精神保健福祉士の需要・現状と将来性

精神保健福祉士の現状

精神障がい者というと、かつては精神病院などで入院生活を送るケースが一般的でしたが、時代の変遷とともに、身体障がいに対する考え方も大きく変わりました。

現在では、精神障がいがあっても、地域の一員として暮らし続けられるよう、医療、福祉、住まい、就労、教育など、垣根を超えた包括的な支援体制が構築されつつあります。

これにともなって、精神障がい者を支援する精神保健福祉士も、地域のありとあらゆるところに散らばり、分野の異なるさまざまな施設で活躍するようになっているのが現状です。

また、国では関連法案を整備するなどして、アルコール依存症やギャンブル依存症の患者への対策も推し進めていますが、そうした患者の受け皿としても精神保健福祉士の活躍が期待されています。

このように、近年は精神保健福祉士の役割がどんどん増していく傾向にあり、社会全体からさらなる活躍が求められるようになっています。

参考:厚生労働省 精神保健福祉士に求められる役割について

精神保健福祉士の需要

精神障がいというと、一般的にはあまり馴染みが薄く、縁遠い世界のように感じられるかもしれません。

しかし、精神障がいを抱える人は非常に多く、たとえば全国にある病院の病床数のうち、精神病床は約35万床、全体のおよそ20%を占めています。

単純に計算すると、入院患者の5人に1人は精神疾患をわずらっている人ということです。

このため、精神病院をはじめとする医療施設からの精神保健福祉士の需要はかなり強くありますが、一方、精神保健福祉士の離職率は低めで、スタッフの入れ替わりがあまり見られないため、求人数は限定的です。

ただ、近年では、上述のとおり精神障がい者の地域参画が積極的に推進されているため、医療施設に代わって各地域にある福祉施設における求人数が大きく伸びています。

とくに、2018年から一般企業に対して従業員数に応じた精神障がい者の雇用が義務化されたこともあり、就労支援を手掛ける福祉サービス事業所で働く精神保健福祉士の需要増が非常に目立ちます。

精神保健福祉士の将来性

精神保健福祉士の資格登録者数は、全国でおよそ85,000人ほどにのぼっています。※2019年現在

年間3000人~4000人ほどのペースで堅調に増え続けていますが、求められる社会的役割と期待が高まっている現状を勘案すれば、まだまだ供給量より需要量のほうが上回り続けるでしょう。

同じソーシャルワーカーである社会福祉士が約23万人、介護福祉士が約162万人いることを考えても、精神保健福祉士はまだまだ十分とはいえません。

さらに、これから日本が超高齢化社会を迎えるにあたって、認知症などの精神疾患を抱える高齢者も増える見通しであり、グループホームやケアホームといった施設からの求人も増えると考えられます。

時代ともに職域が拡がり続ける精神保健福祉士の将来性はかなり明るく、今後も安定して働き続けることができるでしょう。

精神保健福祉士の今後の活躍の場

これからの精神保健福祉士の活躍の場は、障がいを抱える人だけでなく、一般人を対象とした領域にまでさらに拡がっていく見通しです。

たとえば一般企業では、職場でのストレスをケアしたり、うつ病による離職を防ぐために、精神保健福祉士を雇用し、従業員に対するメンタルヘルスケアを実施するケースが増えつつあります。

小学校や中学校などの教育機関でも、精神保健福祉士がスクールソーシャルワーカーとして勤務し、子どもたちの心のケアを行い、いじめ、不登校といった問題に取り組んでいるところも見られます。

さらに、高齢者のなかにも定年退職を機に社会との関わりを失ったり、配偶者が死亡したりして、孤独感に苛まれる「老人性うつ」にかかる人が増えています。

ストレス社会といわれる現代においては、障がいのあるなしに関係なく、数多くの人に「心の問題」が蔓延しているため、今後、さらなる精神保健福祉士の活躍が期待されます。