精神保健福祉士の養成校ではどんなことを勉強する? 実習は大変?
精神保健福祉士の養成校ではどんなことを学ぶ?
精神保健福祉士になるための養成校で実施されるカリキュラムは、資格を主管する厚生労働省によって、授業科目や各学習時間が定められています。
このため、精神保健福祉士の養成校には、大学や専門学校、養成施設など複数ありますが、学べる内容は共通しています。
その内容は多岐にわたりますが、おおまかには座学と実習の2つに大別できます。
座学において知識を身につけることと、実習において現場経験を積むこと、そのどちらも大切ですが、どちらかというと後者のほうがより重視される傾向にあります。
精神保健福祉士は、精神に障がいを抱える人やその家族からの相談に応じることが仕事であるものの、ただ事務的に相談対応をこなすだけでは、真にその役割を果たしているとはいえません。
本当に必要なことは、それぞれの障がい者に寄り添い、ともに解決策を見出そうする、いうなれば「人間味ある対応」であり、そうした対応ができる人材になるには、実際の現場での実習体験が不可欠です。
以下では、座学と実習の2種類について、具体的な内容をご紹介します。
なお、精神保健福祉士の養成校のなかには通信課程もあり、座学については自宅で学習することが可能ですが、実習については、実際の現場で行わなければならないという点には注意する必要があります。
精神保健福祉士養成校の座学
精神保健福祉士の養成校における座学の科目は、「共通科目」と「専門科目」の2種類に分けられます。
共通科目は、「人体の構造と機能及び疾病」「現代社会と福祉」「福祉行財政と福祉計画」「社会保障」など、福祉職として必要な基礎知識を学ぶ科目です。
社会福祉士や介護福祉士など、ほかの福祉士国家資格を目指す人と同じ授業を受けるケースが一般的です。
一方、専門科目は、「精神疾患とその治療」「精神保健福祉相談援助の基盤」「精神保健福祉に関する制度とサービス」などであり、精神保健福祉士に求められる専門知識を学びます。
授業を受けるのは精神保健福祉士を目指す人だけになり、授業はより高度な内容になります。
なお、大学などでは、この共通科目と専門科目以外の、精神保健福祉士に関係のない「一般教養科目」を履修することも可能です。
精神保健福祉士養成校の実習
実習概要
精神保健福祉士国家試験を受けるためには、28日間以上かつ210時間以上の「精神保健福祉援助技術現場実習」を受けなければならないと定められています。
実習場所は、精神病院などの医療施設と、就労継続支援センターなどの福祉施設の2箇所に分けて実施され、前者は12日間(90時間)以上、後者は16日間(120時間)以上の実習を行う必要があります。
施設の受け入れ先には定員がありますので、同じ学校に通っていても、実際の実習先は生徒によってばらばらです。
実習生は、各施設に勤める先輩の精神保健福祉士の指導の下で、実際の患者や施設利用者への個別支援実務を経験します。
ただし、医療施設や福祉施設に勤務し、1年以上相談援助業務に携わったことがある人については、十分に現場経験があるとみなされて、実習が免除されます。
実習は大変?
実習の目的は、普段あまり接する機会のない精神障がいを抱える患者や利用者との交流を通じて、学んできた知識を深めたり、福祉の現場における実情を肌で体感したりすることです。
しかし、実際の実習内容は、施設や担当指導者によってかなり大きく異なります。
過去には、相談業務を行うのではなく、掃除や洗濯といった雑用しかやらせてもらえなかったケースや、ろくに指示を与えられず、1日中放置されたケースもあったようです。
また、実習そのものは充実していても、実習終了後に課される毎日のレポートの分量が膨大で、ろくに睡眠時間が取れなかったというケースもあります。
それらは一部の極端な事例にすぎないとしても、精神保健福祉士の実習は決してやさしくはありませんので、程度の差こそあれ、誰もが大変さやつらさを経験すると覚悟しておいたほうがよいでしょう。
とくに精神障がい者とふれあった経験がない人については、そもそもどう声をかけていいかすらわからないかもしれません。
ただ、勝手な想像やネットの意見などに囚われて、過度に実習を恐れても何の意味もありません。
大切なことは、ひとつでも多くのことを現場で吸収しようとする、前向きな姿勢を保つことです。
謙虚な態度を忘れず、自分から積極的に担当指導者に教えを求めれば、多少戸惑うことがあったとしても、実習を実りあるものとすることができるでしょう。