救急救命士になるには? 必要な資格は?

救急救命士として働くためには、救急救命士の国家試験を受け、合格する必要があります。

また、主な活躍の場である消防署に勤務するためには、自治体が実施する消防官採用試験を受け、採用される必要もあります。

この記事では、救急救命士になるまでのルートや、必要な資格、適性、キャリアパスなどについてまとめて紹介しています。

救急救命士になるまでの道のり

救急救命士は、国家資格を持って活躍する専門的な職業です。

そのため、救急救命士として働くためには、救急救命士国家試験に合格することが必要です。

この試験は誰でも受けられるわけではなく、決められたルートをたどって「受験資格」を得なくてはなりません。

また、救急救命士の勤務先の中心は消防署です。消防署で働くためには、消防官採用試験にも合格する必要があります。

救急救命士になるための具体的な2つのルートについて、ここから詳しく紹介します。

ルート1.2年制の救急救命士養成校を卒業する

最短で救急救命士を目指す方法は、救急救命士の「養成校」といわれる2年制以上の学校で学び、国家試験を受けることです。

この養成校には専門学校と大学があります。

所定の課程を修了することで、救急救命士国家試験の受験資格が得られます。

救急救命士の国家資格が取れた後は、自治体が実施する消防官採用試験を受けて消防署に採用され、救急救命士としてキャリアを積んでいく道を進みます。

ルート2.救急救命士の資格取得前に消防官採用試験を受ける

もうひとつの道として、救急救命士養成校に通う前に消防官になり、経験を積んでから救急救命士を目指すことも可能です。

ただし、この場合は1のルートと比べて時間がかかります。

具体的には、消防官として5年以上勤務、もしくは2000時間以上の救急活動をし、指定の養成所で研修を受ける必要があります。

救急救命士になるまでのルート

救急救命士の活躍の場

救急救命士が医療行為を行えるのは、法律によって救急車内や現場のみと定められています。

こうしたこともあり、救急救命士有資格者のほとんどは消防署で勤務しています。

消防署で働こうとする場合は、各自治体が実施する消防官採用試験に合格し、消防官になる必要があります。

自治体によって採用試験の倍率は異なるものの、平均して10倍前後と高めであり、難関であることを覚悟しておいたほうがいいでしょう。

自治体によっては、救急救命士資格取得者を優先的に採用する枠を設けているため、救急救命士養成校を卒業して先に国家資格を取った人は、そうした自治体を探して受験するのもよいでしょう。

消防署以外の救急救命士の職場として、自衛隊、海上保安庁、警察などで活躍する道もあります。

これらはすべて公務員であり、それぞれの採用試験を受ける必要があります。

また、民間であれば、民間の救急会社や警備会社などで、救急救命士の資格を持つ人が社員として採用されることがあります。

救急救命士の資格・難易度

救急救命士として業務を行うためには、国家試験に合格する必要があります。

令和6年3月に実施された第47回試験の合格率は94.2%でした。この試験は、例年80%以上の合格率を維持しています。

合格率が高いため難易度が低いと思われがちですが、受験生はきちんと勉強をし、対策して臨んでいるため、この結果となっていると考えたほうがよいでしょう。

消防署勤務を目指す場合には、救命士国家試験と消防官採用試験をいつ受けるかイメージし、勉強のスケジュールを組むようにしましょう。

補足として、消防官採用試験時に持っておいたほうがいい資格に、「大型自動車免許」や「第3級陸上特殊無線技士」などがありますが、あくまでも補助的なものとして理解しておきましょう。

救急救命士国家試験の難易度・合格率

救急救命士になるための学校の種類

救急救命士になるための学校(養成校)には、専門学校と大学があります。

そのため、入学条件は基本的には高卒以上となります。

専門学校では、2年~3年かけて救急救命士国家試験に向けた対策と、消防官採用試験の対策に関するカリキュラムが中心に組まれています。

大学については、4年間をかけて多様なカリキュラムを学びながら救急救命士を目指していくことになります。

救急救命士の養成課程がある学科の名称は、「救急救命学科」や「保険医療学科」など、さまざまです。

事前にどの学科で救急救命士を目指すことができるのか、きちんと確認しておきましょう。

また、3年制の専門学校と4年制の大学の学費を比較すると、大学のほうが1年間在籍期間が長い分、高額になることが多いです。

年間の学費は、専門学校では約110万円~150万円(初年度)ほど、大学だと約130万円~200万円(初年度)ほどかかる計算になります。

救急救命士になるための学校と学費(大学・専門学校)

救急救命士に向いている人

救急救命士に向いている人の特徴や必要な資質、適性について紹介します。

人を助けたいという気持ちが強い人

救急救命士は「人の命を助けたい」という気持ちを強く持ち、あきらめずに行動ができる使命感や責任感が必要です。

24時間交代制(シフト制)のため大変な仕事ですが、その中でも自分の仕事に責任を持ち、最後までやり遂げるだけの根性が必要になります。

また、医師やその他医療関係者と連携して傷病者の処置にあたる必要があるため、チームワークを大切にできなければ務まりません。

個人のスキルも必要ですが、チームで動くことを念頭に置き、行動する必要があります。

ものごとを冷静に判断できる人

救急救命士の出動先となる現場は常に緊急を要する状態であり、どんな状況でも冷静に行動できる判断力が必要です。

時間との戦いのなか、どのような処置が適切かを判断・行動し、突然の事態でもパニックにならずに対応していく力が求められます。

また、救急救命士は医療機器を使用して傷病者の対応を行うため、機器の知識や使用方法など、常に意識を集中させた状態で保たなくてはいけません。

早朝や深夜など、時間を問わず出動することが多いため、集中力を持続させることができるかどうかが大切となります。

体力と精神力に自信がある人

救急救命士は人の生死の現場に立ち会うことが多いため、肉体的・精神的に強くなければ務まらない仕事です。

傷病者のもとに駆け付け、搬送をおこなうためには、相応の体力が必要となります。

そのため、救急救命士(消防官)は、訓練として体力づくりに励んでいるのです。

24時間交制(シフト制)となることから、体の状態をキープする自己管理能力が必要不可欠であり、日頃からのケアが重要となります。

また、悲惨な現場や状態の傷病者に接しなければいけない場合もあるため、精神力に自信がないと厳しい面もあります。

救急救命士に向いている人・適性・必要なスキル

救急救命士のキャリアプラン・キャリアパス

消防署で活躍する救急救命士は、実務経験を重ねたのち、各地消防学校などで研修を積み、「薬剤投与認定」や「特定行為認定」などの関連資格を取得することで、さらにスキルアップを図ることができます。

こうした追加資格は近年認定された「特定行為」、なかでも気管の挿入や一部薬剤の投与などの医療行為を行う際に不可欠なものとなっています。

そのため、多くの救急救命士は業務の合間をぬって勉強し、資格取得を目指しています。

救急救命士になってからもスキルアップのために努力していけば、その分だけ携われる業務は広がっていきます。

なお、特定行為に該当する処置を行う場合、医師からの具体的な指示を受け、家族への説明と同意が必要となります。

医師のように処置全般を行えるわけではありません。

救急救命士の今後の見通し

救急救命士に認められている「特定行為」には、都度医師からの指示が必要であり、処置できる行為も制限されます。

しかし、近年では「特定行為を拡大することによって救える命もある」という主張が強まっており、検討が進んでいます。

救急救命士が行う特定行為の範囲には、まだまだ課題があり、「救急救命士が医療行為を行えるのが車内のみに限定されていること」などが議論の対象となっています。

ですが、徐々に特定行為の拡大へ議論は進んでいるため、今後も救急救命士が担う責任は重くなっていくことが予想されます。

なお、救急救命士の資格を有する消防隊員は年々増加しており、令和3年時点で救急救命士の資格を持つ人は41,266人です。

そのうち救急救命士として運用されている救急隊員は28,722人と年々増加しています。

救急救命士運用隊の推移_令3

出所:総務省消防庁 令和3年版 消防白書

令和3年度時点で救急救命士を運用している救急隊は5,275隊で、これは全救急隊のうち99.5%に相当します。ほぼすべての救急隊で救急救命士が活躍しているといえます。

救急救命士運用隊の推移_令3

出所:総務省消防庁 令和3年版 消防白書

救急救命士を目指せる年齢は?

救急救命士を目指せるリミットは、おおよそ29歳までといわれています。

その理由として、救急救命士の資格を取得したからといって、それだけで働くことができるわけではないからです。

主な勤務先となる消防署で働くための消防官採用試験の年齢制限は、多くの自治体で「29歳未満」としています。

救急救命士を目指すためには、救急救命士養成校で2年以上勉強するか、消防官としての実務経験と講習を受けるかのどちらかになるため、最速でも2年間の勉強時間を要することになります。

救急救命士国家試験自体に年齢制限はないものの、消防官採用試験を受験できる年齢には上限が設けられる可能性が高いことを念頭に置き、準備をしていきましょう。

ただし、年齢制限については自治体によって異なるため、希望の自治体の条件などを確認してください。

「救急救命士になるには」まとめ

救急救命士は、国家資格を持った上で、主に消防署に所属して活躍しています。

この資格を取る方法として、先に専門学校・大学といった養成校で学ぶ道と、消防士になってから実務経験を積んで資格を取得する道があります。

消防官の採用試験では29歳までと年齢制限を設けている自治体も多いため、将来のことをよく考えて、救急救命士になる準備を進めていきましょう。