに対して服をコーディネートします。
こういった場所で働く場合は「販売員」としての役目も担うため、ただファッションの知識があるだけではなく、お客さまの心理状態を読む力や、接客能力まで求められます。
なお、近年は個人のお客さまに対して、専門のスタイリストがファッションをトータル的にコーディネートするサービスに力を入れる百貨店が増えています。
この先、スタイリストはテレビや雑誌の中だけで活躍する特別な仕事ではなく、これまで以上に私たちの日常生活に身近な存在になっていくように思われます。
ショー、イベントで活躍するスタイリスト
年間を通して大小さまざまなファッションショーが開催されています。
このようなイベントの場で活躍するスタイリストは、モデルが着用する衣装や衣装に合う小物などをコーディネートします。
この仕事では「魅せる」ことが中心となるため、ショーのコンセプトをきちんと踏まえながら、独創的なセンスとトレンドを上手に組み合わせ、人々に大きな感動を与える力がとくに求められます。
専門分野で活躍するスタイリストも
スタイリストの中には、テレビに映画にショーに…といった具合に幅広い分野で活躍する人がいる一方、特定の業界や分野に強みを持つ人もいます。
たとえば、「ブライダルスタイリスト」がその一例です。
このスタイリストは、主に結婚式場やブライダル関連会社に勤め、結婚式を控えたカップルを対象に、ブライダルファッションをトータルでコーディネートする役目を担います。
もちろん、どのような仕事の依頼にも広く応えられることは大きな強みとなりますが、近年では、特定の分野に関する専門知識を持つスタイリストが歓迎される傾向にあるようです。
スタイリストの鞄の中身は?
スタイリストは、毎日多くの荷物を持って出歩きます。
鞄も大きなものを持つことが多いのですが、いったいその中には何が入っているのでしょうか。
スタイリストが持ち歩くアイテム
ポラロイド(デジカメ)
写真をすぐ撮り、すぐ確認できるのがメリット。
コーディネートのチェック等に使うのに便利です。
さらに、ポラロイドにすればプリントされた写真に字も書き込めるため、メモを残す必要がある現場では重宝します。
筆記用具、メモ、ノート類
打ち合わせや現場で細かい指示や修正点などをすぐに書き込んだり、筆談用に使ったりと、確実に何度も使う物なので必須です。
ガムテープ等のテープ類
洋服についたホコリをとったり、靴裏が汚れないように保護したりするのに使います。
また、撮影中、洋服のタグが見えないように隠して止めておく場合にも活躍します。
もやし(洋服用タグ)
撮影中に切ってしまったタグをもう一度再生して、リース先に戻すために使います。
ホコリ取り(ころころ)
ガムテープで取れないような広い範囲のホコリを取るために使います。
はさみ、カッター類・メガネ拭き類
洋服からでた糸を切ったり、汚れが目立つメガネをきれいにしたりするために使います。
靴べら
革靴を履かせる時に必要です。
スクラップブック
自分のイメージをよりイメージしやすい形で伝えるため、雑誌の切り抜きやポートレートを持ち歩くスタイリストも多いです。
もちろん、これはまだまだ一部で人により中身は変わります。
バッグの形・種類は?
とくに指定があるわけではありませんが、撮影中に持ち歩きたいのは斜めがけのバックです。
持ち手の部分が着脱式になっており、ガムテープなどを常に持ち手に通せるものだと便利です。
使用するバッグは、大きいサイズのものを基本に、コンパクトなサイズのものまで数種、揃えておくと良いでしょう。
毎日外を歩き回りますし、重い荷物をガンガン入れていくこともあるため、破れにくく、タフな物が特におすすめです。
スタイリストは現場でどのような状況に遭遇しても、迅速に対応しなくてはいけません。
荷物が多くなると持ち歩くのが大変ではありますが、万が一の場合に備え、少しでも使う可能性がある道具は常に揃えておくべきなのです。
スタイリストとファッションコーディネーターの違い
スタイリストと関連する職業として、「ファッションコーディネーター」が挙げられます。
「スタイリスト」と「コーディネーター」の役割の違いは、衣装のイメージを完成させるまでの工程にあります。
ファッションコーディネーターは、モデルやタレントに「どんな衣装・小物を身に着けてもらうか」を決定するのが仕事です。
衣装や小物の組み合わせが決まったら、今度はスタイリストが「衣装・小物をどのように着こなしてもらうか」を考えます。
たとえば、コーディネーターがシャツとデニムを合わせることに決めたら、スタイリストはシャツのボタンをいくつ開けるか、裾はボトムにインさせるか、デニムはロールアップさせるか、といった「着こなし」を決定します。