社会保険労務士の需要・現状と将来性

社会保険労務士の現状と需要

社会保険労務士は、世の中のさまざまな資格のなかでも近年では専門学校の人気資格となっており、毎年たくさんの人たちが合格をめざして受験しています。

2019年度の試験結果を見てみると受験者数は38,428人にものぼり、以前よりも広く世間から認知される職業となりました。

社会保険労務士の仕事が注目されるきっかけとなった出来事のひとつが、2007年に発覚した5,000万件の年金記録紛失の問題です。

それまで年金に対してあまり関心を持っていなかった人たちが、自分の年金の支給額や支給開始時期に疑問や不安を感じ、年金の専門家である社会保険労務士への相談が急増しました。

また、同時に団塊世代の大量退職によって退職金への関心が高まったり、不況による「派遣切り」の問題が起きたりしたこともあり、社会保険労務士の需要はさらに高まりました。

現在も日本の大きな課題である少子高齢化の問題や、それにともない社会保険料負担が年々上がっていることから、個人・法人問わずに年金や保険分野への関心は非常に高いといえるでしょう。

今後も、複雑化する雇用形態の問題や年金・保険の問題を解決するために、社会保険労務士のさらなる活躍が期待されています。

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社会保険労務士の将来性

一方で、少しずつ需要が減ってきた業務もあります。

それは、労務関係の手続き代行や給与計算です。

以前であれば、従業員が健康保険に加入するときの手続きや、月々の給料や退職金の計算を社会保険労務士に頼むケースが多々ありました。

しかし、景気の変動とともにできるだけ外部委託を減らそうと考える企業も出てきており、こうした業務の発注は少しずつ減ってきています。

その流れを後押しした背景には、世の中のIT化があります。

今はインターネット上で検索すれば、あらゆる情報に誰でも簡単にアクセスできる時代であり、わからないことがあってもすぐに解決法を見つけることができます。

そして労務関係の手続きについても、以前のように専門家である社会保険労務士に相談することなく、総務担当者がネットで調べればすぐに解決できるようなケースが増えてきたのです。

さらに、確定申告や給与計算の専用ソフトが広く普及したことにより、パソコン上に数字を打ち込むだけで簡単に計算ができるようになっています。

今後はAI(人工知能)がどんどん発達していくことを考えると、単純な書類作成や給料計算などの業務は機械に代替されていく可能性が高いでしょう。

社会保険労務士の今後の活躍の場

今後は書類作成や手続き代行といった「AIが代替可能な業務」ではなく、労務や保険に関する複雑なケースへの対応が社会保険労務士には期待されています。

これらの分野は法改正も多いため、一般の人が最新の情報を追い続けるのは非常に困難なものとなっています。

さらに、政府の重要政策のひとつである「働き方改革」を機に、従業員の労働環境を見直す重要性や、それに対する世間の関心度も高まっています。

セクハラやパワハラなどの「各種ハラスメント問題」や、「ブラック企業問題」、「若者の早期離職」など、企業が対応しなければならない労働環境の課題は多様化している状況です。

このように激しく変化する環境を乗り越えるうえで、労務・保険分野のプロフェッショナルである社会保険労務士の活躍が期待されているのです。

これからの社会保険労務士はただ専門知識があるというだけではなく、依頼者の悩みを解決できるようなコンサルティング能力を磨き、主体的な提案や行動がより一層求められるといえるでしょう。

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