臨床検査技師の仕事とは? わかりやすく仕事内容を紹介
医師や看護師などと同じように、医療現場で人の命や健康を守るための重要な役割を担っています。
この記事では、臨床検査技師の詳しい仕事内容や役割、活躍の場などをまとめて解説しています。
臨床検査技師の仕事とは
臨床検査技師は、病気の診断や治療を目的として、医師の指示の下で各種の臨床検査を行う職業です。
「臨床検査」とは、医師が診療する際に患者さんの病気やケガの状態を評価するための検査のことで、問診とあわせて、医師が患者さんの身体の状態を客観的に診るために不可欠なものとなっています。
また、臨床検査をすれば、患者さんが症状を自覚する前に異常をとらえることもあり、病気の早期発見、早期治療につながります。
医師は検査によって得た情報をもとに患者さんを診断するため、臨床検査は診療において非常に重要なものとなります。
臨床検査技師は医療スタッフの一員として、重要な役割を担う仕事です。
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臨床検査技師の業務の内容
臨床検査に関する高度な知識や技術をもつ臨床検査技師は、患者さんの身体から検査した結果を分析・評価して、医師にその検査情報を伝えます。
患者さんの症状や病気を正しく把握するためには、いろいろな材料が必要となります。
そのため、臨床検査技師は「検体検査」と「生理学的検査」の2種類の検査を行い、患者さんの状態を知るためのデータを得ます。
検体検査:採取した検体を検査する
「検体検査」とは、患者さんの体から採取した血液や尿、喀痰、生検材料などを検査するものです。
検体中の物質濃度や働きを調べたり、組織の細胞を染色し、細胞に異変が無いかを検査します。
これにより、内臓の特定の部位に異常がないか、あるとしたらどの程度であるかがわかります。
また血液は体中をめぐる物質であるため、検査をすることでさまざまな情報を得られることから、「採血」も臨床検査技師の業務範囲として行われます。
検体検査には、以下のようなものがあります。
一般検査:さまざまな検体の中の組成や感染を調べる検査
一般検査は、尿検査が主検査であり、尿中のタンパクや糖、血液などの値に異常がないか調べます。
尿中の細胞や結晶を顕微鏡で観察し、尿道の感染症や腎臓の健康状態を調べることもあります。
他には寄生虫検査や便検査、髄液検査などがあります。
生化学検査:血液中の物質の濃度などを調べる検査
血液中の糖、タンパク、酵素などを測定することによって、臓器の働きが正常か、異常がある場合どの程度の重症度かを調べます。
最近ではオートメーション化が進んでいる検査法であり、さらにマイナーな物質の定量検査などは、外部の検査機関に外注することも多いです。
血液検査:血球に異常がないかを調べる検査
血液中の赤血球、白血球、血小板などの大きさや数を測定したり、異常細胞を調べたりします。貧血や白血病などの可能性を調べます。
この検査もオートメーション化が進んでいます。
微生物検査:感染症の有無や抗生剤の効き具合を調べる検査
尿、便、喀痰、血液などを用いて、その中の微生物の種類や、抗生物質がきちんと効いたかどうかを調べます。
免疫検査:血中の抗体濃度や特殊な物質を調べる検査
血液を用いて肝炎や梅毒などの感染症、腫瘍マーカー、アレルギーなどを調べます。
院内で行う頻度が少ない検査は、設備費用の節約のため、外部の検査機関に外注に出すことが多いです。
輸血検査:手術前など、輸血パックを使用する前に必ず行う検査
血液型には、ABO式やRh式のほか、白血球の血液型など多くの血液型が存在しており、人それぞれ型が違います。
そのため詳しい血液型を調べたり、輸血する血しょうと患者さんの血球、患者さんの血しょうと輸血する血球が凝固しないことを確かめます。
病理検査:異常な細胞の有無や病気の進行度合いを見る検査
採取された組織や細胞を用いて標本を作製し、顕微鏡で観察して、癌などの異常細胞がないかどうかを調べます。
病理解剖の補助をすることもあります。
生理学的検査:体を直接検査する
「生理学的検査」とは、患者さんの体に直接プローブや電極を付けて行う検査のことです。
これにより、患者さんの体内で実際にどのような動きがあるのかといったことや、内臓の腫れ・血管の状態などを画像で確認できます。
検査キットやオートメーション化により、多くの検体検査が簡易化していますが、生理検査は技師が直接かかわらなくてはいけません。
人間の体はそれぞれ微妙に内臓の位置や大きさに違いがあり、必要な映像を上手に得るためには一定の手技が必要だからです。
その際、患者さんが怖がったり、緊張してしまわないよう誘導するのも検査技師の仕事です。
主な生理学的検査は以下の通りです。
心電図検査:心臓の動きが正常か調べる
電極を付け、不整脈や心筋梗塞など心臓に異常がないかを調べます。階段昇降などにより負荷をかける負荷心電図もあります。
呼吸機能検査:肺活量や呼吸機能を調べる
息を吸ったり吐いたりしてもらい、肺の機能に異常がないかを調べます。
脳波検査:てんかんなどが疑われる際などに行う検査
頭部に電極を付け、脳波を記録します。脳神経の病気などを調べます。
超音波(エコー)検査:臓器の形や大きさ、異常などを調べる検査
超音波を当てて、臓器の状態を観察します。腫瘍、結石などの異常や、妊娠中の胎児の動きなどを調べます。
筋電図検査:神経や筋肉の働きを見る検査
電気刺激や針を用いて神経や筋肉の機能を調べます。針を用いた筋電図検査は検査技師にはできないため医師が行います。
臨床検査技師が行わない検査
臨床検査技師はさまざまな検査のプロですが、性質上行わない検査もあります。
まず、放射線を使用するレントゲン画像などは、放射線の扱いを許された「診療放射線技師」でないと行えません。
また、患者さんの体の外からではなく、口や肛門からカメラを挿入して行う「内視鏡検査」は、「医師」の管轄です。
MRIに関しては臨床検査技師も行えますが、MRIは放射線科に設置されることが多いため、診療放射線技師が行うのが通例です。
臨床検査技師の役割
医療現場は、さまざまな専門的な知識・技術を持つ人たちがチームを組んで動くことが多いです。
医療チームの中で、臨床検査技師はどのような役割を担うのかを解説します。
チーム医療の一員として治療に携わる
臨床検査技師に限りませんが、現在の病院の体制は、職場の規模が大きくなるほど「チーム医療」の考え方で動いています。
臨床検査技師は、あくまでも正しく検査を行い、できる限り正確なデータを得るまでが役割です。
そして臨床検査技師や診療放射線技師が出した検査データをもとに、医師が今後の治療方針を決めます。
このように、臨床検査技師は医療現場において「臨床検査」という手段を用い、患者さんの病状管理や健康管理を支える重要な役割を担っています。
健康かそうでないかを調べる
病気の人が集まる医療機関においては、臨床検査技師は「患者さんの治療」という一つの目標に向かい、チームプレイで役割を果たします。
しかし、臨床検査技師は健康診断などで「病気かそうでないかを判断する」という目的で働くこともあります。
もちろん、このような場合においても、診療放射線技師や看護師、医師、管理栄養士、保健師、医療事務などと共にチームで動きますが、病気の人とだけ関わるのではなく、潜在的に健康な人と接する機会も多くあります。
臨床検査技師が行った検査をもとに、医師や栄養士、保健師などは、人々に「より健やかに暮らす方法」を伝えます。
そのため、臨床検査技師は、見えないところで人々が病気になるのを未然に防ぐ役割も担っている職業といえるでしょう。
医療の高度化により仕事の専門性が高まっている
臨床検査は、医師自身が行うこともあれば、機械に任せることもあります。
しかし、医療の専門化が進んでいる現代では、高度な検査については検査のスペシャリストである臨床検査技師が担当することが一般的です。
とくに近年は新しい機器や検査法が続々と生まれ、臨床検査技師の専門性が高まってきています。
臨床検査技師が取得できる専門の認定資格として、がん細胞の早期発見を専門にする「細胞検査士」や腹部エコーなどの超音波検査を専門に行う「超音波検査士」などがあります。
医療の高度化が進むにつれ、臨床検査技師の仕事も専門化が進んでいる状況です。
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臨床検査技師の仕事の流れ
臨床検査技師が携わる検査のおおまかな流れ(病院の場合)は、以下の通りです。
-
1.検査の予約が入る
医師が患者さんを診察し、診断に必要な検査を臨床検査技師や放射線技師に依頼します。 -
2.検体採取
臨床検査技師が検体を採取します。採血は看護師が行うこともあります。生理検査の場合は患者さんが検査室に来ます。 -
3.検査
検査依頼と検体を照合し、検査を行います。 -
4.結果を医師に報告
検査で出た結果に間違えがないか確認し、結果を医師へ報告します(データを送ります)。
臨床検査技師の就職先、活躍の場
臨床検査技師の勤務先は、主に病院、検査センター(外注検査の請負い機関)、健診センター、保健所などですが、その他にもさまざまな就職先があります。
勤務先の違いにより、臨床検査技師としての仕事内容や生活スタイルにも違いが出てきます。
ここでは、さまざまな勤務先と、そこで勤務する臨床検査技師の勤務内容について紹介します。
勤務先1.病院
臨床検査技師となった人の多くは、検査部門を持っている大きめの病院病院の検査部で働くことになります。
病院では外来患者さんや病棟患者さんと接する機会も多く、ある程度のコミュニケーションスキルも必要です。
また、時代が進むにつれて医療機器も進歩し続けており、最近は人の手を介さずとも検査が可能になっている一面があります。
こうした事実は、臨床検査技師にとっては厳しいものだといわざるを得ず、正社員ではなく、3年契約や5年契約の臨時職員しか採用しない病院も増えてきています。
そうした事情もあり、病院正職員を希望する多くの臨床検査技師は、少しでもよい条件で働き続けるため、自分の勤めている検査部に関連する認定資格を目指しています。
日本臨床衛生検査技師会の認定する資格には、「超音波検査士」「細胞検査士」のほか、「認定血液検査技師」や「認定臨床微生物検査技師」などがあります。
それぞれ関連する検査の実務経験が必要であったり、所定の講習会を修了する必要がありますが、その分野で一定の実力があることを証明でき、就職・転職の際、有利に働くこともあります。
なお、検査部のある病院には入院施設や救急救命部も備えていることが多いため、夜中に緊急検査ができるよう、夜勤当直が入る場合も多いです。
勤務先2.検査センター
検査センターで働く臨床検査技師も数多くいます。
検査センターでは、検査室のない小さな病院の検査や、あまり頻繁に行わない特殊な検査などを受注し、検査結果を発注元の病院に送付します。
アレルギー検査や、自己免疫疾患の特異的マーカー、腫瘍マーカーのなど、特殊な抗体の有無を検査することが多くあります。
このような特殊な抗体の検査は、ある特定の腫瘍や難治疾患が疑われるときにのみ有効な検査であり、これらを外注で済ませることで、病院の設備費用や人件費の節減になります。
検査センターへの検査の発注は昨今ではコンピューターで行えますが、比較的大きな病院では、外注機関の病院担当者が常駐していることもあります。
もっとも有名な検査センターのひとつとして「SRL」があり、臨床検査受注のほか、検査用試薬の開発販売や治験支援も行っています。
勤務先3.健診センター
健診センターとは、検査に特化した施設で、企業の定期健診などを専門に行います。
このような場所でも臨床検査技師が活躍しています。
病院の検査部、検査センターなどでは検査値が異常値を示す人が多いですが、健診センターの場合は働き盛りの若い人も多く、健康な人と接する機会が比較的多いのが特徴です。
健康診断で検査データに異常が見られた際は、程度によっては病院の精密検査を促すことも健診センターで勤務する人の仕事です。
生活改善によって健康な状態を維持できそうな人には、管理栄養士や保健師、医師が生活に関するアドバイスなどを行います。
健診センターは、就職健診ラッシュの4月や9月などは非常に多忙であり、残業もほぼ毎日のようにありますが、繁忙期がはっきりしているため、予定の立てやすい職場ではあります。
勤務先4.保健所・自治体の健診センター
公務員として、自治体の保健センターや保健所に勤務する臨床検査技師もいます。
公務員として働くには、保健所などでの試験や面接以外に、公務員試験にも合格しなければなりません。
公務員となった場合は保健センターや保健所の開館時間≒勤務時間であるため、比較的残業は少なく、夜勤当直もありません。
保健センターでの業務は、市民の皆さんの定期健診などの際に検体を集めて検査したり、身長・体重・腹囲の測定や、採血をしたり、心電図を撮ったりします。
病院よりも健康な方の相手をすることが多いですが、油断せず、注意深く検査を行い、異常があった際は文書などで本人に通達します。
自治体によって違いがありますが、公務員として事務処理をしたり、センターの管理をすることもあります。
健康維持・促進のための啓発運動などを行うこともあります。
勤務先5.治験コーディネーター
「治験コーディネーター」として活躍する臨床検査技師も、最近は比較的多く見られます。
治験コーディネーターは、被検者と治験を行う医療機関との調整役として、被検者と共に動き、治験が仕様書に沿って正しくおこなわれているかをチェックします。
治験は日本全国さまざまな地域で実施されるため、1つの仕事が終わり、事務所で報告書を作成・提出したあと、帰宅する間もなく次の勤務地へ向かうこともあります。
移動が多い仕事ですが、あちこちを飛び回って働きたい人には向いている職種ともいえます。
また、治験内容によって健康な人が被検者のこともあれば、病気の人が被検者になることもあるので、治験中も、常に被検者の体調などに気を遣う必要があります。
勤務先6.研究所・製薬会社・医療機器メーカー
臨床検査技師の免許取得後、大学院で博士後期課程を修了し、研究所や製薬会社、医療機器メーカーなどで研究開発に携わる人もいます。
研究開発に携わる場合は、持っている免許の種類より学歴を重視されるため、理系分野の博士号を持っていることが応募資格としてあげられることがよくあります。
将来的に研究に携わりたい人は、大学院に進むことも考えて大学を選ぶとよいでしょう。
勤務先7.その他(臨床検査技師の免許を生かし、更なる資格を得て働く)
以上のように、臨床検査技師は医療系資格取得者のなかでは幅広い領域で働ける職業ですが、やはり専門性の高い仕事でもあり、就職先はある程度限定されてきます。
そこで、「臨床検査技師免許を取得していること」が受験資格となる、別の資格を取得して、その後の仕事に生かす人もいます。
- 治験コーディネーター(CRC)
- 心臓リハビリテーション指導士
- 日本糖尿病療養指導士 など
その他、不妊治療に携わって実務経験を積んだのち、「認定臨床エンブリオロジスト」や「体外受精コーディネーター」になる人もいます。
病院で臨床検査技師として働くかたわら、診療情報管理士としても働く人もいます。
今後、さらなる機械化やAIによる診断システムなどが確立されると、臨床検査技師だけでなく、医療従事者の多くが淘汰される可能性はいなめません。
また、幅広く活躍するためにも、ゆくゆくは臨床検査技師とあわせて、こういった医療系の資格にトライすることも考えたほうがよいかもしれません。
どのような人と関わり、どのような仕事をしたいのかを熟慮し、それに必要な資格をプラスしていくことで差別化をはかるとよいでしょう。
臨床検査技師と関連する職業
医療業界では、臨床検査技師と似たような役割を持つ職業がいくつかあります。
ここでは代表的な職業を取り上げて、各職業との仕事内容の違いを説明します。
診療放射線技師と臨床検査技師の違い
院内で臨床検査技師として仕事をしていると、別の職種と間違われることもしばしばあります。
診療放射線技師は、業務的にも最も臨床検査技師と近く、間違われやすい職業です。
しかし、診療放射線技師は医療用の放射線を扱う資格があるのに対し、臨床検査技師にその資格はありません。
診療放射線技師は、放射線を用いて画像診断や治療(ガン治療)を行うことを役割とします。
臨床工学技士と臨床検査技師の違い
臨床工学技士は、名前は同じようですが、働いているセクションも、役割もまったく違います。
臨床工学技士は主に透析室やオペ室などで働き、透析装置や人工心肺などの医療機器の操作や日々のメンテナンスを行います。
また、透析専用の「シャント」と呼ばれる血管を作る資格も持っています。
看護師と臨床検査技師の違い
看護師と臨床検査技師も、よく院内で顔を合わせます。看護師は注射の他に採血をすることもあります。
しかし、臨床検査技師に許されているのは採血だけであり、体内に薬品を注入することはできません。
また、看護師は患者さんの精神的フォローが大きな業務となりますが、検査技師は身体的フォローの割合が大きいという点でも違いがあります。
「臨床検査技師の仕事」まとめ
臨床検査技師は、医師の指導の下で、さまざまな種類の臨床検査を実施する専門職です。
病院で働く人が多いですが、そのほか検査センターや健診センターなど活躍の場は多岐にわたり、職場ごとに詳しい業務の内容や進め方には多少の違いがあります。
医療スタッフの一員として、患者さんの命や健康を守る欠かせない重要な役割を担っています。