航海士になるには? 必要な資格は?
本記事では、航海士になるための主な道のり、資格の難易度などについて紹介します。
航海士になるまでの道のり
外航船員になるには
外交船員(国際航海を行う船員)になりたい場合には、2つのルートがあります。
- 中学校卒業後に商船高等専門学校に進学する
- 高校卒業後に海事系大学へ進学する
商船高等専門学校は全国に5校、海事系大学としては東京海洋大学・神戸大学・東海大学などがあります。
商船高等専門学校では、4年6ヵ月の座学と1年間の乗船実習を行い、この学校を卒業することで、3級海技士の国家試験が筆記試験免除で受験可能となります。
大学では、4年間のうちに6ヵ月間の乗船実習、卒業後さらに6ヵ月間の乗船実習科を修了することで、3級海技士の国家試験が筆記試験免除で受験可能となります。
内航船員になるには
内航船員(国内航海を行う船員)になりたい場合にも2つのルートがあります。
- 中学校卒業後に海上技術学校(本科)に進学する
- 高校卒業後に海上技術短期大学校(専修科)に進学する
海上技術学校(本科)は3年制で、一般的な高校卒業と同じ位置づけです。
卒業後、さらに6ヵ月間の乗船実習科を修了することで、4級海技士の国家試験が筆記試験免除で受験可能となります。
海上技術短期大学校(専修科)は2年制の短期大学と同じ位置づけです。
卒業することで4級海技士の国家試験が筆記試験免除で受験可能となります。
甲板部員になるには
多くの航海士は上記の学校を卒業していますが、海技士の免許が必要とされない一般の「船員」として働きながら乗船履歴を積んで、航海士の受験資格を得る方法もあります。
この場合、船に寝泊まりしながらあらゆる雑用をこなし、数年間甲板部員として勤務したあとに国家試験の受験資格を得ることができます。
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航海士の資格・難易度
航海士として働くためには、国家資格である「海技士(航海)」の免許を取得する必要があります。
海技士の免許は、航行する区域や船の大きさ、担う業務などにより、以下のように分かれており、外航船員になるためには3級、内航船員になるためには4級の資格を取得するのが一般的です。
- 海技士(航海)1級~6級
- 海技士(機関)1級~6級
- 海技士(通信)1級~3級
- 海技士(電子通信)1級~4級
上記のうち、航海士として働きたい場合は「海技士(航海)」の免許を取得することになりますが、受験する級ごとに満たさなければならない要件が設けられています。
航海士になるための学校の種類
海技士の受験資格を取得する
海技士の国家試験には受験資格があり、代表的なものは以下のようになっています。
いずれの場合も学校を卒業すれば、国家試験のうち学科試験に関しては免除されます。
- 中学卒業後、商船高等専門学校に進学する
- 高校卒業後、4年制の海事系大学に進学し、卒業後、さらに6ヵ月間の乗船実習科を修了する
- 中学卒業後、海上技術学校(本科)に進学し、卒業後、さらに6ヵ月間の乗船実習科を修了する
- 高校卒業後、海上技術短期大学校(専修科)に進学する
→卒業後、3級海技士の国家試験が受験可能。
→3級海技士の国家試験が受験可能。
→4級海技士の国家試験が受験可能。
→卒業後、4級海技士の国家試験が受験可能。
大卒の資格を取得する
大きく分けると、中学卒業後に進学できるのが商船高等専門学校と海上技術学校(本科)、高校卒業後に進学できるのが海事系大学と海上技術短期大学校(専修科)です。
少しでも早く海技士免許を取得したいのであれば、中学卒業後に進学できる海上技術学校(本科)が候補に挙がりますが、海事系大学に進学すれば「大卒」の学歴を得ることが可能です。
大手の商船会社で活躍するには大卒の学歴が求められるケースが多いため、海事系大学に進学する人も増えています。
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航海士の勤務先
民間企業(船舶会社・商船会社など)
海技士の免許を取得したのちは、勤務先を見つける必要があります。
航海士として働くための第一関門が免許を取得することなら、船舶会社や商船会社といった企業の海上職採用試験にパスすることが第二関門です。
主に客船・貨物船・タンカー・漁船などに乗船することとなりますが、客船は船の数そのものが多くなく、基本的に欠員が出た時のみに求人が行われます。
また海運業界全体の傾向としては、海技士よりも船舶の機関部で各種機器の管理や整備を行う「機関士」が不足していることから、就職のしやすさを考えると機関士のほうが有利ともいえます。
公務員
航海士のなかには、あまり数は多くありませんが公務員として活躍する人もいます。
公務員航海士は、以下のような省庁で採用されています。
- 国土交通省地方整備局(航路事務所)
- 海上自衛隊
- 税関(監視艇)
- 検疫所
- 農林水産省水産庁
このほか、一部地域の警察でも航海士資格を持つ人を採用することがあります。
なお、公務員航海士は「船舶職員」や「船舶乗組員」などの名称で採用されることがあるため、注意してください。
公務員航海士はあまり募集が多くないため、興味がある人は、各省庁や関連機関の採用募集要項をこまめにチェックしてみてください。
航海士に向いている人
船には複数の航海士が乗り組み、24時間体制で業務に当たります。
安全な航海を行うためには統制力と総合的な判断力のほか、チームワークが必須です。
経験の浅い航海士にとってはこうした部分がネックになることもありますが、共に生活をして、業務を懸命にこなしていくことで、おのずと信頼関係が生まれていきます。
また船上で集団生活を送るうえでも、さまざまな相手とコミュニケーションをとれることは大きな強みになります。
航海士のキャリアプラン・キャリアパス
航海士の場合は、経験に応じて上級免許を取得するのが一般的です。
三等航海士から二等航海士、そして一等航海士とキャリアを重ねて、40代ごろに船長となることが多いようです。
船の世界も一般的なサラリーマンと同じように階級制度になっており、その階級ごとに仕事内容が決められています。
また船上の仕事だけでなく陸上での仕事もあり、船に乗る仕事と陸上でのデスクワークを数年おきに繰り返すことになります。
航海士を目指せる年齢は?
航海士を目指す学校には年齢制限の上限がないため、何歳になっても航海士への転職を目指すことは可能です。
しかし体力や精神力を要し、キャリアアップのためには経験が必要な仕事内容から考えると、10代や20代といった若いうちから始めたほうがいいともいえます。
現に4年制の海事系大学の編入者は20代以下が大半ですし、海上技術短期大学校の生徒も20代後半の生徒はほとんどいないようです。
航海士の資格のまとめ
航海士として働くためには、国家資格である「海技士(航海)」の免許を取得する必要があります。
航海士になるために進む学校を大きく分けると、中学卒業後に進学できるのが商船高等専門学校と海上技術学校(本科)、高校卒業後に進学できるのが海事系大学と海上技術短期大学校(専修科)です。
大手の商船会社で活躍するには大卒の学歴が求められるケースが多いため、海事系大学に進学する人も増えています。
また海運業界全体の傾向としては、海技士よりも船舶の機関部で各種機器の管理や整備を行う「機関士」が不足していることから、就職のしやすさを考えると機関士のほうが有利ともいえます。
航海士は、経験に応じて上級免許を取得するのが一般的です。
三等航海士から二等航海士、そして一等航海士とキャリアを重ねて、40代ごろに船長となることが多いようです。
航海士を目指す学校には年齢制限の上限がありませんが、このようにキャリアを重ねることを考えれば、若いうちから航海士を目指すのが望ましいでしょう。