歯科衛生士になるには? 必要な資格は?
歯科衛生士になるまでの道のり
歯科衛生士になるには国家資格が必要
歯科衛生士は歯科医師のサポートをする仕事です。
歯科助手とは違い、患者さんの口の中に直接手を入れ、むし歯や歯周病予防の処置をすることができます。
たとえば、歯石や歯垢を取るクリーニングやフッ素の塗布などをおこないます。
また、患者さんに対して正しい歯磨き方法や生活習慣の改善指導をすることができ、医師がおこなう抜歯の補助に立ち合うことも数多くあります。
そのため、資格や経験がなくてもなれる歯科助手とは違い、歯科衛生士は国家資格を取得することが義務付けられています。
では、歯科衛生士の資格を取得するにはどうすればよいのでしょうか。
歯科衛生士養成教育機関で学ぶ
国家試験を受けるには、まず歯科衛生士の勉強ができる教育機関に通わなければなりません。
高校卒業後、厚生労働省と文部科学省が認定する歯科衛生士養成の専門学校や短期大学に通い、3年間勉強をします。
養成機関の修業は平成17年4月1日より以前は2年以上と定められていましたが、以降は3年以上となり現在に至ります。
これは講義と実習の資質の向上のためといわれています。
1年目は講義中心、2年目は基礎実習、3年目は応用的な内容の実習をおこないます。
多くの人は専門学校もしくは短大で学びますが、広島大学歯学部口腔健康科学科など、歯科衛生士の試験が受けられる4年制大学も全国に数校存在します。
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歯科衛生士の国家資格について
歯科衛生士国家試験の概要・難易度
指定の学校で3年間勉強をした後は、国家試験を受験します。
試験は毎年3月に実施されており、試験内容は歯科に関する知識のほか人体の構造・機能についても出題されます。
日本歯科衛生士会によると、国家試験の合格率については例年95%以上という統計が出ているので、養成学校で知識と技術をきちんと勉強すればほぼ合格できるでしょう。
歯科衛生士になるには国家資格取得が必須となりますが、取ったら安心というわけではありません。
合格をしてからが本当のスタートラインだといえます。
なお、歯科衛生士として5年以上の臨床経験があると、ケアマネジャーの受験資格を得ることができます。
一生モノの資格
歯科衛生士の資格の特徴は、一度取得すれば永久的に効力を失わない点にあります。
そのため、就職後に何かしらの事情で退職したとしても、歯科衛生士としてすぐに職場復帰することも可能です。
もちろん、いくら資格があっても経験に見合う技術が身に付いていなかったり、スタッフや患者さんとのコミュニケーションが下手であったりすれば、どんな職場であろうと仕事を続けていくのは難しいでしょう。
また、歯科診療技術などは時代とともに少しずつ変わりゆくため、ブランクがあれば講習会などに参加して再度勉強が必要なこともあります。
資格を取ったから一生安泰というわけではありません。
しかし、向上心を持って仕事に取り組む姿勢があれば、国家資格を持っていることは大きな強みとなるでしょう。
歯科衛生士になるための学校の種類
歯科衛生士の専門学校
歯科衛生士になるための学校は、専門学校と短大、4年制大学に分けられます。
なかでも専門学校に通う人が多く、歯科衛生士全体の7〜8割が専門学校の卒業生だといわれています。
専門学校では、一般科目が必修となる大学とは異なり、歯科衛生士になるための学習に集中できるメリットがあります。
歯科衛生士の要請に特化しているため、実習の設備や機器が整っている学校が多く、臨床実習の時間数も多い傾向があります。
専門学校に通う場合の学費は、年間80〜150万円ほどが相場です。
短期大学・大学
専門学校以外にも、短期大学や4年制大学に設置されている歯科衛生士養成コースに通って歯科衛生士を目指す人もいます。
大学では歯科衛生士に関すること以外にも教養科目や一般科目を履修する必要があります。
専門学校よりは遠回りになると感じるかもしれませんが、資格取得のサポートが充実している短大・大学もたくさんあります。
一般科目やサークルなどで他の学科の学生と交流できる点も大学に通うメリットです。
また、短大卒・大卒の学歴があると、歯科衛生士以外にも進路変更しやすくなります。
短大・4年制大学に通う場合の学費は、国公立であれば年間50〜70万円ほど、私立であれば専門学校とあまり変わらない額となるでしょう。
歯科衛生士になるための学校の学費・費用の違い(専門学校・大学)
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歯科衛生士に向いている人
手先が器用な人
歯科衛生士は歯科助手とは異なり、患者さんの口内に直接触れて処置をおこないます。
歯石や歯垢のクリーニング、ブラッシング指導、口腔ケアなど、傷つきやすい口の中で療器具を扱うため、手先の器用さが求められます。
細かい作業が得意な人、好きな人は歯科衛生士に向いているといえます。
ただし、器用さに自信がなくても諦める必要はありません。
養成学校では実習のカリキュラムも充実しているので、練習を重ねればきちんと技術を身につけることができます。
親しみやすい人
歯科医院には小さな子どもからお年寄りまでさまざまな年代の人が訪れます。
患者さんの多くは痛みや不快感を抱えており、さらに治療に対して恐怖心を持つ人は多いです。
施術に不安を抱えた患者さんが気軽に悩みを相談できたり、会話のなかで安心感を与えられたりするような「親しみやすさ」が求められます。
親しみやすさを身につけるには、普段から幅広い年代の人とコミュニケーションをとることを心がけるとよいでしょう。
歯科衛生士のキャリアプラン・キャリアパス
1年目はくじけずに見て学ぶ
新人1年目の歯科衛生士は、現場に出て初めて覚えることがたくさんあります。
新人だから分からなくても仕方ない、失敗しても仕方ないと諦めたり、くじけたりしないように心がけましょう。
学校で習ったことと実際に医療現場で実践することには多かれ少なかれ違いがあり、戸惑うことも多いです。
しかし、患者さんにとってはベテランも新人も関係ありません。
不安そうにオロオロと作業をする歯科衛生士、失敗するたびに泣く歯科衛生士では、歯科医院のスタッフをがっかりさせるだけでなく、患者さんを不安にさせてしまいます。
たとえ失敗しても次に生かせるよう素直で前向きな姿勢でいることが大切です。
切磋琢磨できる同期を探す
歯科衛生士になりたてのころは、自分が思い描いていた「理想の歯科衛生士」や「理想の職場」とのギャップに悩んだり、失敗続きでメンタルが弱くなったりしやすい時期でもあります。
これを乗り越えれば、一人前の歯科衛生士として仕事をこなせるのですが、一人では難しいかもしれません。
そんなときに頼りになるのが同期の歯科衛生士です。
先輩でも学生の後輩でも、上司である歯科医師でもなく、同じ立場でがんばる同期の存在は大きいものです。
しかし、歯科医院はもともと少人数のスタッフで切り盛りしているので、一般企業のように同期で入社する歯科衛生士は少ないでしょう。
就職活動の段階から、歯科医師が数名所属しているような大きめの歯科医院を探すのがおすすめです。
同期と一緒に勉強したり、ときには仕事の愚痴を言ったりと、互いに励まし合って切磋琢磨することができます。
大きな歯科医院ではなく個人の歯科医院に就職した場合でも、休日に歯科医師会の主催するセミナーや講習会に積極的に参加して、そこで同期の歯科衛生士を探し、仲良くなるのもよいでしょう。
多様なキャリアアップが可能
歯科衛生士は、実務経験を積むと多様なキャリアが選択肢として見えてきます。
歯科医院内の「衛生士長」という役職に就いてほかの歯科衛生士をとりまとめたり、「指導衛生士」になって1年目の新人を指導したりするのもキャリアパスの一つです。
経験を生かして転職の際に衛生士長として移籍する人もいます。
また、歯科医院や病院で3〜4年の実務経験を経たあと、フリーランスとして働くケースもあります。
最近は予防歯科の考え方が広く普及しており歯科衛生士の需要が高まっているため、キャリアと技術を持った歯科衛生士であれば複数の病院から声がかかるでしょう。
さらに、専門性の高い知識やスキルを持つ歯科衛生士は「認定歯科衛生士」の資格を取ることができます。
ホワイトニングや老年歯科など、それぞれの技術に関する専門性の高さを証明する資格なので、転職の際にも有利に働きます。
また、5年以上の実務経験のある歯科衛生士は「ケアマネジャー(介護支援専門員)」の受験資格を得られます。
高齢化が進むなかで歯科衛生士の需要が高まっている福祉分野へのチャレンジも容易となります。
歯科衛生士を目指せる年齢は?
上記のデータによると25〜29歳の歯科衛生士が最も多いですが、歯科衛生士は何歳からでも目指せる職業です。
国家資格の受験に年齢制限はなく、養成学校にも制限が設けられていないことがほとんどです。
高校卒業後〜20代で目指す人が多いものの、専門学校では30〜40代の生徒も学んでいます。
ただし、同じ資格を持っている20代の志望者と比べると、就職の際には多少不利になるかもしれません。
応募者の倍率が少ない地方の歯科医院を選ぶ、意欲をアピールするなど、年齢の差を埋める努力は必要となるでしょう。
参考:歯科衛生士に関するデータ
歯科衛生士数の推移
歯科衛生士の数は一貫して増え続けています。令和2年時点での歯科衛生士数は142,760人となっています。
年齢別の歯科衛生士数
年齢別の歯科衛生士数は25歳〜29歳が最も多く19,688人となっています。
歯科衛生士の働き方の種類・雇用形態
歯科衛生士の雇用形態
歯科衛生士はさまざまな雇用形態で働くことができます。
それぞれの理想の働き方ができる点にメリットを感じて歯科衛生士を志す人も多いです。
正社員もしくはアルバイト・パートでの募集が多いですが、なかには紹介予定派遣やフリーランスとして働く人もいます。
正社員の歯科衛生士は、基本的には一般企業の会社員と同じように1日8時間程度の勤務となり、診療時間が長い職場では早番・遅番などに分けてシフトが組まれます。
パートやアルバイトの場合は、勤務日や時間を柔軟に選べるため、家庭や子育てと両立したい人でも働きやすくなりますが、給与・待遇は正社員に劣ります。
ある程度の実務経験がある歯科衛生士であれば、フリーランスとして複数の歯科医院を掛け持つなどより柔軟な働き方が可能となります。
それぞれの雇用形態について詳しく解説します。
正社員の歯科衛生士
正社員の歯科衛生士の仕事内容
正社員の歯科衛生士の仕事内容は勤務先によって異なりますが、基本的にはそれぞれの勤務先において歯科衛生士が求められる業務全般を任されます。
たとえば一般歯科の場合、基本的な3つの業務(診療補助、保健指導、予防処置)を全般的に担うことになります。
さらに、矯正歯科や審美歯科などの専門領域に特化した医院では、それぞれの専門知識やスキルを身につける必要があります。
仕事内容としてはアルバイトやパートの歯科衛生士とそれほど変わりませんが、ほかのスタッフを指導する立場にもなるため、勤務先の業務は一通りこなせる人が多いです。
正社員の歯科衛生士のメリット・デメリット
正社員の歯科衛生士は業務全般を担うため、ほかの雇用形態のスタッフよりも覚えることが多く、診療が長引いたら真っ先に残業を任されるといったデメリットがあります。
一方で、給与や待遇はアルバイト・パートの歯科衛生士よりも良いのが一般的で、女性にとって関心の高い産休や育休などが取りやすい職場も多いです。
歯科衛生士は資格職なので、出産などで退職をしても復職できる可能性がほかの職業より高いのが特徴です。
ただし、ブランクが生まれると新卒の応募者がライバルとなるため、誰でも簡単に再就職できるわけではありません。
正社員であれば籍を置いたまま育児に専念できるので、出産・育児と両立しながら働きたい人にとっては大きなメリットとなるでしょう。
派遣の歯科衛生士
派遣の歯科衛生士の働き方
歯科衛生士の雇用形態として「派遣」を選んだ場合、どういった働き方になるのでしょうか。
厳密にいうと、歯科衛生士の派遣は派遣法で禁止されています。
これは歯科衛生士に限らず、医師や歯科医師、薬剤師、看護師なども同じで、医療従事者は原則禁止となっています。
しかし、歯科衛生士が派遣として働けないのかというと、そうではありません。
紹介予定派遣という働き方や、常勤の歯科衛生士が産休・育休を取得している間だけの「代替要員」としてであれば、派遣社員や派遣アルバイトといった形態で働くことが認められています。
「紹介予定派遣」とは、登録した派遣会社から医院などへ派遣され、一定期間働いたのち、双方が合意すれば派遣先と直接雇用契約を結ぶといったスタイルです。
紹介予定派遣のメリットは、派遣会社が医療機関と派遣の歯科衛生士とのマッチングをしてくれるので、求人を自分で探す必要がない点にあります。
また、勤務条件(勤務時間、時給)などの待遇については書類上で提示されていますが、具体的に交渉をすすめるのは派遣会社なので、希望条件の相談も可能です。
派遣の歯科衛生士の時給・待遇
紹介予定派遣や代替要員として働く歯科衛生士の時給は、アルバイトの時給と大差ありません。
しかし、派遣会社のシステムによってはアルバイトよりも高めに求人が出されている場合があります。
なぜなら、派遣の場合は事務的なコストがかからないからです。
歯科医院に限らず、企業が正社員やアルバイトを直接雇うとなると、シフト調整や給与計算、社会保険、雇用保険、有給休暇の調整などが必要となり、多くのコストがかかるうえ、これらの事務処理を社内でおこなわなければなりません。
保険料の負担や有給休暇は給与として手にできるお金ではありませんが、雇用先の会社が負担する福利厚生です。
直接雇用では福利厚生が充実する反面、時給は低くなってしまいます。
一方、派遣の場合は「時間×時給」の計算だけをおこない派遣会社に支払うといった簡易な処理となるため、採用コストや事務的なコストがかからず、働いた分が直接時給に反映されやすいのです。
派遣の歯科衛生士の仕事内容
紹介予定派遣の歯科衛生士の仕事内容は、正社員の歯科衛生士の仕事内容とほとんど変わりません。
しかし、派遣期間中の歯科衛生士は、勤務先に直接雇用されている正社員の歯科衛生士に任されている仕事であっても、派遣は業務外であるとして区別され、担当できない場合があります。
派遣の歯科衛生士のメリット
紹介予定派遣の歯科衛生士のメリットは、
・勤務条件に合致したものを選べる
・勤務条件などの伝えにくい交渉は派遣会社が間に入ってくれる
・契約期間が決まっているためあっさりとした人間関係で働ける
などです。
歯科医院に勤務した場合、人間関係に悩む歯科衛生士も多いです。
そういった場合には、歯科医院で実際に働いてみてから雇用契約を結べる「紹介予定派遣」という働き方もあるので、求人を探す場合に覚えておくとよいでしょう。
アルバイト・パートの歯科衛生士
アルバイト・パートの歯科衛生士の仕事内容
歯科衛生士は、正社員以外にもアルバイト(パート)という働き方ができます。
アルバイトと正社員の歯科衛生士の仕事内容に差はほとんどありません。
いずれも歯科衛生士という国家資格を保有しているので、歯科に関する一定の知識、レベルは保証されていると受け取られます。
もし、経験年数が浅い、ブランクがあるなどの場合は、実地で勉強する謙虚な姿勢で現場に臨むようにしましょう。
また、歯科医院でアルバイトを雇用する場合、正社員と同じ時間帯ではなく、正社員でカバーしきれない時間帯にシフトが組まれるケースが多いです。
正社員の歯科衛生士と一緒に働かない場合は、たとえアルバイトでも責任感が不可欠です。
引き継ぎ事項などをはじめ、報告、連絡、相談など社会人として基本的な事柄を伝えられるようにしましょう。
アルバイトの歯科衛生士の待遇
アルバイトの歯科衛生士の待遇は、正社員の歯科衛生士とほとんど変わりません。
賞与などはやはり寸志程度になりますが、残業もほとんどなく、看護師のように夜勤もありません。
アルバイトであっても歯科衛生士という国家資格があるので、診療のサポートや歯科に関する知識全般に関しては、ほかのスタッフよりも歯科医師からの大きな信頼を得ることができ、やりがいを感じられるでしょう。
アルバイトの歯科衛生士の時給
アルバイトの歯科衛生士の時給は、地方によって差があります。
首都圏では時給1,500円〜2,000円、地方では時給1,000円〜1,200円程度が相場となっています。
ただし、実務経験の年数や年齢によって上下するため、実際は面接時や採用後に人柄を見て決定されることが多いです。
賞与の有無や程度、昇給の有無、認定資格保有者への手当の有無なども、歯科医院によってさまざまです。
時給だけで決めてしまわずに、福利厚生など待遇面も尋ねることが大切です。
フリーランスの歯科衛生士
実務経験を積んだ歯科衛生士のなかには、フリーランスに転身する人もいます。
欧米ではフリーランスの歯科衛生士の存在はあまり珍しくなく、日本でも少しずつ増えています。
主な働き方としては、個人事業主として医院・病院と契約を結び、決められた条件のもと勤務するスタイルが一般的です。
たとえば、A医院では日給15,000円で週に2回、Bクリニックでは日給18,000円で週に1回といったように、複数の医院を掛け持ちすることも可能です。
仕事内容はほかの雇用形態と変わらないため、経験を積んだ歯科衛生士であればハードルもそれほど高くありません。
働く日数や時間、場所を柔軟に決められるので、自由に働きたいと考える歯科衛生士にとっては魅力的な働き方だといえます。
ただし、安定して仕事があるとは限らない点はフリーランスに共通のデメリットです。